No.829663

リリカル東方恋姫 第13話 『白き最強VSハジケた最凶たち』

ひさびさにネギま編を登校するぞ♪

ドライグ『まさかあいつが登場するとはな…』

マサト「この戦いを見逃すな!!」

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2016-02-09 17:54:09 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1431   閲覧ユーザー数:1383

 

「「はっははははははは!!」」

 

 遮那と信長が互いに愛刀、天狼と左文字をぶつけながら、笑っていた。

 二人の気と刀が衝突するたび、衝撃波が発生し、轟音が鳴る。

 

「すげぇ、ええ顔で殺り合ってん~あの二人。遮那を見ろよ。今年に春が来たみたいに、笑ってんぞ」

「原作で主人公と互角に戦えた中ボスだ。戦闘狂の遮那にとっては、まさに水を獲た魚だ」

「もはや、我々の出番はなさそうだな」

 

 室内の片隅で、残りの四人が遮那と信長の勝負を傍観していた。

 最初、5対1のパーティーで信長に挑むだったが、遮那と戦いにわって入るのは野暮なので、お気楽に、まつことにしたのだ。

 

「こ、これが剣を極めた者がいる世界ッ!?なんという闘気と殺気をぶつかりなんだ!?」

 

 詠春にいたって興奮していた。

 同じ剣士と、二人の戦いの境地に感動していたのだ。

 

「せっかくの戦だ。居残りも、共に楽しもうぞ!」

 

 遮那と戦っていた信長が後方へジャンプし、距離を離すと、左門字を地面に突き刺した。

 

「来たれ、血と戦に飢えし死屍共よ!我が、第六天魔王の呼び掛けに答えろ!さすれば、魔王が戦場をあたえられん!!」

 

 床から腕を飛び出し、ゾンビのように騎士や魔法使い、侍などの死人が大勢出現した。

 

「「「「「「うっぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」

 

 死人たちは雄たけびを上げながら武器や杖を掲げた。

 

「まさか、死者の召還したというのですか!?」

「軽くて、数万はいそうだな」

「む~原作と違って十二神将じゃないのはちょっと、残念だ」

「そんなこと言ってる場合か!」

 

 死者たちが一斉に襲い掛かり、詠春とキョウスケ、マサトと剣呉が対処する。

 

「さぁ、貴様の力をみせろ、遮那よ!」

「なら、お言葉に甘えて…みずち!!」

 

 遮那がミズチが、一直線に信長に向かうが、信長は刀で軽く振ってミズチを両断した。

 

「どうした? 貴様の力はこの程度か!」

 

 が、円状にみずちが七つ既に放たれていた。

 

「――なにッ!?」

「奥義、青龍!」

「ぐっわぁあああああ!!」

 

 青龍の竜巻で吹き飛ばされ、地面に落下したが、信長は目だった怪我もなく、ひざを地面につく。

 

「…ふふふふ、さすがは剣聖…この俺を膝を地に着かせるとわ…」

 

 不敵な笑みを浮かべると立ち上がり、刀を天に掲げた。

 

「こんどはこちらの番だッ!天の果て地の果てこの世の果てより現われし第六の魔王よ汝の他化自在天よりすべての魔(マーラ)を我に与えよ!」

 

 信長の周囲に邪気と闘気が混じったかのような渦が発生する。

 

「塵となれ! 天魔・骸手!」

 

 剣先から死神のような巨大な骨の手が放たれた。

 ドカーンと轟音が鳴り響き土煙が舞うも、土煙がおさまるとそこには遮那の姿がなかった。

 気配を感じた信長が天井を見上げると、遮那が飛び上がっていた。

 

「こんな程度か、魔王様よ!」

「くっ、天魔・骸手!」

 

 下段から刀を振り上げ、死神の手が放った。

 

「二度の手が通じるかっ!飛燕!」

 

 遮那は飛燕を放ち、飛燕は死神の手を貫通し、死神が消滅。そのまま止まらず、信長に一直線に向かった。

 

「うぉォオオオオオオ!!」

 

 信長は刀で飛燕を受け止める。後ろに引き下がれてるも、飛燕を耐えた。

 

「…まさか、技を貫いた上に、この魔王まで貫こうとしようとは…おそろしい鬼だ」

「よくいうぜ。刀一本で防いだくせによ」

「だが、同時におしいい。殺しすよりおしい男だ。是非とも、我が軍門に下り、俺と共に覇道を歩まないか?」

「こんな時に勧誘か…わるけいど、こっちとら新聞とか怪しい信教に入らないのタチでな。俺は俺が気に入ったやつしかくまねぇよ」

「ふっ、そうだろうな」

 

 信長が微笑み、遮那をみつめる。その瞳は先ほどまでの狂気や闘気は感じられず、芯のある、まっすぐな瞳をしていた。

 

「ならば、聞こう。貴様は、なんのために生き、なんのため力を振るう?」

「そんなもん、こんなときに必要か?」

「あるさ。嘗て、天下統一という夢、男として侍として最強を目指していた俺がこうして、力を手にし、力を振るい、熱気盛んに燃えていたのは、すべて己の野望であり、夢があったからこそだ! 力があるから、夢があるんではない! 夢という幻想を叶えようとするからこそ、力が生まれ、力を使え、夢を追うことができる! たとえ、夢、幻…儚い幻想だったとしても、そこに、己の魂を賭けるほどものがあれば、永遠に己は己でありつづけられる。…ゆえに、意思に刀に空虚という空っぽを抱く貴様など、俺には勝てんぞ」

「………」

 

 信長の言葉に、無言になる遮那。すこしばかり、彼の言葉がつきささったのだ。

 

「そんな勝利宣言が余裕で吐けるなら、今のうちだぜ…」

 

 遮那は刀を構えると、信長は「そうか…」と呟き、元の狂気と闘気に満ちた瞳にもどった。

 

「天魔・霊骸攻乱!!」

 

 四体の巨大な怨霊が出現し、遮那に襲い掛かった。

 

「奥義、玄武!」

 

 遮那の玄武が甲羅で巨大な怨霊たちを攻撃を防ぎ、神風の蛇が怨霊に絡めつく。

 しかし、玄武の蛇たちをものともせず四体の怨霊は必死に玄武を甲羅を握りつぶし、玄武が砕かれると同時に、相打ちで消滅した。

 

「玄武が砕けただと!?」

「まだいくぞ! 天魔・死猟降魔(しりょうがま)!!」

 

 さらに、信長は大鎌を持った巨大な死神を出現させ、死神は鋭い大鎌を振り上げた。

 

「チッ、奥義、白虎!!」

 

 遮那は白虎を放つも白虎は死神の大鎌によって縦に一刀両断され、大鎌は遮那を斬ろうとする。

 

「グゥッ!?」

 

 遮那は間一髪で刀で防ぐも、天魔・死猟降魔の威力は強すぎるあまり吹き飛ばされ、右肩が斬られた。

 

「ふっはっははっは! これぞ、第六天魔王の力! 貴様程度の風など、そよ風程度のこと!」

「くっ、くそ~…」

 

 遮那はさきほど攻撃で体がうまいこと動かせず、止めとばかりに信長が遮那を両断しようと疾走する。

 しかし、遮那の首にむけて刀を振ろうとしたそのとき、なにかが飛来すること直感し、刀を自身の横へ振り下ろすと、ドリルのような矢を斬ってしまい、両断された矢は眼前で爆発した。

 

「ぬぅぅ!?」

「キョウスケ、いまだ!」

「ゴーレム!」

 

 剣呉が放った矢を囮に、キョウスケが信長の眼前にゴーレムを召還し、ゴーレムは拳を撃とうとする。

 

「小癪なまねを! どっけ! 木偶の坊!!」

 

 信長は、刀一本で巨大なゴーレムを真っ二つにする。

 すると、真っ二つしたゴーレムの後ろに、赤龍帝の籠手でフルチャージを終えたマサトが構えていた。

 

「ドラゴンショット!」

 

 両手から放たれる極太のエネルギー波は信長を包み込んだ。

 なお、遮那は信長がゴーレムへ注意を逸らした瞬間に、詠春が助け出し、彼とともに詠春の横にいた。

 

「どうだ…?」

 

 やったのかと、キョウスケが呟くも、ドラゴンショットが止むと、ドラゴンショットで出来た深い溝の先には服がボロボロになるも目立った外傷がなく、刀を構えて立つ、信長の姿があった。

 

「無傷かよ…」

「伊達に魔王は名乗っていないっか…」

 

 莫大なエネルギー波が直撃したのにもかかわらず、ダメージをみられない信長の強さにキョウスケたちは唖然となった。

 

「貴様らはたしか、死者どもに相手をさせているはずだが…?」

「あんなもん、何億人来ようが、俺たちの敵じゃねーよ」

「それに、貴様と遮那の攻撃にまきこまれて、ほとんどの者は倒されているしな」

 

 実は信長が召還した死者たちは、信長と遮那の攻撃に巻き込まれており、全員、塵となっていた。

 

「ふむ、すこし熱くなりすぎて回りが見えなかったか…まぁ、所詮適当に呼んだ下級の雑魚。こちらにはなんの支障などない」

「織田信長…あなた、勝手に死者を呼んだ挙句、その態度をとるとは…死者に対する冒涜です!」

 

 詠春は太刀・夕凪を構え、キョウスケ、マサト、剣呉も、動けない遮那を守るように、信長に立ち向かう。

 

「5対1っか…よかろう、まとめて葬ってやる!」

 

 その後、泥沼の戦いが続いた。

 詠春が斬魔剣を放つも信長の一振りで霧散され、

 剣呉が連射した壊れた幻想は、信長によってすべて切り落とされ、

 マサトがオラオラオラオラと連続でパンチを放つも、信長の刀で防がれ、

 キョウスケが召還したニードル・ワークは信長に一刀両断され、

 遮那が放った朱雀は、信長が放った亡霊によって殺され、

 すべての攻撃が信長の前には届かず、傷ひとつつけれらなかった。

 

「なんという強さだ! これが、第六天魔王…!」

「…おかしい…」

 

 詠春は信長の強さに驚愕するが、キョウスケはあることに疑問を抱く。

 

「剣呉っ、すまないが、威力のデカイでぶつけてくれ。確かめたいことがある」

「…承知した。トレース・オン(投影)!」

 

 剣呉はエクスかリバーを投影した。

 

「約束された勝利の剣(エックスカリバー)!」

 

 エックスカリバーを振り下ろし金色の斬撃が放たれるが、信長に着く前に金色の光は弱弱しくなり水鉄砲みたく、刀で防がれた。

 

「馬鹿な!? 威力が落ちてるだと…!?」

「…やはりっか…」

「どういうことなんですかキョウスケ?」

「あいつが強くなったんじゃない、俺たちの力が弱くなっただけだったんだ!」

「なんですっと!」

 

 これまで信長にダメージを与えられなかったのは、攻撃が通じなかったのではなく、本来の威力が弱くなり、あたかも信長に自分たちの技が効かないと錯覚したためであった。

 すると、マサトの赤龍帝の籠手の翠の宝玉が点滅する。

 

『オイ、キョウスケ。おまえ、原作という知識であの男のことを知っていそうだな。やつは力を下げる能力をもているのか?』

「いや、容姿や技は原作と同じだが、下げる能力はなかったはずだ…」

『そうかっ、なら、あいつのバックにいるやつはやはり…』

「ドライグ?」

『…さっさと出て来い。いるのはわかってるぞ…――白いの』

「えっ?」

『フッ、まさか、別次元で貴様と出会うとはな、赤いの』

 

 信長の背中から白い装甲と青く光る羽の翼が出現した。

 その翼に転生者兼オタクであるキョウスケ、マサト、剣呉は驚愕する。

 

「なんで、アルビオンがいるんだ!?」

「しかも、第六天魔王が白龍帝の光翼所有者だと!?」

『白いの、なぜここにいる?』

『愚問だな赤いの。我らは一種の対極の存在。貴様がいれば我もいて当然だ。ちょうどよく我の器に相応しい所有者もいたしな』

「それが信長だったってことか…」

『にしても、赤いの。どうやら今度の宿し主、前の所有者と違ったベクトルの変質者のようだな。なんだ、ホモか男の筋肉に興味が出たか?』

『好き好んで暑苦しい筋肉を選ぶかっ。 だいたい、変態だろうが、今回の相棒は一味二味も違うぞ白いの。貴様が選んだ者など敵ではないほどにな』

『フッ、負け惜しみを。エリートドラゴンである我と、変態に好かれぬ変態ドラゴンとでは、格も品格もちがう。貴様は一生、変態がお似合いだ』

『カッチーン☆とキッタ。 おまえ、ぜってぇえええ殺すっ。七回殺して八回目で埋葬してやるっ!』

 

 そんな彼らを無視して、アルビオンとドライグは買い言葉に売り言葉でお互い睨んでいた。

 神滅器の中にいるので外からではわからないが、詠春にはは空の上で赤と白の龍がメンチを切っているようにみえたとか…。

 

「あの~キョウスケ。あのドライグが叫んでいるのですが、あの白い神器というものをご存知なんですか?」

「あぁ、あの白の装甲に青く光る翼は神滅器『白龍帝の光翼』。赤龍帝の籠手の能力とは間逆に、相手の力を半減させ、その分の力を吸収するという、神を虫並に弱体化させて倒す力があるんだ。神滅器のコアはかつて、二天龍として神々や魔王に恐れられたドライグのライバルの龍、白龍帝アルビオンだ。そいつとドライグの関係を一言で答えれば、とにかく仲が悪いが基本だな」

「つまり、剣呉とマサトみたいなもんか?」

「ざっくりにいえばそういうこと」

「…我々で例えさせれると、心苦しい…」

「?????」

 

 剣呉はキョウスケたちの理解し、脳筋であるマサトは理解できず?マークを多く浮かべていた

 

『相棒、今回は俺も協力するぞ! あの非魔王と卑猥ドラゴンをぜってぇぇええ殺すぞ!』

「よっし、いくぜドライグ!禁手化発動!」

 

 マサトが赤龍帝の鎧になる。

 

『赤いのが禁手化した。こちらも禁手を使うか?』

「否。通常で十分だ」

 

 信長は傲慢な態度で、禁手しないという。

 完全に遮那たちをなめている証拠である。

 

『Divide(ディバイド)』

 

 アルビオンの能力である『Divide(ディバイド)』が数時間後に発動され、キョウスケたちの力が半減しつづける。

 弱体化される中、キョウスケたちは信長に食いつくも、

 

「ハーッハハハ!!」

 

 接した瞬間、攻撃がさらに弱体するのであった。

 

「禁手になっていないになんちゅう強さだ!?」

「基本スペックが違いすぎるな…!」

「たとえ、力が弱くなったとしても、心と技術はけっして弱くはなりません!」

 

 詠春が斬りかかるも、信長は難なく刀で受け止めた。

 

「なっ!?」

「貴様の剣は才能にあふれている。相当な使い手だと斬撃から伝わってくる。――だがしかしっ! 刀との会話を成立しておぬし程度の三下なぞ、勝負以前の問題だ!」

 

 受け止めたまま左文字を振るい、詠春の刀を両断した。

 

「夕凪が!?」

「みせてやろう。これが、我が愛刀、左文字と会話を交わした力を!天魔・死猟降魔!!」

「ぐっわあああああああ!?!?」

 

 信長から放たれる死神の鎌が、詠春の胸を切り裂く。

 詠春は胸から血飛沫を噴出し吹き飛ばされ、それをマサトがキャッチする。

 

「しっかりしろ詠春!?」

「ふ、不覚ッ…自分の力量の低さが悔やみます…!」

 

 息を荒くし、悔しい顔つきで、傷口を押さえる。押さえた胸から血が服に滲み出ていた。

 傷は深くないが、戦闘は無理だろう。獲物である夕凪も折れている。マサトは詠春に肩を貸し、キョウスケの後方へ運ぶ。

 

「くっ、やはり、愛刀と会話した後の信長はある意味で中ボスレベル以上っか!?…ん? まてよ…?」

 

 キョウスケはあることに気づき、遮那に聞く。

 

「遮那!おまえ、天狼と会話はしたのか?」

「はっ?なにいってんだキョウスケ?刀とお話できるわけねぇーだろうがっ。常識考えろよ常識を」

「…やっぱりかー…」

 

 原作知識、おもに自身の特典の知識がない遮那にキョウスケは頭を抱えた。

 

「いいかっ。おまえの能力はサムライティーチャーkyoの主人公の力そのものだ。イレギュラーな信長でも、本来の主人公の力なら敵じゃない。…けど、おまえは完全に主人公の力を完全に覚醒していないと、一生  信長は勝てん! 真の力に覚醒するのは、天狼に宿る初代紅の王と会話しなくちゃいけないんだ」

「会話って、そんなもんどうすればいいだ?」

「とりあえず、目をつぶって刀に集中しろ!そうすれば、答えてくれるはずだ! …たぶん」

「たぶんかよ!」

「しかたないだろう!ここまでイレギュラー続きで俺の原作知識が役に立たん とにかく、集中しろ!このまま無残に負ける気か?」

「チッ、わかったよ!やればいんだろうやれば…!」

 

 遮那は天狼を構え目を閉じ、集中するも、

 

「…まどこっろしい…なら、待つより生むがやすしっと!」

 

 ゴン!?

 

 突然、遮那が自分の額に天狼の峰で叩きつけた。

 鈍い音が鳴ると、額にたんこぶを作りながら、その場で倒れこみ、気絶する。

 

「遮那!?」

「あほかアイツ! 気絶してどうすんだよ!?」

「だ、大丈夫なのか!?」

「…いや、成功のようだ」

 

 気絶したのにもかかわる遮那は天狼を握り締めていた。

 そして、天狼の刀身に文字のような文様が禍々しい光で浮かび上がっていた。

 

「あとは、遮那が天狼と会話してパーアップすれば、こちらの勝利率が上がるはずだ…!」

「…それまで、こちらが立っていればの話だが…」

 

 上を見上げれば、最強の竜の翼をもつ魔王が、見下ろしていた。

 キョウスケたちは、遮那を守る形で陣形を組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

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「おっ、うまくいったみたいだな」

 

 遮那の意識が覚醒したとき、眼前に、雅な古城と城下が広がっていた。

 痛む額のたんこぶを手でさすりながら遮那は、ここが天狼の中だと、直感で理解する。

 

「ふーん、天狼の中ってこんな風になってたんだな…それよりも天狼と会話するため初代紅の王ってやつを探さねぇと…―――」

「それなら、後ろにおるぞ」

「っ!?」

 

 声が聞こえ後ろを振り向きと、そこには、魔王を連想させる赤髪で双角を生やす歌舞伎のような着物を着る長身の男が遮那を嘲笑し、笑みを零す。

 

「はじめましてだな、壬生一族の生き残りの力を受け継ぐ転生者よ。オレこそが、貴様の力の源である壬生一族の初代紅の王にして、天狼自身。そして、おまえが探していたモノだ」

「テメェがっかっ…」

 

 遮那は紅い王の気を警戒し睨むが、

 

「にしても、まさか、オレがちょっかい出す前に、オレの支配領域の中心に飛び込んでくるとは、まえの奴より強引な処女だなおぬし」

「だれが、女だ! 俺は男だ!!」

 

 逆鱗が触れられ、遮那は紅の王に飛び掛るも、紅の王は撫でるかのように遮那の頭を掴んだ。

 腕を解こうと動くも、遮那の体が一歩も動けず、足元が地面にめり込む。

 

「…う、うごけねぇ~!?」

「ふっははははは、すまんすまん。前の主にくらべて、ずいぶんかわいらしい顔だったのでなー。ちょっとからかっただけだ、ゆるせ」

 

 子ども扱いのように、遮那の頭をポンポンと叩き、紅の王が笑う。

 紅の王の深紅の眼光を放つ瞳が、遮那を射抜くように見つめてくる。

 

「おぬしがここに来た理由はわかっておる。天狼の主がオレを必要とするならば、オレは素直に力を貸してやろう」

「意外と早い展開だなオイ…」

「あたりまえだ。なんせっ、おまえが無明神風流に無い新たな技を編み出したときから、オレはとっくの昔におぬしを主として認めていたんだぞ?」

「あぁ、あのときか…」

 

 アリカがさらわれた時、天狼がいつもと違った感じがしたことを、遮那は覚えていた。

 おそらく、『飛燕』の誕生が天狼――紅の王が始めて遮那との返事だったのだろうと、遮那は理解する。

 

「もっとも、前の主の力を真似ただけの上面だけの奴だったら即刻天狼で支配して、廃人にしてやろうと考えていたが、貴様の生き様の見て気が変わったけど…」

「今さらっと、怖いこといわなかったっか?」

「気のせいだ」

(こいつ、あぶないアホの同属だ)

 

 警戒するのが馬鹿らしくなり、睨みから呆れた眼を眼前の紅の王に向ける遮那。

 一刀といいナギといいキョウスケたちといい、どうして、こう強いやつほど変に個性的なのか、改めて疑問を浮かべる。

 遮那に馬鹿にされてることに、紅の王が気づいてるはずだが、本人は王者の微笑で言う。

 

「フッ、なによりも、オレが興味をもったのが、おぬしが壬生一族の血を超えるほどの魂をもった者だと確信したときだ。実に興味深い」

「壬生一族の血…?」

「原作知識というものを知らないおぬしに説明する必要があるが、面倒だからパスにするぞ」

「ウオイッ!!」

 

 メタかよ!? と、遮那がツッコミを入れようとすると、紅の王が遮那の胸元を人差し指の爪で当てた。

 紅の王はさきほどのボケとちがって真剣な表情。その顔に遮那は一旦黙ると、紅の王が口を開く。

 

「おぬし、満足していないだろう。どれほど戦おうが、ここが満たされない。そうでなかろう?」

「………」

「そればかりか、目先のものを最優先にして、後のことを考えない無鉄砲さ。前の主に比べて、猛進な思考回路っだなおぬし…だが、それでいい」

 

 

 この世の欲を満たしても、けっして己の中は真に満たされない。

 

 それが、人が人として大切なことであり、人として必要なこと。

 

 たかがちっぽけな満足でも、それは十分、価値がある。

 

 おぬしが、それをすこしばかり自覚しておれば、力はその魂に答えてくれるはずだ

 

 

 紅い王は微笑みながら遮那にそう告げた。

 

「それ、どういうことd――」

「えい♪」

 

 紅の王がいつのまにか垂れ下がっていた紐を引っ張ると、遮那の足元がパカッと穴が開き…

 

「ちょっ、のっわぁぁああああ!!」

 

 突然だったため、無抵抗で遮那は穴に落ちた。

 

「そのことを知りたかったら、この先の戦いに勝ってみろっ。そうすれば、貴様も大切ななにかを気づくはずだ。それと、目覚めたら天狼が勝手に力を貸してくれるから、後はがんばれよ~」

「ボサボサ赤毛ェエエエエエエエエあとでおぼとけよォォオオオオオオ!!!」

 

 落下しながら頭上で手を振る紅の王に叫びながら、遮那は暗闇の穴へと引き込まれていった。

 

「…かつて、すべてを手にし、神だと傲慢しても、我が壬生一族は力を…鬼神の力をもとめてしまった。ゆえに力に…欲によって一族は滅んでしまった。だが、おまえは壬生一族でないのにもかかわらず、我らの力をなんの影響がないどろこか、鬼神の力をフルにつかった。それも、一瞬だけ対極の紅十字架の背負いし紅の王の力を…。そればかりか、壬生一族の新たな可能性をオレにすこしだけてみせてくれた。…そのせいで、オレは知りたくなったわ。壬生一族の新たな可能性を…。ふっふふ…もしも、こんなことをあいつが知ったら笑われるだろうなぁ、きっと」

 

 紅の王はかつての最後の子孫を思い浮かべ、自分自身にあざ笑う。

 

「にしても、ボサボサ赤毛はひどい言い方だなー。初代紅の王のオレでも傷ついたぞ…床屋にいってイメチェンでもしようかな?」

 

 最後の最後で天然ボケであった。

 

 

 

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 一方、現実世界では…

 

「キョウスケ…私はまだ戦います…たとえ、刺し違えても…」

「馬鹿言うな!?生きて婚約者と結婚するんだろ!」

 

 眠っている遮那を守る中、信長の剣技と白龍帝の能力に押されていた。

 また、ただの強者である詠春は四人の中で重症を負っていた。

 

「ふんっ、甘いの貴様ら…そんな足手まといなど捨てればいいものを」

「詠春は足手まといなんかではない! 俺たちの大事な仲間だ!!」

「キョウスケ…」

 

 青く光る翼を広げて見下ろす信長に、キョウスケが叫ぶ

 仲間思いなキョウスケに詠春が微笑むが、

 

「なぜなら、詠春は紅い翼の重要なツッコミ要員!! ツッコミがなくなったら紅い翼のボケ、誰がツッコムんだ!」

「えぇええええええええ、私の価値ってツッコミだけなんですかーッ!?!?」

「あたりまえだろう? カオス化した紅い翼を整えるにはツッコミ要員はかかせねって」

「ただでさえ、少ないツッコミ役であるリーファが徐々にボケ側に回ったんだ。もはや、詠春(ツッコミ)しかいないんだ!?くっ!?」

「私の剣の腕はどこへいったんですかーッ!? つうか、詠春と呼んでツッコミとよびませんでしたか剣呉さん!?」

 

 あわれツッコミ――じゃない詠春。

 君の価値はそのツッコミだけだ。

 

「…なにいっておるのかわからぬが、とっとと地獄に落ちろ! 天魔・死霊乱魔!!」

 

 信長が刀を大振りに振ると、巨大な悪霊と死神が襲い掛かる。

 剣呉が防ごうとしたそのとき!?

 

「朱雀!!」

 

 大気そのものと思わせる巨大で荒々しい火の鳥“朱雀”が悪霊と死神をその翼で、嘴、爪で粉砕する。

 

「なにっ!?」

「俺をわすれなん、魔王さんよぉ」

 

 キョウスケたちが後ろを見ると、先ほどまで眠っていた遮那が天狼を振り下ろしていた。

 

「天狼と会話したんだな遮那!」

「転々拍子でな。ここからが、ラストスパートだ!一気に行くぞテメェら!」

「ほざけ!たとえ、今や創造主とよばれる者の駒にされようが俺が第六天魔王…織田上総介信長である限り、我が魂は服従せん!いずれ、創造主という愚者共を倒し、世界を我が物、天下布武を再び轟き広めるまで、俺は勝ち上り続ける!」

「敵とはいえ、命を恩人なのに恩知らずなことを考えるとは…!?」

「さすがの黒幕もあの信長を飼いならせないということか…」

「魔王信長、欲深い野郎だぜ」

「なら、俺が目指すのはただひとつ…テメェをぶったぎって、その己の魂を賭けるほどの何かを見つけてやることだ!」

「ならば、剣で語ろうぞ!! アルビオン! この第六天魔王に力を貸せ!!」

『よかろう』

 

 信長の身体が白い鎧――禁手“白龍帝の鎧”に包まれた。

 

「白龍帝の鎧!この姿を出した以上、貴様たち生きては帰さん!!」

「やばい!? これ以上弱体化されれば手の打ちようがない…!?」

「……フム、ならば場所を変えようか…」

 

 一息をつくと、剣呉が唱える。

 

 

 

I am the bone of my sword. ――― 体は剣で出来ている

 

Steel is my body, and fire is my blood. 血潮は鉄で、心は硝子

 

I have created over a thousand blades. 幾たびの戦場を越えて不敗

 

Unknown to Death. ただの一度も敗走はなく

 

Nor known to Life. ただの一度も理解されない

 

Have withstood pain to create many weapons. 彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う

 

Yet, those hands will never hold anything. 故に、その生涯に意味はなく

 

So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS. その体は、きっと剣で出来ていた

 

 

 瞬間、世界が変わる。

 紅い荒野の地に墓のように突き刺さす無数の剣。

 灰色の雲が覆われる夕日と天に回る無数の巨大な車輪。

 その狭間――無限の“剣製”に信長とアルビオンが驚く。

 

「な、なんだこれは!結界か!?」

「ただの結界と侮るなよ信長。ここが貴様の墓場だッ!」

「フンッ、こんな世界など、破壊してくれよぉ! 天魔却火漿!!」

 

 全身から触れたものの生気を吸い取る邪気を広範囲に放出。さらに白龍帝の鎧のハーフディメンションで結界の維持と強度を半分にする。、壊しようとする。

 が、いくらやっても固有結界に僅かな支障がみられなかった。

 

「壊れないだと!?」

『ありえん!?すべてを半減してるのに!?』

「本来ならば、先ほどの攻撃でこの世界が壊れてしまうかもしれなかったが、今の無限の剣製は鉄壁。保険としてこいつで補強もしているおかげで、その程度の攻撃など効かん!」

 

 よく見れば周囲に霧らしきものが散布していた。

 さらに、剣呉の周囲にアルビオンにとって見覚えのある槍や剣などが宙に佇んでいた。

 

『これは絶霧(ディメンション・ロスト)だと!? しかも、我らの世界の神滅器まで!?』

「前までの俺では、無限の剣製で神の領域である神造兵器や神器の複製は出来なかったが、仲間たち共に死ぬ物狂いの修行のおかげで俺は神器、神滅器を量産することに成功した!」

 

 本来の無限の剣製では、神クラスの武具の複製は不能だが、剣呉のもう一人の特典『能力限界突破』の恩恵により、無限の剣製は変貌し――“超次元の幻想(インフィニット・ファンタジアワークス)”へと進化したのだ!!

 

「俺の新たな力、みせてやる!」

 

 忠犬のように命令を待っていた絶対の武具類が白龍帝に牙を向く!!

 

 聖剣が、聖槍が、聖なる武具たちが“白”を貫こうと一直線に飛ぶ!!

 

 魔剣が、魔槍が、魔と呪いの凶器が“白”の命を狩ろうと魔力を放出する!!

 

 宝具、神器、名刀、あらゆる次元の武具たちが圧倒的数で、命が宿ったように信長を囲み殺そうとする。

 

「チッ!?」

 

 信長は高速で飛行しながら紙一重で回避する。

 さすがにこれだけの無数の武具や神器では、一度に半減で防ぐことはできない。

 そのとき、信長の眼前に剣呉が跳んで来る。

 

「右手には星に鍛えられし聖なる剣を!左手には地上最強の王の剣を!」

 

 右手に勝利を約束した剣“エクスかリバー”(Fate)、左手には聖王剣“コールブランド”を作り上げて握り締める。         

 信長はフルにさせて防御するも、二本の刀身に聖なる光が放出し、剣呉は刃を×にクロスさせ、一気に振り切った。

 

「超聖X斬り!!」

 

 ズッバンッ!!!

 

「ぐっは!?」

 

 光の激流と思わせる光の斬撃。

白龍帝の鎧が粉々に砕け、信長はばってんに斬られ、血におぼれた様に身体と口から血が大量に噴出す!!

 

「俺も忘れるなッ!!ドライグ!」

『“覇龍”開放!!』

 

 追撃とばかりに、マサトが跳ぶ。

 紅い光に包まれ、その身を竜人と思わせる翼を広げた赤い龍へと変貌した。

 

『やつも覇龍をも使いこなすか…!?』

「グッォォォォならば、我らも覇龍を使うだけ!!アルビオン!!」

『ウム!!』

 

 信長は気力と命を振り絞り、白い竜人へと変身。

 空中で赤と白の竜人がぶつかりあう。

 白いほうは重症のはずだが、赤と互角に迎撃し、せめぎ合う。

 

『覇龍を使えるのは驚いたが、同じ覇龍では我と貴様は互角…あとは所有者の実力次第ところか…』

『俺と互角だと?フンッ、それはどうかな白いの?』

『なんだと?』

『みせてやれ相棒! おまえと俺の新たな力を!』

「うっぉおおおおおおおお!!筋肉が熱くなるぜぇええええええええ!!」

 

 赤い竜人がさらに赤く光り出し、太陽と思わせる明るく猛々しい紅蓮の炎に包まれた。

 すると、紅蓮の炎から紅蓮に輝く巨大な四肢が飛び出す!?

 さらに、炎は収縮していき深緑の宝玉と紅蓮の装甲に包まれた龍の頭を模った胴体と、紅蓮の頭部を見せる。

 そして、背には紅蓮の機械の翼が出現する。

 

 それは紅蓮の鋼に包まれた巨人…いや、紅蓮の機械の竜神であった!!

 

『覇龍ではない!? その形態はいったいなんだ!?』

『神器とは人の心で変わるもの…。これこそ、俺と俺の相棒、マサト・アルマーだけが成し遂げた覇龍の進化系…その名も『覇龍帝(ジャガーノート・ドライブ・カイザー)』だ!』

 

 マサトの新たな力。覇者や覇王すら越える…絶対の龍の帝王。

 

――覇龍帝(ジャガーノート・ドライブ・カイザー)が光臨した!!!

 

「いくぜェェェェ!!オラオラオラオラオラオラオラオラ オラオラオラオラ!!!」

 

 機関銃のように放たれる紅蓮の拳。龍の形をした覇王はその暴力に防ぐことができず、無防備に打たれる続ける。

 

「ヌッオォォォォ!?!?」

「活目しろ! 俺の筋肉よ!!!!」

 

 胸と両肩にある三つの深緑の宝玉が光ると、右腕の宝玉が輝きだす!!

 右肘から金色の角が飛び出し、紅蓮の炎が噴出!! 

 さらに手首から金色に煌く業火が拳を包む!!

 

「紅蓮金剛破弾(ぐれんこんごうはだん)!!!」

 

 ドッゴン!!!!

 

 燃えが拳が白き竜人の腹に深く減り込んだ!!

 

「ぐっほぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

『覇龍を打ち破っただと!?』

 

 重く鋭い一撃にくの字に曲がる信長。その威力に強制的に覇龍が解かれて、地上へ落ちた。

 

「まだまだいくぞぉぉぉぉぉ!うぉおおおおお萌えろ!俺の魂ィイイイイイイイイ!!」

 

 キョウスケが腕を掲げて「カモンベイべー!!」と叫ぶと、彼を中心に無数の人影が出来上がる。

 すると、何百人もの武装した少女たち(シャナとか棗鈴とかルイズとかエトセトラエトセトラ…)が出現した。

 

「そ、そいつらはいったい!?」

「ふっははははは!これぞ、我が最強の軍団!その名も『キョウスケ軍団』だ!」

「名前そのまんまッ!?」

「いっけぇーッ!我がハーレよ!フルボコ祭りだーッ!」

 

 キョウスケが作り上げた俺の嫁たちが一斉に信長をリンチする。

 

「「『ぎゃっぁあああああああ!?』」」

「圧倒的な数の暴力だぁああ!?!?」

 

 リンチされる信長とアルビオンに詠春は同情は…しない!!

 

 と、思ったら詠春が目を凝らしているとリンチされている所を見れば……

 

「おのれキョウスケェェェェェェェエエエエエエエエエエ!!!」

「って、マサトさんまで巻きこまれているぅぅぅうううううう!?」

 

 なぜかマサトまで美少女たちに痛めつけられていた。主に棗鈴に「死ね死ね!!」と足蹴りされて。

 

「あと、いい忘れたが、私とキョウスケとマサトは実は生前の友達だったんだ!」

「マジで!? つうか、こんなときにカミングアウトするんですか剣呉さん!?」

 

 剣呉までボケしまう始末に、詠春はさらにツッコミを炸裂するのであった。

 

 

 数分後、美少女たちに一方的にリンチされた信長は、ズタボロになって横たわっていた。

 青く輝いていた白龍帝の光翼は灰色と色を失せて、折れていた。

 アルビンオンは…返事がない。屍のようだ。

 

『勝手に殺すな!!』

 

 あ、生きてた。

 

「こ、この俺が…第六天魔王がこんなわけのわからん攻撃に…!?」

「わーい、リアル妹(鈴)だ~♪」

「きもちわりーわ!!」

「ぐっほ!?」

「キョウスケぇぇえええ!?」

 

 ハジケまくるキョウスケは棗鈴に蹴り飛ばされてしまった。

 

「グゥッ、こうなれば、いったん上空で回復を…」

 

 その隙に距離を取ろうとする信長だが体を浮かすことができない。

 まるで、地面に体を縫いつけられているようであった。

 信長は目を動かして自身の体を見ると、自身の影に数本の針が刺さっていた。

 

「こいつは…影封じ!? いったいだれが…」

 

 周囲を見渡すと、詠春がめがねをクイッと掛け直した。

 

「もしものためにと思って、鈴さんに忍術を習ってよかったです」

 

 そう、詠春が打ったのだ。

 京都を守護する京都神鳴流が無力されている信長を何も手を打たないわけがない。

 信長が横たわっているうちに、針を影に打ち信長の動き封じた。

 

「めがねぇめぇぇ~!!」

「三下と呼ばわりした奴にしてやられたな魔王様。…これが、紅い翼を舐めた末路だ」

「おのれェェェェェェ!!!!」

 

 遮那に嘲笑えられ、信長のプライドはドリルでゴリゴリと強引に削られ、とうとう憤怒する。

 憤怒と気力と憎悪を糧に強引に立ち上がり、影に刺さっていた針がはずれ飛ぶ。

 

 だが、そんな努力も無慈悲な一撃は放たれる。

 

「無明神風流最終奥義『黄龍』!!」

 

 遮那が天狼を振り下ろすと、天から一匹の黄金の龍が下り落ちる。

 神風の黄金の龍は荒々しく蠢きながら、信長に落ちた。

 

「がぁああああああああああ!?!?」

 

 それは黄金の柱。

 黄金の風に包まれた信長は雄叫びに近い悲鳴を上げる。

 

 そして、黄金の風が止むとそこにはさらに瀕死になった信長が呆然と立ち尽くしていた。

 

「ぐっぅぅ…人間…五十年…っか。しかし…俺は決して終わらん…!!今度は会うときは新たな力を手にし、絶対に貴様らにリベンジをはたして――」

「わりぃが、テメェに未来はない」

 

 そう、まだ終わらない。

 遮那は天狼の剣先を地面につける。彼の背後から禍々しオーラを放ち、底が見えない奈落の闇が見えた。

 

「な、なんだその威圧は…!?貴様、何を―!?」

 

 先ほどまでの覇気が嘘のように恐れる信長。

 彼は理解した。その闇がどういうものか。

 

 

 

 

 底なしの奈落から、こちらに向けて手を伸ばす女性がいた。

 

 

 両手を伸ばし、自身を抱きしめようと両手を伸ばし続ける。

 

 

 その女性の瞳は母性を感じさせる暖かな視線を放っている。

 

 

 なのに、感じるのは寒気だった。

 

 

 寒気ではない、“死”という恐怖の寒さだ。

 

 

 また、伸ばしてる両手は土などで汚れた骨であった。

 

 

 

 彼女がまとっている衣はボロボロで、下半身は蛇――もしくは蛭だった。

 そして、女性の顔はまるで死体のように青白く、口元を上げてニヤけていた。

 

 

 信長はわかっていた。

 

 生者を刈り取る死神も、悪霊も決して敵わぬ相手だと。

 不死の身になったとしても“アレ”はすべての生に死を与える原種の神だということを。

 

「こいつは俺のだけの無明神風流…俺だけの技。真の邪神であり冥府の女神に抱かれる覚悟は出来たか第六天魔王信長?白龍帝アルビオン?」

 

 信長の中でアルビオンが「アレは駄目だ!?逃げろ!?」と叫ぶ。

 

 

 だが、信長は笑っていた。恐怖で笑ってのではない。

 

 その神を…遮那という最強を目の前にして“おもしろ”と感じたからだ。

 

 たとえ、天下を取れなくても、

 

 たとえ、最強の頂に上れなくとも、

 

 この一瞬だけを逃げるわけにはいかない。

 

 なぜなら――

 

「ヴッオオオオオオオオオオオオオオ黒曜院遮那ァァァァァアアアアアアアア!!!!!」

 

 すべての力を振り絞り、眼前の敵(遮那)と敵(神)と最後まで戦いたい。

 武人としての礼儀だ。

 

 刹那、信長は覇龍を発動。

 竜人と化し、愛刀の左文字を握り締め、遮那に向かって一直線に特攻する。

 

 遮那は口元を上げて、最後に死力を尽くす信長の“ため”刀を天へと上げた。

 

「無明神風流超奥義…――」

 

 そして、振った。

 

「“イザナミ”!!」

 

 刹那、イザナミの顔を見た瞬間…信長は何も感じなくなっていた。

 

 痛みも、温度も、何も感じない。

 

 何も見えない、何も聞こえない。何も匂わない。まるで

 すべての感覚が遮断されたように。

 

 終わりだと信長は気づいた。

 脳内で走馬灯が浮かんでくる。これが死んだだと悟る

 

 けれど、彼は後悔などない。

 

 

 なぜなら――死を恐れず笑っているからだ。

 

 誰もが恐れる死。不死になろうが死という終わりは怖いもの。

 しかし、死をあえて受け入れ、立ち向かった。

 武人として、天下の魔王として、誉れであった。

 

 信長はイザナミ(死の風)にやさしく抱き締められたまま、考えるのやめ、瞼を閉じて眠りにつく。

 

 死という心地のよい風に抱かれた信長はイザナミと共に奈落の闇へと消えていった。

 

 

「どうだ?八百万神すら屍にする冥府の母神の抱擁は?」

 

 遮那はそう呟き、天狼を鞘に収めた。

 

 

 こうして、激闘の勝負末、勝者は遮那たちに決まった。

 

 

 

 

 

つづく

 


 
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