No.823423

真・恋姫無双~項羽伝~三国編

あかさん

明けましておめでとうございます

年末に上げると言って、結局年始になってすみません

2016-01-06 21:03:58 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3615   閲覧ユーザー数:3128

第五章9話 長坂橋 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉覇つまり五家の一つである司馬家の一人、司馬 孚がまとめたとされる一つの書物『項羽伝』

 

この書物は後に多くの者達から読まれる物となっていく

 

この書を呼んだ人々の多くが必ずと言っていいほど名の上がる戦いがあった

 

数ある戦いの中でその戦いは少し特殊な背景がある事もあり、そしてその戦いは楚が敗北したともとれる結果ある所以だからだ

 

その戦いとは合肥であり長坂であった

 

合肥では張遼が殿となり退却する楚軍を正に死に物狂いで退却に成功させ、敵に大打撃をも与えた。そして、張遼が孫権へ伝えた言葉が印象的だったからである

 

将の心得、将が決断すべき大局とその責務

 

まだ自分に自信が持てなく、殻を破れなかった孫権を、殻を破らせたその言葉が―――

 

そうして、もう一つが長坂である

 

長坂の戦いとも言われるこの戦いは、同時期に長安で起きている事件と関係している戦、事件と考えられ、後の大きな戦『(第二次)楚漢戦争』切っ掛けになったとも言われている

 

そこでは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

成都

 

 

バン!!

 

張飛「お姉ちゃん如何したのだ~~~?鈴々は呼んでも政務の手伝いは出来ないぞ~~~」

 

張飛はそう言いながら扉を勢いよく開いて入ってきたのだが、部屋内部の空気が何時ものほほんとしている劉備の物とは思えない重い状態なのに気づいて

 

張飛「!・・・・どうかしたのかお姉ちゃん?」

 

劉備「・・・鈴々ちゃん、急いで今から荊州に向かってもらえる?」

 

張飛「??」

 

張飛は何が起きてその様な命令が下されたのか解らず近くを見渡してみると

 

張飛「その帽子は・・・どこかで見た事あるのだ」

 

劉備「うん、鈴々ちゃんも知っている人の物だったんだよ」

 

張飛「鈴々が?・・・・・えっと!!!もしかして雛里のか?」

 

劉備「うん。雛里ちゃんがいつもかぶっていた物だったんだよ」

 

張飛「一体どういうことなのだ!?雛里に何があったのだ?」

 

劉備「またあの人のせいなんだよ。あの人が居る限り絶対みんなが幸せに、笑顔になる事は無い・・・・・」

 

張飛「??お姉ちゃん・・・・お姉ちゃんは如何してあのお兄ちゃんの事をそんなに恨んでいるのだ?鈴々は分からないのだ・・・・・お姉ちゃんは鈴々と同じでまだ二回しかあのお兄ちゃんと会ってないはずだし、少ししかお話してないはずなのだ。愛紗の事はよくわからないけど・・きっと何か訳があるはずなのだ」

 

張飛はついに今まで疑問に思っていたこと、まだ此処に南蛮に行った紫苑や脱走した桔梗がいた時に相談していた疑問を打ち明けたのだが

 

劉備「そんなのある訳ないよ!!あの人は・・・あの人は!!!「桃香様、鈴々殿はこちらですか?兵の準備ができました」・・・・鈴々ちゃん、この御話はまた今度話そう?今は雛里ちゃんを殺した人を追いかけて。そして・・・」

 

張飛「・・・・・分かったのだ。それで、何を追いかければいいのだ?」

 

張飛は話の途中に部屋へ入ってきた陳登に不機嫌そうに質問すると

 

陳登「はい、追跡する者は楚王の娘一人にそれに付き従う虎と狼です。どちらかと言うと、この虎と狼の目撃情報を集めていった方が確実に追跡、包囲出来ると思われます」

 

張飛「分かったのだ。お姉ちゃん、この話は帰ってきたらしっかり話してもらうのだ」

 

そう言い残して張飛は部屋から出ていった

 

陳登「では桃香様、私も・・・・後、母も従軍することになりました」

 

劉備「うん分かったよ。百合ちゃんに伝えておくね」

 

劉備の返事を聞くか聞かないかと同時に部屋へ出た陳登に

 

陳珪「どうだったかしら?」

 

陳登「母さん・・・何も変わらないわ」

 

陳珪「そう・・・・やっぱり周りを信じている王様ね~~」クスクス

 

陳珪はクスクスと壁向こうに居るだろう劉備に向かって笑った

 

陳登「言い換えたら周りを見ていないとも言える」

 

陳登は笑う母を置いてそう答えながら歩みを進めていくと

 

陳珪「フフ、ええそうね。それで、喜雨ちゃんはこれからどうするか決めたかしら?」

 

陳桂も追いかけてこう聞いてきた

 

陳登「いつも通り母さんに合わせる」

 

陳珪「そう・・・・なら、これからの作戦で楚の状態を見て決めましょう。まぁ、ほとんど決まっていると言っていいでしょうけど」

 

陳登「見限る機会を見定めるだけでしょ?」

 

陳珪「フフ、口は禍の元よ。何処で誰が聞いているかわからないのだから、下手に話しちゃ駄目よ」

 

陳登「ふん、それで次は何処?」

 

陳珪「さぁ?・・・・ただ、どっちにしろこの大陸には居られないでしょうね・・・・・そうね、せっかくだし喜雨ちゃんが集めた知識を一から自分で活かせる場所が良いわね」

 

陳登「そんな所があるの?」

 

陳珪「勿論。世界は広いのよ?そうね、確か隣の・・・・まだ発展してないと聞くから調度いいかもね♪」

 

陳桂は笑いながらまだ先の事を考えに更けていった

 

 

 

 

 

 

 

荊州

 

 

 

 

水鏡塾跡地

 

 

其処には顔を隠す様に布をかぶった三人が居た

 

葵「音色、本当に此処で合っているのか?」

 

炎蓮「ああ、葵の言う通りだ。此処に到着してから数日がたった。しかし、お前の言う者は一向に来る気配が無いぞ」

 

音色「場所は合っているわ」

 

葵「なら、何故そいつは来ない?」

 

音色「分からないわ・・・・・裏切るような人には見えなかったのだけれど」

 

炎蓮「それなら、此処に来る途中かそれ以前に何かあったと考えたほうが良いな」

 

痺れを切らし始めた二人が今後の動きを考え始めていると

 

雅「戻ったぞ」

 

雅と香風は待っている間にいくつかの人里へ行き辺りの探索、情報収集を行っていてそれから戻ってきたのだった

 

葵「おお、待っていたわ。何か情報はあった?」

 

香風「あっちで村が一つ襲われたらしい」

 

香風は指を西に向けて主語が無い説明をした

 

葵「??」

 

炎蓮「すまないが、もう少し詳しく頼む」

 

雅「すまない。香風がどうしても自分で報告したいと言うからな。それで、補足なのだが香風が言った通り少し離れているが、西で一つの村が獣に襲われたらしい。その獣を討伐するために何故か成都の軍直々に動いているらしい」

 

雅は香風の頭をワシワシと雑に撫でながらそう説明した

 

音色「獣討伐ですか・・・・・・」

 

葵「獣ねぇ~~。それにそれを討伐するために本国の兵が動くのはおかしいね」

 

炎蓮「ああ。それにその獣と言うのが気になる」

 

香風「それと、音色が言っていた人行方不明・・らしい」

 

音色「行方不明?」

 

雅「正確には村ごとに定期的にその者から薬を買っていた者達がこの二月現れていないと言っていた」

 

音色「最後にも目撃した場所とかはわかるかしら?」

 

雅「はっきりと分からないが、西に向かっていたらしい」

 

音色「西・・・・ですか」

 

炎蓮「それで音色。これからどうするのだ?俺は獣と言うのが気になる・・・・もしかしたらあいつ等の事かもしれん」

 

音色「ですね・・・・・華雄?その獣の討伐をしている軍の動きはどうなっているの?」

 

雅「それはだな「かーゆ、シャンが言う」ん?そうか。なら頼む」

 

香風が説明しようとした雅の袖をチョイチョイと引いて見上げてそう言った

 

香風「多分、軍は取り囲むよう・・・・ううん、包囲?逃げられないようにして追い立ててる」

 

音色「包囲ですか・・・・・・なら・・・」

 

音色は何かを考え始めた事で無言の時間が流れ始めたのだが

 

今まで焦れていた二人にはこの沈黙が耐え切れず

 

葵「それでどうするのだ?」

 

炎蓮「俺の勘だとその獣と言うのが臭い。姫達と供にしているはずのタマかポチの気がするぞ」

 

音色「ええ、私もその様に思えます」

 

二人「「なら!!」」

 

音色「しかし、無闇やたらに囲みに突っ込んでいっても退路が無くなる可能性が高いそれも考えて・・・・・それに囲まれていると言ってもあの子たちが何処にいるか・・・」

 

雅「囲いになっているなら大体円と同じ形になっているはずだ。なら、ある程度の弧の長さを計って中心を出せばその付近に姫様たちは居るのではないか?」

 

音色「しかし、それはその包囲がある程度小さくならないと難しいです。それにそれを意味するのはギリギリまであの子達を危険にさらすと言う事です」

 

雅「しかし、それ以外手は考えられない」

 

音色「・・・・・・」ギュッ

 

音色は他に策が無いかと考えるが何も浮かばず悔しさからか拳を握りしめたのだった

 

葵「・・・・策が決まったなら動こう。今は時が惜しい」

 

そう言って五人は動き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある森の中

 

徐庶「ハァハァ・・・・ハァハァ・・・・フー・・・成刀さん、大丈夫ですか?」

 

成刀「うん。私は大丈夫だけど・・・」

 

成刀は自分の下、自分を乗せて走ってくれているタマに視線を送るが

 

タマ「グルル・・」

 

タマは問題ないと言いたいような唸り声を上げた

 

しかし、そのタマの姿は疲労困憊で今にも倒れそうな状態に近かった

 

徐庶「いえ、今日はこの辺りで休みましょう。そろそろ夜も明けますから・・・」

 

徐庶は朝日がまぶしいのか手で光を遮りながら、東の空を見つめた

 

成刀「タマ、休憩だって。今はゆっくり休んで」ナデナデ

 

成刀はタマから降りて頭を撫でて優しくそう言った

 

タマ「・・・・・」

 

しかしタマは一向に休もうと言う姿勢は見せず、見張りに行くというそぶりを見せたが

 

成刀「きっと・・・・・・・ポチもここに居たら、少しは休んでいるはずだよ・・・・いざと言う時のためとか思いながら・・・」

 

成刀は悲しそうな声で、自分の身を包んでいる毛皮を優しく撫でながらそう言った

 

徐庶「・・・・成刀さんは、その子と休んでください。私が見張りをしていますから」

 

成刀「でも・・・」

 

徐庶「大丈夫ですから。今は少しでも休んでください。ただ・・・・今は冬ですから、この毛皮があっても体が冷えてしまうのが心配ですね。火が焚けたらよかったのですが・・・・・追っ手に見つかってしまう可能性が有りますから・・・」

 

徐庶は怪我が回復してからこれまでの起きた事の精神的疲労、そして病み上がりの体を心配しての言葉だった

 

成刀「・・・ありがとうございます。少しだけ休ませてもらいます。タマ一緒に寝よ」

 

成刀はタマを引き寄せてタマの毛に顔をうずくめて、すぐに寝息を立て始めた

 

徐庶「あなたも寝ておきなさい。あなたも疲れているはずだから」

 

徐庶は優しくタマの顎を撫でてそう言い聞かせた

 

徐庶「あなたは特に心が疲れているはずだから・・・・・・」

 

タマ「・・・・・グルルル」

 

タマもナデ声を上げ緊張の糸が解けたのか、瞼を閉じて少しの眠りについた

 

徐庶「・・・さて、少しでも休めるようにしてあげないと」

 

徐庶は辺りの警戒へと向かったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマの夢

 

 

 

其処には自分と同じ姿の一匹の虎と何時も一緒にいた狼が居た

 

タマ「ああ・・・・・またこの夢か。すまない、すまない、ポチ」

 

タマは目の前の自分に向かって後悔の念とポチへの謝罪の声を上げたのだった

 

しかし夢は続く

 

それはまだ少ししか経ってない話

 

自分にとって掛け替えの無い友を亡くした話―――――

 

ポチが成刀を乗せ、タマが徐庶を乗せて少しずつだが増える追手から逃げていった

 

その道中では食料をタマとポチが野生の動物を狩って集めていたのだが、時期が冬と言う事もあり捕まえる数は多くなかった

 

そして気温も低く弱っている成刀にはとても危険な状態が続いた

 

それが何を意味するかは獣である二匹でもすぐわかる事であった

 

今は少しでも精が着く食べ物が欲しい。しかしそう簡単に見つかる物でもなかった

 

それに、追ってから逃げるために一所に長く居るわけにもいかない

 

そこで考え着くことは一つだった

 

自分たちの内のどちらかが死に肉に毛皮になるしかない

 

二匹は同じことを考え付いた

 

しかしタマはそれを言うことが出来なかった

 

自分はまだ自分の主に会っていない、守れていない

 

それに友に死ねと言えない

 

タマは歯噛みしていると

 

ポチ「タマ・・・頼みがある」

 

ポチが先に声をかけてしまったのである

 

俺を殺せ

 

俺が死んで嬢が生き残れるなら本望だ、と

 

タマはどうしようもなくその言葉を聞いて涙を流した

 

その言葉は俺が言うべきじゃなかったのか?

 

成刀嬢にとってポチとは掛け替えの無い友、大切な存在

 

自分以上に思っているはずだ

 

分かっているのにタマはそれを否定する言葉が出なかった

 

それが悔しくて余計に涙を流した

 

タマ「ガル・・・ガルル」

 

ポチ「・・・・・・」

 

ポチは何も言わなかった

 

ただ見守りその目は後を、嬢を頼むとそう呟いているように受けとめられた

 

タマはすまない、すまない、すまない、すまない―――――――

 

同じ言葉を続けながら、苦しまない様にポチの首に、微動だにしない友の首へ、何をも砕いてみせると自負する自分の牙を立てた

 

その後、タマは休んでいる徐庶を成刀に見つからない様に連れて来てポチの遺体の解体を頼んだ

 

徐庶は察したように何も言わず丁寧に、丁寧に皮をはぎ、肉を小分けした

 

そして徐庶が成刀へポチの毛皮を見せ、タマは頭を下げ成刀の言葉を待った

 

しかし、成刀は泣き叫ぶこと無くこう言った

 

成刀「ごめんね、ごめんね。私のために・・・・・・それにタマも辛い事させてごめんね」

 

ただそう言って徐庶から毛皮を大事そうに受け取り抱きしめたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッ

 

タマは夢が終わるとの同時に顔を上げた

 

その腹には涙を流しながら寝ている成刀が居た

 

タマ(成刀嬢は何としても守らなければポチに顔向けできない)

 

タマ「・・・・ガルルルル」

 

タマは不穏な空気を、いや、大量の獣が近づいてくるのを感じて唸り声を上げた

 

そして

 

徐庶「急いで起きて!!奴らがもうすぐそこまで来てる。迂闊だったわ!南蛮兵が此処まで身を潜めるのが上手いとは思わなかった」

 

徐庶が駆け込んできて慌ただしくそう告げた

 

タマはすぐに立ち上がり成刀を乗せるとすぐさま駈け出した

 

しかし、そう遠くない茂みからガサガサと音と供に五十人ほどの小柄で何かの毛皮で身を包んだ兵達が押し寄せてきていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音色「見えてきた!!あの橋の先に居るはずよ!!」

 

雅「ああ、アレが噂の南蛮兵か」

 

香風「シャンと同じくらいの大きさ?」

 

葵「私と炎蓮が切り崩す」

 

炎蓮「お前らは先に進め!!此処は死守しておく」

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき??

 

 

何時もより短いですが、やっと書けました

 

遅くなってすみませんm(__)m

 

話も大詰めに近づいていているのですが、アレを書きたいコレも書きたいと考えていたら中々進まなくて・・・・・

 

取りあえず、名前でわかる事になる方も多いと思いますが有名な場面をモチーフにして今話を書いていました

 

出てくる武将とかは殆ど違いますが、王の子供、逸れている、追手、逃亡と条件が揃ったらこの話かなと思い書いています

 

楽しんでもらえると幸いです

 

次回、長坂橋 後編(中編?)もお楽しみください

 

では待て次回

 


 
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