No.820253

恋姫OROCHI(仮) 肆章・壱ノ零 ~再会と邂逅~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、64本目です。

長尾と孫呉の面々の洛陽到着時の一幕です。

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2015-12-23 01:30:57 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5023   閲覧ユーザー数:3966

 

 

 

洛陽城内の中庭に、日中にもかかわらず強い光が発した。

その光は、十と少しに収束する。

光が消えた後には、約十人の人物が現れた。

 

「ふぅ…みんな無事到着、かな?」

 

集団唯一の男性、剣丞が全員の安否を確認する。

 

「え、もう洛陽?なんか思ってたよりも呆気ないわね~」

 

と呑気な声をあげる雪蓮。

 

「でもこれで各地を行き来できたら、すっごく楽だよね~」

 

こちらもまた呑気全開の小蓮。

 

「蓮華さま…もう目を開けられ、息も吸われてよろしいかと…」

「ぷはぁっ!……本当ね?本当ね思春!?」

 

片や、蓮華は未知の体験が恐ろしかったらしく、目も閉じ息も止めていたようだ。

 

「ふ~ん、ここが洛陽ねぇ」

 

物珍しそうに辺りを見回すのは美空。

 

「はぁ~…結構広そうっすね~」

「…護るのが、めんどそう」

 

柘榴と松葉も初めて見る異国の城に興味があるようだ。

 

「面妖じゃのぅ……呉から洛陽まで一体どれほどの距離があるというのじゃ。儂にはついていけんわ…」

「そうですね~…私も理解が追いつきませんよ」

 

信じられないといった風にあきれる祭に、同調する秋子。

秋子も『あちら側』へ足を踏み入れつつあるようだ。

ちなみに、空は目を開けたまま気絶。

愛菜はどんどやと、はしゃいでいる。

 

「うん、全員無事なようだな」

 

改めて剣丞は一つ頷いた。

そこへ、

 

「やぁ、剣丞」

 

時機を見計らったように、一刀が数人の女性を連れて顔を出した。

 

「無事、雪蓮たちを助けてくれたみたいだね」

「伯父さん!それに…」

 

伯父さんは止めてくれって、と言う一刀を押しのけ、剣丞に飛びつく一人の女性。

 

「主様っ!」

「一葉!もう大丈夫なのか!?」

 

剣丞が出立する時には、まだ床に臥せっていた一葉だった。

 

「もう大丈夫も大丈夫じゃ!全く問題ないぞ!」

 

自己申告は非常に不安だが、抱きとめた身体は以前のように冷たくはなく、確かな温もりを感じられた。

 

「もう、お姉様。まだ華佗様から安静に、と言われているでしょう?」

 

そう言いながら現れた双葉は、剣丞に走って飛びついた姉に少し困り顔。

 

「双葉、ありがとう。一葉を支えてくれて」

「私は何もしておりません。華佗様のお力と、お姉様ご自身のお力です」

 

双葉は柔らかく微笑んだ。

 

「これ主様。余が抱きついておるというのに、妹とはいえ他の女と語らうとは何事じゃ」

 

ぷくっと頬を膨らませ、一葉は不満顔。

 

「はいはい、ごめんよ一葉。元気になって、本当によかった……」

 

剣丞は想いを込めて、優しく、強く一葉を抱き締める。

 

「あぁ……本当によかった。またこうして、主様の腕に抱かれる日が来ようとは…」

 

 

剣丞が…駿河が消え、京も切り取られ、死を覚悟して妹達を護り…

そして死の淵から生還したのも、全てはこの時ため。

剣丞の感触を確かめるように、しばしの間、一葉は剣丞と一つになった。

 

 

…………

……

 

 

「…うむ!とりあえず余は満足じゃ!」

 

ガバッと俄かに剣丞から離れる一葉。

 

「今日は後ろがつかえておるのでな。これも正妻の余裕じゃ」

 

不敵な笑みを浮かべると、数歩下がる一葉。

 

「私になど構わず、いつまでも抱き合って頂いてよろしいのですが…」

 

一葉と入れ替わるように剣丞の前に進み出たのは、大柄な女性。

 

「壬月、さん…」

「よくぞ無事だったな、剣丞」

 

躑躅ヶ崎でも同じようなことを言ったか?と不敵に笑う壬月。

 

「壬月さん…っ!」

 

感極まった剣丞は、今度は自分から壬月に抱きつく。

 

「お、おいコラ、剣丞っ」

 

予想外の事態だったのか、柄になく慌てる壬月。

 

「よかった…壬月さんが無事で…本当によかった……」

「剣丞…」

 

そんな剣丞の様子に、硬くなっていた身体を解き、壬月も剣丞の背中に手を回し、

 

「心配をかけたな、剣丞」

 

二人は熱い抱擁を交わす。

 

「余「私のときはあんな風じゃなかったの」に」

 

そんな二人に冷たい視線を送る正妻二人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣丞たちの再会を邪魔しては悪いと、雪蓮たちと話をしていたら、向こうでは剣丞が一葉、壬月さんと次々と抱き合っている。

 

「あらあら、あちらさんはアツアツだこと」

「一刀はしてくれないの?熱いほ・う・よ・う」

 

触発される長女と末女。

 

「シャオはして欲しい?」

「当然でしょ!女の子はいつだって好きな人に抱かれたいものなんだから!」

「私も私もー!」

 

剣丞と壬月さんに触発され、俺を左右から挟みこむように抱きついてくるシャオと雪蓮。

 

「姉様!シャオ!こんなところで、はしたない!!」

 

復活した蓮華が止めに入る。

 

「大丈夫よ、ちゃんと蓮華の分は取っておくから♪」

「な、何を言って…」

「じゃあお姉ちゃんの分はなーし!それでいいよねー?」

「ぐっ…シャオっ!!」

「まぁまぁ、蓮華。二人も、とりあえずその辺は置いておいて…」

 

一応、ホストとして出迎えておいて、初対面の人たちを前に痴話喧嘩は恥ずかしすぎる。

どうにか雪蓮とシャオを剥がすと、新たに洛陽に来た戦国の面々に向き直った。

 

「え~、初めまして。俺は剣丞の、一応伯父ということになる、北郷一刀です。よろしければ、名前をお伺いしても良いですか?」

 

キレイな銀髪をした、大将と思しき少女に話しかける。

メチャクチャ殺気を放っているので近寄りがたかったけど…

 

「……あなたが、剣丞の伯父?嫁が五十人もいるっていう」

「うん……まぁ、そうだね」

 

一体俺をなんと紹介をしてたんだろう、剣丞は?

 

「ふ~ん……」

 

値踏みするように上から下までねめつけられる。

放ってる雰囲気や存在感からして、俺でも知ってる武将なんだろうなぁ~

 

「まぁいいわ。私は長尾美空景虎よ。美空でいいわ。よろしくね」

「長尾、景虎さん?」

 

長尾、っていうと確か上杉謙信の前の苗字だったっけ?

御館の乱の負けた方が長尾景虎って名前だった記憶がある。

確か北条からの養子で、謙信は彼に自分の昔の名前を…

……ってまさか、この娘、上杉謙信か!?

 

「御大将ー、誰っすか、それ?」

「…スケベと、同じ服」

 

驚きの結論に達した時、二人の少女が寄ってきた。

 

「えぇ。『それ』が剣丞の伯父上、北郷一刀さんだそうよ」

「うえっ!?スケベさんの伯父さん、こんなに若いんすか!?」

「……きっと、女の精気でも吸ってる」

 

出っ鼻からカマしてくる二人。

ノリが北郷隊(凪を除く)や張三姉妹のようだ。

だからこういう娘たちも慣れっこなのだ。

 

「北郷一刀です」

「柘榴は、柿崎柘榴景家っす!柘榴って呼んで欲しいっすー」

「甘粕松葉景持。松葉でいい」

 

柿崎に甘粕…

う~ん、この娘たちはちょっと分からないな。

 

「あぁ。柘榴、松葉、よろしく」

「よろしくっすー、スケベ伯父さん!」

「よろしく、伯父スケベ」

「……え?」

 

スケベ伯父、とかって俺のこと?

 

「スケベさんの伯父さんだから、スケベ伯父さんっす!」

 

いや、そんな満面の笑みで言われても…

 

「その…スケベってのは、剣丞のこと?」

「っすー!」

「そのスケベの伯父だから、伯父スケベ。分かりやすい」

「…ははは」

 

剣丞も苦労してるんだなぁ…

……大丈夫、慣れっこ。こんな扱いも、慣れっこ…なんだ、うん。

 

「秋子さんもこっちくるっすよー!!スケベさんの伯父さんに挨拶するっすー!」

「あ~はいはい。柘榴ちゃん、あまり大声で呼ばないでちょうだいな」

 

そうやって小走りに駆けてくる女性。

……デカイ(確信)

紫苑や穏系の軟乳とみた!

俺のおっぱいセンサーが、そう告げていた。

…っと、いけないいけない。

 

「え~と、あなたが剣丞さんの伯父上ですか?私は直江秋子景綱です。秋子とお呼びください」

「どうも、北郷一刀です。よろしくお願いします」

 

ようやくまともな人が現れた…

ん…直江?

 

「もしかして、兼続って方、親類にいらっしゃいませんか?」

「剣丞さんから聞いていたのですか?はい、兼続は私の娘です」

「娘っ!?」

 

そうか…もう娘がいるのか。

大きい甥ができたと思ったら、もう…はとこ?いや、甥の子って何て言うんだろう?が俺にも出来たのか…

 

「そうですね。ついでですし娘も紹介してしまいましょう。空さまのご紹介もまだですか?」

「えぇ。空!愛菜!こっちにいらっしゃい」

「はっ、はーい!おねえさま」

「どーーーん!!」

 

奥の方で棒立ちだった(気絶してた?)少女と、その周りをどやどやと騒ぎまくっていた少女が揃ってこちらにやってくる。

そうか、剣丞にもあんなに大きな子が…

 

「一刀、この娘が私の娘、空よ。空、こちらは剣丞の伯父上である北郷一刀殿よ。ご挨拶なさい」

「は、はい…私の名は長尾空景勝と申します。空とお呼びください、一刀伯父様」

「か…一刀、伯父様……」

 

背筋に電流が走った。

い、いいな、これ。

イケナイ何かに目覚めてしまいそうだ。

…それはさておき、謙信…美空にも娘がいるのか。

あれ?謙信って確か子供がいなくて、景勝って養子じゃなかったっけ?

この娘もそうなんだろうか?

と、まじまじ空を見ていると、

 

「どーーーんっ!!!」

 

足元から大音声が轟いた。

 

「あのスケベの伯父という事は、やはり危険人物に相違ない。どやぁ?」

 

耳をつんざく声の持ち主は、もう一人の女の子。

 

「先ほどから空さまを見つめるその目は、女に飢えた獣そのものだったのです、どやっ!」

 

早口でまくし立てて、決めにドヤ顔をかましてくる。

恐らく、これが兼続なのだろう。

 

「空さまに近付く輩は、この越後きっての義侠人、樋口あぎゃふんっ!」

「こら愛菜!またあなたって娘は!」

 

決め台詞と思しき最中に、秋子さんが拳骨を見舞う。

 

「この方は、剣丞さんの伯父上ですよ。ちゃんとご挨拶なさい」

「うぅ……樋口、愛菜兼続です。愛菜って呼んだって構わないんだからね!どや?」

 

ツ、ツンデレ、だと?

この時代にもツンデレが…

ていうか、そんなことより、

 

「…樋口?」

 

直江じゃないの?

そんな顔をしていたのか、秋子さんが意を汲んで口を開く。

 

「あぁ。愛菜は私の養女でして、正式に家に招いてはいないので、まだ樋口姓なんです」

「…養女?」

 

上杉景勝だけじゃなくて直江兼続も養子だったのかな?

 

「…え?それじゃあ、この娘、剣丞と秋子さんの娘ってわけじゃ……」

「ちっ…違いますーーー!!」

 

一瞬で顔を真っ赤にして絶叫する秋子さん。

 

「私と剣丞さんは、そそ、そんな関係ではありませんし!それに、ここっ、子作りなんて……私はまだしたことありませーーーーーん!!!」

 

「「「………………」」」

 

凍りつく空気。

秋子さんの絶叫は、その場の全てを凍らせた。

 

「……はっ!いやだ、私ったら…あぁ……」

 

ようやく事態に気付く秋子さん。

が、時既に遅し…

 

「さ~って、と。それじゃあ、そろそろ中に入りましょうか」

「そうねー。行きましょ、お姉ちゃん」

「え、えぇ……」

 

真っ先に動き出したのは雪蓮たち。

南国育ちは復帰が早いのだろうか。

ぞろぞろと呉の面々が城内へ入っていく。

と、雪蓮が一人だけ踵を返し、トトトと秋子さんに近寄り、

 

「安心なさい。私も冥琳も、一刀に抱かれるまでは生娘だったから。だからあたなも早く剣丞にもらってもらいなさい」

「えぇっ!!?」

 

驚く秋子さんを尻目に、ご機嫌な鼻歌を奏でながら去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな雪蓮と入れ替わりに、

 

「秋子よ。さすがにあれはどうかと思うぞ?」

 

呆れ顔の一葉がやってくる。

苦笑いの剣丞、困り顔の双葉、無の壬月さんが続く。

 

「あ、あの……秋子さん」

「は、はいっ!!」

 

剣丞に呼ばれた秋子さんは、飛び上がらんばかりに肩をすぼめる。

 

「その…あまり、気になさらないでください。なんだったらその、俺がもらって…なんて、これはちょっと言いすぎかな!?あはは」

「……本当に」

「え?」

「本当に、もらってくれますか?」

 

潤んだ瞳で剣丞を見つめる秋子さん。

お、なんか良い雰囲気?

 

「秋子さん…お、俺っ!」

「はいはいっ!今はこんなことやってる場合じゃないでしょ!!」

「いてててててっ!!」

 

剣丞の耳を思い切り引っ張る美空。

 

「なにすんだよ!」

「ふんっ!知らない!」

 

美空はぷいっと剣丞から顔を背けると、がに股でズカズカと城内へと歩いていく。

 

「あ、ちょっおい、美空!…え~っと」

 

美空と秋子さんたちを窺いながら右往左往する剣丞。

 

「…御大将を追ってあげて下さい、剣丞さん」

 

笑顔でそう言って、剣丞の背中を押してあげる秋子さん。

 

「す、すいません、秋子さん。おい、美空!お前城内がどうなってるか知らないだろ!!」

 

美空の後を追い、剣丞の背中は洛陽城内へと消えていった。

 

「もぉ~う!せっかく秋子さんとスケベさんが良い雰囲気だったっすのにー!!」

「御大将、大人気ない」

「まったくじゃ。正妻なのじゃから、妾の一人や二人増えたところで、どーんと構えて居ればよいのじゃ。災難じゃったのぅ、秋子」

「いえ…御大将が剣丞さんのことを想っておられるのは知っていますし…うぅ……でもやっぱり勿体なかったかも…」

 

よよよと、袖で目元を押さえる秋子さん。

もう少しで嫁入りだったからなぁ…

 

「母上とスケベさんが結婚すると、愛菜の父上があの男に……ど~ん」

 

幼いながらに、複雑な思いの籠もったどーん。

嫌って感じじゃないんだろうけど。

 

「はっ!しかしスケベさんは美空さまの夫…それが愛菜の父上という事は、空さまと愛菜は、し…姉妹ということに!?どーーーーんっ!!!」

 

喜び大爆発のどーん。

うん、分かりやすい子みたいだ。

 

「えっと…そういうことに、なるんでしょうか?」

 

一方、空ちゃんは可愛らしく首を傾げる。

 

「やれやれ、主様も大変じゃの。一刀よ、たまには主様の相談に乗ってやってくれ。お主の方が苦労が深いからのぅ」

「え!?そうなんすか、スケベ伯父さん?」

「ん?いや、どうなんだろう?」

 

自分じゃよく分からない。

 

「何を言うておる。嫁の数は主様の三倍。しかも全員正妻だそうではないか」

「……全員」

「正妻……」

「っすか!?」

 

キレイに驚く越後の三人。

 

「あ、うん。まぁ、俺達はそもそも正妻だ側室だって、そんな風に考えたこともなかったし…」

「しかも、それでスケベさんの三倍って…」

「……絶倫」

「剣丞さんも、いつかそうなるのかしら…」

「う~~む……」

「天下らぶを進めていけば、いずれはそうなろうの」

「とても誇らしいですよね」

 

…………

 

「「「はぁぁ~~~……」」」

 

剣丞の行く末を案じ、洛陽の中庭にはいくつかの溜息がハーモニーを醸した。

 

 

 

 

 


 
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