No.819569

Another Cord:Nines  番外編 = クリスマス篇 =

Blazさん

さてさて。今回は少し早目にクリスマス篇を投稿です。
メインは相棒持ちの私とディアと刃、そしてこなた嬢です。
ま、いつも通りですがね。

2015-12-18 23:28:45 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:620   閲覧ユーザー数:604

「Happy Merry!! 冬と狼とモミの木と」

 

 

 

 

 

クリスマスに近づくある日の事。ディアーリーズは一人団長クライシスに呼び出され、緊迫した顔で下された命令について聞いていた。

 

が。それは僅か数分たらずで崩れ去り、彼の顔は愕然としたものに変化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………モミの木………ですか?」

 

 

「旅団内で行うクリスマスイベント。元はUnknownと朱音がやりたいと言い出したことだが、今ではすっかりと恒例行事化してな。

ディアーリーズ。君にはそのクリスマスで使うツリーの木を取ってきてほしい」

 

「はぁ…ちなみになんで僕なんでしょうか…?」

 

別に不服という訳ではないが、どうしてピンポイントで自分だったのかと思い団長に問う。単なる気まぐれか、それとも何らかの意図あってか。

答えはその後者だった。

 

 

 

「今さっき言ったが、元は彼らが始めた事だ。故に物は全て自前で用意する、というのももある種恒例化となってな。

 

モミの木

 

食材

 

飾りつけ

 

企画

 

毎年各四名が分断して行うというものだ」

 

「僕だけではないと…なるほど」

 

「今回はその順番が君に回って来た、というだけだ。分かったか?」

 

「まぁ…事前に聞かされていなかった事に不服はありますけど…兎も角、モミの木に関しては了解です」

 

欲を言えばほかに誰が抜擢されたのかと気になりはしたが、この場合は野暮な事と思い考えるだけにとどめたディアーリーズは快くそれを了承した。

大方、冬の極地で取ってくればいいが問題はその大きさだろう。などと一人脳裏で計画を立てていたが、直後に団長の言葉にその計画を練っていた頭は停止することとなる。

 

「ああ。それと、モミの木は今回ある場所から取ってきてもらう」

 

「…え?」

 

「すまないな。だがこれはもう決定したことで、無理に変更すれば彼が暴れかねない」

 

(…あ、Unknownさん…)

 

 

※久しぶりに言いますがUnknownことアン姉さんの性別は男です。

 

 

「…ええっと別に構いませんが…場所ってどこなんですか?」

 

「うん。『狭間の世界』に存在する「霊雪(れいせつ)の山脈」。そこにある人物が居てな。その人物からツリーの木を分けてもらえ」

 

「ああ…はい。わかりました………アレ、けどあそこって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 狭間の世界「アヴァロン」 タウンメリア西部・ギルドバー =

 

Blazたちが住む小さな町、タウンメリアの西部にはギルドと呼ばれる組織の者たちが情報を交換したり依頼されたものを請け負うといったものが専門的に集まり、行われる場所がある。

ギルドメンバーの中継地点、ギルド専用と思われるが別段彼らだけのものではなく普通の旅人や傭兵などもここに訪れる。目的は当然依頼を受けて報酬をもらうためだ。

 

 

「…で。霊雪の山脈に行きてぇと」

 

「ええ…まぁ…」

 

カウンターの椅子に隣り合わせに座るディアーリーズとBlaz。二人ともアルコールは飲まないので木の実のドリンクとBlazは燻製肉にかぶりついていた。

ちなみにギルドメンバーにも未成年は居るので問題はないトカ。

 

「………はぁ…団長の命令なら仕方ねぇけどなぁ…あそこ行くのメンドクセーぞ?」

 

「ですよね…特にこの時期って、ギルドや自警団でも入るの不可能だったって気が…」

 

「合ってるぜ。現在絶賛封鎖中だ。アイツらが危ねぇからってな」

 

二重の意味で危険と言われている霊雪の山脈。

そこに行くとなれば行先は分かるBlazだが、彼も正直乗り気ではない。

彼も危険と思えるような場所を何度も通る羽目となってしまうからで、一度は言ったことのあるが二度と行きたくはないと断言できた。

 

「…けど、山脈にモミの木ってあるんですか?」

 

「ねーよ。普通はな」

 

「普通は?」

 

「あそこは死火山が多くってな。昔マグマが爆発したって話でそこら中に上の方から出なかった漏れたマグマの出るどうくつがある。そこに偶然、春だ夏だに木の種とかがやって来てすくすく育ちましたって話」

 

「洞窟内…なるほど。山脈の冷たさで適温を保ってるってワケですか」

 

「さてな。そこまで入り組んだ話は知らねぇ。けど問題は、それを取りに行く時期と期間が問題なんだよなぁ…」

 

 

酸味のある香りのあるドリンクを飲み呟いた直後、バーの扉が開かれ二人の男女が入ってくる。新たにやって来た客に他のギルドの人間や傭兵たちは目を向けるが自分らにとって無害だったり関係のない人間だと分かると直ぐに賑わいを取り戻す。

入って来た二人もそんなことはどうでもよく、中に入ると一直線に二人の座るカウンター席へと歩みを進めた。

 

 

「待たせたな、Blaz」

 

「ん。来たかアナスタシア」

 

すっかり冬の季節だというのに冬用のズボンに変わった以外は上着は半袖中のシャツは辛うじて長袖と寒さを感じないのかと思うような服装であいさつをするアナスタシアにディアーリーズは苦笑する。

どうやらその後ろに居た刃も思っていたらしく、首を横に振って「無駄だぞ」と先に言い表していた。

 

「お、お久しぶりですアナスタシアさん」

 

「ん……ディア。久しぶり」

 

(…また増えたんですね。ディアーリーズさん)

 

少し頬を赤らめて挨拶を返す彼女は、Blazの隣に座りマスターに青りんごのドリンクとパイを注文する。

反応からして「またこうなったか」と呆れた刃はBlazにアイコンタクトで「そうなった」と返されてため息をついた。

最近どうにもディアーリーズはアヴァロンでも人数を増やしたらしく、二人にはそれに該当するだろう人物が複数思い浮かび今後更に増加するだろうという予感も薄々と感じ取っていた。

 

「…でッ。話ってなんだよ」

 

恥ずかしそうな顔で話を切り替えるアナスタシアは若干ディアーリーズから目をそらし更に合わせないようにと目を瞑った。あからさまな事に深くため息を吐くBlazは頭を抱えて沈黙したが、やがて関係のないことだと自分に言い聞かせると彼女を呼び出した要件を簡潔にだが話した。

 

「お前、忘れたとは言わせねーぞ。霊雪の山脈行くって話しただろうが」

 

「あ…」

 

「―――。」

 

どうにも調子が狂うBlazは血が頭に上る痛みに手を置くが、やがてばつの悪い顔ですまん、と手を合わせた。

 

「ったく…」

 

「マジですまん…けど、山脈に行くって…もう一度聞くけど本気か?」

 

「しゃーねーだろ。こちとら上の命令だ。逆らう事なんざできやしねぇ」

 

「…案外従うんだな。アンタも」

 

「うるせぇ。で、行けるのか。行けないのか」

 

苛立った顔で問いただすBlazの問いにアナスタシアは出されたパイに手を付けて考え込む。小さな一切れサイズのパイの先端をかじりつき、中にあるりんごの甘さを口の中に広げるがやがて彼女の口からは甘くないセリフが吐き出された。

 

「―――どっこいどっこい…と言いたかったけど、状況が変わった」

 

「…何?」

 

「どういうことですか?」

 

 

「さてね…ただ、ここ数日になってヴォルフたちの動きが慌ただしくなってな。厳戒態勢っていうのかな…縄張り一帯をせわしく駆け回っていたって報告が相次いでね。人的被害はまだ小さいけど」

 

「…身内になんかあったってのか」

 

「多分そうだと思う。仲間意識も強いし、()も最近調子悪そうだったから」

 

「………。」

 

「Blazさん。多分これって…」

 

「話だけだから断定はしねぇ。けどこれは、どっかの馬鹿が勘違いした結果だろうよ。その内戦艦とかエース様が出てきたら余計面倒だ」

 

綺麗事の大義名分で攻め入られるのはもう御免だ。

そう言いたげなBlazの目は珍しく本気で怒りを見せ、ディアーリーズは俯いて沈黙する。あんな目を見るのは二度目だ。と彼に対する小さな恐怖が再び煮え始めたかのような感覚を胸に、無意識に起こりうるifの出来事を想像していた。

 

「―――――。」

 

「………。」

 

「…嫌に忙しいクリスマス準備になりましたね」

 

「………ッ」

 

刃の言葉に目を向けた二人。瞑ったままではあるがのんびりとコーヒーを飲む彼は小さくつぶやいた。

 

「私も好きですよ。ココは。けど、今はまだ過程の話。そこまでコンはつめない事です」

 

「………。」

 

「今は、クリスマスを楽しむって事を第一にしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま。無事に楽しめるまでたどり着けるかが問題だけどな」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊雪の山脈。

Blazが話した通り今では大半が死火山の山脈で、ほぼ全面が白い雪に覆われているという。

鉱物資源が豊富なことから近くに炭鉱の町などもあるが、時期によってはギルドや自警団などから進入禁止が言い渡されるほど危険地域でもある。

覇獣ルージュヴォルフはこの山脈を縄張りとしており、ココから下山し各地域へと散らばっていく者たちも多い。

また彼らの長と呼ばれる者が山脈の中に隠れ住んでおり、その一帯は血の気が多く好戦的なものや並みのヴォルフよりも高違いの実力を持つ者が守っているとされる。

それも全て山脈が一つの大きな霊脈であるというのが大きな理由らしい。

 

そこにあると言われるモミの木。別に他のところでも良いのではとディアーリーズも最初は考えていたが、なんでも団長曰く山脈のモミの木のほうが大きく、しっかりとしているらしいのでできれば其方を取ってきたほしいということだ。

 

 

 

ちなみに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぁっぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!???!?!?!??!!??!」

 

 

 

冬季の山脈の最高(・・)気温はマイナスを軽く下回っており、零度以上になることは絶対にない。

また観測した中での最低気温はマイナス千度。あのポポでさえも凍結したというほどだ(凍死はなかったようだが)

 

 

 

 

「さ、さぶい!?さぶいいたいいたくてもさぶい!?」

 

「うるせぇ。黙って前見とけ」

 

「こなた大丈夫?」

 

そんな中を顔の一部だけでも曝け出すことはできなかったが、どうにもディアーリーズとこなたの二人はそのタイプを選んだようでこなたは真っ赤に晴れ上がった皮膚にかゆみを通り越して痛さを感じていた。

気温はマイナス十度。アナスタシア曰く「まだ可愛い方」である。

なのでそこらへんを熟知する彼女やBlaz、そして二人からの忠告に従った刃は全面を覆い隠し誰が誰か来ている服でしか分からないぐらいの重装備でそれぞれのヴォルフたちの背に乗っていた。

 

「ッ……こんな事ならもう少し着とけばよかった……」

 

「だから言ったでしょ。自然を舐めちゃいけないって」

 

「それでもここまでの寒さは僕も予想外でしたよ…」

 

「言っただろ。これでもまだ可愛い方だって。ヒデェ時にはマイナス百だぞ」

 

その場合絶対に並みの人間では凍死するので登山は不可能。そのためギルドなどが登山道などを封鎖し場合によっては結界も張ったりする。

今回はそんな時期に頼まれた事であり、一般のギルドや自警団からは絶対に許可はもらえない。そこで唯一ギルド、自警団未所属のアナスタシアが今回登山するルートの案内人として呼ばれたのだ。

 

「こんなところをコイツ達いつも駆け巡ってたんですね…」

 

「一応、彼らも恒温動物だけど、纏ってる毛に魔力を覆わせて体温を保たせているの」

 

「こいつら版のメラってわけか」

 

刃がここに居るのは当然、彼も相棒のヴォルフが居るため。今回は定期診断ということで偶然訪れていたので、いわば次いでに付き合うといった感じで今に至る。

そんな彼の相棒は鮮やかな紫の毛並みがかかわった雄の若者。名は「赤兎(せきと)」と言う。

 

「頼むぞ赤兎」

 

「フウッ…」

 

 

防寒装備を整え山脈に入ってそろそろ一時間。流石に装備の重さからスタミナ切れするかと思っていたがまだまだ余力十分なヴォルフたちに刃やBlazたちはそんな心配は余計なことだと安堵する。

しかしそれとは違い、彼らの少し後ろを付いて行くこなたとブランカは先ほどから肌に当たって寒いと言い続けており本当に寒さから痛さに変わっていると思ったディアーリーズが彼らに止まってくれるように頼んだ。

 

「こなた、大丈夫?」

 

「痛い…つめたい…」

 

「だから全面隠しとけって言っただろうが、この馬鹿が」

 

「うるさい…」

 

「どうします?こなたちゃん本当に冷たそうですけど」

 

「…ちょっと待って。今専用のネックウォーマー渡すから…」

 

ポーチを探り始めたアナスタシアに移動をやめる事になった一行。

しかし流石にヴォルフたちから降りたら絶対に動くことも叶わなくなることからしばらく文字通りその場に足止めを食らい、Blazはその間に天候が変わらないかと空を見上げた。

 

「ごめんなさい。僕がちゃんとしてたら…」

 

「今更何言ってんだよ。そこの馬鹿がついてくって行ったからここに居るんだ。責任はテメェでとるのか当然の事だ」

 

「何気厳しいねBlazは」

 

「そんな事いってねーでお前は探せ。山の天気は変わりやすいって言ったのお前だろ」

 

「はいはい分かってるって…」

 

小さく笑いながら探すアナスタシアに厳しい言い方をするが、なんやかんや言って優しいんだなと他の三人から思われていたBlazはそれに気づかずに周囲を見回す。

 

「…本当に大丈夫こなた?」

 

「……だいじょうぶ…いざとなったら星霊使う…」

 

「なら…」

 

薄々とだがこなたの返事の声が弱くなって来ているのに心配になるディアーリーズ。

極寒の中に一時間近く居るのと肌の一部から寒さが伝わっている所為で体力も余計に消耗しているのだろう。

更に霊脈の集合地点である山脈だが、だからと言って膨大なエネルギーであるだけではない。膨大な霊脈が魔力などを使う者たちに対し異常な負荷などをかけたりもする。

山脈の霊力はそれぞれ山によって微妙に違い、それが混ざり合わずに入り乱れているせいで魔術師や魔導師などに対し回路や生成機関に負荷をかけるのだ。

Blazの友人であるはやても山をしばらく上り、中枢に近づくにつれて気分が悪化し最終的に嘔吐して引き返したという事を経験している。

純粋な魔導師、魔術師であればあるほどこの山脈は彼らに襲い掛かるのだ。

 

「アナスタシア、アイツにアミュレット渡したのか?」

 

「うん。けど、多分その星霊って奴を呼ぶ魔道具があるから余計に負担がかかってるんじゃないのかな。でなけりゃ…っと」

 

「そんな…鍵を持っているだけでって…」

 

「だからだよ」

 

「鍵で星霊を呼ぶ。つまり、その鍵には魔力を集め開かせるだけの力がある。今回はその過程の一つである集めるのだけが働いてこなたちゃんに負担をかけてるんでしょうね」

 

 

 

 

と、ディアーリーズが一瞬だがこなたから目を離し、よそ見をしていたその僅かに

変かは起こってしまった。

 

 

 

刹那。彼の耳に小さく雪に何かが落ちる音が聞こえ、振り返ると―――

 

「………こなた?」

 

 

そこにはブランカから落ちたこなたが白い雪の中に倒れていた。

突然の事に驚いたディアーリーズは蒼牙から飛び降り彼女に寄りかかる。

 

 

「ッ…こなたッ!?」

 

「えっ…!?」

 

突然倒れたのに気付いたアナスタシアも、ジャックから降りると息を荒くするこなたの首元と額を触り状態を確かめる。

右手の人差し指と中指で首元の脈をはかり、更に呼吸の状態を確認。荒く不規則な息遣いに焦りが生まれ始める。更に左手で額を抑え体温を測るが、そんな事をするまでもなく彼女の額からは明かに健康とは言えないほどの熱が発せられていた。

 

「酷い熱…多分山の霊脈と寒さでやられたんだ…」

 

「ッ…!」

 

「このままじゃマズイ。この子だけでも下山させないと―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうも言ってられないようだ」

 

刃の言葉にBlazは空を見上げる。

僅かに見えていた灰色の雲が隠れて殆ど白景色に覆われつつあり、強く吹いていた風がだんだんとその威力を強めていた。

かすかに見えていた周りの景色が白く塗りつぶされ、自分たちがどこに居るのか、どの方向を向いているのかと分からなくなったいく。

 

「チッ…吹雪が強くなってきやがった!」

 

「吹雪っていうよりブリザードでしょコレ…」

 

「マズイ…こりゃ完全に一時撤退だわ…」

 

方向が解らなくなれば完全に遭難してしまう。ヴォルフたちも今までは微かに見えていた道を頼りにして動いていたが、一面白一色となれば彼らでもこれ以上の移動は難しくなる。

こなたをブランカの背に乗せ、アナスタシアは麓の町に戻ることを薦めて元来た道を戻ろうとする。

ディアーリーズも今回は仕方ないかと諦めていたが、二人が転進した瞬間。刃に呼び止められた。

 

「待った。二人とも」

 

「刃さん?」

 

「何、まさかまだ登ろうって―――」

 

 

 

―――違う。二人の雰囲気から感じ取ったディアーリーズは口をつぐんだまま彼らの見る方へと目線を動かす。

そして、その瞬間に彼は刃がどうして自分たちを呼び止めたのかというのを漸く理解した。

 

 

「ッ………」

 

「今帰ったら…ぜってーにアイツらに食われるぜ…」

 

 

 

二人の眼前の先に居る者たち。

それは同胞(・・)であるジョーカーたちも牙をむき出して威嚇の意志を示していた。

赤兎は毛を逆立て、今にも襲い掛かりそうな殺意をむき出して相手の動きを観察する。

 

数は六体。ヴォルフの一群が赤眼を向けて彼らを釘づけていた。

 

 

「野生の…!」

 

「頭数じゃコッチが有利だけどよ…荷物抱えてんだ。まともに勝負になるたぁ思えねぇ…」

 

「狙いはこなたちゃん…?」

 

「一番弱ってんだ。摂理考えれば…当然だろうさ」

 

「ッ…!」

 

彼女をやらせまいとディアーリーズがブランカの前に立ち臨戦態勢を取る。

しかし前に立つまでに雪で足場を取られていたのが見えたため、それを見逃さない彼らは自分たちに地の利があると自覚する。

ディアーリーズも足場を取られたので確実に狙われると分かっていたが、一応この重装備でも飛ぶことは可能だと反撃の手順を組み立てる。周りが見えないので回避が精一杯だが、気を引くのには十分だ。鼻もこの状況ではきくまい、と。

 

「いっとくけどよ、奴らこの場じゃ相当の手練だ。軽く倒せるとか考えるんじゃねぇぞ」

 

「―――。」

 

跳べば最期。自分の居場所などを見失い確実に彼らに屠られる。

一度それを経験したBlazから言われたセリフの説得感にディアーリーズは口をつぐんで黙り込んでしまう。

 

「なら、対策は?」

 

「拳あるのみ。ZEROなら余裕で片す」

 

「マジで…?」

 

 

実際は物理的な攻撃なら対応が可能でBlazなら大剣のブラッドレックス、ZEROなら本当に拳で応戦ができる。

しかし仮に応戦できたとしても雪で足場を奪われてしまい俊敏に動く彼ら相手には苦戦は必須となる。加えて相手が手練であれば、いくらBlazや刃、ディアーリーズでも勝ち目は分からない。

 

 

「ディアーリーズ。武器は」

 

「デバイスはありますけど…魔法とかって無駄なんですよね?」

 

「山脈なら尚の事な」

 

大剣を構え応戦の用意をするがBlazもどこまで戦えるか分からない。

最悪の事も覚悟していた彼と刃は最悪可能であれば逃げられるというのを考え、彼らへと立ち向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――筈だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

「……あ?」

 

 

「え、なに二人ともどう…」

 

 

 

「―――Blazさん?」

 

 

一体何事かと思い振り向いたディアーリーズとアナスタシア。

彼らの前に立つBlazと刃、そして立ちはだかるヴォルフまでも先ほどまでの戦意を何処へやったのやら、一変して同じ方向を向いて口を開けていた。

自分たちの目の前と後ろに立つ、ある物を見て。

 

 

 

「………へ?」

 

「………。」

 

 

 

 

 

黒く、ずんぐりとした体形。白く光る二つの目。

そう。してい上げるなら…

 

 

 

 

 

異常なほど巨大な肥満体

であろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で。直後、当然ながら彼らは絶叫を上げたというのはまぁ言うまでもない。

 

果たして、彼らは無事モミの木を取ってこられるだろうか。

というか帰ってこられるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

その頃、楽園では…

 

 

「お兄ちゃんまだかなぁ…」

 

「うにゅ…」

 

咲良とニューの二人が飾りつけを手伝いながら彼らが帰ってくるのを待っていた。

ちなみに飾りつけは今年はガルムが担当しており、食材は刃、企画は当然ながらUnknownだったりする。

 

 

 

「クリスマス・イブならぬコジマ・イブじゃあああああああああああああ!!!」

 

 

 

「そりゃ小島監督が新プロダクション立ち上げたがなぁ…」

 

「どうでもいいですけどげんぶさん、さっさとあの人と搬入している粒子を止めてきてください」←またもディアーリーズの仕事を片づけている竜神丸。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
4
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択