No.815755

ゆりおん!7~澪vムギ

初音軍さん

律に恋をしていた澪の背中を押したムギ。しかしその後…。二人の気持ちが重なるまでとムギの中に残る感情を描いたお話。とある本の内容を見て勢いで書いた話ですが影響を受けた作品ではムギ律だった模様^q^

2015-11-25 23:28:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:476   閲覧ユーザー数:476

ゆりおん!7~澪vムギ

 

【ムギ】

 

 ----みんなとはしゃいでいる時間もとても楽しいけれど、

好きな子と二人でいる時間はもっと特別に感じる----------

 

「はい、澪ちゃん。あーん」

「ちょっ、恥ずかしいだろ。あ・・・でも・・・」

 

 買ってきたケーキを二人で食べようとしてふと食べさせ合うのを思いついた私は

澪ちゃんにあーんさせようとすると、恥ずかしそうにしながらもちゃんと口を開けて

待っていてくれる澪ちゃんを見ているとすごく胸の辺りがキュンキュンして

愛おしく感じた。

 

「あ、美味しい」

「でしょ~」

 

 なぜ私と澪ちゃんがこういう関係になったかというと、私の頭の中で

繋がっていた関係と少し違っていたから。

 

 そんなちょっとしたすれ違いから私は澪ちゃんに告白されたのだった。

 

 

***

 

「ムギーー!」

「え、澪ちゃん!? どうしたの?」

 

 とある日の放課後。りっちゃんのことを強く意識していた澪ちゃんに私が背中を

押すように応援をしてから、しばらくしてからすごく悲しそうな顔をして私の胸に

飛び込んできた。

 

「律に振られたー」

「えぇ・・・!?」

 

 私の中にあるデータの中にはりっちゃんも澪ちゃんのこと好きだとあったのに。

もしかして私の妄想が過ぎて正確じゃなくなっていたのかもしれない。

 

「ご、ごめんね。澪ちゃん、私が余計なこと言ったから・・・」

「・・・違う・・・」

 

「え?」

 

 顔を見せないようにして話していた澪ちゃんが顔を上げて涙で濡れた顔を私に

見せると強い目で私を見つめていた。

 

「ムギのせいじゃない。私が・・・私も・・・そう思っていたところがあったから・・・」

「澪ちゃん・・・」

 

 感情が落ち着くまで一緒に部室に二人でいて、澪ちゃんの頭を撫でながら様子が

少し落ち着いてくるのを確認するとホッとしたのと同時に澪ちゃんの温もりと匂いを

感じるようになって少しドキドキし始めてしまった。

 

 振られたばかりで不謹慎だけど、他のみんなで妄想しているのとは違う鼓動を

感じていた。

 

「ムギは優しいよな、こんな時に優しくされると好きになっちゃいそう・・・」

「ふぇ!? そ、それは・・・」

 

「あはは…ごめん、いきなりこんなこと言って…困るよな。

友達なんだし普通こんなこと言わないだろうから…」

「そんなことないわ!」

 

「ムギ・・・?」

「あっ…その…」

 

 私は軽く咳払いをして一度深呼吸をして心を落ち着けた。

そうしてよく考えてみると私はみんなをみていたつもりで一番見ていたのは

澪ちゃんだったことに気付いた。

 

 気付いてしまうとなかなか口にし辛くなってしまうのだけど、何だか捨てられた

子犬のような目をして私を見てくるから躊躇などしていられなかった。

 

「好きよ・・・」

「え・・・」

 

「澪ちゃんのことずっと見てきていたんだから、大好きに決まっているじゃない」

「ムギ…」

 

 勢いに任せてそのまま座っている澪ちゃんの前に立って、ゆっくり覆いかぶさるように

しながら少しずつ顔を近づけていってキスをした。

 

 キスしている間の音は自分の心音がうるさくて聞こえることはなかった。

どれくらいしていたか時間がわからないくらい私たちは夢中に互いを求めていた。

 

***

 

 気付いたら下校時間を過ぎていて慌てて帰ったことを、大学に通っている今でも

覚えている。

 

「ムギ、こっちのも美味しいぞ。ほら、あーん」

「ん、あーん」

 

 パクッ

 

「うん、甘~~い」

 

 それはケーキの甘さだけではなく、澪ちゃんに食べさせてもらった分も含まれて

いそうで私は今すごく幸せに感じていた。

 

 だけど幸せのどこかでりっちゃんのことを利用して澪ちゃんと付き合っているような

気がして罪悪感がそれなりに残っていて少しほろ苦い気持ちにさせられる。

 

 そんなことはないのだろうし、誰も不幸にはなっていないんだけど。

私の中で引っかかってしまうのだから仕方ない。

 

 でもそんな私の複雑な感情も澪ちゃんと一緒にいる間は癒して解してくれる。

唯ちゃんにとっての天使が梓ちゃんだったように、

私にとっての天使は澪ちゃんだったのかもしれないわね。

 

「どうかした、ムギ?」

「ううん、なんでもないわ」

 

「私、幸せ者だなって思っただけよ」

 

 笑みを浮かべながら最後の言葉は小さく、澪ちゃんに聞こえるかわからないくらいの

声で呟いた。

 

 ずっとこの幸せが続けばいいのにと祈りながら。

 

 弱気な私は時々この関係が終わってしまうのではないかとずっと怯え続けていくの

だろう。

 

お終い。

 


 
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