No.81138

真・恋姫†無双魏√EDアナザー 外史の統一者2-21

sionさん

久しぶりの更新になりました。
遅れて申し訳ありません。
前回のアンケート、正直驚きましたが!
その結果がでる拠点√!拙い文ではありますが。
それでは!楽しんでいただければ幸いです!

2009-06-27 01:52:31 投稿 / 全25ページ    総閲覧数:73723   閲覧ユーザー数:33946

投票結果1位 拠点√斗詩

 

「・・・て・・さい・・・・か・・・とさま・・・」

 

まだ覚醒しきっていない意識の中に心地よい声が聞こえる。

 

「・・・おき・・・・かずとさま・・・・」

 

(まだ眠い、昨日は霞と星につかまってかなり飲まされたんだ、もう少し)

 

「だめ・・・かずと・・・ま・・・・おきて・・・さい」

 

(そう意地悪を言わないでくれ・・・お願いだからも少し)

 

「だめですよ!一刀様、起きてください」

 

その声で漸く目が覚めていくのが分かる、意識がいまだ、おぼろげながらもあたりを見回す余裕が

 

できて、声の主に目を細めて

 

「おはよう、斗詩」

 

「おはようございます、一刀様♪」

 

目覚めの一番初めに、気持ちのいい笑顔と元気のいい、けれど優しい声で起こされたことで・・・

 

ただそれだけで今日一日が上手くいくような、そんな気持ちになっていく。

 

「しかし・・・似合ってるねメイド服」

 

その斗詩は今、一刀の専属侍女として、一刀の趣味であるメイド服を着用していて

 

「そうですか?こういうのはあまり着た事が無かったので」

 

そこでおもむろにくるりと一回転、その動作にふわりとスカート部分が舞って、ピタッと止まれば

 

静かにエプロンが下りて

 

「どうですか?本当に似合っていますか?一刀様」

 

少し上目遣いで聞いてくる姿に

 

「さっきも言ったけど、ホントすごく似合ってる。これ以上無いってくらい」

 

ありがとうございます、そんなありきたりな言葉も心からの笑顔と共にあるのなら、それはまさに

 

至高の感情表現で

 

「・・・・・・」

 

「どうかしましたか?一刀様?」

 

一刀はその姿に見惚れる。

 

「いや、なんでもないよ。・・・さて!今日も政務に励むとしますか・・・斗詩が来てくれて何が

一番助かるかってこの政務を手伝ってくれることだよなぁ」

 

それは武将としては本来備わっていないはずの技能だが

 

「・・・袁紹さんのところにいた時には私が政務の大半も行っていましたから。それを考えれば手

伝うことなんて・・・それも一刀様のお手伝いが出来るのならば」

 

光栄です!そんな言葉が続く、もし尻尾が斗詩についていたならブンブン振っていただろうほど嬉

しそうに。

 

 

 

「ところで、袁紹のこと様付けから変えたんだ?」

 

それはちょっとした疑問。

 

「はい、今の私のご主人様は一刀様ですし、その一刀様が仕えている董卓様と混同しては失礼になるかと・・・流石にまだ慣れませんけどね」

 

「無理はしなくていいからね?」

 

「はい!今の私があるのは一刀様のおかげですから」

 

そこには無理などしていない気持ちの良い笑顔がやはりあって。

 

「行きましょう、一刀様。今日のお仕事も結構な量だったと思いますよ?」

 

「・・・手伝いよろしく、斗詩」

 

そうして一刀達は政務をこなす。今まで一刀一人でこなしていた仕事を斗詩と二人でこなせるよう

 

になっただけで作業効率は上がるし、なによりも斗詩は周りに、特に一刀の様子に気を配ることも

 

出来る。だからこそ普段の半分程度の時間でやらなきゃいけない仕事も終わる、そうすれば時間が

 

余る。必然として。

 

「ん~・・・今日もありがとう、斗詩。本当にすごく楽になったよ」

 

伸びを一つ、それに伴うその言葉に嬉しそうに笑みを浮かべて

 

「ちょっと俺は外に出るけど、斗詩はどうする?」

 

「一緒に行っても構わないのなら、ご一緒させてください」

 

「じゃあ一緒に行こうか」

 

そう言って二人は中庭へと。そこは日が高く風が気持ちよくて。

 

「ちょっと寝不足気味だったのもあるし、こういう陽気だと寝てしまいたくなるな」

 

つい呟いてしまう。その一刀の呟きをしっかりと耳に入れて

 

「それでは少しお休みになられますか?」

 

そう言って斗詩はゆっくりと腰を下ろすと、自身の足の辺りをぽふぽふと叩いて慣らし

 

「寝心地は保障できませんが・・・よろしければどうぞ」

 

「えっと~斗詩さん?」

 

困惑する一刀を尻目に斗詩は嬉しそうに、どうぞ。そう目で訴えかけてくる

 

「・・・・・・はぁ、お言葉に甘えさせてもらうよ、斗詩」

 

「はい♪」

 

そして一刀は斗詩のふとももあたりに頭を預けて

 

(やばい、これはやばい、何がやばいってとにかくやばい)

 

軽く動転。そんな一刀の視界には斗詩の胸の小高い山とその先から笑みで見下ろす斗詩の顔が見え

 

て、少し恥ずかしくなって急いで目を閉じれば。

 

 

 

 

「~~~~♪」

 

斗詩の鼻歌と頭をゆっくりと撫でられる感触。そして昨晩からの寝不足と、この陽気。

 

その全てが合わさって

 

「おやすみなさい、一刀様」

 

斗詩のその声も聞こえない、もはや意識は途切れて、一刀は心地良く眠りについた。

 

「・・・・ん」

 

ふと目を覚ました時、すでに日は暮れかけていてあたりは赤く染まっていて

 

「あ、起きられたんですね。おはようございます一刀様。寝心地はいかがでしたか?」

 

まだ少しはっきりしない頭で、斗詩の顔を確認して、その頭に手を伸ばして。

 

「ん~」

 

寝ぼけたままに口づけをした。

 

「!?////あ、あのこういうことは、その。出来れば閨で・・・」

 

顔を真っ赤にして慌てる斗詩の声を聞いて、漸く意識がはっきりして、一刀も自分が何をしたのか

 

を理解した。

 

(え?あれ?俺なんでいきなり斗詩にキスしてるんだ!?え?眠くて、斗詩の膝枕で寝て・・・・あれ?)

 

理解した本人すらもはや大混乱。

 

けれどそれすらも夕刻の少し冷たい風が思考を戻してくれて

 

「悪い斗詩。嫌じゃなかったか?」

 

「・・・いえ、私は既にこの身も心も全部一刀様に捧げていますから。一刀様が望むのならなんで

もしてみせます!」

 

笑顔で、けれどほのかに顔を朱に染めて。その様に一刀もつい笑みを浮かべてしまい。

 

「そっか、うん。あ~そうだ、膝枕してくれてありがとう、すごく寝心地良かったよ」

 

柔らかくて、暖かくて、それでいて優しい膝枕だった、と一刀は思い

 

「よく眠れたなら良かったです・・・それでその・・・今晩はお嫌ですか?」

 

嬉しそうにしたかと思えば、恥ずかしそうに俯いて斗詩が問う

 

「お嫌?・・・えっと何がかな」

 

その一刀の言葉にさらに恥ずかしそうに

 

「その・・・閨を共にしたいのですが・・・お嫌でしょうか?」

 

そんな斗詩をみて、しまったと思いながらも、やはり誘われれば嬉しいもので。

 

「斗詩がいいのなら是非。」

 

その言葉に斗詩の表情は見比べるまでもなく幸せそうに笑んで

 

「お願いします、私はもう一刀様のためにいる者だと、そう証を付けてください」

 

そう言って枝垂れかかって口づけを一つ。

 

その後二人は一刀の部屋へと・・・そして斗詩は一刀のものになったという証を自身の体に、刻み

 

付けられたのだった。

 

 

 

 

投票結果2位 拠点√華琳

 

「董卓、貴女のところの一刀に少し話したいことがあるから借りてもいいかしら」

 

「話したいことですか?」

 

「そう、このあいだお酒の作り方を少し教えてもらってね、それについて聞きたいのよ」

 

「そうですか、そういうことでしたら。けれど一刀さんが許可したら、ですよ?」

 

「えぇ、それは承知の上よ、ありがとう董卓」

 

そんな主同士の会話がとり行われ、一刀は懐かしい華琳の部屋(厳密には違うのだが)に来てい

た。

 

「それで、話って言うのはお酒のことだけかな?華琳」

 

「・・・ふふ、えぇとりあえずはお酒のことよ」

 

そうきりだして暫くはお酒のことについて二人で話す

 

「そしてこれが私が貴方から製法を聞いてとりあえず作ってみたお酒、一回飲んでみてくれない

かしら?」

 

そう言って注がれれば断ることも出来ず、くいっと猪口に入れられた酒を一気に煽る

 

「ふむ・・・ちょっと粗いかな」

 

「やっぱりね、貴方のところで飲んだお酒はもっと澄んでいた気がしたのよ、それで?これは何が

問題だと思うかしら?」

 

俺も専門的な知識はないからな?そう前置きして

 

「まず第一に水、俺のところは酒を作る水は一度汲まれたものを熱して、そこから出来た水滴を集めて幾層もの布に粘土や小石などで層を作って濾過、水を澄んだ綺麗なものにしているんだ。基本的にこの大陸の水は酒造りには向いていないからね、それに酒が少し白く濁っているところを見ると、華琳、火入れはちゃんとしたかな?・・・」

 

「火入れ?」

 

そんな感じで酒造りの談議は進んでいく、それが一段落したところで華琳が切り出す

 

「そう、だいたい分かったわ。今度はそこらへんを踏まえて再挑戦してみましょう・・・さて一刀?天の御使いとしての貴方にも質問があるのだけれどいいかしら?」

 

それはかつての反董卓連合からの疑問

 

「何かな華琳?」

 

だからこそ華琳は自分でも驚くほど方に力が入っていることも気付かずに問う

 

「貴方は・・・何者なのかしら?」

 

その言葉に一刀は沈黙を

 

「貴方がはじめてあった人の名前でも分かるのは、それは天の知識なのでしょうね?えぇこれは全

然問題にならないわ。問題になるのは、一刀・・・何故貴方は春蘭に対してあぁいう行動に至ったのかしら?あの時はまだ貴方は春蘭の真名も許されていない、つまりそこまで親しくもない関係。なのに貴方は妹の秋蘭よりも必死に春蘭のためにと動いた。」

 

 

 

そこで一度区切られて、一刀は此方をキッと睨むでもなく、見つめてくる華琳に多少以上の動揺

 

を、しかし必死に押し隠して。

 

「俺は命を助けてもらった側だからね、あの時は「嘘ね」・・・なぜかな」

 

「馬鹿ね、何故って聞けば肯定しているようなものよ?」

 

彼女との一対一での頭脳戦はまだ一刀には多少荷が重い。

 

だから一刀は【嘘ではない真実でありつつ、真意をついていない言葉で】

 

「う~ん・・・まぁ正直に言えば・・・春蘭可愛いじゃないか。可愛い女の子を助けたいと思う気

持ちを俺は持っていちゃいけないのかな?」

 

それはあくまでの真実、真意は自身を思ってくれた意地っ張りな彼女に重なったから。

 

けれどそんな思いは今は隠す、思いは胸にしまって、その隠し先は言葉で隠す。

 

「・・・呆れた、そんな理由だったの?」

 

そういいながら華琳はさも面白そうにクツクツと笑う。

 

「まぁ華琳や秋蘭でもあぁ言う対応はしたと思うけどね」

 

そう言って肩を竦める(どうだ?俺は甘いだろう?)そう言いたげに

 

「本当に甘いわね、天の御使い北郷一刀、その割りには麗羽には容赦しなかったみたいだけれど」

 

「袁紹は俺の主を冒涜したからね、許したら臣下としてだめだろう?」

 

「えぇ、そうね。けれどやっぱりそんな貴方だから私は欲しい・・・」

 

呟いて華琳は自身の腕を一刀の首へとかける

 

「どう?貴方の才を私に全部捧げてみる気はないかしら?貴方の頑張り次第では私の閨で御褒美をあげるくらいにはしてあげるわよ?」

 

それは自分がどれだけ魅力的で、そして目の前にいる北郷一刀という人間がどれだけ自分のことを

 

思っているかが少しつかめたからの誘い。

 

(あぁもう、そんな誘い方すると押し倒すぞ・・・)

 

そんな風に内心で動揺して

 

 

 

 

「魅力的だけど悪いね、これでも俺は月に身も心も捧げて彼女を大陸の統一者にするって決めちゃってるんだ・・・だからその誘いは断らせてもらうよ」

 

「・・・そう、まぁ予想はしていたけれど・・ここまで無防備な様を見せて何もされないのは女と

しての魅力がないということなのかしらね?」

 

「そんなことはない!」

 

華琳の言葉につい声を荒げてしまってから

 

「・・あぁ、悪い。華琳は魅力的だよ、十分にもし俺が月のところでって決めてなかったら間違い

なく飛びつくはずさ・・・けど華琳?君は自分の決定すら誘惑の一度や二度で曲げる人物が欲しい

のか?」

 

冷静に華琳の人となりを考えて断れる場所へもっていく。

 

「・・・それをいわれれば仕方ないわね。やっぱり貴方をものにするには董卓のところと戦をするし

かないのかしら?」

 

「出来ればそれは勘弁して欲しいけれどね」

 

苦笑して答えると

 

 

「今日はこの辺にしましょう?これ以上私の部屋にいたら・・・私が貴方を襲ってしまうわ」

 

そう楽しそうに

 

「わかった、今日は楽しかったよ華琳」

 

そして去ろうとした一刀に声が掛かる

 

「私には魅力があるのよね?貴方を魅了するだけの」

 

「あぁ、十分すぎるほどに」

 

そして振り向いて答えた一刀に

 

「じゃあ貴方をもう少し揺らしておきましょう」

 

華琳の唇が、優しく押し付けられた、暫くしてはなれて

 

「さぁ、いきなさい一刀。おやすみ」

 

その言葉を背に受けて部屋を出ると

 

「・・・あぁもう・・・やっぱり華琳なんだよなぁ・・・」

 

一刀の心は、かつてないほどに揺らされるのだった。

 

そして華琳は・・

 

(なんで一刀にはこうまで心を乱されるのかしらね・・・この私の唇は安く済ませるつもりはない、だから仲間に引き込む・・・それだけのはずよ・・・ね?)

 

真っ赤になりながら、一刀に対して自身の心を納得させている最中だった。

 

 

 

 

投票結果3位 拠点√明命

 

 

「前回は一刀様&お猫様そして猫耳一刀様にしてやられ情報を持ち帰れませんでしたが・・・!今

度こそ!今度こそしっかりと情報を持ち帰『あれ?明命?』・・・一刀様!」

 

(あれ?おかしいですよ?なんでいきなり一刀様に遭遇するのでしょうか?)

 

「また長安の事を調べに来てくれたのかな?明命?」

 

(ど、どうしましょう!一刀様を置いて行くのも失礼ですし・・・)

 

「・・・?明命!」

 

「はうあ!?はい!元気です!」

 

「そっか、元気なのはいい事だよね、それで明命?今回は何でまた長安に?」

 

(うぅ~もう話すしかないですね・・・)

 

「はい、前回の調べだけでは足りなかったようで周瑜様にお叱りを受けちゃいまして・・・

 

それで今度こそは満足していただける調書を作ろうかと!」

 

「そっか、そういうことなら手伝うよ、この間最後のほう遊んじゃったのは俺の責任だしね」

 

一刀はそういうとまた明命の手を握って

 

「街の端から主要機関まで、俺が少しでも関係したものは全て教えてあげる!」

 

そう言って駆ける

 

(また一刀様と二人きりになれたのですよ!)

 

内心で明命が興奮しているのに一刀は気付かない。

 

そして今度も二人は手に手をとって楽しくデートもとい逢引・・・もとい街の調査

 

を行っていく、今度こそはと一刀の話を聞くたびに明命は持ってきた書簡に何かしらを書き込んで

 

いく。税制、法律、警邏制度、区画、治水・・・あらゆる情報を一刀から聞いて、その全てを記

 

す。そしてそう聞くうちに分かることがある

 

「あの・・・」

 

「何かな?」

 

「この長安で一刀様が知らないことって実は殆どないんじゃ・・・」

 

そう、一刀は街に詳しい“詳しすぎる”

 

「そうだなぁ、今の長安の基盤になっている制度は基本的に天の知識ってやつで見直しや手直しも入れたし、いくつか俺発案のものもあるからね、全体の半分以上の事情は知っているつもりだよ」

 

こともなげに言うその言葉は

 

 

 

 

「すごいのです一刀様!」

 

単純に明命の尊敬の眼差しを浴びた。

 

「ありがとう」

 

そう笑みで答えて手を引っ張り

 

「さぁ!あそこの店が旨いんだ」

 

そう言って一軒の出店へと入り

 

「奢るから食べよう、明命、おっちゃん俺はいつもので!」

 

「あいよ!御使い様のあれは人気ですからね!」

 

なれた感じで一刀は注文をして

 

「明命はどれが良い?」

 

「えっとですね・・・じゃあこの志忠っていうので!」

 

その発言に店主と一刀は目を光らせる

 

「俺と同じだね、明命。お勧めだからきっと気に入るよ!」

 

「・・・はぁ?」

 

分けが分からないといった溜息をつき、料理が運ばれてきてまず一回目の驚愕

 

「な、なんですかこれ?」

 

明命が予想していたのは肉まんなどの点心、しかし出てきたものは

 

見たこともない白い液体に野菜や何かの肉が入れられている料理

 

「俺の世界の料理でね、正確にはシチューって言う名前なんだ、俺たちは涼州との交易が盛んな都合乳製品は結構簡単に手に入れられるからね、栄養価も高いし健康にも良い、そして大量に生産で

きるからこういう食堂みたいな場所で出すにはうってつけ」

 

「おうとも!こういう案を御使い様に賜ったお陰でここら一体は大繁盛さ、ここら辺の食堂や出店

 

は何かしら天の料理を一品出せるからな!」

 

そういわれながら明命は一口シチューを口にする・・・

 

「!?とっても美味しいのです!」

 

そう言ってまるで猫を抱いている時のようにほわわ~という顔になる。

 

その姿におっちゃんと一刀はニヤっと笑みを浮かべて

 

 

 

 

「流石だな、おっちゃん」

 

「まかせてくだせぇ」

 

してやったり、そう表現するのが正しいか、まさにその表情を見るための料理なのだから。

 

ひとしきりシチューを堪能して、また街の調査と称したデートへ戻り。

 

街の調査はつつがなく進んでいく、今日は一刀もふざけたりしていないから。

 

そうして日が暮れてくれば明命は取っている宿へと戻ると言い出し

 

「?てっきりこっちに来るものだと思ったけど・・・いいの?」

 

「はい!こんなに良くして頂いてさらに甘えるなんて出来ませんから」

 

そんなことは

 

「気にしなくていいよ、それに・・・」

 

そこで少しだけ意地の悪い笑顔

 

「街のことをそんなに調べられるのは客人で、無断で調べるのは間諜として捕らえなきゃいけないんだけど?」

 

その言葉で明命は少しびっくりして

 

「はうあ!私捕まりますか!?」

 

「客人は捕まえないよ?」

 

笑みはどんな思考を隠しているのか。

 

「むぅ~一刀様意地悪です・・・わかりました、お世話になります!」

 

(計画通り!)

 

「じゃあこちらへ、行こう明命」

 

既に諦めているのか抵抗もなく、むしろどこか嬉々として明命は一刀に従い

 

「はい!」

 

そして王宮で明命を待ち構えていたのは

 

 

 

 

「・・・・ご主人様・・・恋の」

 

飛将軍呂布こと恋の少し怒った表情と・・・

 

嫉妬から来る必殺に値する攻撃。

 

「はわ!何かどこかでやったことがある気がするですよ!?このやりとり!」

 

それを懸命に避けて

 

「こら恋、お客人に失礼したらだめだろう?」

 

一刀にたしなめられてシュンとした恋は

 

「・・・・・明日」

 

そう一言だけ呟いた

 

「いいよ、今日は良い子にしててね?」

 

「・・・・・(こく)」

 

一刀が了承して、それで嬉しそうに、まさに尻尾があれば振らん勢いで首肯する。

 

そんな会話を尻目に聞きつつ

 

「すみません一刀様!私はここで失礼させていただきます!」

 

そう涙目で宣言して恋から逃げるように走り出す。そこはさすが隠密、もはや眼につく場所にはい

なくて・・・

 

「あ!・・・あ~」

 

「・・・・フルフル」

 

「っま、今度来たときでいいか・・・この猫のぬいぐるみ」

 

そう言って一刀は隠していた猫のぬいぐるみを取り出す。

 

「はう!無性に引き返したく・・・(ブルブル)だめです・・・呂布さんに殺されてしまいま

す・・・」

 

そう一人呟いて駆け出した。

 

明命は命の危険と引き換えに、何か大切なものを受け取れなかった気がして、暫く引きずるのだった。

 

 

 

 

投票結果4位 拠点√星

 

 

ひゅん、ひゅん。そんな軽い音を出しながら一刀は自身の刀をゆっくりと振るっていた。

 

剣の基本は円運動、自身の切っ先が綺麗に円を描くように、実践では役に立たないかもしれない

 

が・・・それでも自身が確実に刀を振るえるようになるために、その鍛錬としてゆっくりゆっくり

 

刀を振っていく。

 

その一刀の姿を見て・・・

 

「鍛錬ですかな?一刀殿。ずいぶんとゆっくり剣を振るっているようですが」

 

星は少し疑問に思い声を掛けた

 

「あぁ、星か。一応ね、俺はまだまだ未熟だからさ、とりあえず自分の思い描いた太刀筋をなぞれ

るように練習をね」

 

「ふむ、それは大変よろしいかと。しかしそのやり方では多少問題もありますな」

 

真剣な顔で星が助言をくれようとするのを察して、一刀もそれを聞き入るために真剣に。

 

「まず第一に、その修練は相手がいるときに理想的な剣の降り方をしているのではなく。自分が思

った剣筋だということ。敵がいるならばそれはかなり問題になります。そうしてもう一つですが・・・」

 

そこで言葉を区切って星は槍を構える

 

「実戦でお教えしましょう。構えて掛かってきてください、一刀殿」

 

一刀にとっては願ってもない、猛将が自分のために鍛錬を付けてくれるというのだから。

 

そう思い一刀も刀を青眼に

 

「先手はお譲りしましょう、さぁどうぞ」

 

カチンともしない、悲しいことだがそれ以上の実力差があるから。

 

だから一刀はそれに対して不満の一つも言わずに

 

「っは!」

 

問答無用で一撃を放った、自身にしては会心の逆胴。

 

「ふむ、初撃がこうということは」

 

しかしそれをこともなく払われる。そしてそこへ星の袈裟懸けの払い

 

それが丁度一刀が刀を構えようとしていたところに飛んでくる。

 

「っく!?」

 

構えてすぐに飛んできた槍が打ち落とし

 

「次はこうですかな?」

 

一刀の腹を抉る為に放たれた槍が

 

(え!?)

 

また一刀が構えようとしていた刀を弾く

 

「そして次はこうでしょう?」

 

弾かれた刀を戻し、構えなおそうとしたところにまた槍が飛んでくる

 

「そしてこうすればどうですかな?」

 

そしてろくに構えられてすらいない刀をもう一度槍が打ち

 

「あ!」

 

ガランカランと音を立てて刀が一刀の手を離れる

 

 

 

 

「・・・さて、いいたいことはお分かりですかな?」

 

「ひょっとして読まれやすいかな?」

 

それが、一刀が気付いた最も感じたこと

 

「そうですな・・・一刀殿の剣筋はとても美しい、貴方の剣と相まってとてもとても美しい。しかし、美しいだけです。一刀殿の根が素直すぎることも関係しているのでしょうな、剣筋がとても素直で一手みてしまえば次からどう動くか、それを予測するのはとても簡単・・・華雄や霞でも容易に見切るでしょう。そして後は此方が誘導してやれば一刀殿を手玉に取ることが出来るのですよ」

 

だからと続けていう

 

「素直なのも基本に忠実なのも大変素晴らしいもの、しかし一刀殿はもう少し当てるために工夫し

た技を持ってみてもいいかもしれませんな」

 

そこで一つ思い浮かぶのは

 

「実戦向きじゃないんだよなぁ・・・」そう呟いて刀を取り鞘に収め

 

「一応ね?こういうのもあるんだけど」

 

そう言って放つのは抜刀・居合いの一撃。納刀状態からのまさかの最速の一撃。

 

「ふむ、確かに早いですが、同時に酷く不便ですな。あくまで奇をてらった一撃限定というところ

でしょう、そして初見で無ければ意味が無い」

 

「欠点はいちいち鞘を持ち歩かなきゃ行けないことと、抜刀した状態だと一度刀を鞘に納めなきゃいけない。実戦では使い物にならないよなぁ・・・」

 

「では暫く打ち合いましょうか、一刀殿の攻撃を私がひたすら受け、悪いところがあればその都度

身をもってお教えいたしましょう・・・」

 

結局使い物にならないのがわかれば対応も早く

 

「えっと・・・遠慮は?」

 

「あるとお思いですか?さぁ一刀殿、参られよ!」

 

やれやれと思いながらも刀を構え

 

「行くぞ!」

 

今度は一声かけてからただひたすらに刀を振るい・・・・・・・・

 

「ふむ、まぁ今日はこんなところでしょうな、風呂を許されている日でもありますし、

しっかりと汗を流すことをお勧めしましょう」

 

そう言って袖で口元を隠してクスクスと意味ありげに笑い

 

「そうさせてもらうよ、悪いけれど今日はもうヘトヘトだ」

 

「では後で今日の御褒美代わりに良いものをお持ちしましょう、久しく手に入らなかった一品が手に入りましたので、後ほど部屋をお尋ねしても?」

 

(その一品も気になるし無碍には出来ないよなぁ)

 

「いいよ、けれどひとまずは風呂だな、泥だらけで汗だくで気持ち悪い」

 

ぐちゃぐちゃなそんな有様を嘆いて

 

「そうですな、それではまた後程」

 

そう言って一足先に帰る星を見送り

 

「しかしこれだけ打たれると風呂入った時に沁みそうだ」

 

そんなぼやきが零れた。

 

 

 

そして一刀が風呂からあがりさっぱりして部屋で寛いでいると

 

こんこんと軽めのノックの音がして

 

「星?開いてるよ?」

 

「いえ、すみませんが一刀殿、あいにくと両手がふさがっておりまして・・・できれば開けてくださると」

 

それならと一刀は扉を開けて

 

「いらっしゃい星、それが一品というやつかな?」

 

「えぇ、楽しみにしてくださればその期待に応えてみせますぞこれは」

 

嬉しそうに顔をほころばせる星の手には酒が入っていると思しき大徳利と何かが入っているのだろ

 

う大徳利より一回り二回り小さな壷が抱えられていた。

 

「ささ。まずは飲みましょう。」

 

そう言って酒を注がれてそれを一口飲めば

 

「!?すご!さっぱりしているのにすっごい味が濃い」

 

「いい酒というのはそういうものなのでしょうよ」

 

星もそう言って酒を一口、そして

 

「確かにこれだけでも大変美味なのですが、さらにこれを肴にすれば」

 

取り出した壷を開ける、その中身は

 

「メンマ?」

 

「はい、メンマです、どうですか?旨そうではないですかな?」

 

確かによく漬け込まれているのだろう、ここまで匂いもする。見た目もいい。

 

「けれどメンマが肴に良いのかい?星」

 

「なんと!メンマのよさを知らないとは・・・人生の10割損をしていますぞ一刀殿!」

 

そういわれては食べてみざるを得ない、メンマをひょいとつかみあげて一口・・・

 

「!?・・・」

 

そのまま酒も飲んでコクリと落ち着けば

 

「・・・星」

 

「なんですかな?」

 

その星の表情は実に晴れ晴れとした笑みで

 

「確かに人生損していた、認めるよ。このメンマはものすごく旨い!」

 

 

 

 

そうでしょうとも、そう頷いて嬉しそうに。後は二人きりの酒盛りと他愛のない話で一刀の部屋は

 

包まれていき、唐突に切り出した星の言葉でその空気に亀裂が入る

 

「ところで一刀殿?月様と華雄を抱いたそうですな?」

 

「っぶ!」

 

つい噴出した酒を「なにをなさる?」そういいながら星が拭き取って

 

「いえ、そういう話は耳に入るものなのですよ、特に私の耳には」

 

脅されるか?なんだろうか?思考がぶれて。

 

「私には魅力がありませんかな?一刀殿?」

 

(・・・・・は?)その星の言葉で一刀はしばし呆然と、しかし意識は変にはっきりして。

 

「それは・・・星、いいのか?」

 

「それは私にも彼女達くらいには魅力があった、そうとってもよろしいかな?」

 

「星には星のよさがあるんだ、人の魅力は比べられるものじゃあないよ」

 

「そう言って今まで何人の女子をものにしてきたのでしょうな、英雄色を好むともいいますし」

 

思いも介入しない言葉の応酬には

 

「それを言われると頭が痛いよ・・・最後に聞くけど、ここが境界線だ。良いのか?星」

 

必然と

 

「良いのか?ではありませんよ、私とてこれでも乙女の端くれ、好いた殿方には抱かれたいもので

しょう?」

 

終わりが見える

 

「・・・わかった、優しくするね、星」

 

「えぇ、優しくしてくだされ一刀殿。これでも花も恥らったりしますので」

 

「そういうことは・・・」

 

抱き寄せて唇を奪って寝台へと倒れこむ

 

「・・・ん。・・・もっと可愛らしいところを見せてから」

 

酒で十分に煽られた若い男女は、まるでそのあるべき姿だといわんばかりに・・・

 

ただ、幸せそうな声だけが響いていた。

 

 

 

 

投票結果同率5位 拠点√詠

 

 

 

「・・・こんな感じで良いかしら?」

 

そう自室で一人、鏡の前で服装を確認する、いつも着ている服のように見えて実は細かく違うお気

 

に入りの一着。そして首には以前一刀からもらった銀細工の首飾りを。

 

これもついでだと薄く化粧まで。

 

いつも以上に気合を入れて、けれどもいつも以上に覚悟を決めて。

 

「・・・大丈夫、月も言ってくれているじゃない、私は可愛いんだって」

 

一人漏らすのは自身の不安をやわらげてくれる親友の言葉で、しかし同時にその親友の幸せそう

 

で、そしてどこか気恥ずかしそうな報告

 

「私ね、詠ちゃん・・・一刀さんに大人にしてもらっちゃったよ」

 

本当はもっと違う、けれどそんな趣旨を含んだ言葉。

 

その言葉にチクンを胸が痛んだのはきっと親友が汚されたからだと自分をごまかして

 

「詠ちゃんすごく可愛いんだから・・・少しだけ素直になろう?」

 

そういわれた言葉の通りを実践に移すために今日がある。(そう!今日の私は!)

 

そう思ったところに“コンコン”そんなノックの音と

 

「詠?来たけれど入って良いかな?」

 

来訪者の声(そう、今日こそは・・・)そう思いを入れなおして

 

「今開けるわ」

 

ゆっくりとその扉を開く。

 

「・・・・」

 

訪問者はしばし詠を見て沈黙し

 

「あぁ、お化粧をしているのかな?服もいつもと少し違う・・・それにその首飾りつけてくれてい

るんだね?すごく嬉しいよ、詠」

 

(感情には鈍いけどそういうところには無駄に鋭いんだから)

 

そんな悪態は今日だけは心の中で、内心に押し込めた言葉とは別に普段は隠す本心を表情と共に、

 

つまりそれは笑顔で

 

「ありがとう、一刀にそう言ってもらえると少し張り切ったかいがあるわ・・・さぁ、あんまりの

んびりもしていられないし、行きましょう?一刀」

 

「そうだね、それじゃあ行こうか!」

 

今日はそんな素直になることを心がける詠との逢引、北郷隊の兵に聞いたところによると小川があ

 

り、すごく静かでのんびりするにはいいところ。そんなところへの二人きりでのお出かけ。普段は

 

自分で馬に乗る詠も

 

 

 

「その・・・今日は馬は一頭でいいわよね?」

 

そんな言葉をよほど恥ずかしいのか真っ赤になりながらうつむき加減で言われれば

 

「詠がそれで良いなら俺のほうは構わないよ」

 

断れるはずもなく。

 

一刀は詠を自分の前に乗せて、初めはさっぱり乗れなかった、けれど今は普通の将並みに乗りこな

 

せるようになった馬を駆る。そこそこの速さが出ているので舌を噛まないように二人とも無言だ

 

が・・・(・・・・・えい)

 

そんな詠の勇気で、一刀の胸にその頭を、体を預ける格好となり、ただ静かに馬は目的地へと足

 

を進める、ほてった頬にその疾駆する風が気持ちよくて。そして頭を預けている胸は普段なかなか

 

素直に甘えることが出来ない胸で(・・・僕今日壊れたりしないでしょうね?)そんな自問自答を

 

繰り返す、馬は足を止めることはない、だから一刀も気付かない。

 

四刻程馬を走らせたか、漸くといっていいのかもしれないが目的の場所に一刀達は到着して、その

 

場所は確かに静かで綺麗で・・・そして何より澄んでいた。

 

「驚いた、僕も色んなところに眼を向けているけどここは知らなかったわ」

 

「あぁ、俺も兵から聞いた情報頼りだったからね、けどこんなところならもっと早く来ればよかったかな」

 

そう二人して笑顔を浮かべて

 

「そうだ!結構いい時間だし」

 

そう言って詠は両の腰に下げていた袋から何かを取り出して

 

「これ、上手くできているか分からないけれど」

 

恥ずかしそうに出したのいは竹の葉で来るんだ筍の具を使ったちまき。

 

「一刀のところにおにぎりっていうのがあるんでしょう?けど僕達のはこんなのだから」

 

そのまま聞いていてはずっと不安を口に出していそうだと思う一刀はぱくりと一口。

 

「うん、美味しいよ」

 

それは作り手にはこれ以上無い一言で

 

「そ、そう。安心したわ・・・一応何度か練習はしてもやっぱり本番にならないと不安なものね」

 

 

 

常にひた隠す自分の素直ではない部分、その代わりに口に出す言葉は常に素直な自分の気持ちで。

 

二人はその澄んだ静かな空間で、ただ時の任せるままに寄り添って過ごす。

 

心地よい沈黙と心地よい空間が二人をほぐしていく。

 

だからだろうか、そんな静かな空間で二人きりでいれば、詠はいろんなことを考えてしまう、他

 

国、特に曹操は一刀を気に入っていること、そして自分たちの陣営でも一刀はとても大きな存在で

 

あること。だからこそ不安があり、少しほぐれた言葉はいつもどおり素直じゃない詠を表に出して

 

「一刀、貴方が曹操や他国に狙われているの・・・しっている?」

 

唐突に切り出すのは

 

 

「あぁ、華琳達からは一応誘いを何度かね、全部断ってるけど」

 

とても素直じゃないが故に捻じ曲がった彼女の言葉

 

「月や僕には一刀がどうしても必要なの、それで一刀がそんなんじゃいつ裏切るか分からないか

ら・・・・・・」

 

そこまで言って詠は一刀に唇を合わせ、一刀の唇を封じる。

 

「・・・・ぷは・・・・か、勘違いしないで頂戴ね!これは一刀を月と僕のところに留めておくた

めにしているんだから」

 

だからと彼女は言葉を繋げて

 

「一刀を僕達のところに縛る楔に・・・僕のことを抱いていいわよ」

 

それは焦りゆえか、それとも素直じゃない本心ゆえか、一刀の人となりの本質を見誤る。

 

「大丈夫だよ、詠。俺は何があっても月を、詠を裏切ったりなんかしない。だから、そんなことのために詠の大事な体を投げないで欲しいな」

 

その言葉で一気に詠の焦りは頂点に達する、あぁどうしようかと悩む間も無く、

 

詠はその顔を真っ赤に染めて、そして少し涙を目に溜めて

 

「ばか!・・・僕が、僕が一刀に抱いて欲しいのよ!あぁもう言っちゃったじゃない・・・責任とって抱きなさいよ、馬鹿。馬鹿!馬一刀!・・・」

 

そう言ってわめく姿は、一刀に抱きしめられて止まり

 

「・・・・今の詠ものすごく可愛いよ」

 

ゆっくりと詠と一刀が近づいてまた口付けをかわし、ただ静かなだけのその静謐な空間に、詠の嬌

 

声がただ静かにこだましていた。

 

事が終われば詠は疲れたのか寝てしまい、その体を小川の水で清めてから服を着せ、仕方がないか

 

らと馬まで背負ってつれて帰る、その一刀の背中で詠は小さく呟く

 

「一刀・・・大好きよ」その小さな呟きは一刀に聞こえ

 

「・・・あぁ俺も詠が好きだよ」この小さな呟きは、夢の世界にいる彼女にはきっと聞こえないの

 

だろう。ただ、背負われている詠は幸せそうに笑んでいた。

 

 

 

投票結果同率5位 拠点√恋

 

 

トントントンと包丁で捌く音、それと、とてもいい匂いが辺りに充満している。

 

厨房に立つのは天の御使い北郷一刀その人で。

 

「んー・・・だいたいこんなところかな?しかしこれだけの食材でここまで正確なレシピを作り上

げた流琉には感服するよなぁ・・・」

 

そう一人で、かつての小さな料理人を思い出し

 

「これでクッキーとマドレーヌの二種類が完成したわけだ」

 

そう、作っていたのはお菓子、それも天の世界の。何故一刀がこんなものを作るかといえば、町興

 

しの一環である。食はとても大切で人間の三大欲求の一角を担うほどである、それ故に人は食に

 

様々なものを求める、その食が珍しければそれはその地独特のものと認められて、その食物だ

 

けで人が呼べる。いわゆる特産品である。

 

その特産品に天の世界の料理を考案したのだ。今現在長安の料理店で一刀が認めたものは其々が何

 

かしら一品、天の世界の料理を看板商品として出している。

 

そんな店に対して新しい調理法の研究をおやつ作りがてらに一刀は趣味として行っている。

 

そんな甘い臭いに、彼女が釣られぬはずも無く

 

「・・・・・・・いいにおい」

 

恋が厨房にひょっこりと顔を出して

 

「・・・・・ご主人様、恋の分ある?」

 

モノ欲しそうな子犬の目で一刀を凝視、その上で、決して狙っているわけではないのだろう、顔を

 

可愛らしくカクンと傾ければ。

 

「ほら!これが恋の分だよ~」

 

一刀を篭絡するのは容易い。そうして渡されるのは蜂蜜で味をつけたマドレーヌ

 

「・・・・・・・モクモク・・・甘い、美味しい」

 

そう言って両手で小さなマドレーヌをしっかりとつかみモクモク食べれば、その小さなマドレーヌ

 

などすぐになくなってしまう。

 

「・・・・・・・なくなった」

 

悲しそうな顔、そして目はもっともっとほしいよご主人様、そう訴えかけていて

 

(みんな、すまん!)そう心の中で他の武将や軍師、君主に詫びを入れて

 

「ほら恋、全部食べて良いぞ!」

 

作ってあったマドレーヌを全て恋へと差し出す。

 

 

 

 

ぱぁっという音が聞こえそうなほどに恋の顔が輝いて

 

「・・・・・モクモクモクモクモクモク・・・・コクン・・・モクモクモク」

 

ただひたすら必死にそのマドレーヌを平らげていく。

 

やがてそれも少なくなり・・・

 

「・・・・・・・もっと・・・」

 

きゅるきゅると可愛らしいおなかの音と共に恋はおかわりを所望。

 

少し遅いが昼飯代わりに何かと一刀は思案して

 

「あぁ、そうだ!あれが入ったんじゃないか!」

 

取り出したのは羅馬との交易で手に入ったと言われ、御使い様に是非といわれ献上されたもの、赤

ワイン。

 

「トマトやケチャップが無いから少し不安だけど・・・やるだけやるか」

 

そう言って野菜と鶏を簡単に煮込み、裏ごしして、赤ワインを加え・・・着々と料理を進めてい

 

く、そして味を少し調えて煮込んでいる間に、ご飯を卵とそのだし汁でかるく炒め、そのご飯を覆

 

う卵をまた焼いていく。そして小麦粉とバター同量を捏ねた物を赤ワインで前に煮込んでいたソー

 

スに溶かし、粉臭さがなくなるまで煮詰め、簡易的なデミグラスソースを作り上げる。

 

「・・・・・・いい匂い・・・まだ?」

 

物欲しそうな恋の目線を何とか押しやり最後の仕上げといわんばかりに

 

大量に炒めたご飯をいくつもの卵を使ったそれで覆い、さくりとわればまだ半熟の卵がこぼれ、そ

 

こに作ったばかりのデミグラスソース(簡易版)をかければ

 

「出来合いで悪いけれど一応俺の世界の料理でオムライスっていうんだ。(トマトが無いからチキ

ンライスにならないのが残念だけどね)多分味は良いから食べてみてくれるかな?」

 

差し出されたのはこんもりと山になったオムライス、それを恋は

 

 

 

 

「はむ!?・・・モクモクモクモク」

 

一口目をゆっくり食べたかと思えばマドレーヌの時以上の速さでたいらげていく。

 

それをほほえましく思いながらもしっかりと後片付けを進めて

 

戻ってきてみればオムライスの大半が恋の胃袋へと収まっていた。

 

そして残った、それでも普通の人の一人前はあるのだが

 

「ご主人様も・・・・?」

 

そう一口を差し出され、ついそれを口に含み

 

「ふむ、出来合いの品にしてはなかなか・・・」

 

自分の作った味にそれなりに納得する、同時に

 

(間接・・・あぁ気にしないですよね恋さんは)

 

意識しても無駄と思い

 

「後は食べて良いよ?恋がおなか一杯食べて笑顔でいてくれると俺も嬉しいから」

 

そう笑顔で、自然に

 

「・・・・・///・・・食べる!」

 

恋を落とした。

 

食べ終わった恋はとても幸せそうな笑顔で

 

「・・・ご主人様来る」

 

一刀を自室へと引っ張っていく

 

「ちょ!?恋?俺はまだ政務が・・・あぁ行くからそんな顔をしないでくれ!」

 

あっさりと陥落、むしろ堕ちない人のほうが少ないのだろうが。

 

そしてつれられた恋の部屋で

 

「ご主人様、ここで待つ」

 

そう一言置いて恋は部屋を出て・・・一刻ほどして戻ってきた。

 

 

 

 

そうして少しだけ赤くなっている恋は

 

「・・・・おなか一杯になったら寝る」

 

そう言って寝台に行く、一刀を当然の如く引っ張って。

 

もはやなすがままの一刀に、その可愛らしい唇を押し当てる。

 

暫くしてはなれれば一刀は当然の疑問を

 

「いきなりどうしたの?恋」

 

暫く沈黙して、少し悲しそうな顔になって

 

「ご主人様、こうすれば喜ぶって・・・星が」

 

(あぁ星、いい仕事・・・いやなんてことを恋に!)

 

そう思うがもはや全て遅い、一刀は力がそこそこついてきている、それでも・・・

 

一刀を押さえているのは大陸で最強の武・・・抗えるはずも無く

 

(あぁ、もう好きにしてくれ!)心の中で抵抗の意識を放り捨てる。

 

「・・・いやだった?」

 

「そんなことはない!むしろうれしい!」

 

言ってからはっとしてももう遅い。

 

嬉々として一刀の唇を奪い

 

「恋、色々覚えた。」

 

そう言って一刀の胸をはだけさせ

 

「・・・頑張る!」

 

その晩まで、むしろ明け方まで、頑張りすぎた恋に一刀が色々されてしまうのだが

 

残念だが一刀の意識が途絶えているため、それは割愛。

 

唯一つ言うのならば、恋はただ、幸せそうに

 

「ご主人様、今日も恋・・・頑張る?」

 

そう聞く日が出来たという。

 

 

 

 

超オマケ(本編には一切の関係もありません、きっとこれこそ胡蝶の夢です)

キャラクターが崩壊しています、覚悟して進むか、臆して退いてください。

ただし、アンケートの結果票がこのページにありますので気に掛かる人はそこだけ。

 

 

 

月はまた、なにやら色々と自分の大好きな一刀が自身の知らないところで様々な事態に巻き込まれ

 

ているのを、どこか本能で感じていた、そしてその月は・・・ある紙を目にする

 

「・・・・これは・・・・」

 

拠点√希望アンケート結果

1位:12番 斗詩 48票          2位:8番 華琳 42票

 

3位: 9番 明命 38票          4位:5番 星  35票

 

5位(同率): 2番と6番 詠と恋 33票  7位:10番 風 31票

 

8位(同率): 1番と3番 月と霞 29票  10位:11番 凪 27票

 

11位: 4番 華雄 26票          12位:13番 ハーレム武官編 14票

 

13位(同率):14番と15番 ハズレとハーレム軍師編 11票

 

15位(同率):7番と16番 ねねとハーレム君主編 7票

 

総リクエスト数421 総リクエスト人数74人

(アンケートお答え感謝でした!前回コメで何も返せなかったのでここで代わりとして)

 

 

「また・・・また曹操さんと明命?さんに負けた・・・風さんとはこのあいだ来た曹操さんのとこ

ろの軍師さんですよね・・・私・・・魅力ないのでしょうか・・・しかも新参の斗詩さんにまで・・・かなりの差をつけられて・・・」

 

そう呟いた月の目には涙が溜まり・・・遂にそれが雫となって零れ落ちた、彼女の優しさと共

に・・・

 

「あは、あはははは。そうです、何を気後れしているんでしょう私は、一刀さんは私の国の大切な人じゃないですか・・・曹操さんたちになんて関わらせなければ良いんです!」

 

そう呟いて立ち去る月に

 

「月・・・どうしちゃったのよ・・・」

 

詠は心配そうに呟いて、月が落としていった紙に気付き・・・

 

「っちょ!誰よ!月に票を入れない馬鹿は!・・・ま、まぁ僕に入れてくれたことは感謝す『詠ち

ゃん?』はい!」

 

振り向けばとても優しい笑顔をした月がそこにいて

 

「一刀さんがどこにいるか知らない?」

 

「はい!今は確か曹操のところで反袁紹の事後処理として街の内政について話しているはずで

す!」

 

(何で僕は今敬語で話しているんだろう・・・相手は優しい月なのに)

 

「ありがとう詠ちゃん、私ね、詠ちゃんは可愛いから詠ちゃんに負けててもあまり気にならないんだ・・けどね・・・許せない人って・・・いるよね?」

 

コクコクとすごい勢いで首肯、今ここにいるのは月じゃない!そう判断した希代の軍師の判断

 

は・・・とても正しい。

 

「ふふ、詠ちゃん大好きだよ」

 

そう一言耳で囁いて月は去っていく。否!曹操がいる場所へと歩を進める

 

「無事でいなさいよ・・・一刀・・・月・・・」

 

月は歩き、曹操と一刀がいる部屋へとたどり着いた、そこを閉ざす扉を、問答無用で開け放つ

 

 

 

 

「なにもの!?・・・あら、董卓じゃない、なにかしら?」

 

「返してもらいますね・・・私の大切なもの」

 

そう宣言してツカツカと一刀のほうへ行き

 

「さぁ、いきましょう一刀さん」

 

一刀の手をつかみ歩き出す

 

「ちょっとまちなさい!今私達は大切な『黙ってください』そんなわけに・・・」

 

そう言葉を告げようとした華琳ののど元に、いつの間にか番えられた矢が向けられ、狙いを定めら

れていた。

 

「・・・なんのつもりかしら?」

 

「私、意外と器用でして・・ほら、右手でも左手でも射れるんですよ?」

 

その目はただただ光を映していなくて

 

「黙って返せばいいんです、返してくれますよね?・・・ネェ?ソウソウサン?」

 

その言葉に単純に過去経験の無い感情が華琳を襲い、一歩後ずさる。

 

ただ本能のまま、逆らうなという声のままに

 

「・・・悪かったわ、好きにして頂戴」

 

その一言で月はまた笑顔を見せて、スヒン、ズガンそんな二つの音が室内に響く

 

「ありがとうございます、曹操さん」

 

そう言って月は一刀を連れて部屋を去る、その音の先に華琳が恐る恐る眼を向ければ

 

「なによ・・・これ」

 

矢が砕け、壁に穴が空きヒビが入っていた。

 

それから三日、月と一刀を見たものは誰もいない・・・

 

その三日目、詠は久しぶりに親友と思い人の姿を確認した。

 

「最近部屋に篭って何やってたの?月」

 

「ふふ・・・いいことだよ詠ちゃん、ね?一刀さん」

 

「そうだね、はは。俺は月のことが大陸で一番好きだよ?」

 

「へぅ、すごく嬉しいです、一刀さん」

 

その二人のやり取りに詠は突っ込むことが出来なかった、何故か?

 

一刀の目が光をろくに映しておらず、その肩がカタカタと震えていたから。

 

「一刀に何かするのかと思ったけど・・・そんなことなかったのね」

 

表面を取り繕うのも必死で

 

「一刀さんは悪くありませんから、悪いのは魅力の無い私と・・・入れてくれなかった貴方達です

よ?」

 

そうにこやかに・・・にこやかに?

 

そして月は笑顔で、それこそとても・・怖いくらい完璧な笑顔でこう一言だけ呟いた。

 

ほら、今振り向けば(票を月に入れていない)貴方の後ろで。

 

               「ツギハアリマセンカラネ?」

 

静かに静かに、そう囁いた。

 

 

-あとがき-

 

レポートまだ終わってないぜ!けどQKがてらに拠点かけるのは楽しかった!

 

遅くなって申し訳ありません・・・そして暴走して申し訳ありません。

 

長くなってごめんなさい・・・謝罪はここら辺にしますすみません。

 

さて、合いも苦手な拠点√6人分+αどうだったでしょうか?

 

希望の人はでましたでしょうか?

 

ちなみに私は一位斗詩で正直びっくりしております。

 

華雄が下位にいって少し涙目にもなりました。ねね・・・強く生きるんだ!

 

ちなみに今回基本的に食物系の√とあいなりました、斗詩以外。斗詩はどうしてもメイド服を着せた

 

かった!絶対似合う!誰か絵を!(黙れ)

 

膝枕もさせたかったのですよね。

 

さて、だいたいこんなところで、次回からは本編です!鈍亀ペース・・・始まります。(ぁ

 

 

懲りずに友達との問答を晒す

 

 

1、小説総合みたけどお前何?ラスボスにでもなるの?死ぬの?:

うん、俺もわけが分からない!1~8位独占・・・なにこれという世界だよ。

評価してくれる人が多いっていう点ではとても嬉しいんだけどね、やっぱ気恥ずかしい。

 

 

2、コメントねぇよ、なにあのアンケ:

俺も驚いたよ、返信する余裕が無い。それだけ愛されていると思うと嬉しいんだがな!

 

 

3、それでこれ何√だったわけ?:

現実√だよ、救済ではない。現実な理由は謀反を起こさぬよう3人はばらばらに引き離される。斗詩はトラウマが残って戦場に出れない。そのた幾つかの理由がある。

救済は斗詩と猪々子が一緒で斗詩も戦場に出れる。超救済は3人一緒で当然戦場に出れる。

絶望は斗詩自害、袁紹討ち死に、猪々子は斗詩を救えなくて失意のうちに戦線離脱。そんな感じの予定だった

 

 

4、それで?これで中盤くらいという話だが・・・どうするの?:

夏休みに一気に進める感じになるのかな?卒論もいい感じで仕上がってきているし。

それまではなるべく一日1更新を目指して書き続けるさ。目標は9月までの完結。

とりあえずこの√終わらなきゃ何も言えんがね。

 

 

だいたいこんなところで。それでは改めてですが、アンケお答えありがとうございました!

 

またとることがあるかもしれませんがそのときもよろしくお願いいたします!

 

それではまた次のお話で!

 


 
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