No.804452

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第八十話


 お待たせしました!

 于吉が自分の命と引き換えに生みだした

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2015-09-26 20:02:39 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:3367   閲覧ユーザー数:2629

 

 于吉がその命と引き換えに生みだした巨人の姿は左慈と戦っている空達にも見えていた。

 

「みいしゃま、象より大きいのがいます!!」

 

「うにゃ!?なんなのにゃあれは!中原にはあんな巨人まで生息しているにゃ!?さすが

 

 のみぃも象より大きい奴を見るなんて初めてにゃ!!」

 

 突然現れたそれを驚きの眼で見ている美以達に対し、それの意味を知る左慈は違う形で

 

 驚きの表情を浮かべていた。

 

(于吉…まさかお前が自分の命を投げ出すとはな。お前は最期までそれを選択する事は無

 

 いと思っていたが)

 

「おい、左慈。お前はあれが何なのか知っているのか?」

 

「残念だったな、斬馬刀女。如何にお前が強かろうともあれは駆逐する事が絶対に出来な

 

 い物だ」

 

「ほぅ…でも、もしかしたらお前はあれの倒し方とか知っていたりするのではないのか?」

 

「だったらどうする…とか言いたい所ではあるが、あれは俺でも無理だ。だが…」

 

「だが?」

 

「あれは現れた外史を破壊すれば消える。俺はこの外史が崩壊するのを遠い所で高みの見

 

 物といかせてもらう事にする…お前の息の根をこの手で止める事が出来ないのが残念で

 

 ならないがな」

 

 左慈はそう言うと同時にその姿は掻き消えるようにいなくなったのであった。

 

「これはどうした事にゃ!?そいつが消えたと同時に一杯いた白装束も消えたにゃ!」

 

「美以よ、どうやらあれは大分やばい奴らしい…とりあえずお前は洛陽に戻って命達に見

 

 た事を告げろ」

 

 

 

「空はどうするにゃ!?」

 

「一刀を放ってはおけんよ」

 

 空はそう言って巨人のいる方へと駆けていったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 そして一刀達はというと…。

 

「何なんだ、これは?管理者とかいうのはこういう事も出来るのか?」

 

「さすがの儂もこのような術を見るのは初めてだ…」

 

「私も初めてよぉん…于吉の奴、ずっと昔からこういった人の世に漂う邪気を集める術を

 

 作っていたという事みたいねぇん」

 

 現れた巨人を眼の前にして成す術も無く立ち尽くしていたのであった。

 

 しかし、巨人がそのままじっとしていてくれるはずなどなく、人のようにも獣のように

 

 も聞こえるおぞましさに溢れた声をあげて動き始めたのであった。

 

「皆、逃げろ!」

 

「逃げろって、何処にですか!?」

 

「とりあえずあの巨人には近付くな!!」

 

 一刀の号令で皆が巨人から逃げようとするが、騎兵はともかく歩兵はそうそう逃げ切れ

 

 るものではなく、特に足の遅い兵達が巨人に踏み潰されそうになる。

 

「しまった!間に合ってくれ!!」

 

 何が出来るはずも無いのに俺はその兵達を救おうとそっちへ駆け出す。

 

 その時、遥か後方から轟音が鳴り響き、巨人の身体に何かが当たって炸裂する。その衝

 

 撃で巨人の身体はバランスを崩して後ろに倒れる。その隙に何とか兵達を脱出させる事

 

 には成功したのだが…。

 

 

 

「何だ、一体今のは!?」

 

 俺が振り向いたその方向には…。

 

「何とか間に合ったようやな!聞いて驚け、見て驚け、これぞウチの自慢の最新兵器、そ

 

 の名も『轟雷砲・改・弐八式』や!!」

 

 大砲と共に現れた真桜がいたのであった。なるほど…大砲の最新バージョンか。あれ?

 

「何故『弐八式』?弐式から弐七式まではどうしたんだ?」

 

「『失敗は成功の母』!!こないな時に細かいツッコミは無しやで!!さあ、バンバン撃

 

 て、撃ちまくりや!!」

 

 真桜の号令と共に砲兵部隊が大砲を撃ちまくる。しかし、巨人はその攻撃でバランスは

 

 崩しているものの、決定的なダメージを与えるまでには至っていない。

 

「このままでは時間稼ぎでしか無いな…どうすれば」

 

「…多分、あれの心臓みたいなのが何処かにあるはず。それを破壊すれば良い」

 

「おわっ!?恋、何時の間に」

 

「ねね達も真桜と共に来たのですぞ!!そして恋殿の言う通りなのです!!」

 

 確かに巨大な敵を倒すにはその通りなのだが…。

 

「そう簡単に見つかるのか?」

 

「だから今、真桜にはあの巨人の身体の至る所に当たるように攻撃を仕掛けさせているの

 

 です!如何な巨人とて自分の心臓部の攻撃には怯むはず、そしてそれを確認すると同時

 

 にその一点を集中攻撃なのですぞ!!」

 

「なるほど、ならばその集中攻撃には私も加わろう」

 

 そこに空様も到着してそう言いながら不敵に笑う。

 

 

 

「空様…左慈は?」

 

「あの巨人が現れたと同時に何処かへ行ってしまったよ。どうやら奴は我々にあの巨人を

 

 倒すのは不可能だと思っているようだ」

 

 ほぅ、ならばそれを覆して見せたい所ではある。

 

「真桜!砲弾はまだ大丈夫か!?」

 

「誰に対して言ってんねん!このまま全開で撃ち続けたって一年以上は持つわ!!それに

 

 それだけやあらへん…『猛虎蹴撃!!』…ああ、もう!折角ウチが盛り上げようとため

 

 とったんに!!凪のいけず!!」

 

 真桜が何か言いかけたと同時にさらに後方から気弾が飛んで来て巨人に当たる。

 

「一刀様、私も真桜と共に攻撃に加わります!!さあ、お早く!!」

 

 凪はそう言うと真桜配下の砲兵達と共に巨人に攻撃を加える。さすがの巨人も砲弾と気

 

 弾の連続攻撃の前に態勢を立て直せずにいる。ならば今の内に…と思ったのだが。

 

「恋、心臓部が何処かって分かるか?」

 

「……………頑張って探す」

 

「それしか無いだろうな。一刀、私と恋でさらに攻撃を仕掛けて何とか見つけ出してやる。

 

 とどめは任せたぞ」

 

 空様はそう言い残して恋と共に砲弾と気弾が飛び交う中に突っ込んで行く。

 

 そして任されたものの…俺にとどめをさせと言われても一体何をどうしたら良いのやら。

 

 そもそもあの巨人にどうやってダメージを与えれば…あれは怨霊の固まりであって、本

 

 来は実体を伴った物では…怨霊?もしかしてあれが使えるか?

 

 

 

 俺は懐から小さな笛を取り出す。

 

「一刀さん、何ですかそれ?」

 

「これはばあちゃんの形見の笛なんだけど…俺の記憶が正しければこれで多少はうまくい

 

 くはずだ」

 

 俺は記憶を頼りにばあちゃんが死ぬ前に教えてもらった曲を吹く。しばらくは何も起こ

 

 らなかったのだが…。

 

『おぉぉぉぉぉぉ…ぐ、がぁぁぁぁぁぁ…』

 

 突然巨人の躯体が何か苦しむようかのようにうずくまったかと思うと、巨人の身体から

 

 何やら人魂のような物が抜けて行き、巨人の身体がドンドン小さくなっていく。

 

 そして半刻程経った頃には、その大きさは15m程度にまで縮んでいたのであった。

 

「これ以上は無理か…ばあちゃんだったらもっとうまくやれたのだろうけど」

 

「北郷一刀、今のは何なのだ?我ら管理者も今のは見た事が無いものだが」

 

 卑弥呼が驚きの表情で俺にそう問いかけてくる。

 

「これはばあちゃんから教わった物だよ。何でも迷える魂を本来あるべき所へ誘う曲なん

 

 だそうだけど」

 

「壱与の技か…確かにあやつは巫女として優れた女子であったが、まさかそのような技ま

 

 で会得していたとは」

 

 俺の答えに卑弥呼はさらに驚いていたが…あれ?

 

「何で卑弥呼が俺のばあちゃんの名前を知ってるんだ?俺は名前は言って無かったよね?」

 

「うむ、そもそも壱与と儂とは同じ国の生まれなのだが…それについてはまた後にしよう。

 

 今は巨人を屠るのが先ぞ」

 

 

 

 …ばあちゃんと卑弥呼が同郷?何だか今凄まじい程に恐ろし気な事を聞いたような気が

 

 するが、確かに今は巨人退治が先だ。幾ら今ので小さくなったとはいえ、まだ15mはあ

 

 るともいえる。

 

「真桜、凪、攻撃を続けてくれ!!」

 

「はいな!!皆、的が小さくなったからって外さんようにな…てぇーーーっ!!」

 

「私も行きます、猛虎蹴撃!!」

 

 そして再び砲弾と気弾が巨人に集中する。すると今度は巨人はある一点…鳩尾の辺りを

 

 集中的に防御し始める。もしかしてあそこか?

 

「一刀、まずはあの邪魔な腕を私が薙ぎ払ってやる。恋、行くぞ!!」

 

「…うん」

 

「卑弥呼、私達も行くわよぉん!」

 

「おおっ!!」

 

 同じくそれを感じ取ったらしい空様・恋・貂蝉・卑弥呼がその一点を防御している腕を

 

 集中的に攻撃する。

 

(ちなみに空様と恋は片方を踏み台にしつつ跳び上がりながら攻撃を仕掛け、貂蝉と卑弥

 

 呼は常人ではあり得ない程のジャンプ力で跳び上がっている)

 

 巨人は空様達から距離を取ろうとするが、砲弾と気弾によってバランスを崩され、立っ

 

 ているのがやっとの状態になっていた。そして遂に、攻撃を受けていた腕が空様達の攻

 

 撃で斬り飛ばされる。

 

「よし、今だ!真桜、凪、あの一点…鳩尾を!!」

 

 

 

 俺の号令と共に何発もの砲弾と気弾が巨人の鳩尾の部分を集中攻撃する。するとその中

 

 に玉のような物が見える。

 

「北郷一刀、あれだ!!」

 

 卑弥呼に言われるまでもなく、俺は刀を構えると突進する。途中で貂蝉が俺を上に跳ば

 

 そうと構えてくれていたので、その助けを借りて一気に跳び上がり巨人の中の玉を真っ

 

 二つに斬り裂く。身体を制御していた玉が失われた事によって巨人に残っていた怨霊が

 

 一気に飛び散っていく。

 

「これで全て終わり…えっ!?」

 

 終わったと思い安堵したその瞬間、斬り裂かれた玉が強い光を発し…。

 

 ドッカーーーーーーン!!

 

 爆発したそのせいで周囲には土煙が立ち込めて辺り一面の視界を奪ってしまう。

 

『一刀…こっちへ』

 

「そこにいるのは誰だ!?空様か?輝里か?」

 

『良いからこっちに来なさい!』

 

 突然かけられた声の主が誰なのかを確かめようとする間も無く、俺はその主に強引に引

 

 っ張られてしまったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「ようやく煙が晴れたか…皆、無事か!?」

 

 それからしばらくして、煙が晴れたのを確認した空は皆の安否を確かめる。

 

「一刀様がいません!!」

 

「何!?まさか今の爆発で!?」

 

 

 

「いや、視界が晴れる前に何者かに引っ張られて行ったようだな」

 

「卑弥呼とやら…まさかお前はそれを知っていてみすみす逃したというのか!?」

 

 冷静に事を告げる卑弥呼に空は憤怒の表情で詰め寄る。

 

「すまぬ…助けようとはしたのだが、分かっていても儂らにも手出し出来ぬ所に入ってし

 

 まったのだ」

 

「…それは、もしかして?」

 

「ああ、泰山の結界の中だ。誰がどうやったのかは全くもって分からんのだが」

 

 ・・・・・・・

 

「…あれ?此処は何処だ?俺は…確か誰かに無理やり何処かに引っ張り込まれたような?」

 

 視界が開けたと思うと俺は何やら祭壇のような物がある場所にいた。そして当然の事な

 

 がらこのような場所には全く見覚えが無い。

 

「良く此処まで来ました…一刀」

 

 そして突然声をかけられたので、そっちの方を見ると…何時の間にやら祭壇の前に昔読

 

 んだ弥生時代辺りの歴史漫画の登場人物のような巫女装束を纏った一人の女性の姿があ

 

 った。なかなかの美人ではあるが、その顔には全く見覚えが無い…はずなのだが、何処

 

 かで会った事があったような気もする不思議な雰囲気を持っている女性だ…あれ?

 

「何故俺の名前を?何処かで会った事がありました?」

 

「そうですね、会った事があるといえばありますし、無いといえば無いかもしれません」

 

 その女性は纏っている不思議な雰囲気そのままに言っている事もなかなかに不思議さん

 

 だったりするので余計に俺の混乱は深まったものの、このままでは何も分からないまま

 

 なので、とりあえず質問を続ける事にした。

 

 

 

 

 

「ところで此処は何処です?」

 

「此処は泰山の中です。この祭壇は始皇帝が封禅の儀式を行った際に使用した物です」

 

 泰山の中?でも、確か泰山って結界があったはず…?

 

「ふふ、その顔は何故結界の中に入れたのかと不思議に思っているという所ですね」

 

「…それもありますが、そもそもあなたが何処の誰で何故俺の名前を知っているのかとい

 

 うのもあるんですけどね」

 

「そうでした、まだ名前を名乗っていませんでしたね。もしかしたら名乗らなくても分か

 

 ってくれたりしないかなぁなんて、ちょっと思ったりもしていたのですけど」

 

 いや、どうやって初対面の女性の名前を分かれというのだろうか?そもそもこんな美人

 

 に会った事があって名前を聞いていれば忘れるはずも無い。

 

「さて、まずは自己紹介ですね…私の名前は壱与です。遠い昔、此処とは違う外史で巫女

 

 をしていました。そして、其処とはまた違う世界であなたの祖母だった事もあります」

 

 ほぅ、壱与さんですか…壱与!?しかも今『俺の祖母だった事もある』とか言ってるし

 

 …まさか、本当にばあちゃんなのか?

 

 俺の頭の中はとんでもなく混乱に包まれていたのであった。

 

 

                                     続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 とてつもなく更新が遅くなって申し訳ございませんでした!

 

 しかも一ヶ月以上かけて出来たのがこの程度…あまりにもの

 

 モチベさんの低さに我ながら呆然状態です。なかなかうまく

 

 書けないかもしれませんがご容赦の程を。

 

 とりあえず次回はこの続きからです。何故一刀は泰山の結界

 

 の中に入れたのか?突然現れた壱与の存在の意味や如何に?

 

 

 それでは次回、第八十一話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 左慈のその後も次回にてお送りしますので…このまま

 

    ドロップアウトというわけにもいきませんので。

 

 

 

 

 

 


 
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