No.798214

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第七十九話


 お待たせしました!

 左慈達の目的の場所が泰山であると予想して

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2015-08-24 21:18:54 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3958   閲覧ユーザー数:3001

 

「後二十里程で泰山です」

 

「よし、一旦此処で小休止しよう。だが、此処からは何時奴らの手の者達が来るか予想がつか

 

 ないから決して油断はしないように」

 

 輝里から泰山に大分近付いた事を聞いた俺はその場で一旦軍を止めて小休止を取る。

 

「ふぅ…此処までは特に何も無しか。もう少し何かあると思っていたが少々拍子抜けだな」

 

「空様、むしろ此処からですから気を抜かないようにお願いします」

 

「そんな事位は言われなくとも分かっているさ。私としては出発した直後位から奴らの軍勢と

 

 もっとやり合うものと思っていただけだよ」

 

「おそらくそれが無いのは、あの貂蝉さん達が張ったという術のおかげという事でしょうねー。

 

 あの人達の言う通りならば、あの于吉とかいう人の力はそれで大分抑え込まれているはずで

 

 すからねー」

 

 風の言葉の通りであれば、後は泰山で奴らが何か事を起こす前に何とかという所なのだが…

 

 おそらく来るだろうな、奴は。俺がそう考えていたその時…。

 

「北郷様!前方から異形の者達が…おそらく左慈と白装束達と思われます!」

 

「やはり来たか…数は?」

 

「おそらく千…いや、それ以上はいるものと思われます!」

 

 此処で決戦を挑むかそれとも足止めか…どちらにしても撃破するしか無いという事か。

 

「ならば…『ドドドドドドドッ!!』…何だ、この音?何か来るのか!?」

 

 俺が皆に指示を出そうとしたその時、後方より何かが地響きを立てて迫って来る。

 

「一体何が起きた!?誰か行って状況を見て…『一刀兄ィーーー!!みぃ達も戦うにゃーー!』

 

 …えっ?あの声って、まさか…?」

 

 

 

「みぃしゃま、みぃしゃま!前方に何か変な白い服の集団がいますにゃ!!」

 

「きっと、あれが命が言っていた一刀兄ィの敵にゃ!!突撃にゃーーーーーっ!!」

 

 やはりそれは美以達であった。しかも巨象に乗っていて、爆進してきたそのままの勢いで白

 

 装束達に突撃をかける。

 

 それに面喰ったのは俺達だけでなく…。

 

「もうすぐ北郷一刀達が来る頃だな…って、何だ、あれは!?ちっ…くそったれが!!」

 

 左慈は何とか象の突撃を避けたものの、後に続く白装束達は一瞬にしてペシャンコになって

 

 いた。

 

「にゃっはっは!見たか、これこそが南蛮大王孟獲様の力にゃ!!」

 

 いや、どちらかというと象の力のような気がするのは気のせいでは無いと思うのだが。

 

「貴様も俺の邪魔をするか!!だが、これで終わったと思うなよ!!」

 

 左慈はそう言うなり、何やら札のような物を出して地面にばらまく。するとそこからはまた

 

 白装束が現れる。

 

「みいしゃま、また同じのが出て来てます!!」

 

「おにょれ、にゃらばこっちも力を見せるにゃ!行け、ミケ、トラ、シャム!!」

 

「「「はいにゃ!!」」」

 

 美以の号令一下、ミケ達が象から飛び降りると同時に一気に南蛮兵が増幅する。そして一気

 

 に白装束に襲い掛かって行った。そして始まった『量産型南蛮兵VS白装束』は一進一退の

 

 攻防を…というよりどう手を出せば良いか分からない位の乱戦の様相を見せていた。何故な

 

 ら、どちらも数が減ったと思いきやまた何処からともなく新たに現れるからだ。

 

 

 

「ふふん、見たか!これもまたみぃの力にゃ!!」

 

 そして美以は象の上で一人無い胸を張っていたりする。でも美以の力というよりはミケ達の

 

 力なんじゃないかと思うのは俺の気のせいだろうか?

 

「さあ、一刀兄ィ!此処はみぃ達に任せて先に進むにゃ!!」

 

「えっ…でも、本当に大丈夫なのか?」

 

 白装束はともかく、左慈を相手にするにはさすがに…。

 

「案ずるな、あの左慈とかいう小僧は私が倒してやろう」

 

 そこに空様がそう声をかけてくる。

 

「空様まで…」

 

「お前の使命は泰山に入り込んで何やら画策しようとしている于吉とやらを止める事だ。露払

 

 いは我らに任せて先へ進め!!」

 

 空様はそう言うと一直線に左慈の方へ突き進んでいった。

 

「一刀さん…お気持ちは分からなくも無いですが此処は」

 

「…分かっている、俺の我が儘でこの世界に生きる人達に迷惑はかけられないからな。行こう」

 

 俺がそう告げると同時に輝里の号令で足止めの為の軍勢を残して一気に泰山の方へ駆け出す。

 

「待て、北郷一刀!!『小僧、お前の相手は私がしてやろう』…ちっ、またお前か斬馬刀女!」

 

「一応言っておくが、私の名前は李通だ」

 

「貴様の名前なんぞに興味は無い!!」

 

「そうか?まあ、別に私もお前に何ら興味は無いからどうでも良い事だが…しかし、一刀の邪

 

 魔をするというのならお前は私の敵だ」

 

 空はそう言いながら斬馬刀を構えて戦闘態勢に入る。

 

 左慈も腕の状態が完全でない事は承知しつつも、相手が相手だけに全力で戦う覚悟を決めて

 

 いたのであった。

 

 

 

 一方その頃、于吉は…。

 

「本当に忌々しい結界ですね、これは。とはいえ、左慈の足止めもあまり効果を成さなかった

 

 ようですし、此処は多少強引にでも…」

 

 泰山に張られた結界を強引にでも破ろうと試みていた。しかし…。

 

「ようやく見つけたわよぉん、于吉」

 

「半分予想通りだったとはいえ、姿を見つけるのは少しばかり骨が折れたがな…于吉、覚悟!」

 

 そこに貂蝉と卑弥呼が現れて攻撃を仕掛ける。

 

「邪魔はさせません!!」

 

 于吉がさっと手を振ると無数の白装束が現れる。

 

「がはは!このような人形如きで我らを止められると思うな…かぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!」

 

「でも、こんなのに時間はかけられないから一気に行くわよぉん…ぶるわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 しかし二人の前では白装束など敵ですらなく一気に雲散霧消する。

 

「くっ…何とも忌々しい奴らですね」

 

「さあ、そろそろ観念せい!」

 

「そうよぉん、此処でおとなしくこの外史から去るならそれで許してあげなくもなくてよぉん」

 

 貂蝉と卑弥呼はそう言いながら于吉との距離を詰める。しかし…。

 

「ふふふ、まだ私の手札は尽きてはいないんです!これは少々危険な術なのであまり使いたく

 

 は無かったのですが…事此処に至れば已むを得ません!!」

 

 于吉はそう言うなり懐に入れていた赤い札を地面に叩きつける。するとそこから無数の怨霊

 

 のような物が出て来て白装束と同じような姿になる。

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁ…くっくっく、どうです?この世界に無数に漂っている迷える魂の一

 

 部を呼び集めたこの傀儡は!これはそう簡単にやられませんよ!」

 

「うぬぅ…何という禍々しき気じゃ」

 

「これは確かに倒すのに骨が折れそうねぇん」

 

 于吉が作り出した白装束を前に卑弥呼と貂蝉は苦い顔をする。

 

「さあ、傀儡よ!私がこの中に入るまでの間しっかりとこの二人のお相手を務めなさい!」

 

 于吉のその声に応えるかのように白装束が二人に襲い掛かる。

 

 二人も何とか一体ずつ撃退はしていくものの、予想以上の手ごわさに息が切れる程に疲労し

 

 ていた。

 

「予想していたとはいえ、これの相手はなかなかしんどいのぉ」

 

「愚痴を言ってる場合じゃないわよぉん、もたもたしていると本当に于吉に泰山の中へ入られ

 

 るわぁん」

 

「それは儂も分かっておる、分かっておるが…何とか一気にこやつらを撃退する方法があれば

 

 …ぬ?誰か来るのか?」

 

「あれは…ご主人様!?」

 

 ・・・・・・・

 

 左慈の相手を空様を美以達に任せた俺達は一直線に泰山へと向かっていた。

 

「一刀さん、あれを!」

 

「何だ、あの白装束?さっき左慈が出した奴に比べて何と禍々しい気だ…あれと戦っているの

 

 はどうやら貂蝉達のようだな。輝里、兵を泰山の周りに展開して他に怪しい者がいないか確

 

 認を!」

 

 俺はそう言うと制止する輝里の言葉を無視して貂蝉達の所へ向かう。

 

 

 

「あれは北郷一刀…くくくっ、これはまさに飛んで火にいる夏の虫というやつですね。如何に

 

 あなたが手練れとはいえ、この傀儡には敵いませんよ!!」

 

 俺の姿を見た于吉はそう言ってほくそ笑んでいたが…。

 

「ところがどっこい!」

 

 俺は刀を抜いて刀身に気を送り込みそれを白装束の集団へ一気に打ち出し、その一撃で白装

 

 束は一気に三十体近く消える。おおっ、我ながら凄いなこれ…これもじいちゃんに教わった

 

 技で実戦では初めて使用してみたのだが。

 

 そしてそれを見た于吉の顔には衝撃が走る。

 

「バカな…何故あなたがその技を使えるのです!?それは我々管理者にのみ伝わる物…しかも

 

 それが使える者は今の管理者の中でもほとんどいないはずです!!」

 

 管理者のみの技…今のが?でも俺はじいちゃんから教わっただけだし…一応先祖代々伝わる

 

 物だと聞いていたのだが。

 

「がははっ、それは当然だ。何せ北郷一刀にその技を教えたのはあの難升米だからな!」

 

「なっ…難升米!?どういう事です!!あの者はとうの昔に行方をくらませていたはず…何故

 

 それが北郷一刀に技を教える事が出来るのです!?」

 

 難升米…誰だ、それ?聞いた事の無い名前に俺は首を傾げる。

 

「北郷一刀よ、お主がその名を知らぬのは仕方がない事だ。何故なら難升米は今は『北郷天刀』

 

 と名乗っているからな」

 

「えっ…それって、まさかじいちゃんがその難升米とかいう管理者だったって事か?」

 

「そういう事になるわねぇん…私も卑弥呼に聞いた時はびっくりしたけどねぇん」

 

 

 

 何とまぁ…それなら確かにじいちゃんに教わった技が左慈や于吉と戦った時に役に立ったの

 

 も分かる気がする。

 

 何となく納得した俺とは対照的に于吉の顔にはますます衝撃が走っていた。

 

「なっ…此処の北郷一刀が難升米の孫ですと!?」

 

 それが余程の衝撃だったらしく于吉は呆然となっていた。色々とあるらしいが、とりあえず

 

 そんな分かり易い隙を逃している理由も無いので、俺は一気に于吉との距離を詰めて横薙ぎ

 

 に斬りかかる。

 

 于吉はさすがに俺が眼の前に来たと同時に我に返ったらしいが時すでに遅し、俺の一撃はし

 

 っかりと于吉の胴を捉えていた。

 

「ゴフッ…そんなバカな。この私がこのような体たらくなど…」

 

 于吉は斬られた胴を抑えてうずくまりながらそう呻いていた。そしてその胴からは決して少

 

 量とはいえない程の血が流れ出している。

 

「此処までだな、于吉」

 

「さすがは難升米の孫なだけはあるな、北郷一刀よ」

 

「後は私達に任せて頂戴ねぇん」

 

 もはや于吉も此処までと見た俺は卑弥呼と貂蝉に後は任せて後ろに下がろうとしたのだが…。

 

「…この私が…このまま終わる?そのような事許されると思っているのか!?この地に未だ眠

 

 る多くの悪霊よ!我が血を以て甦れ!!そしてこの世界を破滅に追い込むのです!!」

 

 突如そう叫んだ于吉は何かの呪文を唱えたかと思いきや、何を思ったか自らの腸を抉り出し

 

 てそれを握りつぶす。

 

「何とっ!?何をするつもりだ、于吉!?」

 

「くふふ…さすがにもうこれをどうにかする事は出来ませんでしょう。この外史の崩壊をこの

 

 眼で見る事が出来ないのが残念ですが…それではごきげんよう…くふふふっ…」

 

 そう言い残した于吉の身体はまるで砂のように崩れ落ちて消えていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、まるでそれに呼応するかのように多くの魂魄のような物が集まり100mはあろ

 

 うかという巨人の姿に変わる。

 

「まさか自分の命と引き換えにこのような物を…」

 

「これは正直やばいわねぇん」

 

 さすがの貂蝉達も現れたそれを見上げて苦い顔をしていた。

 

 確かにこんなの一体どうすれば良いんだ?さすがにじいちゃんからこんなのに対する術なん

 

 か教えてもらって無いしな…しかしこれをこのまま放っておくわけにもいかないし、洛陽に

 

 というより人里にこんな物を近付けさせるわけにもいかない。

 

 そう考えながら俺は巨人を見つめていたのであった。

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 毎度毎度投稿が遅くなっていて申し訳ありません。

 

 途中ではありますが、何とか書き上げた所までお送り

 

 します。

 

 そして、結局于吉は泰山に入れないまま死んでしまい

 

 ましたが…巨人というとんでもない物を残していきま

 

 した。

 

 あんな物にどうやって立ち向かうのか…乞うご期待(エ。

 

 

 それでは次回、第八十話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 立体○動装置はさすがにありませんので。                    

 

    それと左慈の動向も次回お送りします。

 

 

 

 

 


 
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