No.792676

九番目の熾天使・外伝 ~短編⑲~

竜神丸さん

幻想郷の番犬 中編1

2015-07-28 13:09:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1442   閲覧ユーザー数:767

-ボゴォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

無人世界。大きな爆音と共に、巨大な雪山の半分が一瞬にして消し飛んだ。雪山の半分が消し飛ぶ原因である二人の人物は未だ、その戦いをやめようとはしていなかった。

 

「くっ……魍魎『二重黒死蝶』!!」

 

「ふむ……統率『剥奪されし自由と未来』」

 

蝶々を模した無数の光弾と、複数のシルクハットから放たれる光弾。両者の弾幕がぶつかり合い、今度は雪原のあちこちに巨大なクレーターが出来上がる。その内の一つのクレーターにクライシスがゆっくり降り立ち、そこに紫が絶え間なく弾幕を張り続ける。

 

「消え失せろ、不届き者!! 貴様等に裕也を渡しはしない!!」

 

「残念だが、そういう訳にもいかないのが難しいところでな」

 

クライシスの杖が光弾を弾き、一瞬で紫の目の前まで接近。驚いた紫は危うく体勢を崩しかけ、その隙を見逃さなかったクライシスはすぐさま彼女の腹部を杖で突き、遠く離れた位置にある氷山まで容赦なく吹き飛ばす。氷山がバラバラに崩壊する中、すぐに紫は飛び出して無数のレーザーを放射する。

 

「何が目的だ!! あの子を旅団に引き入れたとして、貴様等に何の得がある!!」

 

「戦力をより強化出来る。彼は稀に見ないほど、戦いの才能に恵まれている。いずれは強大な存在へと化けていく事だろう」

 

「ふざけるなぁっ!!!」

 

「む?」

 

レーザーを回避したクライシスの全身に、無数の蝶弾が張り付いて一斉に爆発。常人ならこの攻撃でとんでもない致命傷を負ってしまうのだが……紫にとっては残念な事に、それで倒れるようなクライシスではない。爆風が晴れたそこには、ボロボロになったシルクハットを拾い上げているクライシスの姿があった。

 

「やれやれ。お気に入りだったのだがね、このシルクハットは…」

 

クライシスはボロボロのシルクハットをその場に放り捨て、上空に浮遊している紫を見上げる。既に紫は空全体を覆い尽くすような弾幕を張ろうとしていた。

 

「何が貴様をそこまでさせる? 目的を告げよ。そうでなければ、理由すらも語らない者をあの子に近付けさせる訳にはいかない」

 

「目的か……残念ながら、詳しい事は私でも明かせない事になっている。だが…」

 

クライシスは身に纏っていたトレンチコートを脱ぎ捨て、白シャツと黒ズボン、そして黒ネクタイを身に着けた姿になる。彼は杖を地面に突き刺し、両手拳の骨を数回ほど鳴らす。

 

「我々の目的に関係している物……“アレ”が持つ力の片鱗なら、多少見せても文句は言われまい」

 

そしてネクタイを緩めた後、クライシスはゆっくりと足を一歩前へ踏み出した。

 

その瞬間…

 

「…ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は、大きく震撼した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アスガルズの森では…

 

 

 

 

 

 

「あははは……何か色々ごめんね? 思わず盗賊だと思っちゃって、つい…」

 

「まぁ、誤解が解けてくれたのなら何よりだよ」

 

「大変でしたねぇ~裕也さんも」

 

「全くです」

 

土砂降りの雨が続く中、巨大樹の上に建てられている木製の小屋へと移動した裕也達。そこで裕也はガルムという少女から、盗賊と間違えて裕也を襲ってしまった事を素直に謝罪していた。

 

「にしても、あそこで一体何があったんだ? あんなに盗賊団の連中が倒れてたのが凄ぇ気になるが」

 

「あぁ、えぇ~っと……うん、裕也達なら良いかな?」

 

「ん?」

 

「分かった。三人共、雨が止んだ後は私に付いて来て。その事について詳しく説明するからさ」

 

「雨が止んだ後か…」

 

 

 

 

 

 

-ピシャーンッ!!-

 

 

 

 

 

 

-ゴロゴロゴロゴロ…-

 

 

 

 

 

 

「…しばらくは止みそうにないな」

 

「「ですねぇ」」

 

「あ、あははははは…」

 

残念ながら、外に出られるようになるのは時間がかかりそうである。四人が苦笑いしながら小屋の外を眺めていたその時…

 

「グルルルルル…」

 

「「「!?」」」

 

突如、猛獣のような鳴き声が聞こえてきた。背後に気配を感じた裕也達が恐る恐る後ろに振り返ると、そこには2メートルはある大型の熊が三人を見下ろしていた。普段の三人ならそこまで驚くような事ではないのだが、目の前にいる巨大熊は何故かとてつもない威圧感を放っており、そういった物は慣れている筈の三人が少なからず圧倒されてしまうという光景が出来上がっていた。

 

「「…クマァァァァァァァァァッ!!?」」

 

「へぇ、ちょうど良いや。今日はコイツ仕留めて、熊鍋にでもしてやろうか―――」

 

早苗とリッカが抱き合い、裕也は拳をパキポキ鳴らしながら巨大熊と対峙する。

 

「駄目ー!!」

 

「あだぁーっ!?」

 

…が、そんな裕也の後頭部にガルムの振り下ろした金棒が命中。裕也が撃沈し、ガルムは巨大熊に近付いてその頭を優しく撫でる。

 

「フェンは私の相棒! 勝手に食べようとしないで!」

 

「へ? 相棒?」

 

「そう、相棒! 私がこの森に捨てられてから初めて出会った、最高の相棒だよ!」

 

「…!」

 

「グルルゥ~♪」

 

この森に捨てられて。その言葉を聞いた裕也は眉がピクリと反応した。相棒の巨大熊“フェン”が頭を撫でられて気持ち良さそうにしている中、裕也達は疑問に思っていた事を順番に聞いていく事にした。

 

「ガルム……お前、家族はいるのか?」

 

「いないよ。小さい頃に、この森に捨てられちゃったから」

 

「「え…」」

 

ガルムの返事を聞いて、早苗とリッカは暗い表情になり、裕也は「やっぱりな」といった感じの表情を見せる。ガルムはフェンの頭と顎を同時に優しく撫でながら話を続ける。

 

「父さんも母さんも、私の事が邪魔だったんだろうね。親子三人で仲良く出掛けた次元旅行で連れて来られたのがこの森。ここが何処なのか聞こうとしたら二人共、いつの間にか私の目の前からいなくなっちゃってさ……フェンも私と同じだよ。小熊だった時に仲間と逸れてたのを私が拾って、それから私達はずっと、一緒に生きてきた」

 

「そんな…」

 

「でも大丈夫。今までずっとフェンと一緒だったから、どんな辛い事にも耐えて来れた。いや、フェンだけじゃないね。この森には妖精さん達もたくさんいる。今、裕也達に懐いてるのがそう……知ってる? この子達はね、悪意を持ってる奴には絶対に懐かないんだよ」

 

「…確かに、それはよく分かる」

 

ガルムの言う通り、複数いる妖精達は裕也や早苗、リッカの頭や膝の上にちょこんと座ったり、楽しそうに空中を飛び回ったりしている。ガルムは自分の右肩に飛び乗って来た妖精の頭を指で撫でる。

 

「この子達のおかげで私、今までどんな辛い事にも耐えて来れたんだ。私はこの子達と一緒に生きられる、この森が大好き……だからこそ、私達が一緒に過ごしてきたこの森を荒らすような奴は、私は絶対に許さない」

 

「…なるほどな。それでさっきの盗賊達は全滅させられてた訳か、納得がいった」

 

「あれ? じゃあ、その盗賊さん達はどうしてこの森に来たんですか? ただ森の奥に潜む為だけ、という感じではなさそうですが…」

 

「うん、そこからなんだ。雨が止んだ後に話したいのは」

 

「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数時間後。

 

雨の勢いがだいぶ弱くなってきた為か、これなら傘を差せば問題ないと判断した裕也達は、ガルムの案内で森の奥へと進んで行っていた。ちなみに…

 

「「快適ですぅ~」」

 

「…あれれ? 俺達、何か懐かれるような事したかな」

 

「大丈夫だよ。この子も妖精さん達と同じで、かなり人懐っこいからさ」

 

「~♪」

 

裕也達三人は現在、フェンの背中に乗せて貰っていた。フェンは三人を乗せたままノシノシ進んでおり、案内をしていたガルムは目的地に到着したのか、ある方向を指差す。

 

「あ、着いた着いた。ここが例の場所だよ」

 

「「うわぁぁぁぁ…!」」

 

「何というか……凄いな」

 

ガルムの指差す方向には、巨大な神殿が建てられていた。六本ある柱の中央にドンと構えられている神殿を見た裕也達は純粋に興味津々だった。

 

「ここが、ガルムの言う神殿か?」

 

「そう。三人に見せたい物は、この神殿の中にあるんだ」

 

ガルムに連れられた裕也達は、神殿内部へと進んでいく。入ったその先は、少し広いだけで何の変哲も無い部屋のようにも見えたが、ガルムは取り出した棒を使って岩の床をどかし、地下階段への道を作る。そして裕也達が階段を下りて行った先の部屋には…

 

「「「…おぉ~」」」

 

部屋の中央にある台座。そこに置かれていたのは、エメラルドのような輝きを見せる水晶玉だった。その圧倒的な輝きを見た裕也達は、あまりの美しさに思わず言葉を失う。

 

「す、凄いです…」

 

「ガルム、これがお前の言ってた…」

 

「うん。これこそが、この森の平穏を守ってくれている宝物……“森羅の宝玉”だよ」

 

「これが、森羅の宝玉……とても綺麗です…!」

 

「あ、待って!」

 

エメラルドのように輝く水晶玉―――“森羅の宝玉”にすっかり目を奪われた早苗が触れようとするが、ガルムが慌ててそれを制止する。

 

「これには触らないでね? これ、この森にとっては凄く大切な物だから」

 

「どういう事だ?」

 

「この森はね、森羅の宝玉がこの神殿に置かれている事で、長年に渡って繁殖する事が出来てるんだ。もしこれが神殿から持ち出されるような事があったら、この森が滅ぶ事になっちゃうの」

 

「うぇえ!? そ、そういう事は早く言って下さいよビックリしたぁ!!」

 

「早苗さん、目が凄いキラキラしてましたよ」

 

(…俺も危うく触りたくなっちゃったのは黙っとこう)

 

ガルムの忠告を聞いた早苗は素早く手を引き、リッカがそれをからかう中、実は同じように触りたいと思っていた裕也は敢えて黙っている事にしたのだった。

 

「前の盗賊達も、この森羅の宝玉を狙って森に来たんだ。たぶん店にでも売り飛ばして、荒稼ぎしようとでも考えてたんだろうね」

 

「そういう事か……分かった。この事は、俺達も内緒にしよう」

 

「ありがとう、助かるよ。やっぱりあなた達を信用して良かった♪」

 

その後、神殿から出たところでガルムは裕也達に問いかける。

 

「そういえばさ、三人は何処からやって来たの? やっぱり別世界から?」

 

「俺達か? まぁ俺達が普段いる世界は…」

 

「ちょっと特殊ですよねぇ」

 

「否定出来ませんね」

 

「? ねぇねぇ、あなた達の事をもっと教えて。私も、あなた達の住んでる世界について知りたいんだ」

 

「う~ん……よし分かった、話してやるよ。俺達の故郷や、俺達の仲間、そして俺達がこれまで旅をして来た世界について一通りな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、裕也達はガルムに話した。自分達が住んでいる幻想郷について。幻想郷の仲間達について。リッカと共に解決した某世界の事件について。現在、自分達は修行の為に各次元世界を旅して回っている事について。

 

一通りの説明を終えた後も、ガルムはただひたすら目を輝かせるばかりだった。

 

「す、凄い……凄いよ三人共! 良いなぁ、私も行ってみたいなぁ~その幻想郷!」

 

「ははは。良かったら今度、俺達が幻想郷まで連れて行ってやろうか?」

 

「良いの!? ありがとう!! …あ、でも良いのかな? えっと……八雲紫と、博麗霊夢だっけ? その人達の許可は取らなくて良いの?」

 

「あぁ、大丈夫大丈夫。俺の方から頼み込めば、あの二人は何だかんだで許してくれるからさ」

 

「その代わり、紫さんからは買い物のパシリに扱われ、霊夢さんからはガッポリ金を取られますけどね」

 

「早苗、余計な事は言わんでよろしい」

 

「あはははは! 何その人達、私も会ってみたいよ!」

 

「まぁ霊夢の場合は、博麗神社に行けば普通に会えるだろうな。でも紫の方はたぶん無理だ」

 

「え、どうして?」

 

「紫はいつも神出鬼没だからな。こっちから呼んでも反応ない癖に、いきなり向こうから連絡を入れてはすぐにいなくなるんだ。たぶん今も、どっかでのんびり過ごしてる頃なんじゃねぇかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無人世界の雪原……否、先程まで雪原だった場所(・・・・・・・・・・・)では…

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――む、いかんな。少しやり過ぎてしまったか」

 

クライシスはネクタイを締めた後、先程脱ぎ捨てたトレンチコートを再び身に纏い、新しく調達したシルクハットを頭に深く被り直していた。そんな彼と対峙していた、八雲紫は…

 

「…ッ……ぁ…あ、ぅ…」

 

震えていた。

 

寒いからではない。

 

クライシスが作り上げた、今の状況に対してだ。

 

ボロボロに破れた服を身に纏っていた紫は、周囲を見渡す。酷く吹き荒れていた筈の吹雪は止んでおり、それどころか周囲の雪も全て溶け、地面は完全にただの焼け野原と化していた。いや、それだけならまだ、特に紫が恐怖するような点は無いかも知れない。しかし…

 

(な、何が起きた…………奴は今、何をした……私は今、一体何をされた…!?)

 

紫は今、自分が何をされたのかについても全く理解が追い付いていなかった。非常識こそが常識の幻想郷を一から作り上げた紫にとっても、目の前に立っている男は間違いなく非常識(・・・)な存在だった。いや、もはや非常識(・・・)という言葉ですらこの男には当て嵌まらないかも知れない。彼女の彼に対する敵対心は、既に崩壊寸前にまで追い込まれていた。不死身の存在である筈の彼女が、死の恐怖を感じ取っていた。

 

(こ、この男はヤバい……殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――殺される!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて」

 

「ひぃっ!?」

 

「む、どうした?」

 

「い、いや……来ないで…お願い…!!」

 

「……」

 

クライシスが振り返り、紫はビクッと震え上がる。彼女は一刻も早くその場から逃げ出したかった。スキマを利用してこの場から姿を消したかった。しかし恐怖で冷静さを失ってしまっている以上、今の彼女は逃亡が出来るような状態ではなかった。尻餅をついたまま恐怖で後ずさる事しか出来ない彼女の心情に気付いてるか否か、クライシスは無言のまま彼女の目の前まで歩を進めていく。

 

「ッ!?」

 

「…ふむ、なるほど」

 

膝をついたクライシスに顎を持ち上げられ、紫は目に涙が溜まった状態でしか、もはや彼の顔をまともに見る事が出来なかった。そして…

 

 

 

 

 

 

「すまなかったな」

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

クライシスの口からは、謝罪の言葉が告げられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日…

 

 

 

 

 

「―――ん、ふぁぁぁ…」

 

眠りから目覚めた裕也は小屋から出た後、巨大樹から降りて地上に降り立っていた。朝日で森の木々が明るく照らされる中、裕也は眠気を覚ます為にガルムから教えられた湖まで移動する。

 

(あの小屋、風通しが良くて寝やすかったな。小屋の作りについて、ガルムから色々教えて貰おっかな…)

 

そんな事を考えつつ、裕也は湖に辿り着くべく草木をどかしながら進んでいく。

 

そして、彼は目撃してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「―――え?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早苗、リッカ、ガルム。湖で水浴びをしていた、彼女達の全裸姿を。

 

「―――あ」

 

顔が青ざめた裕也は、すぐに弁解しようと頭をフル回転させる。しかし眠気の所為で回転が悪かったのか、ちゃんとした弁解は全くと言って良いほど思いつかなかった。

 

「…すみませんでし「キャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」ほばぁ!?」

 

結局まともに弁解が出来なかったが為に、裕也の顔面には大きいサイズの岩が投げつけられる羽目になってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――何やってんだか、あの四人組は」

 

そんな彼等の様子を、監視役に任命されていたokakaは近くの草木に隠れつつ耳を澄まして聞いていた。もちろん女性組が水浴びの真っ最中である為、監視カメラや双眼鏡といった物は使っていない。

 

「およ、こんな所にいたかokaka」

 

「! 蒼崎か」

 

そんな彼の下に、蒼崎が木の上からニュッと頭を突き出しながら姿を現した。蒼崎はそのままokakaの隣に華麗に着地する。

 

「こんな時に何の用だ? 俺は今、あるナンバーズ候補を調査中なんだが」

 

「あぁいや、別に大した用事じゃないんだけどさ。楽園(エデン)で待機中の二百式から、一つ伝言だよ」

 

「伝言?」

 

「うん……“非正規部隊の方でまた動きがあった。充分警戒してくれ”…だとさ」

 

「!! …そうかい、了解したよ」

 

「まぁそういう事で、俺の用件は済んだ訳だけど……どうよ? 例のナンバーズ候補。名前は確か東風や、こち……えっと、何だっけ名前?」

 

「東風谷裕也」

 

「そうそう、それそれ……okakaから見てどうだ? 戦力的には」

 

「戦力的に見ると……間違いなく強い部類だな。旅団に引き入れて損は無い。それに」

 

「ん?」

 

「…もしかしたら、これまでに無い旅団最高の戦力になり得るかも知れない。東風谷裕也……俺から見ても、彼にはかなりのポテンシャルを感じるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――こっち見るな裕也のスケベェェェェェェェェェェェェェェッ!!!」

 

「す、すんませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当に役立ってくれるの?」

 

「前言撤回、俺も少し不安になってきた」

 

聞こえてきた怒号に、okakaと蒼崎が苦笑いしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ。

 

時空管理局地上本部、非正規部隊隊舎にて…

 

 

 

 

 

 

「―――分かりました。えぇ、ダズール様の仰せのままに…」

 

非正規部隊隊長―――エーリッヒ・マウザーは、通信を切ってから一人の人物に話しかけていた。

 

「今回もダズールのデブから依頼だ。回収対象は、アスガルズの神殿に置かれていると言われるロストロギア“森羅の宝玉”……場所は座標に示した通りだ」

 

「またダズール様の依頼ですか……本当によろしいので? 大人しく従っていて」

 

「相手は魔導師部隊を動かせる権力者だ。下手に無視して、機嫌を損ねるような事があっても面倒だろう?」

 

「まぁ、それは確かに」

 

「そういう訳だ……ブルゼルク、行って来い。邪魔者が出た場合は消せ」

 

「…任された、少し待っておれい」

 

マウザーに名指しされた事で、白鬚を生やした坊主頭で老齢の男―――“ブルゼルク”はフードを被り、椅子から立ち上がってその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非正規部隊の精鋭が一人、アスガルズの森に牙を剥こうと暗躍を開始していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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