No.790351

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第七十七話


 お待たせしました!

 今回より本編に戻ります。

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2015-07-18 22:16:01 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:3904   閲覧ユーザー数:2950

 

「確かお前は北郷一刀の仲間だったな。丁度良い、お前らには俺達の新たなる行動の為の

 

 生贄になってもらうぞ!」

 

 そう言いながら唇の端を上げた左慈はわざとらしくゆっくりを歩みを進める。

 

「隊長、今の内に逃げて『このまま逃げても無理や…あいつがわざとゆっくり歩いて来て

 

 る事位見ればワイでも分かるわ』…しかし此処は隊長お一人だけでも。あの者は我々で

 

 食い止めます故」

 

 部下の一人がそう進言するも、及川はゆっくり首を横に振るのみであった。

 

「それをするにしても此処では無理や。逃げるのも隠れるのもワイらに不利な場所やさか

 

 いにな」

 

 及川達が今いる場所は普段は人が通るような場所では無いものの、ある程度開けた場所

 

 である為彼らには身を隠す場所も無い為、身体能力で劣る及川達には不利なのであった。

 

「ふん、おとなしく俺に殺される気になったか」

 

「そんなわけあるか!今から一発逆転する所に決まってるやないか!!」

 

「ほぅ…この期に及んでそんな口をきく余裕があるとはな」

 

「前にも言ったはずや、ワイは後二回変身を残しとるってな!!」

 

「何かと思えば…それはただの与太話だと北郷一刀が言っていただろう」

 

「へぇ~…あんさんはあないに嫌ってるかずピーの言った事を信じてるんかいな。殺すと

 

 か言っていた割には随分とご執心やな?もしかして好きな子の気をひく為にわざといじ

 

 めようとかするアレなんやな?」

 

「なっ…バカを言うな!!何で俺が北郷一刀の事を…」

 

 

 

「ああ、そうやった、そうやった…あんさんはあの眼鏡の奴と懇ろな仲やったな。こりゃ

 

 すんまへんな」

 

「おのれ…貴様もおれを怒らすか!!」

 

 及川の軽口に左慈は激昂する。

 

「そないに簡単に怒るんはあんさんに余裕が無いだけちゃうんですか?本当に大きい事を

 

 してるもんはいちいち細かい事にいきり立たんもんやし」

 

「おのれ…言わせておけば抜け抜けと!そんなにすぐ死にたいのならそうしてやる!!」

 

 左慈はそう叫びながら一気に距離を詰めて、及川の顔面に正拳を叩きこもうとする。

 

「うおっと!!」

 

 しかし及川はそれを予測していたかのようにバク転のような動作でかわしながら、その

 

 勢いで再び距離を取る。

 

「なっ…俺の拳がかわされた!?」

 

「ふふん、言ったやろ、ワイは変身を二回残しているってな!!」

 

 及川はそう不敵に微笑みながら言っていたが、

 

(ああ~っ、危なっ…かずピーが『多分、左慈のような奴なら初撃の一撃で決めようと顔

 

 面辺りに攻撃してくるだろうからそれを想定して逃げれば及川でも一回位かわせるかも

 

 しれない』って前に言っていた通りになってくれて良かったわ。ひやひやもんやで)

 

 内心完全に冷や汗状態になっていたのである。

 

 しかし左慈は自信のあった一撃をかわされた事で少なからず動揺したらしく、すぐに攻

 

 撃を仕掛けようとしない。及川はそれを確認しながらジリジリと後ずさるように左慈と

 

 の距離を広げようと試みる。

 

 

 

「ちっ、まさかお前のような奴に…本当に戦闘形態に変化するというのならその前に殺す

 

 までだ!!」

 

 左慈は動揺を振り払うかのように攻撃を仕掛けようとするが…。

 

「ふふん、変身の途中で攻撃なんかマナー違反やで!!」

 

 及川はそう言いながら懐から小さな丸い玉のような物を出して左慈の足元に叩きつける。

 

 その玉は左慈の足元に落ちると同時に爆発を起こしてもうもうと煙が立ち込める。

 

「くっ、こんな目眩まし如き…うっ!?ゴホッ、ゴホッ!!何だこれは!?」

 

 左慈はその煙を目眩ましと思いすぐに振り払おうとするが、それを僅かに吸ったと同時

 

 に強烈な咳き込みに襲われその場にうずくまる。

 

「良し、さすがはかずピー特製の薬入り煙幕玉や!皆、今の内にとんずらするで!!」

 

「逃げるのですか?今の内ならあいつを倒す事も出来るのでは!?」

 

「アホな事言うな!こないなもんはただの足止めにしかならん、下手に近付いたら殺され

 

 るだけや!!それにワイらの仕事は此処で得た情報をかずピー達に届ける事や!あいつ

 

 を倒す事でも此処で死ぬ事でもあらへんで!!ええな、例え他の皆が死んでも一人が情

 

 報を届けたらワイらの勝ちや、それを忘れるな!!」

 

 左慈の動きが止まったのを確認した及川は部下達にそう声をかけて全速で近くの森の中

 

 に駆け込んでいった。

 

「ゴホッ、ゲホッ!…おのれ、俺の事を此処まで虚仮にして無事に逃げ切れるなどと思う

 

 なよ!!」

 

 少し経ってようやく咳が治まり身体を起こして左慈は怒りの表情のままこれまた全速で

 

 及川達の後を追うのであった。

 

 

 

「気配からすればこっちの方に逃げたはず…あいつらの足の速さからすればもうすぐ姿が

 

 見える距離まで来たはずだ…逃げても無駄だぞ!おとなしく殺されろ!!」

 

 左慈は及川達が逃げ込んだ森の中に入ってそのままほぼまっすぐに進んでいた。左慈か

 

 らすれば及川達の気配を探る事位は問題無かったのであったが、さすがに森の中まで来

 

 ると動物達の気配もある為、完全に探り切れてはいなかったのである。そこに…。

 

「何だ、この音は…笛だと!?何処だ、何処から吹かれている!?」

 

 四方八方から笛の音が聞こえ、さらに森の木々がその音を反射していた為、左慈は気配

 

 を探る事はおろかその音によってさらに平静さを失っていたのである。しかもその音に

 

 驚いた動物や鳥の動く音や鳴き声で左慈はさらなる混乱を強いられていた。

 

「くそっ、この俺があんな奴らに…出て来い!!」

 

 ・・・・・・・

 

「隊長、どうやら予想以上にあいつは混乱しているようです」

 

「そうやろ、そうやろ。これはワイの世界でも最強の軍隊がとある戦争で散々に苦しめら

 

 れた方法らしいからな…って、かずピーが前に言っていただけやけど。しかしホンマに

 

 凄いな、これ」

 

 及川は部下の半分に命じて四方に散らせて通常は招集用に使っている笛を一斉に吹かせ

 

 たのであった。そしてその予想以上の効果に及川本人が一番驚いていたりする。

 

「よし、今の内にお前らはかずピーの所まで走るんや。向こうに着いたら文聘はんの指示

 

 に従うようにな」

 

 

 

「…隊長はどうされるのです?」

 

「ワイは此処に残る。笛を吹いてるもんらを置いて行くわけにはいかんしな」

 

「それならば隊長こそ先に行って下さい!此処は我らが食い止めます!!」

 

 及川のその言葉に部下は驚きの表情でそう訴える。

 

「そう言ってくれるんは嬉しいけど、此処位はワイに格好つけさせてくれ。心配せんでも

 

 ワイかてそう簡単に死ぬつもりは無いさかい。まだまだやりたい事も山ほどあるさかい

 

 にな…さあ、早く行け!」

 

 しかし及川の決意が固いのを知ると部下達は及川に一礼するとその場を離れていったの

 

 であった。

 

「さて…ああは言ったものの、我ながらちょっと格好つけ過ぎたやろか?此処まで来たら

 

 意地やな、これは。ワイかてたまにはこないな場面があっても良いやろ、かずピー?」

 

 及川はそう言いながら笛を口にくわえて場所を移動して自分も笛を鳴らす。

 

 そして、さらに笛の音が増えた事により左慈はさらに混乱する。

 

「くそっ…傀儡ども如きが!何時までもお前らにやられてばかりだと思うなよ!!」

 

 左慈はそう言うなり近くにある木を蹴り倒す。そしてその木が笛を吹いていた及川の部

 

 下の一人に直撃する。

 

 しかもそれを見た他の部下達が笛を吹くのを止めてしまった為、一人笛を吹き続けてい

 

 た及川だけが目立ってしまい、左慈に見つかってしまう。

 

「そこにいたか…この俺を此処まで虚仮にした報いを受けろ!!」

 

 

 

(こりゃやばいなぁ…マジで死んだな。すまん、かずピー…どうやらワイは此処までみた

 

 いや。後は頼んだで)

 

 左慈からの攻撃をまるでスローモーションのように見ながら及川はそう心の中で一人ご

 

 ちていた。

 

 しかしその時、何処からともなく飛んできた物体が二人の間に刺さる。いきなり飛んで

 

 きたそれに驚いた左慈は慌てて距離を取る。

 

「誰だ!!この俺の邪魔をする奴がまだ…もしかしてあれは斬馬刀!?それじゃ…」

 

 左慈が飛んできたそれが斬馬刀だと確認すると同時にそれが飛んできた方向に驚愕を浮

 

 かべたまま顔を向けると…。

 

「やれやれ…何だか騒がしいと思ったら。うかうか昼寝もしてられないな」

 

 何とそこに現れたのは空であった。

 

「李通はん!?」

 

「おおっ、及川か。久しいな、元気か?」

 

「いや、そないな挨拶してる場合やないんですけど…」

 

「うん?ああ、そうだったな…そういえばそっちのお前の顔にも覚えがあるな。あれだけ

 

 の谷から落ちてまさか生きていたとは少々驚きだな、小僧」

 

「小僧はやめろと言ったはずだ!!」

 

「はん、お前みたいなすぐにそうやって気に入らない事があったら怒鳴るような奴はどれ

 

 だけ生きてようが小僧とさほど変わらんよ。もう少し自制心という物を覚える事をお勧

 

 めするぞ」

 

 

 

 空は激昂する左慈を横目にそう言いながら悠然と歩を進め、斬馬刀を引き抜いて構える。

 

「くっ…傀儡の分際でまた俺の邪魔をするか!」

 

「傀儡傀儡とうるさいんだよ。お前が何処の何者で何の目的で此処にいるのかは知らない

 

 が、そう上から目線でも物の言い様は気に入らないね」

 

「黙れ!俺は外史を管理する為の存在、外史にいる傀儡にへりくだらなければならん理由

 

 など何処にも無い!!北郷一刀といいお前といい俺達の邪魔をする奴は全て殺す!!」

 

「ほぅ…お前は一刀の敵なのか?」

 

「ふん、何を今更!俺の目的の一つはあいつを殺す事だ!!」

 

 左慈は質問をする空の声が少し低くなったのに気付かずにそう答えていた。

 

「そうか、そうか…お前は一刀の敵なのか。良く分かった…ならば」

 

「ならば何だと言うんだ!?」

 

「お前は私の敵だ」

 

 空はそう言うと同時に斬馬刀を振り上げる。

 

 左慈は何とかその攻撃をよけたものの、バランスを崩して膝立ち状態になる。

 

「よけたか…おとなしく今の攻撃を受けていた方が楽に死ねたものを」

 

「何を言うかと思えば…死ぬのはお前の方だ!!」

 

 左慈は怒りのまま一気に空に詰め寄ると拳と蹴りの連続攻撃を繰り出す。しかし空はそ

 

 の全てを余裕のある表情のまま紙一重でかわす。左慈は自信を持って繰り出した攻撃を

 

 全てかわされて驚愕の表情を浮かべる。

 

「なっ!?この俺の攻撃が…何故だ!?」

 

 

 

「もう終わりか?ならば次は私の番だな」

 

 空はそう言うなり先程の左慈の攻撃を遥かに上回るスピードで連続攻撃を繰り出す。

 

 左慈は何とかそれをかわそうとするが、空の攻撃のスピードはさらに上がっていった為、

 

 後半のほとんどの攻撃をその身に受ける。

 

「ゴホッ、ガハッ!?…くそっ、何故だ!?何故この俺がこうも簡単に!?貴様は一体何

 

 者なんだ!?」

 

「お前の言う所の『外史の傀儡』とやらの一人じゃないのか?」

 

 左慈の呟きに空がしれっとそう答えるとその表情はますます苦い物へとなっていく。

 

「おのれ…ならば『左慈、左慈、聞こえますか?』…何だ、于吉!今はお前に構っている

 

 暇など無い!そっちはそっちで勝手にやってろ!!」

 

『ところがそうもいかないのです。左慈の行動から貂蝉にこっちの場所を嗅ぎつかれてし

 

 まったようで…今は何とか白装束達が防いでいますが、こっちが破られるのも時間の問

 

 題です。忌々しい話ですが儀式の場所を変えなければなりません。左慈もこっちに合流

 

 してください。でなければ私と貴方が各個撃破されてしまう恐れも…』

 

 于吉の言葉に左慈は忌々しげに歯ぎしりをする。

 

「くそっ…次から次へと邪魔ばかり!おい、斬馬刀女!!忌々しいがこの場は退いてやる、

 

 お前の命を取るのは次の機会に…『そう言わずに今お前の命を置いて行けば良いだろう

 

 が、遠慮はいらんぞ』…ゴバッ!?」

 

 左慈がまた捨て台詞を残して去っていこうとするのを遮るかのように今度は空の方から

 

 距離を詰めて斬馬刀を振り下ろす。左慈は何とか致命傷は免れたものの、その左腕は皮

 

 一枚のみ残して切れてしまい、何とか腕からぶら下がっているだけになっていた。

 

 

 

「ぐあぁぁぁ…俺の腕が!?畜生…俺の事を此処まで虚仮にしてただで済むと…『まだで

 

 すか、左慈!!』…くそったれ!!」

 

 左慈がそう叫ぶと同時にその姿は掻き消えるかのようにいなくなる。

 

「逃げられたか…及川、あいつは一体何なんだ?」

 

「あいつらは何でも管理者だとかいう奴で…」

 

 ・・・・・及川、説明中・・・・・

 

「ほぅ…だからあいつは私の事を傀儡呼ばわりしていたのだな」

 

「しかし李通はんは強いでんなぁ」

 

「そうでもないぞ、私に武術を教えてくれた師匠に比べればまだまだ…あの強さに追いつ

 

 こうと日々精進中だ」

 

「…李通はんより強いってどんだけの化けもんやねん」

 

 まさかそれが一刀の祖父の事だとは知らない及川は顔を引きつらせながらそう呟いてい

 

 たのであった。

 

「話は分かった。此処で何時までもこうしていても仕方ないし、一刀の所へ戻るか」

 

「李通はん、ようやく帰る気になったんですか?」

 

「ああ、色々大陸を回ってはみたが、一刀より良い男には巡り会えなかったからな」

 

「…せめてそこは『娘に会いたくなった』とかや無いんですか?」

 

「娘にも会いたいがそれ以上に一刀なだけだ。私とて恋する乙女な心は持っているつもり

 

 だが?」

 

 さっきまで左慈を圧倒していた悪鬼羅刹の如き空がまるで少女のように頬を赤らめてい

 

 る姿に及川はもうそれ以上ツッコむ気力すら無くなっていたのであった。

 

 

 

「及川、無事だったか…って、空様!?」

 

 及川達がしばらく移動していると無事に帰り着いた部下達から話を聞いた一刀が軍勢と

 

 共に向かって来ており、及川の無事を確認して安堵すると同時に空の姿を見て驚いてい

 

 たのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「そうだったのですか…及川達を助けてくれてありがとうございます、空様」

 

「礼など良い、一刀の敵ならば私にとっても敵なだけだしな。しかし結局奴には逃げられ

 

 てしまった上に何処にいるかも分からない状態ではこれ以上対処のしようも無いのが痛

 

 い所だが…『それについては大丈夫よぉん♪』『うむ、我らに任せよ!』…誰だ!?」

 

「「うっふ~~~~~~ん♪」」

 

 空様の声に応えるかの如くに遥か上空からやって来たのは…何度見ても破壊力抜群の貂

 

 蝉と…さらにもう一人似たような奴がいたりする。類は友を呼ぶとは良く言うがこれは

 

 やり過ぎだろうという位、貂蝉に負けず劣らずの凄まじさと気味悪さだ。

 

「ええっと…貂蝉?そっちの方はどちら様?」

 

「そうだったわぁん、こっちとは初対面だったわねぇん」

 

「我が名は卑弥呼、貂蝉と同じ管理者をしている者にして漢女道を究める者だ。よろしく

 

 頼むぞ…がっはっは!」

 

 ええーっ…卑弥呼?こんなのからお告げとか言われても絶対信じない自信があるけど。

 

「一刀の知り合いか…しかし先程の口ぶりではあの左慈とかいう奴の居場所を知っている

 

 という事になるのだな?」

 

 そして空様は二人の見た目にも全く動じる事も無く普通に話しかけていたりする…本当、

 

 この人って凄いよね。

 

 

 

「残念ながら居場所については見つけた途端に逃げられちゃったから再捜索の必要がある

 

 のだけどねぇん…でも、もうそう簡単に奴らの力を揮えないようにしたから安心して欲

 

 しいわねぇん」

 

「どういう事だ?奴らに何かしらの術でもかけたのか?」

 

「あいつらにというよりこの大陸…いえ、世界全体にねぇん。その術はあくまでも左慈と

 

 于吉の力を封じる為の物だから他にはまったく害を及ぼさないから安心してねぇん」

 

「そして奴らがそれを破るには大きな力の行使が必要になる。それをするには時間がかか

 

 る上にその兆候を見つける事も容易い故、今度はもっと奴らが行動を起こす前に対応す

 

 る事も出来るというわけだ」

 

 …正直、この二人にそう言われても何だか一抹の不安が残るのだが、現状ではこの二人

 

 に頼らざるを得ないのも事実だから致し方無しという所か。

 

「せやけど、そないな凄い事が出来るんやったら、左慈をちゃっちゃとやっつける事も出

 

 来るんちゃいますのん?」

 

 そうやって普通にこの二人に質問している及川も凄いけどな。

 

「すまぬ、我々にも色々制約があってな…逃げ場を無くした上で直接対峙する場面に持っ

 

 ていければ問題無いのだが…」

 

「追い詰められるとすぐに逃げてしまうから私達もちょっと困ってるのよねぇん」

 

 二人はそう言いながら身体をクネクネさせる…何処からどう見ても気味が悪いようにし

 

 か見えないんですけど。

 

「ならば今此処でこうしていても仕方が無いな…一旦洛陽に戻ろう。空様も良いですね?」

 

「ああ、あいつらの目的の一つが一刀ならば私がしっかり護衛してやらなければならない

 

 からな」

 

 

 

「えっ…護衛、ですか?」

 

「ああ、あの左慈とかいうのはなかなかの手練れだったしな。しかし私ならば奴を倒す事

 

 など造作も無い。それに私が常に傍にいればお前にとっても良い事ばかりだぞ…例えば

 

 夜とかな」

 

「ぶっ!?…ゴホッ、ゴホッ」

 

 あまりにも直球過ぎる空様の言葉に俺は咳き込んでしまう。しかもその声は結構大きか

 

 ったので、当然周りにいる輝里達にも丸聞こえなわけで…。

 

「ええっと…李通殿?一刀さんの護衛ならば『私達、北郷組』がいますのでご安心を」

 

「そうです!一刀様の護衛はこの龐令明の仕事ですから!!」

 

「それに李通さんがいなくなってから劉弁陛下も劉協殿下も時々寂しそうな顔をされてお

 

 られるようなので、李通さんはそちらに行かれた方が良いと思いますねー。お兄さんの

 

 の方は風にお任せくださいー」

 

 皆が何だか空様に対して敵愾心たっぷりな感じで近寄って来てそう言っていたりする…

 

 マジで怖いんですけど。

 

「なぁ…及川?」

 

「何や、リア充かずピーに同情の余地なんかまったくあらへんで!何や、この扱い…ワイ

 

 かて今回結構活躍したいうんに!これが主役と脇役の差か!理不尽や!!」

 

 及川に助けを求めようとしたら何やらそういう風に訳の分からない事を言われる…俺は

 

 何かしたというのだろうか?(自覚無し)

 

 

 

「ふむ…これならば北郷一刀の身の安全の方は大丈夫そうじゃな」

 

「ええ、私達は私達で左慈達の動向を探りましょう。それじゃ、またねぇん…この世界の

 

 ご主人様♪」

 

 そしてその喧噪の最中、貂蝉と卑弥呼がいなくなっていた事に誰も気付く事も無かった

 

 のであった。

 

 ・・・・・・・

 

 ~???~

 

「手ひどくやられましたね…これで良し、良いと言うまでその左腕は動かさないようにお

 

 願いしますね。治る前に動かすと、もうくっつかなくなってしまうかもしれません」

 

「くそっ…この俺が毎回毎回!あの斬馬刀女…李通とか言っていたな、次こそは必ず奴を

 

 殺してやる!」

 

 とある場所にて、左慈が空にやられた箇所を于吉が術で処置をしていた。

 

「何度も言いますがしばらくは自重を…貂蝉と卑弥呼がこの世界にかけた術のせいでこっ

 

 ちの術の行使には大きな気が集まる場所が必要になりました。しかし、その場所を作る

 

 のは私の力を以ても多大なる困難が付きまといます」

 

「ならばどうするんだ?」

 

「最初から大きな気が集まる場所で行います」

 

「そのような場所の心当たりがあるのか?」

 

「ええ、此処にもあれがありますから」

 

「あれか…しかし此処のあれにはおかしな結界がかかっていて入れなかったのではなかっ

 

 たのか?」

 

「その結界を破る術を今構築しているのです。それが完成さえすれば…」

 

「そうか、その時こそ北郷一刀も李通とやらもまとめて殺せる時だな…精々首を洗って待

 

 っているが良い!次会った時がお前らの命日だ!」

 

「左慈…何度も言いますが、それはやられ役の悪の幹部の台詞ですよ?」

 

「う、うるさい!余計な事を言うな!!」 

 

  

                                      続く。

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 ようやく此処まで書けました。

 

 という事で今回より本編の最終章、左慈・于吉との戦いをお送りします。

 

 とは言いながらいきなり左慈はやられ役全開の状態ですけどね(笑)。

 

 果たして于吉が術を行おうとする場所は?

 

 一刀達はそれにどう立ち向かうのか?

 

 続きを乞うご期待!…っていう位良いssを書きたいものですが(オイ。

 

 

 それでは次回、第七十八話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 追伸 命達と空との再会は次回お送りする予定…。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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