No.788665

九番目の熾天使・外伝 ~とあるモブキャラ視点②~

竜神丸さん

前回の続きです。

2015-07-10 18:04:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6559   閲覧ユーザー数:1535

どうも、A子です。

 

今回は前回紹介し切れなかったナンバーズメンバーの皆さんを紹介しようと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11:Blazの場合

 

 

 

「わひゃっ!?」

 

「うぉっと!?」

 

No.20―――Blaz。元はクロガネ艦隊を率いるナンバーズメンバー候補の一人だったのですが、最近になって正式にナンバーズメンバー入りしたそうです。口調はお世辞にも良い方とは言えず、普段から何処かめんどくさがり屋な雰囲気を放っています。クロガネ艦隊の人達は、彼が良い人だと言っていましたが…

 

「痛ぅ……あ!? す、すいません、Blazさん!」

 

「痛ってぇ……お前なぁ、いきなり出て来られたら危ねぇだろうが」

 

「あうぅ、本当にごめんなさい…」

 

荷物を運んでいた私は曲がり角でBlazさんとぶつかってしまい、ダンボールも落として資料が大量に散らばってしまいました。あぁ、またやってしまった。私はBlazさんに怒られる事を覚悟しましたが…

 

「はぁ……んで、怪我は無ぇのかよ」

 

「え?」

 

「怪我は無ぇのかって聞いてんだ? どうなんだ?」

 

「あ、えっと……はい、大丈夫です…」

 

「そうか……ま、お前も何だかんだで忙しいみたいだしよ、特にあーだこーだは言わねぇ。次から気ぃ付けろよ」

 

そう言って、Blazさんは散らばった資料を掻き集め始めました。

 

私はクロガネ艦隊の面々とは何度か話をした事があり、その際に彼等からBlazさんの印象について何度も聞かされてきました。

 

 

 

 

 

 

「口は悪いけど、何だかんだで良い人だ」って。

 

 

 

 

 

 

今なら、クロガネ艦隊の人達がそう言っていた理由がよく分かります。

 

「Blazー♪」

 

「ん…げ、ニュー!? ちょ、待て、まだ資料集めてる最中……のぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

…そして、彼もまた苦労人である事を知りました。

 

前に支配人さんとawsさんの為に買っておいた胃薬、まだストックは残ってただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14:黒鉄刃の場合

 

 

 

「きゃあっ!」

 

「おっと」

 

No.21―――黒鉄刃。最近ナンバーズメンバーに加入したばかりの新入りと言える人物で、普段は誰かに仕える執事のように振る舞う青年……なのですが、たまに敬語がなくなって凶暴な一面を見せる時があるみたいです。おまけに仕事人間である事から、あのZEROさんとは相当仲が悪いようなのですが…。

 

ぶつかった事で資料の入ったダンボールは落ちてしまいましたが、倒れそうになった私は気付けば刃さんによって抱きかかえられていました……ッ!? か、顔が近い…!!///

 

「危ないですね……急いでいるのは分かりますが、少しは周りを見た方が良いですよ?」

 

「す、すいません……ッ…///」

 

「…少し顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です!!/// 本当にすみませんでひゅた…ッ」

 

か、噛んだ、盛大に噛んだ……穴があったら、今すぐにでも飛び込みたいです…orz

 

「? …まぁ良いでしょう。それからこのダンボール、女性が一人で持つにはキツそうですね。私も運ぶのを手伝いましょう」

 

「え、あ、そんな!? そこまでして貰う訳には…」

 

「あまり女性にそんな大変な事はさせられませんよ。少しは世話を焼かせて下さい」

 

「あ、あぅぅぅ…///」

 

笑顔が、笑顔が綺麗過ぎる…!!

 

本当に噂で聞いたような凶暴性を持っているのでしょうか? 私から見たらディアさんのような誠実な人間にしか見えません。誰かが適当な事を言ってるだけじゃ―――

 

「ん、何やってんだお前等」

 

「あん? テメェこそ何でこんな所にいやがんだZERO!! テメェにゃ他の仕事をするように言った筈だぞ、そんな事も忘れたのか、あぁ!?」

 

「―――えぇぇぇぇぇぇ…」

 

前言撤回。確かにこの人にも凶暴性はありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15:ZEROの場合

 

 

 

「はん、二人仲良く物拾いか? お優しいこって」

 

「うっせぇなぁ、テメェにゃ関係の無ぇ事だろうがよぉ!!」

 

「うわぁ…」

 

No.13―――ZERO。ひたすら“食べる”事を目的に行動する旅団一の戦闘狂で、かつて管理局どころか旅団にも大損害をもたらしてしまった張本人。私がここへ来る前は監獄に入れられていたようですが、色々あって団長さんに釈放され、再び前線に復帰。竜神丸さんと並ぶ二大危険人物の一人として、今も仲間達から恐れられています。

 

「あ、テメェ!? また厨房から宝石の肉(ジュエルミート)を盗みやがったな!? どんだけ喰えば気が済むんだよテメェって奴はよぉ!!」

 

「はん、いつ何を喰おうと俺の自由だろう? 喰う事が俺の存在理由なんだからな」

 

…現在、私の前ではそのZEROさんと刃さんが火花を散らし合っています。あのぉ~二人共、喧嘩するならするで、その踏んでいる資料から足をどけて貰えると助かるのですが…

 

「この……いい加減、一回は朽ち果ててみなきゃ分からねぇようだなぁ!!」

 

「上等だ、やってみろよ新入りぃ…!!」

 

ちょ、こんな所でバトる気ですか!?

 

マズい、このままじゃ資料が巻き添え喰らって悲惨な事になる!! それだけは何としてでも防がなくては!!

 

そう思った私ですが……その心配は杞憂に終わりました。

 

「二人共、そこまでよ」

 

今にも殺し合いを始めそうだった二人でしたが、ある女性の声を聞いて踏み止まりました。私が声の聞こえた方向に振り向いてみると、そこには二人の女性が立っていました。あれ、確かあの人達は…

 

「ッ……朱音さん、青竜さん…」

 

そうだ、アン娘ラヴァーズの朱音さんと青竜さんだ。二人の姿を見た瞬間、刃さんは鬼のような顔が一瞬で先程までの優しげな青年の顔に戻り、ZEROさんはわざと聞こえるように舌打ちをかましました。

 

「チッ貴様等…!!」

 

「あなた達の仲が悪い事は知っていますわ。それでも、ここで喧嘩をして良い理由にはならなくってよ?」

 

「それにZERO、あなただってまた監獄に戻りたくはないでしょう?」

 

「…フン」

 

二人の忠告を真面目に聞き入れたのか、それとも興醒めしただけなのか、ZEROさんはすぐにその場から立ち去ってしまいました……去り際に資料を踏んでいくのはやめて欲しいところですが、それを言ったら殺されそうなので敢えて何も言いません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14:朱音と青竜の場合

 

 

 

 

「あなた、怪我は無いかしら?」

 

「は、はい、大丈夫です…」

 

「刃さんもらしくありませんわよ。いくら彼とそりが合わないからって」

 

「はい、すみません。私も彼女の事を言えませんね…」

 

No.04―――朱音。あのアン娘ラヴァーズの中心核でもある存在で、他のナンバーズメンバーからも慕われている姉御肌。最近はアン娘さんとも一線も踏み越えてしまいそうな勢いがあるみたいなのですが……正直、その辺は私からは何とも言えません。

 

No.22―――青竜。刃さんと同じく最近加入したナンバーズメンバーで、彼女もまたアン娘ラヴァーズの一人にして婚約者。朱音さんと違い、こちらは気品のあるお嬢様タイプです。彼女もまた他のナンバーズメンバーとは仲が良いみたいで、既に朱音さんと共にファンクラブまで密かに出来てしまっている模様。

 

しかし私からすれば、この二人が仲良く歩いている光景すらも非常に珍しく思います……え、何故そんな事を言えるのかって?

 

それは…

 

「それにしても青竜さん……何やら機嫌が悪そうですね」

 

「あら、そんな事はありませんわよ? ただ、そこの朱音が私に黙ってアン娘さんと『バキューン!』とか『ドガガガガ!』とか『アッハ~ン』とか色々やっていると聞いて、少し羨ましいと思っているだけですわ」

 

「あらあら、そういう瑞希こそ私に隠れてアン娘と『ピーーーー』とか『ガーーーー』とかふしだらな事ヤッてたそうじゃない。人の事を言えるのかしらねぇ?」

 

…そう、この二人はアン娘さんの事になると急激に仲が悪くなるんです。先程は刃さんとZEROさんの喧嘩を仲裁する側だったのに、今度はこの二人が喧嘩する側になってしまいました……というか二人共、さっきから色々不健全過ぎて放送コードに容易く引っかかりそうな単語が次々と飛び交っているんですが!?///

 

「「言ってくれるわね」」

 

あぁ、周囲の壁に罅が、罅がぁ!? 気付けば刃さんもドン引きして後ろに下がってますし、これじゃまた先程みたいな事に―――

 

「あれ、二人共。こんな所で何やってるんだ?」

 

「「いえ、何でも無いわよ(ありませんわ)♪」」

 

来た、救世主アン娘さん!

 

彼が来た瞬間、二人は一瞬にして乙女の顔に戻りました。アン娘さんありがとう、おかげで被害が出なくて済みました!

 

「む、また資料が散らばっているようだな。どれ、手伝おう」

 

「あら、それなら私も手伝うわよ。ねぇ瑞希」

 

「えぇ朱音、それくらい当然の事ですわ」

 

アン娘さんに続く形で、二人も一緒に資料拾いを手伝ってくれる事になりました。まぁ色々ありましたが、拾うのを手伝ってくれるのはありがたい限りです。強いて言うなら、アン娘さんに見えないところで互いを足で蹴り合ってなければ完璧だったのですが。

 

「…災難ですね、刃さん」

 

「言わないで下さい、自分でも分かってましたから」

 

私と刃さんは、二人揃って溜め息をつく羽目になるのでした……時間に遅れたら遅れたで、事情話せば先輩達も納得はしてくれるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15:蒼崎夜深の場合

 

 

 

 

「キャア!」

 

「うわっぷ…!?」

 

No.08―――蒼崎夜深。ナンバーズメンバーの中では初期メンバーに含まれる人物ですが……彼は旅団における一番の女好きで、色んな女性にナンパを仕掛けています。と言っても、最近はそのナンパも上手くいってはおらず、ナンパしては返り討ちにされている光景が日常茶飯事と化しつつあります。

 

そんな蒼崎さんに私はぶつかってしまい、彼は私の方に向かって突っ込む形で二人揃って転倒しました。あぁ、またこのパターンか……って!?

 

「…んむ? ここは何処だ?」

 

「な、な、な…!!」

 

気付けば、倒れて尻餅をついた私のスカートに、蒼崎さんが堂々と顔を突っ込んでいる状態が出来上がっていました…!!///

 

「あ、あ、あ、あ、蒼崎さん!? いきなり何するんですか!!」

 

顔が一気に熱くなっていくのが自分でも分かります。しかし、次に返ってきた返事は……私にとっても意外な言葉でした。

 

「―――ハッ!? す、すまん、俺は君に最低な事をしてしまった!!」

 

「…へ?」

 

「こんな事して、許されないのは承知している……この通りだ。何なら、今すぐここで俺という存在を駆逐してくれたって構わない!!」

 

「え、あ、いや、あの!?」

 

「女性のスカートに顔を突っ込むなど、男として最低かつ風上にも置けない所業……俺はとんでもない大罪を犯してしまったんだ、殺されても文句は言えない!!」

 

「ちょ、蒼崎さん!?」

 

普段の蒼崎さんなら、謝りつつもナンパを仕掛けて来た筈なのに、どうした事だろうか。今の彼はナンパするどころか盛大な土下座をかまし、私に対して何度も謝って来ているではないですか。頭を床に叩きつけて謝って来るその姿には、普段のような女たらしの雰囲気がまるで存在していません。一体どうしちゃったのでしょうか。

 

「あ、頭を上げて下さい!! 私も別に、そんなに怒ってはいませんから…!!」

 

「いや、しかし、本当に許されない事をしてしまったのは事実だ……そうだ、俺は今から滝壺に行ってこの薄汚い煩悩を退散して来ようと思う。自分という穢れた存在を清めるには、何としてでも自分という存在を追い詰めなければならないのだから!!」

 

「あの、ちょっとー!?」

 

私が何か言うより先に、蒼崎さんは猛スピードでその場から走り去ってしまいました。いや、確かに私もそこまで怒っている訳ではありませんが……一体何があったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、私はまだ知る由もありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の知らないところで、蒼崎さんの人格にも異変が生じ始めていた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16:miriの場合

 

 

 

 

「蒼崎さーん、何処ですかー…キャッ!?」

 

「ぬぉ!?」

 

No.07―――miri。旅団における古参メンバーの一人で、主に敵地への潜入任務を担当している人物。Blazさんと同じく口は悪いですが、彼もまた他者への気遣いを忘れない性格であるが故に、部下の皆さんからとても慕われています。

 

姿が見えなくなった蒼崎さんを探している途中、私はmiriさんとぶつかってしまうという同じミスをまた犯してしまいました。あぅう、またやっちゃったよ私…

 

「たく、危ねぇから気ぃ付けな。俺だからまだ良かったが、これがデルタさんや竜神丸やZEROの奴だったら大変な事になってたぞ」

 

「うっ……すみません」

 

確かに、もしあの三人とぶつかったらと思うと後が怖いです。まぁそもそもあの三人の場合、私とぶつかる前に華麗に避けて私だけが転ぶ事になるでしょうけども。

 

「んで、どしたよ? そんな急いで」

 

「あ、いえ、実は…」

 

事情を説明すると、miriは呆れたように溜め息をつきました。

 

「蒼崎の野郎、どんだけぶっ飛んだ行動してやがんだ……まぁ分かった。もし見かけたら、お嬢ちゃんがお前を探してる事を俺から伝えておこう」

 

「ありがとうございます……あれ?」

 

先程ぶつかったのが原因でしょうか。私の足元には見覚えの無い一枚の写真が落ちていました。私はこんな写真を持っていませんから、恐らくmiriさんの物でしょう。

 

「あの! これ、落としましたよ」

 

「ん? あぁ、悪いな」

 

「miriさん……つかぬ事をお聞きしますが、その写真って…」

 

「あぁ、俺の昔の同胞達だよ。管理なき世界……こんな名前の組織、お前は知ってるか?」

 

「は、はい……確か、miriさんが旅団に入る前に所属していた…」

 

「そう。それなりに仲の良い奴も何人かいたんだが……組織は壊滅した。一人の男が裏切って、組織その物を管理局に売った所為でな」

 

「ッ…今、その人って…」

 

「あぁ、管理局の上層部に幹部として所属してやがる……あのクソッタレだけは何としてでも、俺がこの手で叩き潰さなきゃ気が済まねぇ…!!」

 

持っていた写真を力強く握り締め、鬼のような形相を浮かべるmiriさん。私には、今の彼がかなり危なっかしく感じます。下手したら、私達から遠く離れて行きそうな感じがして…

 

「…miriさん」

 

「あ?」

 

「私はあなたではないので、あなたの憎しみがどれ程の物かは分かりません。ただ…」

 

「ただ、何だよ?」

 

「…せめて、死なないで下さいね。旅団にとって、あなたは掛け替えの無い仲間の筈ですから」

 

「! …分かってはいるさ、そんな事くらい。俺が死んだら、先に死んでいった連中にあの世でぶっ殺されちまうからな」

 

「だったら!」

 

「だが、そうも言ってられないんだよ。奴への復讐を果たす事……それが、俺が旅団に入った一番の理由だ」

 

miriさんは写真を懐にしまい、そのまま歩き去って行ってしまいました。

 

う~む、これはあまり聞き入れてくれたとは言い難いですね……何とかならない物でしょうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17:朱雀の場合

 

 

 

 

「わきゃ!?」

 

「あいたっ!?」

 

No.23―――朱雀。刃さんや青竜さんと同じく、最近加入したばかりの新規ナンバーズメンバー。年齢が比較的若い事も関係しているからか、旅団の中でも貴重な常識人枠であり、苦労人仲間であるawsさんや支配人さんとは割と早い段階から仲良くなったらしい。

 

そんな朱雀さんですが、彼も彼で書類仕事で忙しかったのでしょう。私とぶつかった際に、彼の持っていた書類がたくさん散らばってしまいました……って書類の量が多っ!? 私が運んでいる資料よりも多いですよ!?

 

「ん……あわわ、すみません!? 前をよく見ていませんでした!!」

 

「え、あ、いえ、こちらこそすみません朱雀さん!!」

 

私も朱雀さんも、慌てて自分の拾うべき資料を拾い集めていきます。それにしても朱雀さん、何だか少し疲れ気味のように見えるのは気の所為でしょうか…?

 

「朱雀さん、大丈夫ですか? 目の下に隈がありますが…」

 

「えぇ、これぐらいは大丈夫です。OTAKU旅団に加入させて貰っている以上、僕から勝手に仕事を休む訳にはいきませんから…」

 

「!」

 

そうだ、思い出した。確か彼は、ある平行世界でレジスタンスの一員だった筈。聞いた話だとレジスタンスは敵との戦いには勝利したものの、多くの仲間を失ったって…。

 

「あの、朱雀さん…」

 

「大丈夫です。あなたが思ってるような無茶はしませんから」

 

「でも…!」

 

「旅団に入ってから、僕は一時期こう考えていました。多くの仲間達が死んだのに、自分だけこんな風に生きて良いのだろうかって……でも去年のクリスマスの時、支配人さんから言われました。レジスタンスの皆に申し訳ないと思っているのなら、生きてみせろって。それこそが、今の僕に出来る事だって……だからこそ、僕は自分に出来る無理をして、精一杯生きていこうと思っています。それが自分に出来る、一つの贖罪でもありますから」

 

「朱雀さん…」

 

彼もまた、ディアさんのように純粋な人間だ。失った仲間の分も生き抜いてみせる。その為に自分が出来る範囲内で無茶をする。その生き方は恐らく、レジスタンスにいた頃から変わってはいないのでしょう。でも…

 

「やっぱり、無茶はしないで下さい」

 

「A子さん…?」

 

「死ぬつもりが無いなら良いです。けど、たとえ自分に可能な無理でも、一人で背負い込まないで下さい……一緒に背負い込める仲間だって、ここにはたくさんいる筈ですから」

 

「! …はい。ありがとうございます」

 

朱雀さんはちゃんと聞き入れてくれたようです。良かった良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

18:FalSig&ルカの場合

 

 

 

「あいたぁっ!?」

 

「ッ…!?///」

 

「わぉ」

 

No.18―――FalSig。ナンバーズメンバーの中でもかなりの遊び好きで、旅行にお勧めな観光スポット、カップルで向かうのにお勧めなデートスポットなどに詳しい事から、多くの人から相談される事が多いそうです。

 

No.19―――ルカ。No.06に属するロキの弟で、彼もまた真面目な性格の常識人。ここ最近は一番上のお兄さんが滞在している事から、ロキさん共々たっぷり扱かれている模様……ご苦労様です。

 

そんな二人ですが、私が何も無いところで転んだ瞬間、ルカさんは思わず顔を赤らめて視線を逸らし、FalSigさんは面白そうな表情をしつつ視線を逸らしました。一体どうしたのでしょうか……って、またスカートがめくれちゃってる!?///

 

「え、えっと、大丈夫ですか…?」

 

「だ、大丈夫です…///」

 

「ヒュ~♪ ルカ君も、反応がいちいち純情だねぇ~」

 

「んな……FalSigさんこそ、いちいち弄らないで下さい!!///」

 

私とルカさんが顔を赤くしているのに対し、FalSigさんは面白そうな表情を浮かべています。年上の余裕って奴なのでしょうか、その余裕な精神が羨ましいです…///

 

「あ、ところでA子ちゃん。急いでたみたいだけど一体どうしたの?」

 

「え、あ、はい、実はルカさんを探してたんです。ソラさんからロキさんとルカさんを呼んで来いと言われていたので…」

 

「うげ、またあの地獄のトレーニングに付き合わされるのか……はぁ、鬱だなぁ」

 

ルカさんは嫌そうな表情を浮かべつつ、すぐに向かって行ってしまいました。地獄のトレーニングって、そんなに大変なのでしょうか…?

 

「あらら、ルカ君も大変だねぇ」

 

「FalSigさん、ソラさんのトレーニングってそんなに大変なのですか? 私はよく知らないのですが…」

 

「あ、そっか。A子ちゃんまだ新人だもんね。ソラさんのトレーニングかぁ……何十キロもある岩石を背負わされたまま崖から突き落とされたり、水中にダイブしたまま息継ぎを長時間許されなかったり、大量の風船を括り付けられたまま何処か遠い空に飛ばされたり、次元の違う臭さを誇るドドリアンボムの回収に行かされたり、ZEROの相手をさせられたり、それから―――」

 

「もう良い、もう良いです!!」

 

そんなに大変な事をさせられてるんですかあの二人は!? スパルタにも程がありますよ!?

 

「ちなみに言っておくと、今言った内容はまだまだ可愛らしい物だ。これよりもっとハードなトレーニングをあの二人はやらされてるみたいでな」

 

「マ、マジですか…」

 

ロキさん、ルカさん、ご愁傷様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

19:ロキの場合

 

 

 

 

「ロキさ~ん、何処ですか……きゃう!?」

 

「のわっ!?」

 

No.06―――ロキ。先程紹介したルカさんの兄に当たる人物で、旅団には昔から属していた初期メンバー。旅団におけるムードメーカー的な存在ではありますが、最近はやたらと散々な目に遭わされる機会が増えて来ている苦労人の一人でもあります(主にソラさんが原因で)。

 

そんなロキさんですが、最近の彼は女難の相が出ているみたいです。現に…

 

「「…あ」」

 

倒れた私の胸にロキさんの顔が埋まっている事から、それがよく分かります。あぁ、結局私はまたこんな目に遭うんですね…

 

「…す、済まん」

 

「い、いえ…///」

 

「な、殴りたいなら殴って構わない。そうされても文句は言えない立場だし」

 

「だ、大丈夫です! ロキさんだって、わざとやった訳じゃないのは分かってますから…」

 

「…ありがとう」

 

そう言った瞬間、ロキさんは涙を流しながら私の手をガッチリ掴んで来ました。恐らく、普段は弁解も聞いて貰えないまま制裁を受ける事が多いのでしょう。そう思うと、何だか彼が可哀想に思えてきました。

 

「…ところで、俺を探してたみたいだな」

 

「あ、えっと……はい! ソラさんが、ロキさんとルカさんを探して来いって…」

 

「…アァウン、分カッタヨA子チャン…」

 

あぁ、説明した瞬間にロキさんの顔が真っ白になっていく!? 言葉も凄い片言だ!?

 

「ハハ、ハハハハハ、ソレジャア行ッテ来ルヨ…」

 

「え、えっと、あの……が、頑張って下さい! 私まだ新米ですので、あまり多くは言えませんが……ロキさんにも他の皆さんにも、あまり無茶はして欲しくないのは本当ですから…」

 

「…ありがとうA子ちゃん!! 君は天使だ!!」

 

「うひゃあっ!?///」

 

は、励まして貰って嬉しいのは分かりますが、そんな急に抱き着かれたら恥ずかし過ぎて……あぅ!?

 

「ん? おい、どうした? お~い」

 

「キュゥゥゥゥゥゥ…///」

 

あぁ、ロキさんの心配そうな顔が見えます……そんな表情ですらカッコ良いんですから、本当に男というのはズルい生き物です…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20:クライシスの場合

 

 

 

「う、うぅん……あれ?」

 

「おや、目が覚めたかね」

 

「は、はい……って団長ぉ!?」

 

No.01―――クライシス。若き時代から戦士として戦い続け、今ではOTAKU旅団の頂点に君臨している存在。未だ謎の多い人物ではありますが、彼のカリスマ性に惹かれて旅団に加入したメンバーは数知れず。実際、私もその一人です。

 

いや、そんな事より何故団長がここに!?

 

「君がロキ君に抱えられていたところに、たまたま私も通りかかってね。彼とルカ君はソラとのトレーニングで忙しくなるそうだから、私が代わりに君を医務室まで運んで来たのだよ」

 

「す、すすすすすすすみませんでした!! わざわざ団長のお手を煩わせてしまい…」

 

「構わんよ。仲間への気遣いが出来なくて、団長など務まる筈も無いからな」

 

「団長…」

 

そう、これこそ私が旅団に加入しようと思った切っ掛けだ。

 

旅団に加入する前、私の家族はそれなりに平穏な暮らしをしていた。しかし父が仕事をクビにされた事で収入を得られなくなり、莫大な借金まで抱える羽目になってしまった。父はヤケになって酒に溺れ、私や母に暴力を振るう暴君と化した。心身共に限界が来た母は病気で亡くなり、父も私を置いて蒸発。私は一人この世に取り残されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな私を拾ってくれたのは、他でもない団長だった。

 

 

 

 

 

 

団長は私を楽園(エデン)まで連れ帰り、私に平穏な生活を与えてくれた。この人に拾われなかったら、今頃私は露頭に迷ったまま一人空しく死んでいた事だろう。それだけ、団長には返し切れないくらいの大恩がある。だからこそ私は、自ら調査班の仕事を引き受けたのだ。少しでも団長に、恩返しがしたかったから。

 

「…本当に、ありがとうございます。団長のおかげで、私は…」

 

「君が元気ならばそれで良い。だが、最近の君は少し働き過ぎなようだからな。少しくらい休みたまえ」

 

「え、しかしまだ仕事が…」

 

「調査班の方には私から言っておくよ。それとも、こう言った方が良いかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はしっかり休め。これは命令だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!! …はい、分かりました…///」

 

「分かればよろしい」

 

団長にそう命令されてしまっては、私はそれに従う他ありません。団長が医務室から立ち去った後も、私は団長から告げられた命令が頭から離れませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

『今日はしっかり休め。これは命令だ』

 

 

 

 

 

 

 

『これは命令だ』

 

 

 

 

 

 

 

『命令だ』

 

 

 

 

 

 

 

あ、あれ、おかしいな。

 

 

 

 

 

 

私はただ、団長の命令に従って休む事になっただけなのに…

 

 

 

 

 

 

どうしてこんなにも、胸が苦しいんだろう…?

 

 

 

 

 

 

あれ、私ってもしかしてM…?

 

 

 

 

 

 

…うん。もうMで良い、というか変態で良いや。

 

 

 

 

 

 

命令する時の団長の顔に、思わずカッコ良いと思ってしまったのは間違いないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…という事があったの」

 

「えぇ~!! 良いなぁ~A子ばっかりズルい~!!」

 

後日。

 

その時の事について、同僚に少しだけ自慢出来たのはここだけの話である。

 


 
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