No.784624

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

soranoさん

外伝~”放蕩皇子”の嘆願~中篇

2015-06-20 00:04:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1293   閲覧ユーザー数:1188

 

 

同日、21:10―――――

 

 

~セントアーク市・宿酒場”トバ”・客室~

 

「……改めて自己紹介をしよう。私の名はオリヴァルト・ライゼ・アルノール。エレボニア皇子の一人だ。遥か昔からゼムリア大陸全土が崇めつづけて来た存在である貴女に出会えた事に貴女自身に感謝する、”空の女神”エイドス殿。」

エイドスと対面したオリヴァルト皇子は恭しく会釈をして挨拶をし

「フフ、感謝をするのならば”イース”に感謝してください。―――改めまして。私の名はエイドス・クリスティン・ブライト。”冒険家”アドル・クリスティンと”自由の女神”フィーナの娘にして、大変不本意ですが人々から”空の女神”と称えられている者です。」

エイドスは苦笑した後自己紹介をし、エイドスの自己紹介にエステル達は冷や汗をかいて脱力した。

 

「エ、エイドス……」

「こんな時くらい、真面目に自己紹介をして下さいよ……オリビエさんですらも真面目に自己紹介をしたんですから……」

「というか、何でそんなに”空の女神”って呼ばれる事を嫌がっているんだよ……」

アドルは表情を引き攣らせ、ヨシュアとトヴァルは疲れた表情で呟いたが

「え?だって、”空の女神”なんて二つ名、痛々しくありませんか?」

エイドスの発言によって、エステル達と共に再び冷や汗をかいて脱力した。

 

「ア、アハハ……ケビンさん達が聞いたら卒倒しそうだよね……」

「まあ、自分達が崇めつづけて来た存在の名を痛々しいと思われたら、聖職者なら間違いなくショックを受けるでしょうね……」

「ハア……本当に何があって、こんな性格になったのよ……」

「というかいきなり、シリアスな雰囲気を台無しするんじゃないわよ。」

「エステル、君もその発言で台無しにしているよ……」

(まさに似た者同士ですわね……)

ミントとエレナは苦笑し、フィーナは疲れた表情で頭を抱え込み、ジト目でエイドスを見つめるエステルにヨシュアは疲れた表情で指摘し、エステルの棒の中にいるフェミリンスは呆れた表情をしていた。

 

「―――さてと。”空の女神である私”に用があるとの事ですが、一体何の御用でしょうか?」

「……ッ!それが”女神として”のお前さんの顔って訳か……」

突如神々しい雰囲気を纏い、真剣な表情になったエイドスに驚いたトヴァルは目を細めてエイドスを見つめ

「……その前に確認したい事がある。女神殿はリウイ陛下達―――メンフィルからの依頼―――”ハーメルの悲劇”を世界中に公表した際、リベールは完全に被害者であるような事を公言する依頼を請けたという話は真(まこと)だろうか?」

「あ…………」

「オリビエ。あんた、まさか………」

「………………」

オリヴァルト皇子のエイドスに対する問いかけを聞いたミントは辛そうな表情をし、エステルは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめ、ヨシュアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

「―――ええ。メンフィル帝国の方々には”今のゼムリア大陸”で活動する為に、色々と便宜を図って貰えましたからね。その”対価”として私は彼らの依頼を請けただけですが……何か反論でもおありなのですか?」

「いや、あの件によって起こった”百日戦役”は事実リベールは完全に被害者の為、エレボニアは反論のしようがない。……他国の領地欲しさに守るべき民達を虐殺し、あろうことかその罪を侵略する他国によるものにして戦争を仕掛けると言った罪深き所業はこのゼムリア大陸の”女神”であるエイドス殿や、エイドス殿の母君も許せない所業だろう。」

「……………」

「フィーナ…………」

エイドスの問いかけに答えたオリヴァルト皇子の話を聞いて複雑そうな表情をしているフィーナをアドルは辛そうな表情で見つめ

「……もしかして私に用とは、”ハーメルの悲劇”を公表した際リベールをフォローする発言の件に関する事ですか?」

目を伏せて考え込んでいたエイドスは静かな表情で問いかけた。

 

「……ああ。できれば、エレボニアの事もフォローする発言を”空の女神”である貴女に公言して頂きたい。確かに”ハーメルの悲劇”はエレボニア帝国自身によって行われた事だが、実際に”ハーメル村”を襲わせるようにした真の黒幕は”結社”の”蛇の使徒”―――”白面”ゲオルグ・ワイスマンの仕業だ。」

「……”ハーメルの悲劇”の真相や真の黒幕等についてもリウイ陛下達より話には聞いています。エレボニア帝国だけに非がある訳でない事は理解していますが……それでも、碌に調べる事もせずにリベール王国に侵攻する事を決めた政府や皇家の方々に罪がないとは言わせませんよ?」

「勿論理解している。だが何も知らないエレボニアの民達に罪はない。どうかエレボニアの民達の為にも”ハーメルの悲劇”の件でエレボニア帝国の事もフォローする発言を公言して頂けないだろうか?――――どうかエレボニアに御慈悲を。」

エイドスの言葉に静かな表情で頷いたオリヴァルト皇子は何と土下座をして頭を床につく程深く下げ

「オリビエ………」

「オリビエさん…………」

「………………」

皇族としてのプライドを捨ててまでエイドスに嘆願するオリヴァルト皇子の様子をエステルとミントは心配そうな表情で見つめ、ヨシュアは辛そうな表情で黙り込み、アドル達はそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

 

「…………フゥ。第三者である私に頭を下げて頼み込む前に、まず頭を下げて謝るべき人物がこの場にいると思うのですが。」

自分に嘆願するオリヴァルト皇子の様子を黙って見つめていたエイドスは軽く溜息を吐いて指摘し

「エイドスより前に頭を下げて謝るべき人物だと?」

「当事者であるヨシュアさんの事ですね……」

「あ……」

「ヨシュア…………」

エイドスの指摘にトヴァルが不思議そうな表情をしている中、複雑そうな表情をしているエレナの言葉を聞いたミントは不安そうな表情をし、エステルは辛そうな表情でヨシュアを見つめた。

 

「……確かにその通りだね。―――自国の安寧を優先し、守るべきハーメルの民達を虐殺した所か”ハーメルの悲劇”を闇に葬った私達エレボニア帝国の事を許してくれとは言わない。だがそれでも謝らせてくれ……――――すまなかった。君やレーヴェ君が望むのならばエレボニアが存続しようが、滅亡しようが父上達にも君とレーヴェ君の前で謝罪をさせるつもりだし、賠償もするつもりだ。」

エイドスの指摘に頷いたオリヴァルト皇子は土下座をした状態でヨシュアを見つめた後再び頭を下げ

「…………頭を上げてください。確かに僕とレーヴェはあの件についてエレボニア帝国政府に対して色々と思う所はありますが……あれが切っ掛けとなって、僕は第2の故郷であるリベールの人々やエステルと出会う事ができ……レーヴェは姉さんとも再会できました。憎しみを抱えたままではお互い幸せになれない事は理解していますし、あの件の首謀者は全員”報い”を受けました。レーヴェはわかりませんが……僕はエレボニア帝国政府や皇家の方々を恨むつもりはありませんし、故郷であったエレボニアもかつてのように平和を保ち続けて欲しいと今でも思っています。」

「ヨシュア……」

「ヨシュア君…………―――ありがとう。」

ヨシュアの答えを聞いたエステルは明るい表情をし、オリヴァルト皇子は感謝の言葉を述べ

「………それで。オリヴァルト皇子の依頼はどうするのかしら、エイドス?」

フィーナは静かな表情でエイドスを見つめて問いかけた。

 

「…………いくつか条件があります。その条件を全て呑むのであれば、”ハーメルの悲劇”を公表後”空の女神”としてリベール同様エレボニアの事をフォローする発言を公言致しましょう。」

「条件だと?」

エイドスの答えにトヴァルは眉を顰めた。

「一つ目は”ハーメルの悲劇”によって亡くなった”ハーメル”の民達全員分のお墓をハーメル村跡に建て、エレボニア皇家と政府の方々は今後永遠に毎年彼らのお墓参りをしてあげて下さい。特にエレボニアの”皇”はその日は必ず出席するようにしてください。それとお墓は慰霊碑等ではなく、個人のお墓にしてあげて下さい。」

「エイドスさん…………」

「……承知した。その日は毎年国を挙げて、”ハーメル”の民達に対する追悼をするように父上に進言し、実行する。」

エイドスの言葉にヨシュアが驚いている中、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って会釈をした。

 

「二つ目は現エレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールは死後、ハーメル村跡に建てられたハーメルの民達の墓地の中に彼の墓を建て、その墓に葬ってください。」

「ええっ!?」

「ちょっ、エイドス!?一体何を考えているの!?皇族は死んだら普通、皇族専用の墓地みたいな所に葬られるのよ!?」

エイドスの出した驚愕の条件にミントは驚き、エステルは信じられない表情でエイドスに問いかけ

「”ハーメルの悲劇”が起こったのは当時のエレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールにも当然責任があります。彼が亡くなったハーメルの民達に対して唯一できる贖罪はそれしかないと思います。」

「それは…………」

「……確かに死者に対してする贖罪はその方法が一番いいかもしれませんね。」

エイドスの答えを聞くと複雑そうな表情で黙り込み、エレナは静かな表情で同意した。

「……承知した。他にも条件はあるのだろうか?」

一方エイドスの説明に納得したオリヴァルト皇子は続きを促した。

 

 

 

 


 
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