No.775595

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第七十三話


 お待たせしました!

 今回も拠点をお送りします。

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2015-05-06 09:36:04 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5229   閲覧ユーザー数:3863

 

「一刀~~~~~!七乃が、七乃がひどいのじゃぁ~~~~~~~~~~~~~~!」

 

 ある日突然俺の部屋にやってきた美羽がそう言いながら泣いていたのだが…一体何

 

 が起きたのだろう?七乃がひどいと言ってはいるけど、おそらく原因は美羽の方に

 

 あるのだろうという事は容易に想像出来る話なのだが。

 

「何を言うか!妾が七乃がひどいと言うたのならそれが正しいのじゃ!!」

 

 …どういう論理だ、それ?相変わらずの子供論理炸裂だな。

 

「ともかく!七乃が泣いて謝るまで妾は帰らんからな!しばらく此処に泊まる!!」

 

 …えっ?いや、ちょっとそれは困るんですけど?そもそも南陽の政とかどうするん

 

 ですか?

 

「そっちは七乃がやってるから大丈夫じゃ!」

 

 …何だか言ってる事が色々おかしいのですけど?

 

「もう決めたのじゃ!!」

 

 美羽はそう言って布団にくるまってしまう…いや、そこは俺の寝台なんですけど?

 

 せめて客間に行って…って、そうじゃなくて!

 

 俺の言う事など何処吹く風とばかりに美羽はそのまま寝てしまう。さて、困った…

 

 このままじゃ具合が悪いのは事実だ。そもそも何があったのかすら分からないから

 

 どうする事も出来ない…とりあえずは保護者に連絡して迎えに来てもらうしかない

 

 だろうな。何だか迷子預かり所の人みたいな気持ちになったのは気のせいであるま

 

 い、うん。

 

 

 

「そうですか。なら、しばらく美羽様の事をよろしくお願いしますね」

 

 …はい?七乃さん…仰っている意味が良く分からないんですけど?

 

「ですから、お嬢様が一刀さんの所に泊まられるのあれば私は何の問題もありません

 

 のでよろしくお願いしますと…」

 

「いや、おかしいだろ、それ!少なくとも太守様がやって良い行動じゃない事位七乃

 

 だって分かるだろう!?」

 

「大丈夫、美羽様なら無問題ですから!」

 

 七乃はそう超ドヤ顔で言い放つ。こっちはこっちでおかしい人だな…今更だろうが。

 

「大体何があったんだ?何時もあんなに仲良しなのに、急に家出なんて」

 

「ああ、それはですね…」

 

 七乃の説明によると、そもそもの原因はやはり美羽の方にあって、最近美羽のお腹

 

 の調子が悪いのが続くので華佗に診てもらった所、蜂蜜水の飲み過ぎでお腹を壊し

 

 ているようで、当然の事ながら蜂蜜水はしばらくドクターストップがかかったわけ

 

 なのだが、美羽はそれにも拘らず蜂蜜水を飲もうとするので七乃が隠してしまった

 

 ら怒って家出してしまったという事なのであった。

 

「なるほど、確かにそれは美羽が悪いな」

 

「ですよね~」

 

「でも、そもそもそれだけ我儘一杯なお子様にしてしまったのは御守役の君のせいで

 

 もあるんじゃないのか?」

 

「…グサッ!」

 

 俺がそうツッコむとまるで七乃は心臓に何か刺さったかのような仕草で倒れこむ。

 

 

 

「…一応、自覚はあるようだな」

 

「あはは…そもそも美羽様が太守になられたのはもっとお子様な時でしたもので、あ

 

 の無邪気な顔を見るとつい甘やかしてしまいたくなるというか…あの愛らしい笑顔

 

 が見られるのなら誰でもそうしてしまうのです!」

 

「いや、その論理はおかしいから」

 

「一刀さんがそんなに冷たい人だったとは知りませんでした…よよよ」

 

 七乃はそう言いながら泣き崩れるが、それが嘘泣きなのは丸分かりなので放置。

 

「とりあえず美羽の事をそのままというわけにもいかないから引き取って欲しいのだ

 

 けど」

 

「でも、美羽様がおとなしく戻ってくれるでしょうか?戻って来た所で蜂蜜水は華佗

 

 さんの許可が出るまで飲ませられないですし…」

 

 確かにそれもそうだな…ならばどうするべきか?

 

「とりあえずもう一人の保護者に聞いてみよう」

 

 ・・・・・・・

 

「あらあら、美羽さんにも困ったものですわね…華佗さんはお医者様として美羽さん

 

 の身体の事を気遣って蜂蜜水を飲む事を禁止されたというのに。そもそも過ぎたる

 

 は何とかとか申しますから、この際少し位我慢というものを覚えになられるべきで

 

 すわね」

 

 俺はその足でもう一人の美羽の保護者(?)である麗羽の所へ向かい、事の次第を

 

 伝えるとそれはそれはご立派なお言葉を発せられたのだったが…。

 

 

 

「おい、麗羽。今の君の状況でその台詞に説得力が付くと本気で思っているのか?」

 

「あらあら、私は常日頃から本気の台詞しか言いませんでしてよ。お~ほっほっほっ

 

 ほっほっほ!」

 

 そう言って何時も通りの高笑いをする麗羽だったのだが…その麗羽の状況はという

 

 と、それはそれは無駄に広い浴槽に大量の蜂蜜を混ぜたお湯を入れた所謂蜂蜜湯と

 

 かいうものに入っていたりする。しかも麗羽が一回使った後それは全て捨てるのだ

 

 そうだ…お前こそ我慢を覚えろ。謹慎が解けた直後は少し神妙な態度だったのだが、

 

 今やすっかりこんな感じだ。

 

「申し訳ございません、一刀様…もう少し私がしっかりしてましたら麗羽様に此処ま

 

 でさせなかったのですけど」

 

「大丈夫、斗詩のせいじゃねぇって!そもそも神妙な麗羽様なんて『くりーぷをいれ

 

 ないこーひー』みたいなもんだって及川も言ってたしな!…『くりーぷ』とか『こ

 

 ーひー』って何の事か良く分からないけど」

 

 及川…変な言葉を猪々子に教えるな。意味も分からずに使っているから言われた斗

 

 詩が余計に混乱するだろうが。

 

「まぁ、それはともかく…とりあえず美羽をこのままというわけにもいかないのだけ

 

 ど、麗羽に何か良い考えは無いかな?」

 

 とりあえず無理そうな気はするけど一応聞いてみる。

 

「そうですわね…少なくともこのまま一刀さんの所にいるままでは御具合もよろしく

 

 ないでしょうし、私が何とか説得してみましょう」

 

 おおっ、此処で突然麗羽から正論っぽい言葉が!これは期待出来るか?

 

 

 

「…そう思った時もありました。やはり麗羽に期待をかけたのが間違っていたのでし

 

 ょうか?」

 

 一刻後、麗羽達を伴って美羽の所に来たのまでは良かったのだが…。

 

「確かに我慢するのは精神上よろしくありませんわね。ならば存分に蜂蜜水をお飲み

 

 になって…」

 

「ダメですよ麗羽様!美羽様が飲んではいけない理由はさっき一刀様からお聞きにな

 

 られたではないですか!」

 

「そうっすよ~、あたいら美羽様を説得する為に来たのにそれじゃ本末転倒ですよ」

 

「良く考えましたら、少々蜂蜜水を飲み過ぎた位での腹痛など袁家の栄光の前では些

 

 細な事ですわ!」

 

「そうじゃ、そうじゃ!麗羽姉様の言う通りじゃ!!」

 

 説得に来たはずが何故か美羽の味方になってしまった麗羽の良く分からない論理に

 

 斗詩と猪々子は揃ってため息をつく。

 

 さて、これは困った…こういう訳の分からない事を言い出した二人を止めるのは容

 

 易な事では無い。

 

「さあ、美羽さん!もはや我らを止める者はおりません、いざ蜂蜜水を買いに行きま

 

 すわよ!」

 

「おおーっ!」

 

 そしてどうしようか迷っているのを肯定と受け取りやがった袁家姉妹は意気揚々と

 

 蜂蜜水を買いに外に出ようとする…って、止めないと!

 

「待て、二人とも。そこまでじゃ」

 

 

 

 そこに現れたのは何と命であった。

 

「へ、陛下!何故此処に!?」

 

「このような文が妾に届けられてな」

 

 命が差し出してきた木簡には、美羽が蜂蜜水の飲み過ぎでお腹を壊して華佗に止め

 

 られたせいで家出して俺の家に来ている事と、おそらく麗羽が説得に行くが逆に美

 

 羽の味方になってしまう可能性が大きいので出来れば命に説得してもらえないだろ

 

 うかという事が書いてあった。差出人は書いてないので本来なら怪文書という事で

 

 捨てられそうな気もするのだが…。

 

「麗羽が高笑いしながら一刀の家に向かっているという証言を多数聞いたのでの、一

 

 応念の為にと思って来てみたのじゃ」

 

 確かに此処に来るまで麗羽はほぼずっと高笑い状態だったからそれを見ている人も

 

 多数いるのは間違いのない話だ。

 

「さて…少なくともどうやらこの投げ文の内容が事実であったのは間違いないようじ

 

 ゃな。さて、麗羽よ…お主、美羽が蜂蜜水を止められている事情は知っておるのじ

 

 ゃろう?」

 

「は、はい!しかし…」

 

「まさか『袁家の栄光の前では腹下しなど大した事ではない』とか言うのではあるま

 

 いの?」

 

 麗羽が何か言い出す前に命がそう機先を制すると、麗羽は途端に言葉に詰まってし

 

 まう。確かにさっき同じような事を言っていたしな。

 

 

 

「この…愚か者どもめが!!」

 

 麗羽が黙り込んだのを肯定と受け取った命がそう怒鳴りだすと麗羽は腰が引き気味

 

 になり、美羽に至っては腰を抜かしたらしくその場にへたり込む。

 

「美羽、お主は何時までそのような童の如き我儘ばかり言っておるのじゃ!いい加減

 

 太守としての責任を自覚せい!!麗羽、お主は姉として指導する立場にありながら

 

 その尻馬に乗るなど年長者としてなっておらんじゃろうが!!」

 

 命のその剣幕に二人はガクガクと首を縦に振るしか出来なくなっている。

 

「良いか、妾から正式に命じる!美羽、お主は華佗の許しが出るまで蜂蜜水は禁止!

 

 華佗から許可が出る時は華佗からの正式な文書を妾の所まで持って来い、良いな?」

 

「は、はいーーーーーっ!」

 

「続いて、麗羽!お主も美羽への許可が出るまで蜂蜜は禁止じゃ!」

 

「えっ!?何故私まで…」

 

「監督責任を放棄した罰じゃ!!文句があるのか!?」

 

「い、いえ、そのような事は…か、かしこまりました」

 

「よし、ならばこの件はこれで終わりじゃ!一刀、斗詩、猪々子、お主達が証人じゃ。

 

 もし二人が反した行動を取っていた時はすぐに妾に知らせるよう…良いな?」

 

「「「は、はい!」」」

 

「うむ、ならば妾は仕事があるので帰る。美羽、そのままでは具合が悪いであろうか

 

 らちゃんと着替えてから帰るのじゃぞ」

 

 命はそう言って帰っていったのだが…着替えるってどういう事だ?そう思って美羽

 

 の方を見ようとすると…。

 

 

 

「だ、ダメです!!一刀様は見てはいけません!!文ちゃん、美羽様のお召し物の替

 

 えを!!麗羽様は一刀さんの所の侍女さんに掃除用具を借りて来てください!」

 

 何故か背後から斗詩に眼を塞がれる。斗詩から指示を受けたらしい麗羽と猪々子が

 

 慌てた様子で駆け出して行ったらしい音は聞こえたのだが…。

 

「なあ、何が起きてるんだ?俺が見たら具合が悪いのか?」

 

「ダメです!」

 

 一体何があったというのだろうか?しかし背後から斗詩が抱き付くように目隠しを

 

 しているので俺の背中には斗詩の大きな二つのあれが押し付けられた状態になって

 

 いたりする。なのでもう美羽がどのような状態になっているのか半分どうでもよく

 

 なっていたりするのも事実なのだが。でも一応俺が質問すると斗詩はより強く俺の

 

 眼を隠そうと強く抱きしめてくるので背中に伝わる柔らかい感触がますます強まっ

 

 たりするのでわざと同じ質問を何回か繰り返してみたり…これは役得という物か?

 

「あらあら、大変な事になってますね~。さあ美羽様、こちらへ。猪々子さんと麗羽

 

 様はお掃除の方を」

 

 どうやらそこに七乃がやって来たようで素早くその場の後始末を始める。

 

「さあ、終わりました。斗詩さんももう良いですよ」

 

 七乃のその言葉で斗詩の手がようやく離れる…手はともかく背中の感触は少し名残

 

 惜しい物があるが。

 

 それはともかく、ようやく開けた視界に飛び込んできたのは…少々恥ずかしそうな

 

 顔をしている美羽と何だか水でしっかり掃除された後のある床であった。

 

 

 

「美羽様、此処にいても仕方ありませんし帰りましょうね。では一刀さん、私達はこ

 

 れで」

 

「う、うん…一刀、世話をかけたの」

 

 結局何があったのかは分からないが、恥ずかしそうな顔のまましどろもどろな様子

 

 の美羽は七乃に付き添われて帰っていったのであった。

 

「ところで、文ちゃん?随分早く戻って来たけど…しかも七乃さんまで一緒に」

 

「ああ、あたいが門を出て少し走った所に七乃がいてな。何故か美羽様の服も持って

 

 たんでこれは丁度良いってんで一緒に戻って来たんだけど…そういや随分と用意が

 

 良かったな、七乃の奴」

 

 猪々子はそう言って首をかしげていたが…おそらく命へのあの投げ文の差出人は七

 

 乃だろうな。最初から此処まで予見したという事なのだろうか?さすがは実質南陽

 

 の政を取り仕切っているだけの事はある。出来ればもう少しそういうのを美羽への

 

 教育へ振り分けてもらいたいものだが。

 

「ところで斗詩、一体美羽に何があったんだ?俺が見たらそんなに具合の悪い物だっ

 

 たのか?」

 

「そうです、美羽様だって女の子なのですからそれ以上はもう忘れてください!」

 

 斗詩が珍しく強めにそう言うのでそれ以上聞くのはやめておく事にしよう…今日の

 

 所は斗詩のあの柔らかな感触を楽しめたからそれで良しという事で。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、七乃?本当に一刀には見られておらんかったんじゃな?」

 

「はい、斗詩さんがしっかり目隠ししてましたから…おそらくは」

 

「おそらく!?おそらくって…それではもしかしたら見られていたかもしれんと!?」

 

「さあ、それは実際一刀さんに聞いてみませんと…聞いてみます?」

 

「そんな恥ずかしい事聞けるはずが無かろう…ああ、妾は何て事を」

 

「ですから、ちゃんとお腹を治しましょうね。少なくともお腹の調子さえ普通でした

 

 らあそこまでにはならなかったわけですし…それに陛下からも命をお受けになられ

 

 た事ですしね」

 

「うん…そうする」

 

(ふふ、これで全て一件落着です。まさかお腹の調子が悪いせいでお漏らしがあそこ

 

 までなるとは予想外でしたが…でも、こうやってもじもじと恥ずかしがっている美

 

 羽様の顔も…はぁはぁ)

 

 七乃はそう内心でガッツボーズと興奮を同時にしていたのであった。

 

 

                                    続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回も投稿が遅れて申し訳ございません。

 

 さて、今回は…ほぼ袁家の話でした。

 

 最終的にはほぼ七乃の思惑通りに話が進むという…さすがは

 

 七乃という所でしょうか。

 

 とりあえず美羽のお腹は二週間後には回復したのでご安心を。

 

 一応次回も拠点です。誰にしましょうか…本気でメイン勢の

 

 話を書かないと私の身が危険な気もしますが。

 

 

 それでは次回、第七十四話にてお会いいたしませう。

 

 

 

 追伸 美羽のお漏らしの内容は聞かないであげてくださいね。

 

 

 

 

 

 

 


 
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