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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百三十七話 爆☆誕!!その名は『優菜』ちゃん

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2015-02-15 20:24:56 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:16630   閲覧ユーザー数:14751

 早朝…。

 まだ朝日が出て間もない時間帯。

 俺と魔法関係者の面々(アルピーノ母娘、ジーク、ゴットバルト家、フローリアン家)は藤見台の丘に結界を展開して集まっていた。

 何故この様な状況かというと平行世界から来た面々……禅、フェイト、アルフさん、リインフォースの4人を元の世界に送り返す準備が出来たからだ。

 

 「それじゃあ4人共、もう良いかね?」

 

 グランツさんの声に4人は頷く。

 確認をとったグランツさんは1つの機械を作動させる。同時に俺が機械から出てる1本のコードに触れ、魔力を流す事で空間に(ゲート)を開ける。

 無限に広がる平行世界の中から禅達が存在していた世界の座標特定へは機械の演算処理に加え、俺の高速思考(ハイパーハイスピード)も使用する事で一時的に繋げる。

 

 「いや、マジお世話になったッス。ホントはもう少しいたかったんすけどねぇ…」

 

 「自分の世界の皆が心配してるかもしれませんし…」

 

 「早めに帰って我が主達を安心させたいからな」

 

 「ワッフル♪ワッフル♪」

 

 禅、フェイト、リインフォース、アルフさんが順に口を開く。

 てかアルフさんは俺が土産として作ったワッフルの入った袋を大事そうに抱えている。

 

 「勇紀さん、また遊びに来ても良いッスか?」

 

 「いや、そんな簡単に来れる様な出来事ちゃうから」

 

 この機械も使い捨てみたいな感じで使用するため、一度使うと不良品扱いになる。

 また作るとなるとパーツ集めからだ。

 パーツ自体は秋葉原で集める事が出来たが意外に在庫少なかったり値が張ったりで大変なんですよねぇ。

 

 「そうッスか。勇紀さんのワッフルは絶品なんでまた食いに来たいと思ってたんすけど」

 

 「俺が作る洋菓子の中で唯一、桃子さんの味を超えているスイーツだからな」

 

 これは桃子さん本人が認めてくれている。

 後ワッフル食べたいなんていう理由だけで世界を超えると言うのは流石にどうかと思うぞ。

 短く言葉を交わしている間にも空間に開けた穴が少しずつ、縮まっていく。

 

 「禅、名残惜しいが行くなら早く行ってくれ。穴が縮んだらまた元の世界に帰るまでの期間伸びるぞ」

 

 「うっす!!じゃあ俺達はこれで」

 

 4人共穴に飛び込み、穴が閉じるまでの間はずっとコチラを向いて手を振っていた。

 穴が完全に閉じ、空間も完全に安定したのを確認して俺は結界を解く。

 

 「あー……疲れた」

 

 魔力で空間に穴を開けた後維持するのって超キツいっすね。

 いや、ただ維持するだけじゃなく割り出した座標先までの道を維持してたからこそかも。

 とにかく禅達はコレで自分が転生したリリカルなのはの世界に戻れた筈だ。

 また彼等と出会う事になるかどうかは神のみぞ知るってところだな………。

 

 

 

 「…という事で我がクラスの出し物はメイド喫茶で決定だよ!!」

 

 「「「「「「「「「「イエーーーーーーーーーイ!!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 クラスメイト(主に男子達)が吠える。

 現在、我がクラスは迫る文化祭に備えて出し物を決めていた。

 そして決定したのだが…

 

 「「……………………」」

 

 俺と委員長は『敗北』という2文字に打ちひしがれていた。

 

 「勇紀、委員長も元気出しなさい」

 

 「そうよ。委員長の提案した出し物は来年やれば良いじゃない。……投票で決まったらだけど」

 

 テレサ、アリサが暗くなっている俺と委員長に言葉を投げかけるが俺の気は沈んだままである。

 

 「長谷川君…」

 

 「委員長…」

 

 俺と委員長はお互い暗い雰囲気のまま会話をする。

 

 「数の暴力って……納得いかないわよね」

 

 「全くだ。委員長の提案した出し物は絶対に人気出るのに…」

 

 投票という名の戦いに敗れた俺達。

 黒板に書かれていたのは『メイド喫茶』と『二次元どりぃむクラブ』。前者は言うまでもなく飲食店で後者は展示店である。

 

 「「『近年のライトノベルにおける典型的主人公&ヒロインの変選と考察』の何がいけないんだ?(いけないの?)」」

 

 俺と委員長の声が力無くハモる。

 

 「いや、そんな明らかに一部の人達しか受け付けない様な出し物したってしょうがないだろ」

 

 直博は呆れた表情で俺と委員長を交互に見ている。

 

 「天河君に月村さん、伊東君はコチラ側だと思ってたのに…」

 

 ですよねぇ。

 

 「あのな…俺はゲームとかは好きだけど、ラノベに関しては今の所ノータッチだぞ」

 

 「ごめんね勇紀君、委員長。私は読書が趣味だし、ラノベも読むけど流石に文化祭となると…ね」

 

 「俺はどっちになっても良かったが、目の保養という意味じゃあ比べるまでも無いだろ。ぬふふ…」

 

 …裏切り者達め。

 てか誠悟、お前最近エロに突っ走りつつあるんじゃないか?

 謙介の悪影響出てきてるんじゃないのか?

 

 「惨めな敗残兵そのものね、アンタ達」

 

 「「ぐふっ!」」

 

 飛鈴ちゃんの容赦無い一言が俺と委員長の胸に突き刺さる。

 

 「ウチのクラスの女性陣は見た目は良いのが多いからメイド服を着せて、しっかりと接客させたら材料費を多少無理しても元は確実に回収出来るわね。後はどれだけ利益を生み出せるか…」(ブツブツ)

 

 葉月は電卓を叩きながら何やらブツブツ言って計算している。

 

 「さて…メイド喫茶に決まった事で次はどの様なメイド服にするかだが…」

 

 はぁ…。

 いつまでもウダウダしてても仕方ないか。

 今回は諦め、来年に期待しよう。

 

 「スカートの丈は短めのミニスカメイドでいこうと思う」

 

 メイド喫茶に超乗り気の1人、泰三が堂々と宣言する。

 

 「「「「「「「「「「イエーーーーーーーイ!!!」」」」」」」」」」

 

 それに男子の一部は大賛成の様だ。

 

 「ちょっと待てーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 しかしその案に異議を唱える者が。

 それはメイド喫茶に超乗り気の1人、宮本だ。

 

 「メイドといえばやはり王道のロングスカートだろう!!!!」

 

 「「「「「「「「「「そうだそうだーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 先程のミニスカ案に賛成しなかった男子達からの援護射撃。

 どうやら宮本同様のロングスカート派は他にもいた様だ。

 

 「んだとおっ!!?お前等は女子の太ももを合法的に見たくはないのか!?」

 

 「見たいとも!!ああ見たいとも!!だがな!合法的に見るよりも見えそうにないロングスカートの丈が捲れて偶然見えるチラリズムに俺は興奮するんだよ!!!」

 

 「そんなチャンス起きる確率なんて少ないだろうが!!」

 

 「少ないからこそ実現した時の感動が増すんじゃねえか!!!」

 

 ……ミスカート派とロングスカート派の論争が続く。

 てか実際にメイド服着るのお前等じゃなく女子だからな。

 その女子達はお前等の論争聞いて冷たい目をしてるのに気付け。

 

 「……にしても妙に杉村君が静かよね。こういう会話には嬉々として加わりそうなものなのに」

 

 「「「「「「「「「「そう言えば…」」」」」」」」」」

 

 九崎の言葉を聞いて俺と優人、アリサ達といった面々が一斉に謙介の方を向く。

 当の音人は目を瞑り静かにしていた。

 ……アイツ、寝てんじゃねえだろうな?

 

 「「おい謙介!!この頑固者の馬鹿に一言物申してくれ!!ていうかお前はミニスカ派だよな!?(ロングスカート派だよな!?)」」

 

 泰三と宮本が謙介に詰め寄り、その言葉を聞いてかようやく謙介が目を開ける。

 

 「……下らない」

 

 「「なっ!!?」」

 

 「実に下らない争いだ。合法的な太ももガン見?低確率で起きるチラリズム?そんな低レベルな事で争ってどうするというのだい?」

 

 冷ややかな目で泰三、宮本を見つめ返す謙介。

 ど、どうしたんだアイツ!?

 

 「ちょっとちょっと。謙介の様子が可笑しいわよ」

 

 「まさかアレは謙介さんの偽物なのでは!?」

 

 キリエ、アミタも謙介の口から飛び出した言葉を聞いて信じられないと言った面持ちを浮かべていた。

 …いや、フローリアン姉妹だけじゃなく、クラス全員がそうなっていた。

 

 「今はそんな事よりももっと優先事項の高い議題があるだろう?」

 

 それは何なのか?

 メイドの嗜み?メイド喫茶で振舞う料理?

 俺達は謙介の言葉の続きを待つ。

 謙介はゆっくりとポーズを変え、皆さんご存知(?)のゲンドウスタイルになった。

 

 「最優先事項と言っても差し支えない問題、それは…」

 

 「「そ、それは?」」

 

 泰三、宮本を筆頭に皆が謙介の次の言葉を待つ。

 しばし間を置いて重々しく謙介は口を開いた。

 

 「……ガーターベルトは必須、だろう?」

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 「どうでも良いわよそんな事おおおぉぉぉぉっっっ!!!!!!」

 

 アリサが静寂を破り、謙介に向かって吼えた。

 何ていうか……謙介は謙介だった。

 別にガーターとかどうでも良い様な気が…

 

 「「俺達が間違っていたよ謙介!!」」

 

 ダバダバと滝の様に涙を流す泰三と宮本。

 後、俺、優人、直博、誠悟を除く男性陣。

 

 「そうだ…俺達はなんて愚かな争いをしていたんだ」

 

 「スカートの丈の長さなんて女子達自身に任せたら良いだけじゃないか」

 

 「むしろスカートの中に潜む美脚をより際立たせるガーターベルトこそ最重要アイテム!!」

 

 「真っ先にその事実に気付かないなんて…俺達はなんて未熟なんだ」

 

 「分かって貰えて何よりだよ。ならばこそ!!今僕達が提唱する言葉は1つだ!!」

 

 そのまま自分の机の上に立ち上がって宣言する謙介を崇める様に見上げ

 

 「「「「「「「「「「ガーター!!!ガーター!!!ガーター!!!ガーター!!!」」」」」」」」」」

 

 一斉にガーターコールが教室中を支配する。

 男子達は未だに涙を流しながら希望に満ち溢れた満面の笑みを浮かべていたが

 

 「今騒いでる男子(バカ)共、お前等の内申点はちゃんと下げておくからな」

 

 如月先生のありがたいお言葉により、男子達は絶望に包まれた。

 まあ、当たり前だよね。他のクラスに迷惑掛けてる訳だしさ………。

 

 

 

 ひーるーやーすーみー。

 

 「長谷川……話があるから一緒に来てほしい」

 

 「……またッスか」

 

 昼食を食べ終えた俺にとってここ最近……正確にはツインファントムと接触したあの日の夜から数日経ってからだが、こうやって俺を誘ってくる人物がいる。

 ツインファントムの片割れ、取田ナイン(本名=ナイン・ヴァイオレット)だ。

 

 「やれやれ、また取田さんとの逢瀬かい?羨ましいねぇ」

 

 ニヤつきながら謙介が言う。殴ったろか。

 コイツが言う様に逢瀬なら別に何も言う事無いと思うが、彼女が誘ってくるのは俺に対してあるお願いがあるから。

 で、俺はそれを断り続けてる。

 とはいえ、教室で居座り続けてもナインは一切俺の側から動こうとせず、教室中からは色んな意味を含んだ視線を集めるため、居心地が悪くなってしまう。

 だからナインの後を付いて行き、結果断るというスタンスが続いている。

 まあ、とりあえず今日も屋上にやって来ました。

 屋上の扉を閉めると、ナインもコチラに向き直る。

 

 「まぁ…毎日の事だから聞かなくても分かるんだけど……何の用ッスか?」

 

 「11年前の火災事故について貴方が知っている事を教えてほしい」

 

 やっぱりねー。

 

 「それに対しての返事も毎回同じなんだけど…」

 

 「……………………」

 

 いや、期待に満ちた目で見ないで下さいよ。

 

 「NOとだけ言っとく」

 

 ショボーンな雰囲気が彼女を包む。

 ナインのショボーンな姿は滅多に見られないからレア物なんだが、ここ最近はこのやり取りで毎日見てるから俺にとっては見慣れた光景になりつつある。

 

 「そもそも俺じゃなくお父様に聞けよ。お前とテスラを育ててくれたお父様に」

 

 「……この際、貴方が私達の事情をどこまで知っておくのかは置いておく。お父様には一応聞いてみた。けど教えてくれなかった」

 

 あ、聞いたんだ。

 

 「だから長谷川に聞きたい」

 

 「…俺が真実を語るとは限らんぞ?」

 

 「それは私と姉さんが判断する。まずは聞きたい」

 

 ん?姉さん(テスラ)いんの?

 キョロキョロと辺りを見回すが人の姿も気配も無い。

 

 「???どうしたの?」

 

 「いや、『私と姉さんが判断する』なんて言うからさ」

 

 「……あぁ、姉さんについては長谷川から聞いた話を私が聞かせるという意味」

 

 「成る程」

 

 「だから安心して話して」

 

 「んー……やだ」

 

 「むぅ…」

 

 ぷっくり頬を膨らますナインを見て思う。

 君、無口でクール系のキャラだったよね?

 

 「そもそも話したとしても俺にメリット無いし」

 

 「メリット?」

 

 「世の中ギブアンドテイクだと思うのですよ俺は」

 

 「じゃあコレ」

 

 間髪入れずに何かを差し出してきた……って

 

 「コレって…」

 

 二対の首飾り…『天使の涙』だった。

 

 「貴方の言う通りこの『天使の涙』は偽物だった。だから私達には必要無くなったけど、貴方は以前コレに『偽物でも自分には多少の価値がある』って言ってた。だからコレを渡す代わりに教えてほしい」

 

 「……それ、偽者とはいえ許可貰ってんの?」

 

 俺が尋ねるとフルフルと首を左右に振る。どうやらナインの独断みたいだ。

 しかし偽物の『天使の涙』か…。

 これが昨日……正確には今朝までなら価値はあったんだが

 

 「悪いナイン。俺にとってソレの価値はもう無くなったんだ(・・・・・・・・・)

 

 「……何故?」

 

 ちょっと驚いた様子のナイン。

 まさか『もう価値が無い』なんて言うとは思ってなかったとみたね。

 

 「俺が偽物の『天使の涙』を求めたのは僅かに入ってる聖杯の欠片の力が目的だったんだけど、もう自分の力で用を果たしたからいらないんだよ」

 

 元々は禅達を元の世界に送り返す際、俺の魔力じゃなくて聖杯の欠片の力を用いるつもりだった。

 偽物の『天使の涙』を使えば俺も魔力を消費して疲労する事無かったんだけどね。

 

 「本当に要らないの?」

 

 「おう」

 

 困った様子ですねナインさんや。

 

 「けど…ちょっとぐらいなら教えても良いかな?」

 

 「っ!!!」

 

 ナインは俺の呟きに反応した。

 偽物とはいえ、無断で持ち出したのがバレたら怒られるかもしらんしね。ナインは多少リスクを負ってる訳だしコチラも少しぐらいは教えてやっても良いだろう。

 

 「そうだな……信じるかどうかは別として11年前の火災を引き起こす原因となった人物の所属してる組織の名前を教えてあげようか」

 

 「……………………」

 

 一言も聞き逃すまいという気迫が伝わってくる。

 そこまで身構えんでも。

 そんな様子に多少呆れながらも俺は口にする。11年前、火災事故を起こした原因になった人物の所属してる組織の名前を。

 

 「あの事故に関わった組織の名前、それは…」

 

 その組織は俺にとっても普段から聞き慣れているものであり…

 

 「『時空管理局』」

 

 俺自身が所属している組織の名前をハッキリとナインに告げるのだった………。

 

 

 

 「…ていう事で優人には女装(・・)して喫茶店の接客業に参加して貰うぜ」

 

 「待て!!何で俺が!?」

 

 ナインと共に教室に戻ってきて聞こえてきた第一声はソレだった。

 

 「何で?お前、以前俺とした賭けの事を覚えてるか?」

 

 「賭けって…まさかこの前のゲーセンでのアレか?」

 

 「そうだ。『敗者は勝者の命令を何でも1つ聞く』というアレの事だ」

 

 声の主は泰三と優人。

 

 「おや?勇紀戻って来たのかい?ナインさんとの逢瀬は楽しかったかい?」

 

 謙介に声を掛けられ『まーな』と適当に返事しておいた。

 

 「てかあの2人の言い合いは何なんだ?」

 

 「うむ。何でもクラスのメイドで誰が一番人気が出るか当日、お客さんに投票して貰おうという案が出たんだよ」

 

 へー。

 てかそんな案、LHRの時には出て無かったよな?

 

 「突然思い付いたみたいだからね。で、そのメイドの中に女装させた男子を1人混ぜて投票に参加させようっていう魂胆さ。そこで選出された男子が優人なんだよ」

 

 優人、南無…。

 

 「まさか約束を反故にしたりしないよなぁ?」

 

 「ぐっ…そ、それは……けどホラ!こんなつまんない事でその特権使って良いのか!?」

 

 「当然だ!!そして思いきり笑いのネタになれ!!」

 

 ニヤニヤしながら言う泰三を優人は睨む。

 

 「ていう事で勇紀カモーン!!」

 

 俺?

 泰三に人差し指でクイクイとされたのでとりあえず呼ばれてみる。

 

 「お前の知り合いにメイクさんとかいないか?」

 

 「何で俺にそれを聞くよ?」

 

 普通女子に聞くか頼むかだろ?

 

 「お前交友関係広いじゃん?だからいるかなと思った。で、いるのか?いないのか?」

 

 「まぁ、いるけど…」

 

 「「「「「「「「「「いるのかよ!!」」」」」」」」」」

 

 クラス皆の声がハモった。

 

 「正確には俺の母さんの知り合いだ」

 

 母さんが日本にいた時は2ヶ月に1回の割合でその人にメイクをして貰ってたっけ。

 

 「よし!!ならその人に聞いてみてくれ。今日の放課後早速敢行するぞ!!」

 

 「いきなり今日頼むのは無理あると思うけどな」

 

 軽く溜め息を吐いて俺は携帯でその人にメールを送る。

 程無くして返ってきたメールには『今日は無理だが明日なら行ける』との旨が記載されていた。

 

 「そうかそうか。なら明日を楽しみにしとくか。優人、明日は休むなよ!!」

 

 「はぁ……もう、好きにしてくれ」

 

 肩を落とし、抵抗を諦めた優人。

 

 「モチョ」

 

 ポン、と優人の肩を叩き同情しているモチョッピィ。

 優人、頑張れ………。

 

 

 

 次の日の放課後…。

 何人かは部活、何人かは帰宅。そして…

 

 「おい勇紀!ちゃんとメイクさんは来るんだろうな!!?」

 

 「来るから落ち着け」

 

 「そうかそうか、クックック…」

 

 残りの面々は優人の女装に興味あるのか結構教室に残っていた。

 しかし泰三の奴、凄ぇあくどい笑みだな。

 

 「喜べよ優人ぉ。テメエの黒歴史は俺がちゃんと撮影してやるからな」

 

 携帯をカメラモードに切り替えて準備万端の泰三。

 まあ、やりたくもない女装なんて本人からすればキツいわな。

 

 「うぅ…」

 

 女装させられる羽目になる優人は落ち込んでいる。

 

 「で、何時頃来るんだその人は?」

 

 「そろそろだな。予め学園長にも許可は得てるし」

 

 「お婆様にですか!?」

 

 そりゃそうだろう神無月よ。

 後、学園長から他の先生には伝わってる筈だから校舎に入って来ても問題は無いだろう。

 

 「お、おおーーーーーーーい!!!!」

 

 そこへクラスメイトの1人が駆け込んでくる。

 俺の記憶が確かなら彼は帰宅部でHRが終わるとすぐに帰った筈。

 その彼が息を切らせ戻って来たという事は何かあったのだろうか?

 

 「たた、大変だ!!とんでもなく厳ついオカマが学園内を闊歩してたぞ!!」

 

 「「「「「「「「「「…………はい?」」」」」」」」」」

 

 両手を大きくブンブンと振りながら説明するクラスメイト。

 

 「何言ってんだオマエ?」

 

 「オカマが現れた?幻でも見たんじゃねえの?」

 

 だが他のクラスメイトは全然信じ切っていない模様。

 

 「ふむ…丁度良いタイミングで来たものだ」

 

 「丁度良いって…もしかして」

 

 テレサの言葉にサムズアップで返す。

 同時にガララララと教室の扉が開けられる音が聞こえ、件の人物……厳ついオカマさんが入室してきた。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 教室が静まり返る。

 誰もがオカマさんに目を奪われ、硬直していた。

 オカマさんはそんなクラスの連中を気にせず、キョロキョロと見回し、俺と目が合うと笑顔を浮かべ近寄ってきた。

 

 「どうもぉ勇紀ちゃあん。久しぶりねぇ~。ずいぶん大きく育っちゃって」

 

 「お久しぶりですローズさん。今日はよろしくお願いします」

 

 「任せてぇ♪で、肝心の子はどの子かしらぁ?」

 

 「コイツです」

 

 俺は未だに固まっている優人を指す。

 優人を見たローズさんは…

 

 「…………っ!!!」

 

 何やら『ガーン!』って感じで衝撃を受けた様で大きく目を見開いた。

 しばらくは静止状態が続いていたローズさんだが、意識が再起動するとゆっくり動き出す。

 

 「あ、貴方……お名前は?」

 

 「あ、天河優人っす……」

 

 「そう……貴方の事を『優ちゃん』と呼んでも良いかしら?」

 

 「は、はい……」

 

 優人も声を掛けられて動き出し、自分の名前を言うと共に『優ちゃん』と呼ばせる事に許可を出していた。

 ローズさんは優人をジッと見つめ、優人は一歩後ずさっている。

 

 「ローズさん?」

 

 どうしたのかと思い声を掛けた所、ローズさんは真剣な表情を浮かべて言った。

 

 「ねぇ勇紀ちゃん。この子、私に預けてみない?」

 

 「「は?」」

 

 俺と優人の声が重なった。

 

 「この子……凄いわ。ダイヤモンドの原石と言っても良いぐらい。正直、何処まで上り詰めるか私にも予想出来ないの。世界を狙えるわよ!!」

 

 フンッフンッと鼻息を荒くして興奮気味に言うローズさん。

 どうやら優人には女装の才能がある様だ。

 

 「どうかしら優ちゃん!世界の頂点に興味無い?」

 

 「「ある訳なかろうが!!(ある訳ないでしょ!!)」」

 

 硬直の解けた野井原と九崎が優人を護る様、当人の前に立ちガーっとローズさんに噛み付く。

 

 「ローズさんローズさん。そういう勧誘は後日ローズさん達だけでして貰うとして、今日は優人にメイクを施すのが目的ですから」

 

 「止めてくれないのか!?」

 

 優人が目を見開いて俺に言うが、それはお互い話し合って決めてくれ。

 

 「あっ、そうだったわね。ごめんなさいねぇ。とんでもない素材を見付けたものだからつい舞い上がっちゃって」

 

 本来の目的である優人のメイクを行うため、ローズさんはいそいそと化粧道具を準備する。

 そして野井原と九崎を宥めつつ、優人のメイクが始まった。

 

 「お、おい勇紀…」

 

 その様子を眺めていたら泰三が俺を呼ぶ。

 

 「お前の言ってたメイクさんって…」

 

 「あの人の事だぞ。『東京ローズ』さんて言うんだ。東京でオカマバーを経営してる人だが、メイクの腕前は超一流でな」

 

 店の場所は何処だったかな?六本木か歌舞伎町だった様な気がするけど。

 興味あるなら行ってみ。

 

 「行かねえよ!!!」

 

 即座に否定する泰三。

 

 「化粧のノリも良いわねぇ♪ますます気に入っちゃったわ♪」

 

 ローズさんの手は忙しなく動き続けている。

 どれぐらい時間が掛かるかは知らないが、のんびり待つとしますかね………。

 

 

 

 「出来たわよん♪」

 

 待つ事、1時間弱…。

 教室の時計は16時を過ぎていた。

 ローズさんが優人にロングヘアのカツラを被せ、メイクを完成させた様だ。

 

 「やっとか。ウケケケケ…」

 

 今の今まで待ち侘びていた泰三が笑い声を漏らす。

 俺達クラスにいる連中は全員、現在ローズさんの指示で優人の後方に待機している。

 よって優人の背中しか見えないため、優人の顔がメイクでどの様に変化したのか誰も知らないのだ。

 

 「さぁ優人よ。お前の変わった素顔を俺が激写してやるぞ」

 

 そして泰三が優人の前に立ち…

 

 「……………………」

 

 優人を見た瞬間固まってしまった。

 

 「お、おい?どうした泰三?」

 

 自分の顔を見られた優人は突然固まった泰三を見て戸惑いを隠せない。

 あそこまで騒がしかった奴が突然静かになったものだからな。

 

 「んー?」

 

 次いで宮本がひょこっと優人の顔を覗き込んで

 

 「……………………」

 

 泰三同様に固まった。

 

 「え?おい!何で宮本も固まるんだよ!?」

 

 「まぁまぁ、落ち着くのじゃわか……と……」

 

 さっきまでローズさんに敵意を見せていた野井原も優人の顔を見た途端、言葉が途切れて

 

 「…………負けたのじゃ」

 

 その場で両手両膝を床について敗北感に包まれていた。

 メイクした優人の顔は男子2人を黙らせ、女子1人を打ち負かす程の出来なのだろうと思う。

 まぁ、メイク前からローズさんに相当気に入られてたし、ローズさんが手抜きなどしないだろうし。

 

 「うふふ。それじゃあ皆にも見せてあげましょうね♪ささ、振り向いて振り向いて」

 

 「……………………」

 

 優人はゆっくりと立ち上がってコチラを向いた。

 ……納得だわ。泰三と宮本が固まり、野井原が項垂れたのも。

 振り返った優人の顔は最早美少女と称しても差し支えない顔になっていたからだ。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 俺以外のクラスメイトの皆さんのほとんどが、一斉に固まっちゃいました。

 

 「な、何だよ……何で皆黙るんだよ?そんなに俺の顔が可笑しいのかよ!?」

 

 焦る優人。

 けど優人、それは誤解だ。さっきの野井原の台詞ちゃんと聞いてたなら理解出来るだろ?

 それにローズさんに気に入られたんだぞ。あの人が気に入った相手のメイクに手抜きなんぞする筈が無い。

 

 「キリエ、手鏡とか無い?」

 

 「……えっ!?なな、何!?」

 

 「手鏡持ってない?」

 

 「あ、あるけどどうするの?」

 

 「優人に真実を教えてやろうかと」

 

 …固まってたキリエは俺の言葉に反応し、意識を取り戻す。

 キリエから借りた手鏡を持って優人に手渡す。

 

 「よく見ろ優人。これが真実だ」

 

 「ん?………わっ!!だ、だだ誰だコレ!!?」

 

 「勿論ア・ナ・タ・よ♪」

 

 自分の顔を見てビックリする優人にニコニコ笑顔のローズさん。

 

 「そんな……優人に……負けた」

 

 九崎も野井原同様、両手両膝をついてどんよりオーラを背負ってしまった。

 いや……クラスの女子のほとんどが四つん這いに…。

 

 「お似合いですよ天河君。女子校に入学したら『お姉様』と慕われても可笑しくないぐらいに似合ってますよ」

 

 「テスラが言うと説得力あるなぁ」

 

 「何で姉さんが言うと説得力あるの?」

 

 「中の人繋がりで。エルダーの称号が合いそうだ」

 

 「???」

 

 俺の言葉に首を傾げるナイン。ちなみに君の中の人もあの作品のコンシューマ版で出演してるからね。

 ヴァイオレット姉妹は両手両膝をついてはいなかった。

 そこまでダメージ受けてないっぽいし、あまり興味無いのかな?

 

 「見た目が女っぽく見えても名前が『優人』のままというのは頂けないな。そうだな……『優菜』ちゃんとでも改名するか?」

 

 「「「「「「「「「「それ採用!!!」」」」」」」」」」

 

 俺以外で固まらなかった唯一の男子、誠悟の何気ない一言に男子達の意識が一斉に解凍され、賛成した。

 

 「嫌だよ!!何で名前を改名されなくちゃいけねえんだよ!?」

 

 「そ、そう言うなよ天河////」

 

 「そうだよ。折角だから徹底的に拘ろうぜ////」

 

 「名前がそのままだと女装だってバレるだろ?////」

 

 「だな。バレないための措置だと理解してくれよ////」

 

 「何で皆頬染めてんの!?何で目合わせて話さないの!?」

 

 ……男子達の反応がヤバいとです。

 流石にローズさんを呼んだのはやり過ぎたかと今更ながらに反省し、優人に罪悪感が沸いて来た。

 尚、この日を境にしばらく優人はクラスの男子達からプレゼントを貰うという嬉しくないイベントが発生し、野井原と九崎は優人に近寄ろうとする男子達を追い払う役目を担っていた。

 そういったイベント発生以外はヴァイオレット姉妹に問い詰められるという日課を除いて平和に過ごす事が出来、遂に風芽丘の文化祭を明日に控えたのだった………。

 

 

 

 ~~フェイト視点~~

 

 「ここがフェイトさんの言ってた地球なんですね」

 

 「そうだよエリオ」

 

 私は中学を卒業してから一度も訪れていなかった地球に久々に戻って来た。

 手を繋いでいる小さい男の子と共に今は薄暗い住宅街を歩いている。

 

 「周り、暗いですね」

 

 「夜だから仕方ないよ。それより足元に気を付けてね」

 

 手を繋いでいる子は元気に『はい!』と返事をする。

 この子の名は『エリオ・モンディアル』。ちょっとした事情で両親と引き離された今、私がこの子の保護者となっている。

 私は普段施設で過ごしているエリオをもっと外で遊ばせたくて、貯まっている有給休暇を少し使い、地球に連れて来た。

 

 「フェイトさん、これから何処に行くんですか?」

 

 「今日はもう遅いからね。私が地球に住んで居た頃のマンションでアルフとエイミィが待ってるだろうから家に向かってるんだよ」

 

 地球に着いて真っ先に転移先として敷地を貸してくれているすずかには先程挨拶をした。

 久しぶりだったので色々話したかったけどもう遅いし、すずかも明日から通っている高校の文化祭があるとの事で、エリオの事を簡単に紹介して後日、ゆっくりお話しようと約束したのだった。

 

 「そう言えばフェイトさんの知り合いで地球にいる人はまだいるんですよね?」

 

 「うん。すずか以外にもいるよ」

 

 「僕、その人達にも会ってみたいです」

 

 「じゃあ、明日はすずかの言ってた文化祭に行こうか?きっと会えるよ」

 

 「はい!けど『ぶんかさい』って何ですか?」

 

 「ちょっとしたお祭りみたいなものだよ」

 

 「お祭り!!凄く楽しみです!!」

 

 年相応の子供の様にはしゃぐエリオを見て私は心底嬉しく思う。

 初めて会った時、重度の人間不信だったこの子がこうまで笑顔を取り戻してくれたのだから。

 

 「エリオ、嬉しいのは分かるけど、もう少しだけ静かにしようね?夜だから近所迷惑になっちゃうよ」

 

 「あっ、分かりました」

 

 声は抑えてくれたけど、その表情からは楽しみにしてるのが丸分かりだ。

 けど私も明日の文化祭が実は楽しみだ。

 アリサにテレサ……現地協力者になってくれている親友達と

 

 「(勇紀と会うのも楽しみだな♪)」

 

 同じ魔導師でありながら所属する部署が違うためにアリサ達同様、中学卒業から一度も直接会ってない彼に再会する事が出来るのかと思うと明日が来るのが待ち遠しい。

 今日は私も早く身体を休めて明日に備えようと思いながら、マンションに向かってエリオと共に歩くのだった………。

 

 

 

 ~~フェイト視点終了~~

 

 ~~貴志視点~~

 

 「クソッ!!何で嫁達と都合が合わねえんだ!!」

 

 オリ主である俺様はイラついていた。

 原因は俺様の嫁達であるなのは達とスケジュールが合わず、誰とも共に過ごせないからだ。

 

 「なのはは教導、フェイトは休暇を申請して何処かへ行って、アリシアは執務官として別世界で仕事中、はやては捜査官としてシグナムを除いた守護騎士達と共に事件の捜査中…」

 

 そしてシグナムは地上本部に所属してる俺様の嫁達、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、椿姫と合同演習を行っている模様。

 俺様は地上本部に問い合わせて合同演習に参加したいと頼み込んだが、門前払いを受けて相手にもされなかった。

 モブ局員の分際で生意気な奴だった。いつか身の程ってヤツを思い知らせてやる。

 

 「(しかしどうする?)」

 

 他の嫁……リンディ(←勝手に呼び捨て)は統括官という立場上、内勤と言っても俺様以上に忙しく、中々会う機会を作るのが難しい。

 プレシア(←勝手に呼び捨て)もリニスと共に開発室に籠もりっきりらしく、時間が取れねえと来たもんだ。

 なら俺様の新たなる嫁候補であるSts編のヒロイン達に会いに行くか?

 だがオリ主の俺様はまだ聖王教会とはコネが無い。

 KYのクロノに頼み込んでいるのに『先方と会う時間が作れない』とか言って未だに俺様をカリムとシャッハに紹介しやがらねぇ。

 役に立たねえ奴だぜ。

 ティアナとスバルが通う訓練校に行くか?それともギンガのいる108部隊に…。

 キャロはまだフェイトが保護してないみたいだから、保護した後で会いに行きゃ良いだろう。

 ルーテシアは今頃スカ野郎の陣営にいるだろうし、ナンバーズもまだ全員揃ってないだろうから、コッチ方面はSts原作が始まってからで良いだろ。

 

 「クソッ!!アルフとエイミィは定時で上がって地球に…」

 

 …………ん?地球?

 

 「ヒャ…」

 

 ヒャハハハハハハハハハハ!!!!!!

 そうだそうだ!!オリ主の俺様の嫁は全員ミッドに来た訳じゃなかったぜ!!!!

 アリサ、すずか、テレサ……それに高町家の女性陣や月村家のメイド達がいるじゃねえか!!

 

 「地球にいる嫁達はミッドにいる嫁達と違って会う事が基本無いからな」

 

 そんな俺様が顔を見せたら嬉しさの余り、抱き着いて来るかもしれねえし…

 

 「お互いもう子供(ガキ)じゃねえんだ。雰囲気良けりゃそのまま…」

 

 ヒャハハ!!最初に可愛がってやるのは誰にしようか迷っちまうぜ。

 っと、こうしちゃいられねえな。

 俺様は早速休暇の申請を出し、明日の朝一で地球に向かう事にした。

 突然の申請で上司から文句を言われたが、以前から貯まってる休暇を消費しろと人事部から言われてた事を伝え、黙らせた。

 これで俺様の障害は無くなったも同然だ。

 待ってろ地球の嫁達よ。今すぐオリ主の俺様が会いに行ってやるからな………。

 

 

 

 ~~貴志視点終了~~

 

 ~~あとがき~~

 

 次回、文化祭ッス。

 それとツインエンジェルの原作はもう終盤ッス。

 結局『原作介入』と『楽しく逝こうゼ』の原作キャラ達は顔合わせせずでした。

 仕方ないよね。西条と出会ったら面倒間違い無しなんだし。

 


 
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