No.753320

短編ネタ 真・恋姫†無双 ~俺が、俺達が、運び屋だ!~

piguzam]さん


第6話~原作知識って言うけど、外史に基本知識なんてアテにならねぇからww残念!!

2015-01-24 01:12:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4402   閲覧ユーザー数:3795

 

 

 

前書き

 

 

遅れてすみません。

 

小生手を怪我しまして、更新スピードが落ちております。

 

 

しかしもう完結まで秒読みの段階ですので、暫しお待ちを

 

 

 

それから更に半年程過ぎたある日、何と魏の方から呉へ宣戦布告したという話が流れてきた。

 

 

 

確かに曹操ちゃんなら大英雄たる文台さんと覇を競いたくなるって気持ちはあるだろうよ。

しかし言っちゃなんだが、魏と呉の国力差は開きすぎてる。

まだ建国して半年程じゃ、兵の練度も開きがあるのは間違いない。

例え孫堅さんが万人を斬ろうと、数の暴力には屈する事になると思うんだが……あれ?この流れはひょっとして?

 

「せ、船長。依頼が来てるんですが……呉の周瑜様からです……」

 

「は?文台さんじゃなくて周瑜さんから?」

 

輸送の仕事も無く、会社の屋根に寝転んでのんびりしてた所おやっさんが竹簡を片手に知らせに来たんだが、差出人の名を聞いて目を丸くする。

成都に拠点を移してから暫くは呉の方面から手紙は来なかったんだけどやっぱ運び屋は依頼が入る様に看板を掲げるので、最近はまた文台さんから士官の手紙が来てた所だ。

だから周瑜さんから手紙が来るのは何ら不思議じゃねぇんだけど、これまで一度も手紙を送らなかった人がいきなり手紙を送ってきた。

 

……こりゃ嫌ーな予感がするなぁ。

 

そう思いながら竹簡を開いて中身に目を通した俺は、フゥと溜息を吐く。

 

 

 

竹簡の依頼内容は、蜀への『密航便』としての人足依頼だった。

 

 

 

嫌な予感当たっちゃったよ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

さて、竹簡での依頼を受けた俺は竹簡を送り返して直ぐ、孫呉の本拠地である建業……から少し離れた村の船着場に居た。

更に船着場の近くにある藪の中にファルコン号を隠している。

そして俺は近くの竹やぶにローブを着て潜み、俺以外の船員三人(桜華ちゃん除く)はファルコン号に待機していて、何時でも船を出せる様に待っていた。

俺とてこんな所に居たくねーけど、先方のご指名だからなぁ……っと、そんな事言ってる間に来たか。

暗闇の中で灯りの松明すら持たず、俺と同じ様に外套を纏った三人組が現れた。

その中の長身の人物が声を潜めながら俺に語りかける。

 

「……久しぶりだな、尾美殿。息災か?」

 

「どうも、周瑜さん。まー文台さんと黄蓋さんの手紙さえ無きゃ、息災ですって答えてるトコなんすけどね」

 

懐かしい声を聞いた俺は軽口と共に返答すれば、相手は苦笑いで返してくる。

俺に声を掛けてきたのは孫呉の柱石とも言える大人物、美周郎こと周瑜さんだ。

そしてもう一人。

 

「よっす。甘寧ちゃんも息災の様で何より」

 

「あぁ……久しぶりだな……」

 

「そうだねぇ。まぁともあれ、積もる話は後にしましょう。青草が見つかる前に出るとしません?」

 

「あぁ、頼む」

 

「了解。じゃあこちらへ」

 

久しぶりに会った甘寧ちゃんとも挨拶を済ませ、後一人は知らない人なので挨拶は後回しにして、俺は三人を先導する。

ちなみに青草とは、魏の細作の意味だ。

つまり”青草が見つかる前に”とは、魏の細作の目に入る前にって意味。

いやはや、まさか本家のハン・ソロの様に密航に関わる事になろうとはな……やっぱ補正?

三人を伴って静かに竹藪から河に出て、ファルコン号の元に到着した俺は、三人を連れてタラップを渡る。

 

「……これが、船?……帆どころか櫂すら無いではないか……これでは河を漂う木と変わらないだろう」

 

と、知らない人がやっとこさ喋ったと思ったらこの発言。

まー、ここまで真正面にファルコン号を侮辱した人は初めてだぜ。

何せ皆疑う前にこの船の性能を見たり、体で感じてるんだから。

 

「汗血馬より五倍は速く走れますぜ?見てくれは少々悪いが中身で勝負ってね。まっ、お急ぎの様ですし速く乗って頂きましょうか?」

 

「……冥琳。本当にこの船で大丈夫なの?」

 

「ご安心下さい。私も過去一度だけ、この船の性能は目にしました。そしてこの船はこちらの尾美船長の言う通り、我が軍の滑走船など比較にならない速さを有しております」

 

俺の言葉が信じられないのか、今度は周瑜さんにまで不安そうな声で聞く謎の人物。

しかし周瑜さんの態度と、謎の人物が周瑜さんの真名を呼んでいた事を踏まえれば、誰かってのは予想が付いた。

間違いなくこの外套を着た人物は孫呉の賢王となる孫権ちゃんだろう。

自分の信頼する人物の言葉が後押しとなったのか、孫権ちゃんは渋々といった様子で乗り込む。

良し、さっさと出航するとしよう。

俺はフォースを使ってタラップを手早く収納し、呉の三人を客室に案内して、「手すりに掴まって下さい。振り落とされない様に気を付けて」と忠告してからコックピットへ向かう。

さすがに昔会っている周瑜さんと甘寧ちゃんでも、俺のフォースは所見だったので驚いていたが、俺の言葉にハッとして手すりに掴まっていた。

孫権ちゃんだけは驚きから戻ってこれないでいたが、甘寧ちゃんが手早く意識を戻したのでおどおどしながらも掴める場所を探してたので、俺は安心して操縦席に座った。

 

「良し。行くぜおやっさん」

 

「へい。何時でも行けますぜ」

 

「あいさ」

 

小声で出発の意志を伝えると、おやっさんも小声で頷いたので、俺は手動扇風機を回す。

さーて、まずは細作さん達の見えない辺りまで超特急で行きますか。

 

「……」

 

「蓮華様」

 

「……えっ?な、なに、思春?」

 

「しっかりと掴まって下さい。この船の速度は尋常ではありませんので……私が記憶している船の速度に間違いがなければ、速度が乗るまでは少し苦しいかもしれません」

 

「苦しいって……ねぇ思春。貴女は何故この船を知っているの?」

 

「……私が河賊だった事は、蓮華様にお仕えする時にお話しましたね?」

 

「え?え、えぇ。覚えてるわ」

 

「……私が炎蓮様にお仕えする事になったのは、あの男……尾美一に一騎打ちで負けて捕らえられ、そのまま尾美自身によって呉軍に推挙されたからなのです」

 

「ッ!?」

 

「その時私が襲った船が、この船だったのですが……今思い返しても、この船の馬鹿げた性能ははっきり思いだせます――」

 

朝日が昇る前に目標地点に向かおうと思った俺は、速変竹の解放レバーを下げ、ペダルに足を掛ける。

さぁ、初めての四本目まで解放だ……どれだけの速度が出るのか、楽しみだぜ。

俺は意気揚々と、アクセルペダルを踏み込み、ファルコン号を出航させる。

 

瞬間、椅子に押し付けられるという感覚を久方ぶりに体全体で味わった。

 

「ッ!!?く、う――ッ!?」

 

「な!?これッ、キャッ!?」

 

「ぐ!?蓮華様……ッ!!……手が離れそうになったら、私の腕を掴んで下さい……ッ!!」

 

おうおう……まだ軽いけど、この感覚は前世で車に乗った時以来だから懐かしいな。

体にしっかりと伸し掛かるGを感じながらも、俺は手早く舵輪を切ってファルコン号を外海へと向かわせる。

この速度なら、細作に発見されても何が何だか分かる事は無いだろう。

村から離れたのを確認して、ライトを覆う外側のカバーをコックピットからの操作で横にずらしてライトの光を外に解放。

よーし、これで暫くは問題無く航行出来るだろう。

かなり陸地から離れ、細作も発見するのは無理だろうと判断した俺は船の速度を緩め、一息つく。

 

「ふひぃ……良し、おやっさん。これから暫くは俺が操縦するから、後方を頼める?」

 

「分かりやした。それじゃあ、後ろの砲台に座ってますんで」

 

「おう、頼むわ~。あっ、チビさんはそのまま待機で」

 

『分かりました!!』

 

後ろのデッキに向かうおやっさんを見送った後、パイプ電話でチビさんにも指示を出し、真ん中の砲台へのパイプ電話のカバーを下ろす。

これで他の部屋への伝達がごっちゃになる事は無い。

そして次に、俺は客室へのパイプ電話のカバーを開けた。

 

「あーデクさん。聞こえる?」

 

『き、聞こえるんだな、船長』

 

「良かった。それで悪いんだけど、お客さん達に何か食事作ってあげてくれ。最近は空さんが台所占領してて、腕がウズウズしてたんじゃない?」

 

『わ、分かったんだな。オデ、頑張る』

 

「うい。それじゃあよろしく~」

 

全員に指示を出し終えた俺はパイプ電話のカバーを全部開けて、何処からの情報も逃さない様にする。

真夜中の海はランプの先以外は闇で何も見えない。

しかし心配する事は無い。

何故なら、ここで例のチートスマホが役に立つからだ。

前に言った様に、このスマホにはあらゆる情報が詰まっていて、俺にしか見る事は出来ない。

だから舵輪の前に堂々と置いて大陸と海の地図、そしてファルコン号の位置を示すカーソルを生み出して安全に航海出来るのだ。

このチートマップは内陸の河を走る時もかなり重宝してる。

お陰で迷う事無く最短ルートで運べるから、うちの会社は『安全で速い』という最高の評価を貰っていた。

 

そして暫くの間は何事も無く航海していたんだが、背後から「少し良いだろうか?」と呼び掛けられて俺は振り返る。

 

振り返ると、其処には外套を脱いで自身を露わにした孫権ちゃんの姿があった。

背後には周瑜さんも甘寧ちゃんも居ない。どうやら一人で来たみたいだ。

 

「申し遅れたが、私は孫仲謀。呉王、孫文台の娘だ」

 

「おっと、これはどうも。操縦中なんでこんなカッコで申し訳ありません。俺はこのミレニアム・ファルコン号の船長をやってます、尾美一ってモンです」

 

「あぁ、構わない。それと……先ほどは失礼した、尾美」

 

「ん?失礼ってのは?」

 

「この船……”みれにあむ・ふぁるこん”だったか?この船を見てくれで判断し、船長であるお前の誇りでもある船を侮辱してしまった……その謝罪だ」

 

孫権ちゃんは申し訳無さそうな表情で謝るが、俺はそれを笑って返す。

 

「構いませんよ。このファルコン号の性能は、たった今感じてもらえたでしょ?」

 

「……うむ。冥琳……周瑜の言う通り、我が軍の船の性能を遥かに凌いでいる。そして客人に対する気遣い等の装備も整った……最高の船だと思う」

 

「そう思って頂けたら、俺から言う事は何もありません。俺達運び屋は腕がモットーですので」

 

俺は舵輪を握りながら顔だけ振り返った体制でそう返し、後ろの席へ孫権ちゃんを促す。

しかし彼女の視線は副操縦席へと興味津々に向いていたのでそっちへ促したら恐る恐る座っていた。

彼女は席に座って、回転する椅子に驚き、目の前の舵輪に驚き、そして目の前が明るく、船が進んでる事にとさっきから驚きっぱなしだ。

 

「……客室でも思ったのだが、この船の至る場所にあるあの筒は何なのだ?どうしてこんなに離れた場所に居るお前の声があんなに大きく届く?」

 

「筒電話の事ですか?あれはまぁ、導師の作ったパオペイらしいです。俺も市場で見かけてこれは使えると思って買いました」

 

ホントはGIJUTUチートで作ったんだけど、上手く説明出来る筈も無いのではぐらかす。

困った時の導師。誤魔化すには便利です(笑)

 

「成る程、導師の……それなら納得だ……では、お前が今握っている、こちらと同じ回る円盤は?」

 

「あー、これは舵輪と言ってですね……」

 

その他にもこの船が帆も無いのに進む理由についてとかも聞かれたが、この辺も曖昧にぼかしておいた。

下手したらファルコン号を真似ようともしかねないからな。

他にもウチの会社の酒の良さとか、孫策さんと文台さんが飲み過ぎてダウンしたとか色んな話をした。

その内に口調も段々と砕けて、朝日が昇る前には柔らかい女の子の口調に戻っていた孫権ちゃんであった。

まぁそんな感じで色々な事を話しながら航海を続けていたが何時の間にか朝日が昇り、蜀の成都へ続く河口の近くまで来ていた。

ここまでくれば魏の細作が居る事は無いので、俺は船の速度を更に落とす。

何で居ないと断言出来るかと言えば、詠ちゃんとはわわ、あわわコンビが細作の排除に躍起になっているからだ。

その行動は実を結んで、今に限って言えば細作の目は届かない。

そうやって太鼓判を貰ったからこそ、俺達は堂々と入港出来る訳だ。

ここで俺はおやっさんに操縦を代わってもらい、再び外套に身を包んだ三人と話を始めた。

 

「もうすぐウチが請け負った品を城に運ぶ時間なんで、皆さんにはそれに紛れて城に入ってもらいます。向こう……蜀の迎えは竹簡の通りで?」

 

「あぁ。向こうは諸葛亮が直々に迎えてくれる……尾美殿には悪いが、この先の話は……」

 

「いやぁ、別に良いですよ。大体の予想はついてるんで」

 

周瑜さんの言わんとする言葉を遮ってそう言うと、三人共驚いた顔になる。

っていうかこの流れって最早一つしかないからなぁ。

 

「……やはり庶人にしておくには勿体無いな、貴方は」

 

「何言ってんですかい。呉が魏に宣戦布告されたのは商人達の周知の事実。その荷を運ぶ運び屋の俺が知らない訳が無いでしょ?そんな時期に蜀に来るって事は……一つしかないじゃないっすか?」

 

「……ハァ……呉の将が貴方ぐらいに物事を考えてくれれば、私達軍師の負担も減るのだが……」

 

「それ。主に一人に向けてしか言って無いですって」

 

分かってくれるか?という視線に苦笑で答える。

周瑜さんが言ってるのは呉に居る軍師泣かせの勘頼りな小覇王の事だな、間違いなく。

疲れた表情を浮かべる周瑜さんを労う俺達を乗せて、ファルコン号は成都城の船着場に入るのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

そして周瑜さん達を送り届けた日から三日程過ぎた日の夜。

 

 

 

皆が寝静まったのを頃合いに俺は一人でガレージに灯りを点けて篭もり、ファルコン号の改造を行っていた。

つっても大々的な改造では無く、前から考案してた『秘密兵器』の搭載と、武装の大幅な強化だ。

まずは前後に取り付けた連弩砲台の先端バレルを取り外し、速変竹に交換。

これで発射される杭の速度と貫通力が、今までとは比べ物にならない程に強化されるのである。

 

自重?何それ食えんの?

 

更に前方大型砲台の杭に、『ある改造を施した杭』を追加。

但し材料を集めるのが間に合わなくて二本しか作れなかったけど、まぁしゃーない。

出来ればこれを使う事が無い事を祈るが、これを使うかもしれないから搭載してる訳で……何ともアレなジレンマだなぁ。

 

「お疲れ様です。少し休憩しませんか?」

 

と、ある程度の作業が一段落した所で陛下……いや、桜華ちゃんが握り飯と茶を笑顔で差し入れしてくれた。

どうやら態々起きてくれたらしく、服装は艶やかなナイトドレスのみ。

その優しい心遣いに思わず涙が出そうです。

そしてその妖艶な色香に鼻から愛が止まりませんww後で美味しく頂こう。

 

「おぉ、態々ありがとうございます。陛下」

 

「……もう」

 

と、手を洗って握り飯を頂こうとしたら、桜華ちゃんは頬を膨らませて握り飯を遠ざけてしまう。

 

「陛下だなんて、そんな風に呼ばないで下さい……酷いです、オビ=ワン」

 

「ははっ。ちょいと意地悪でしたかい?じゃあ改めて、おにぎり下さい。桜華ちゃん」

 

「……はい♪」

 

改めて真名で呼び直すと、桜華ちゃんは笑顔で俺に握り飯をさしだしてくれた。

俺は握り飯を受け取って休憩に入り、桜華ちゃんは握り飯を頬張る俺の隣に座ってニコニコと笑っている。

虫の鳴き声が少し聞こえるだけの、静かな夜。

他には何も邪魔する事は無い良い夜、桜華ちゃんは寄り添う様に肩を預けてくる。

 

「……もうすぐ、戦が始まるのですね」

 

「ン……ゴクン。えぇ、魏と呉蜀同盟の一大決戦。正に天下分け目の戦いってヤツでしょうね」

 

ここまでの流れを考えれば、これは歴史や恋姫原作で言う所の『赤壁の戦い』になるんだろう。

恋姫作品の中なら、これで魏が敗北するか、それとも魏と呉蜀同盟が同数になって最後の戦いになる時に五湖が攻めてきて三国同盟が成されるか。

何にしても、かなり大規模な戦になるのは間違い無い。

 

「……オビ=ワンは、呉と蜀に勝ち目があると思いますか?」

 

「ん?んー……どうですかね?そりゃ軍師さん達の采配次第じゃないかと」

 

「采配、ですか?でも、魏は兵力、国力、練度。全てに於いてとても水準が高いと聞き及んでいます。呉蜀が同盟したとしても、曹操の戦力はそれを凌駕すると」

 

「ですね。一方で呉蜀が勝ってるのは優秀な武将や知将の数のみ。まぁそれもでかい差っちゃそうですが……まともにやって勝てる訳が無えんなら、策を巡らせて相手の意表を突くか、卑劣な手で国力を落とすか、でしょう」

 

「卑劣な、手……しかし呉の王、孫堅は正しく英雄。その様な手段は用いないと思います……洛陽に居た時に何度か謁見した事がありますが、覇気と呼べるものをこの身にはっきりと感じた程です」

 

「そして蜀の王である劉備ちゃんは、最近じゃ徳王とも呼ばれてる程に民に慕われ善行に重きを持ってる。こっちも卑劣な手なんか使う筈も無し」

 

お互いに茶を飲みながら、俺は桜華ちゃんの質問に一つずつ答えていく。

桜華ちゃんも漢王朝の皇帝。

気になるっちゃー気になるんだろう……この先の大陸の行く末ってヤツが。

 

「となりゃあ、後は策で相手の意表を突くってトコだけど、定石で言えば数の不利は得意な戦場で埋める事だから……まぁ間違いなく呉軍お家芸の水上戦を挑むっしょ。蜀も水軍はありますが、魏の水軍の練度は二国と比べて高く無い。でも誇り高い覇道を進む曹操は決戦地を指定されれば間違い無くそれに乗るだろうから、そこに勝機を見出す。そんなトコじゃないっすか?……なぁ?」

 

俺は会話を止めて何気ない仕草でフォースを使い、倉庫の扉を開く。

 

「はわわ!?」

 

「あわわ!?」

 

「え!?」

 

「臥竜鳳雛のお二人さんよい?」

 

すると、扉に耳を近づける格好だったはわわ、あわわコンビは倉庫に転がりこんでしまう。

いきなりな真夜中の来訪者の登場に、桜華ちゃんは目を丸くして驚いている。

まぁ最初っから居るのは分かってたんだけどね(笑)これじゃ桜華ちゃんティスティング出来ないじゃないか。

おのれロリめ。そんなに俺の邪魔がしたいってか?先に食っちゃうぞ?あ、やっぱ何でもないです桜華様、はい。

 

「あ、あわわ……い、何時から気付いてらっしゃったんでしゅか……?」

 

「最初っから。大方空さんの後を尾けてきたんだろーけど、気配がダダ漏れ。人の会話盗み聞きするなんて、この耳年増幼女めがww」

 

「はわ!?み、耳年増じゃありましぇん!!」

 

「しゅ、朱里ちゃあん……幼女っていうのを否定し忘れてるよぉう……」

 

俺の幼女発言に諸葛亮ちゃんは憤慨し、龐統ちゃんはショックを受けたのかずーんと沈んでいる。

人が良い雰囲気になってたのを盗み聞きするのは耳年増なんじゃなかろうか?

とりあえず俺は立ち上がり、棚に常備してある日ノ本酒の梅を取り出して再び椅子に座る。

 

「あー、空さんや。これからこの人達と話があるから、悪いけど部屋に戻ってくれる?多分、ちっとばかし遅くなるからさ」

 

「……」

 

「ん?……どったの?」

 

「……襲っちゃ駄目ですからね?」

 

「襲っ……ッ!?ひゃわーーー!?」

 

「あ、あわわわわ……ッ!?」

 

「はっはっは。俺がつるぺったんに興味無いのは知ってるでしょーに(笑)」

 

「「!?」」

 

「あっ、そうでしたね。なら大丈夫ですね♪お先に失礼します♪(クスッ)」

 

ポヨンポヨン♪

 

「「!?(跳ねた!?)」」

 

「は~い。おやすみ~」

 

俺の発言を聞いて安心した桜華ちゃんは笑顔で部屋に戻り、二人は再び衝撃を受けたって表情になる。

まぁ間違い無く桜華ちゃんが二人を見て安心したのが原因だろうな。

そして桜華ちゃんのナイスバディを目にした二人は余りの戦力差に絶望してorz状態。

……これがこの戦いの未来だなんてならないよね?

そんな馬鹿な事を考えながら酒を一口煽り、俺は桜華ちゃんが閉めた扉を開いて外に声を掛ける。

 

「おーい。後六……いや、七人か?とりあえず入ってきたらー?」

 

暗闇の向こうへ声を掛けると、一人、また一人とガレージに向かって歩いてくる。

その表情は称賛だったり信じられないってのだったり微笑んだりと様々だ。

 

「うっそー……結構自信あったんだけどなー」

 

「まさか尾美が気配をこんな正確に読めるなんて思わなかった……」

 

「あら、翠ちゃんも尾美さんが戦っていたのを見たじゃない?それに愛沙ちゃん達の言葉を信じてなかったの?」

 

「い、いや。そりゃ色々教えてもらってたけどさ。前に街で戦った時も守ってばっかだったし、まさかここまでとは思わなかったっていうか……それに焔耶はアタシより弱いからどうも……」

 

口々に言葉を交わしながら現れたのは、黄忠さんと馬超さん、そして馬岱さんの三人。

っていうか皆武器持ってるのは何故だろうか。

武装してる意味が判らず首を傾げるが、誰も俺の様子は気にしてないみたいだ。

 

「あーぁ。脳筋の焔耶の言う事なんか当てにならないと思ってたんだけどなぁ。尾美さん強そうには見えない(ビジュウンッ!!)……し?……あ、あれ?」

 

「ほっほー?言うじゃない馬岱ちゃん。ならその大した事無さそうな男と一戦交えてみるかい?俺の強さがどれぐらいか、ちゃーんと体で教えてあげちゃうけど?」

 

「……あ、あはは……遠慮しまーす(無理!!絶対勝てないってこれ!!尾美さんってお姉様並じゃん!?)」

 

「あらそう?残念」

 

「駄目ですよ尾美さん。女の子には優しくしないと?」

 

「いやー。つい体が反応しちまって」

 

「……(剣の動きが見えなかった……ッ!?こいつ、普通に戦ってもかなり強いな……)」

 

ちょっと失礼な事を言ってる馬岱ちゃんの首元にライトセーバーを構えながら笑顔で聞くと、馬岱ちゃんは少し顔を青くしながら引き攣った笑みを浮かべて遠慮してしまう。

それを聞いて俺は残念そうにしながらライトセーバーを仕舞うのだった。

っていうか少なくとも馬岱ちゃんレベルにゃ負ける気しねえし。

そんなコントを繰り広げていると、更に暗闇から人が現れる。

 

「ふむ。やはり蒲公英では相手になりませんね。まぁオビ=ワン殿は唯一恋殿と引き分けた御仁ですし」

 

「……オビ=ワン……お腹空いた」

 

「よーす陳宮ちゃん、恋ちゃん。っていうか挨拶がお腹空いたて……」

 

次に現れたのはこの大陸で史上最強、天下無双と称される武将とその頭脳。

ご存知三國無双の呂奉先こと恋ちゃんと陳宮の二人だ。

 

「はぁ……コイツがあの時居たら、絶対に勝ってたのに……」

 

「へぅ……でも、詠ちゃん……私はこの生活、とっても好きだよ……皆と一緒に居られるから……お久しぶりです、尾美さん」

 

そして最後は、この恋姫世界で時代に呑まれてしまった悲劇の将。

董仲穎と賈文和の名を捨てた詠ちゃんと月ちゃん。

月ちゃんは相変わらず何故あるのか分からないメイド服で、詠ちゃんは懐かしい軍師服に身を包んでる。

今ここに、蜀の名だたる頭脳(若干脳筋臭漂う人含め)が揃ってる訳だ。

 

「おー?月ちゃんも久しぶりー。相変わらず侍女服が似合ってるねぇ。後で俺と部屋でゆっくりしない?」

 

「へ、へぅ……ありがとうございます……でも、お誘いはちょっと……」

 

「あらら、残念」

 

「こぉるぁあ!!何自然と月を誑かしてんのよ!!この変態!!」

 

「まーまー落ち着いて。っていうか詠ちゃんも久しぶりだな、その服見るの……ふむ」

 

「……あによ?そんなにジロジロ見るな」

 

「いや。もしかしたらもう見納めになるかもしれねーから、これを機にじっくりねっとりと目に焼きつけとこうかと……」

 

「止めろ!!この変態変態変態へんたぁあーい!!」

 

「十回廻って?」

 

「正常、な訳あるかぁあああ!!?」

 

うんうん。その打てば響くツッコミ。さすが詠ちゃんだ。

まぁ夜中にギャーギャー騒ぐのも近所迷惑なので、俺は全員をガレージに招き入れる。

ちなみに恋ちゃんにはファルコン号に備蓄していたベーコンの巨大ブロックを幾つか出してあげた。

ハムハムと美味しそうに貪る恋ちゃんの行動に癒やされながら人数分の椅子を出し、俺は再び座って酒を飲む。

 

「あ、あのぉ~……尾美さん?ちょっと、いやかなり重要なお話なので、出来ればお酒は控えて頂きたいんでしゅ……コホンッ。ですが……」

 

「あー、要件は大体分かってるって。ファルコン号を使いたいんだろ?次の戦……赤壁の戦いで?」

 

「はぅあ!?」

 

「ど、どうして開戦を考えてる場所がわ、分かるんでしゅか?」

 

「いや、呉蜀同盟で魏に当たる。そして呉と蜀に利のあるのは水上戦。って事は二国同時に魏とぶつかるのに一番都合が良いのは、長江を流れる幅の広い赤壁が相場じゃね?って思ったんだけど?」

 

これにはさすがの黄忠さんの微笑みすら驚きに変わっているが、俺の胸は罪悪感でいっぱい。

驚いてる皆さんには申し訳ない。原作知識です(キリッ)

 

「あわわ……ずばり、その通りでしゅ……次の戦は大陸の天下を決める戦。ですので、私達は負ける訳にはいかないのでしゅ……あぅ」

 

「そ、それで、どの国の船乗りからも『大陸一速い絡繰船』と呼ばれてる”みれにあむふぁるこん号”と尾美さんの卓越した操縦技術が、今回の水上戦の策に絶対必要なんです!!お、お願いしましゅ!!」

 

「んー……理屈の上じゃ分かったけどさ?結局は俺に、いや俺達に何をさせたいのよ?確かにファルコン号は大陸の船で一番速いぜ?それは自信がある。兵装だって軍艦一隻とやったって負ける気はしねぇ。実際軍艦級の船を何隻か沈めてるしな」

 

椅子から立ち上がって頭を下げる軍師二人に、俺は質問を投げ掛ける。

ちなみに沈めたのは袁紹と袁術の所の軍艦だ。

さすがに名門袁家の船だけあって金の掛かった凄い船だったが、所詮この時代の最高級。

GIJUTUチートの塊であるファルコン号の敵じゃなかった。

 

「相手は同盟してても数の上じゃ絶対有利。それを覆すには幾らファルコン号でも無理がある。なら、一体何をやらせよーってんだ?」

 

俺の質問に対して二人の、いや軍略の天才と称される龐統ちゃんが顔を上げて真剣な表情で話し始めた。

この世界に俺が居る事で生まれた、新たな戦いの流れを――。

 

 

 

――”……あ~……こいつはかなりやばい話みてーだなぁ……手間賃は弾んでもらうぜ?”

 

 

 

”必ずお支払いします。この一世一代の決戦に勝てるのならば”

 

 

 

そして、俺はその死亡率がマッハでヤバイ依頼を受けるのだった。

 

 

 

そして説明を受けた乗組員が蜀中に響く程の悲鳴をあげるのだったww

 

 

 

 

後書き

 

次回、運び屋。伝説へ

 

 

    ↑

 

(タイトルではないww)

 

 


 
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