No.752496

真・恋姫無双 ~新外史伝第131話~

長らくお待たせしました、久しぶりの投稿です。

しばらく煮詰まっていましたが、急に閃き書き上げました。

今回も華琳ファンの方には申し訳ない展開になってしまっています。

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2015-01-19 18:30:03 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:7388   閲覧ユーザー数:5627

「何処をどう間違ってこのような事になったのかしら……」

 

華琳は誰も居ない小城の一室で呟いていた。

 

ちょっと前までは蜀と並び立つ立場で何れは一刀と天下分け目の戦いを夢見ていた華琳であったが、晋との戦いで大敗した後、国は一気に衰えた。

 

更に追い打ちを掛ける様に行方不明になっていた腹心の秋蘭が一刀に奪われ、そして晋からの圧力を覆す事が困難であることから、一刀の提案を受け入れ蜀に落ち延びて再起を期する事になったが、秋蘭を奪った張本人であり、交渉に来た紫苑に意趣返しで勝負を挑んだが、その結果返り討ちに遭い、仕方なく紫苑の指示に従い国を手放す事となった。

 

それ以降、華琳は仕事が多忙という理由で紫苑との面談を断っていたのであったが、精神的ショックで落ち込んでいたのであった。

 

そして今、華琳の心中は屈辱と時の変遷との戸惑いに対応できずにいた。

 

呉経由での蜀への撤退を行っていたが、兵の質が低下していた為、撤退速度が予定より遅くなり、ようやく小城に辿りついて身体を休めていたが、伝令が飛び込んできた。

 

「晋軍が約25里(1里約400メートルと計算)付近まで迫ってきています!」

 

報せを聞いて、魏の首脳陣は混乱していた。

 

「このままじゃ追い付かれるわ!ここで一戦をして敵の追撃を挫くべきよ!!」

 

「この城では守る事は無理です。誰か足止めの部隊を置いて、その間に我々の逃げる距離を稼ぐべきです」

 

桂花と稟の間で意見が分かれていた。本来なら二人の間を取り持つ風がいるのだが、星が魏に従軍している関係上、風が人質代わりとして蜀に滞在していた。その為、二人の意見を上手く調整出来る者が不在で、お互い感情的になってきた。

「このまま、黙ってやられるよりは最後に晋と一戦を交え華々しく散った方がいいわ!」

 

「そうよ!最後に魏の意地を見せましょう!」

 

元々、蜀に降る事を良しとしていない明華(曹仁)や陽華(曹洪)は最後の決戦を主張したが、逆に春蘭は華琳の事を思い退却を主張する。

 

「華琳様!ここは私に任せてお逃げ下さい!!蜀には秋蘭がいます、必ず華琳様の為に力を尽くしてくれます」

 

 

「華琳様!ボクも春蘭様と一緒に戦います!!」

 

「私も一緒に戦います!!」

 

「もういいわ。春蘭、このまま蜀に退いても魏の再興は難しい、魏再興の為なら蜀に頭を下げるけど、ただ北郷一刀や北郷紫苑の下に完全に降るとなれば私の誇りが許さない。それだったら最期に一戦交えて華麗に散った方が私らしいわよ」

 

華琳の親衛隊を纏める季衣や流琉も春蘭と共に戦おうとしたが、華琳は春蘭の決意を聞いて、蜀に行って秋蘭を頼るよりも春蘭と一緒に戦って生死を共にしようと考えた。

 

「駄目です華琳様!それでは私たち今まで命を賭けて来た事が無駄になります!何とぞここはお下がり下さい!」

 

逆に春蘭は魏再興の為に華琳をここで死なせる訳には行かず、必死で華琳を翻意させようとする。

 

「いいえ、下がらないわ!」

 

だが華琳も春蘭を死なせる訳にはいかないと双方譲らなかった、これはお互いの事を思うが故の相違であったが、しかし今まで従順であった春蘭が自分の命令に従わない事に対して、華琳の何かが切れてしまった。そして……

 

「そう…貴女も秋蘭と同じで私の指示に従わないというのね……分かったわ……」

 

華琳は席を立つと傍に置いていた絶を持ち出し、

 

「貴女も秋蘭と同じ様に私の言う事が聞けないの……」

 

華琳の目は、まるで夢遊病者の様な目で焦点も合っていない事が誰の目にも明らかであった。

これには流石の稟や桂花も驚き

 

「華琳様、お止め下さい!」

 

「華琳様、絶を引いて下さい!しゅ、春蘭、華琳様に謝りなさい!」

 

だが春蘭はその場から逃げようせずに、そんな状況の華琳を尚も支える覚悟で尚も

 

「私はどのような状況でも華琳様の味方ですですので、華琳様!どうか目を覚まして下さい!」

 

最後まで忠言するも華琳の目はまるで別世界に行っている感じであった。

 

そして周りも華琳の異変に気付いているが、魏の将たちは足が竦んでいるのか様で誰も止められない。

 

だがそんな中、後退する魏の軍勢に同行していた星が強行手段に出た。

 

星は何も言わず、素早い足で華琳の背後に近付き、頭部に当て身を喰らわせて華琳を気絶させたのであった。

 

周りは星の行動に驚いたが、気絶した華琳を見て、乱心した華琳が春蘭を手討ちにするという最悪の事態が避けれた事について安堵の空気が流れたのも事実であった。

 

「星……大きな騒ぎにならず華琳様を気絶させ助かりました…」

 

稟は、星に感謝の言葉を述べながらも、その星に対しても嫉妬の心も多少あった。

 

どうして、星の様に身体を張ってでも華琳様を留める事が出来なかったのかと。

 

そして、華琳を止める事が出来なかった自分自身に対して自己嫌悪を抱いていたことも。

 

だがそれは他の将たちも稟と同じ心境であったのか、乱心した華琳に手を出したことに星を批判する声が無かったが、だが気絶した華琳の傍に駆け寄った桂花は直接声を出して批判することは無かったものの、華琳に対して手を出した事に怒りを覚え憎悪の目で星を見ていた。

だが星はそのような桂花を無視して

 

「いや…お主たちにとって曹操殿は主。急に乱心した主に手を上げる事は難しいであろう、だからここは主従関係でない私だからこそ簡単に動けたことであって、そう気にするな」

 

星は稟たちの事を思い、これ以上気を咎めるなと口に出す。

 

「趙雲、礼を言うぞ。華琳様に不名誉な事をさせずに済んだ」

 

「いや、夏候惇殿に怪我が無く良かったが、稟これからどうする?」

 

星はこのような状況でも華琳の事を思いやる春蘭の事を思い、華琳の事をこれ以上言わずに今後の確認をする。

 

「華琳様がこのような状況では勝目は無いでしょう。親衛隊、並びに中軍はここから撤退、春蘭殿……申し訳ないですが後、頼めますか?」

 

「おう任せておけ!私がいる限り晋の兵など一人も通させないぞ、大船に乗ったつもりで安心して逃げろ!」

 

稟は城に春蘭の部隊を足止め部隊として残し、全軍撤退の方針を告げる。

 

さっきまで主戦派だった者も華琳の状況を見て、更に勝目が薄くなった事を理解したのか反対意見は無かった。

 

そして魏の大剣と謳われた春蘭以外に晋の大軍を一手に引き止めれる将は他にいなかった。

 

春蘭を慕う季衣や琉流も春蘭と共に戦いと申し出するが、

 

「お前達が居なければ、誰が華琳様を守る」

 

春蘭の一言で二人は渋々、春蘭の指示に従い撤退することに従った。

 

「では私も残ろう」

 

「何だと!?」

 

「何を言っているのですか星!これは魏と晋との戦い、貴女が残る必要ありません!!」

 

星の残留宣言に驚く春蘭、稟。

 

「私がここにいるのは、お主たちを無事に蜀まで送り届けろと主の意向だ」

 

元々星は魏に対する人質として残っていたが、このままでは無事に蜀まで辿りつけるどうか難しいところであった、だから星は今回ここまでの追撃を予想していなかった一刀の命と偽り、一人でも多く逃がすために星が残ると言い出したのであった。

 

「星、貴女の気持ちは分かりますが貴女が残って、私たちが逃げたらそれこそ魏の恥。それなら私たちも残って一緒に戦います」

 

流石に星が残してまで、逃げる事を良しとしない稟の言葉に星も返す言葉がない。

 

すると

 

「では私たちが代わりに残りましょう」

 

「誰だ貴様らは!」

 

「お主たちは……」

 

予想外の方向からある人物が声を掛けた。その人物の姿を見ると春蘭は知らない者たちであったので声を荒げるが、星にはその人物たちには見覚えがあり、

 

「そうか、お主たちが来たか…」

 

「星、知り合いですか?」

 

「ああ、稟。この二人は私よりも晋を憎んでいる人物だ。一人は頼りになるがもう一人はどうかな」

 

星の挑発を受けた人物は、星の言葉に怒りを覚えたがそれを表情に出さず、それを呑み込み無言を通した。二度と同じ過ちを起さない為に。

 

それを見た星はその人物が以前より多少成長したかと感じながら、

 

「稟に夏候惇殿、では私の代わりにこの二人を残して欲しい。決して無駄にならないはずだ」

 

星はこの人物の素性を明かすと、稟たちもある程度噂で話を聞いていた事から、決して裏切る事がないと判断して撤退を開始したのであった。

 

 

 


 
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