No.748820

真・恋姫†無双 裏√SG 第19.5話

桐生キラさん

こんにちは!
Second Generations 日常編 猪々子視点
次章に向けて、役者を揃える回その二!

2015-01-04 17:32:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1530   閲覧ユーザー数:1427

 

 

 

 

 

猪々子の居場所

 

 

 

 

猪々子「行けっ!行ってくだぁぁぁ!なんでそこでヘタレるんだぁぁ!」

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ?あたいはいつも通り、競馬場に居たんだ。

そしたら全財産を失った。何を言ってるのかわかんねーと思うが、あたいもよく分かってねーんだ

 

猪々子「なんでだぁぁぁ!?なんでなんだぁぁぁ!?怒られるぅぅぅ!咲夜に怒られるぅぅぅ!」

 

咲夜には今日博打に行くとは言ってなかった。

もしこれがバレて、全財産失ったなんて知れたら、間違いなく17分割にされちまう!

 

猪々子「に、逃げるか?だがどこに逃げりゃ……斗詩!

そうだ斗詩に頼めば!今から洛陽に行くしかねぇ!」

 

もうこうなりゃ、この許昌から出て、咲夜に見つからないように生きなきゃ!

もし見つかったら…

 

咲夜「仕事休んで博打たぁ、いい身分だな、猪々子?」

 

は、背後から、悪魔の声が聞こえた気がした。

いや、まだ大丈夫だ。このまま振り向かず、走り抜ければ…

 

月「あ、見てくださいよ、猪々子さん。私、当てちゃいました」

 

そして目の前には、天使の様な見た目の悪魔までいらっしゃった…

 

猪々子「す、すげぇな月~!どんだけ当てたんだぁ?

どれどれ~いち、じゅう、ひゃく、せん………ゆ、月!

その金あたいに貸してくれ!今度倍にして返すから!」

 

あたいは何とか切り抜けないかと思い話題を振ってみたが、月が当てた額がおかしかった。

月の天運が異常に高い事は知っていたが、こんな大金まで当てちまうなんて!

この金があれば、もうひと勝負できる!それで!

 

 

スパーン!

 

 

猪々子「いってー!!?」

 

後頭部にとんでもない衝撃が響きやがった。

この衝撃は知っている。咲夜の伝家の宝刀、ハリセンだ!

 

咲夜「猪々子、お前いい度胸だな?そろそろ懲りないと17分割…いや、粉微塵だぜ」

 

ハリセン片手に、もう片方の手でナイフをチラつかせる咲夜に、なんとも言えない恐怖を感じた。

咲夜、間違いなく本気だ…

 

猪々子「す、すいませんでした…」

 

素直に謝っておくことにした。あたいだって、まだ命は惜しい…

 

麗羽「猪々子、あなた相変わらずの様ですわね」

 

猪々子「れ、麗羽様!?なんで麗羽様がここに?って、斗詩まで!?」

 

咲夜の後ろには麗羽様が立っていた。さらにその隣では斗詩もいる。

なんでこの二人が許昌に来てるんだ?

 

斗詩「久しぶり、文ちゃん。今日は文ちゃんに話があって来たんだよ」

 

あたいに話?

 

 

 

 

あたいと斗詩、それに麗羽様は、競馬場にある椅子に座り、馬が走るのを見つつ話をする事になった。

ちなみに、咲夜と月は何処かへ行ってしまった。

あいつらが何処かへ行く前に咲夜が「お前の好きなようにしたらいい」と、訳のわからない事を言っていたけど、いったいどう意味なんだ?

 

猪々子「それで、あたいに話ってどうしたんですか?」

 

あたいは馬券を握り、斗詩から貰ったお金で賭けた馬を見つめて聞いてみた。

あの馬、ホント頼むぜー。

 

麗羽「えぇ。単刀直入に言いますわ。猪々子、私達と共に洛陽に来てください」

 

麗羽様が言うと同時に、馬が駆け出した

 

猪々子「洛陽に…ですか?」

 

麗羽「えぇ。あなたの力が必要なんです」

 

あたいが賭けている馬は、出だしが良かったのか、先頭に近い位置で走っている

 

猪々子「なんでまた、あたいなんですか?

洛陽には蜀の五虎将や春蘭、それに斗詩だっていますよね?正直、必要なくないですか?」

 

あたいは、自分が放った声に多少驚いていた。

自分でもびっくりするくらい、不機嫌な声だったからだ

 

斗詩「うん、でも、文ちゃんも知ってるよね?ここ最近の、徐福の事や翠さん暗殺未遂事件。立て続けに良くない事が起きてるから、文ちゃんにはしばらくご主人様の護衛について欲しいの」

 

あたいが、アニキの護衛に?

 

猪々子「それこそ、愛紗や春蘭に頼めよ。あたいなんかより、よっぽど強いだろ?」

 

麗羽「私はそうは思いませんわ。猪々子の力は、守る事においては愛紗さんや春蘭さんに劣るどころか勝っていると思っています。それに、洛陽にいる者はそれぞれ仕事もあります。一刀さんに常に付かせるには、人員も足りてません。そこへ、猪々子に手伝って貰おうと思いましたの。猪々子なら、力も信頼も十二分にあります。どうでしょうか、猪々子?」

 

麗羽様に褒められ、顔が少し熱くなった。あたいの力を認められることは、今でも多少は嬉しいらしい。だけど…

 

猪々子「麗羽様の言葉は凄く嬉しいですよ。でもあたいは、もう武将じゃない。そりゃ、今でも鍛えたりしてるし、そんじょそこいらの奴らに負けるつもりはありませんけど、それでも、あたいの力は今は【晋】の為にある。家族を守る為にある。アニキには確かに恩もあるけど、あたいはもう、出来れば戦いたくない」

 

あの大戦が終結してすぐ、あたいは【晋】に向かった。

これから平和になっていくのなら、あたいの力はもう必要ないだろうと考えていたからだ。

それなら、【晋】の従業員になって、あの家族と暮らしたいと思った。

【晋】に入りたての頃は、確かにキツくて大変だったけど、それと同じくらい楽しかった。

戦うことしか出来なかったあたいが、飯を運んだり、掃除したりする事で、いろんな人に感謝されたんだ。笑顔になってくれたんだ。いろんな意味で壊してばっかのあたいにしたら、今までなかった事なんだ。

嬉しかった。戦わなくても、誰かを幸せにする事が出来るんだってわかったから。

そしていつしか、あたいは力を使う事を止めていた。争う事を止めていた。

戦う必要がないなら、戦いたくなかった。あたいは、武人から一般人に成り果てた

 

斗詩「……だよね。文ちゃんはもう、将軍じゃないもんね」

 

斗詩は悲しそうな顔をしていた。あたいがそうさせた。

その顔を見ると、罪悪感で溢れてくる

 

麗羽「……私も、強制はいたしませんわ。選ぶのは全て、猪々子なのですから。

ですが、本当にダメですの?ただ一時、今抱えている件が落ち着くまでの間で良いのです。

お願いします、猪々子」

 

猪々子「れ、麗羽様!?」

 

麗羽様に頭を下げられ、あたいは慌てて顔を上げてくれとお願いする。

麗羽様があたいなんかに、頭を下げていい訳がない

 

麗羽「猪々子、あなたはもう、私の配下ではありません。ただ長年付き添ってくれた友として、あなたにお願いしているのです。もしあなたが来てくれるのなら、私の頭など安いものですわ」

 

依然、頭を上げようとしない麗羽様。斗詩も麗羽様と一緒に頭を下げている。

それだけで、今の洛陽が、麗羽様達が、いかに良くない状況にあるのかがわかる

 

猪々子「ほんと、あたいなんかに、頭下げないでくださいよ。

麗羽様は麗羽様らしく、高笑いしてくれたらいいんですから」

 

あたいは麗羽様達を横目に、走っている馬を見る。

いつの間にか、あたいが賭けていた馬が最後尾を走っていた

 

麗羽「そうはいきませんわ。あなたから、大好きな家族を引き離そうとしているのですから。お願いします、猪々子。私達と共に来てください」

 

麗羽様や斗詩にここまでお願いされると、あたいとしても聞いてやりたいと思い始める。

だけど、正直行きたくないという気持ちもある。あたいじゃ、決められない

 

それなら…

 

猪々子「じゃあ麗羽様、あたいが賭けたこの馬券。これが当たったら、洛陽に行くでどうですか?外れたらあたいは許昌に残る。それでいいですか?」

 

あたいはあたいらしく、博打で決めてみようと思った。

麗羽様と斗詩の願いを聞いてやりたい気持ちと、ここに残りたい気持ち。

その二つを両立させるには、この方法が一番だと考えた

 

麗羽「……いいでしょう。全ては天運に。

どういった結果になろうと、恨みっこはなし。それでいいですわね?」

 

麗羽様の言葉に、あたいは頷く。そしてあたいが賭けた馬を見つめた。

最後尾を走る、あたいの道を選ぶ馬を…

 

あたいも、麗羽様も、斗詩も、静かにジッと見つめる。馬達が最後のコーナーを曲がり、最後の直進に入っていくと、会場がワッと湧き上がる。みんなの感情むき出しのこの歓声だけは、戦場で挙げる雄叫びに似ていて好きだ。心が震え上がってくる

 

そして、あたいの馬は…

 

 

 

 

咲夜「で?洛陽に行くと。お前、そろそろ博打から足洗った方がいいんじゃないか?」

 

あたいは荷物をまとめつつ、咲夜にあった事を、決まった事を話した

 

最後のあの直進に入ったところで、あたいが賭けた馬が、最後尾から怒涛の追い上げを見せてくれて、前を走っていた14頭の馬をごぼう抜き。賭けた馬は見事一着となり、同時にあたいの洛陽行きも決まってしまった

 

猪々子「いや、どうせあたいの事だから、また外すと思って。どうもあの馬、麗羽様も賭けてたらしくてな。麗羽様の天運が、あたいの博打運を上回ったんだろうな」

 

じゃなきゃ、あんな劇的な逆転劇なんてありえねぇわ、まぁ、おかげで小遣いは全額返って来たけどさ

 

咲夜「ふーん。ま、自分でそう決めたんだ。私や家族は何も言わねぇさ」

 

猪々子「ちぇー、そこは止めるところだろー?」

 

咲夜「はっ!さっき言ったろ?お前の好きにしろって。

それに、別に今生の別れじゃねぇんだ。さっさと終わらせて、さっさと帰ってこい」

 

あぁうん、咲夜はそう言う奴だよな。関白っていうか、帰って来るのが当たり前みたいに考えてる。それだけあたいの事を信頼してるのか、それともホントに、なんてことないと考えているのか

 

猪々子「まぁでも、なるべく早く帰るよ。あたいも、家(ここ)が好きだからな」

 

咲夜「当然だな。どれ、今日は猪々子の好きな飯でも作ってやるよ」

 

猪々子「マジで!やったぜ!あ、ついでに泊まってっていいか?」

 

あたいは普段、この【晋】の隣にある小さな家で流琉と一緒に暮らしている。【晋】の家で暮らしたかったけど、どうも部屋がないらしく、【晋】が隣の家を買い取ってくれたんだ。家は違うけど、朝飯とかは一緒に食えるし、不自由はないんだけど、やっぱり一緒の家で過ごしたい気持ちもあった。今日くらいは、そんな我儘を聞いてもらおう

 

咲夜「あぁ別にいいぜ。ただまぁ…」

 

華琳「さくやー!お風呂、どうやってお湯出すのー?」

 

風呂場から華琳の声が聞こえてきたけど、なんで華琳が風呂に?

 

咲夜「あれも一緒だがいいか?」

 

咲夜の引きつった笑みに、あたいもつられて苦笑いになるが、うんと頷いた

 

その後、咲夜と月が料理を作ってくれた。どれもあたいの好物ばかりで、本当に嬉しくて、温かくて、やっぱりこの家が好きだと思って…あたいはなるべく早く帰って来れるよう、今一度決意した

 

 

 

 

翌朝、麗羽様と斗詩が迎えに来ると、零士と咲夜が送り出してくれた。

その時、咲夜から弁当も貰ってしまった。洛陽までの道中で食って行けとの事らしい

 

零士「じゃあ猪々子ちゃん、向こうでも頑張ってね」

 

咲夜「斗詩、麗羽、猪々子を頼むぜ」

 

麗羽「えぇ、しばらくあなた達の家族を借りていきますわ。この恩は必ずお返しします」

 

斗詩「本当に、ありがとうございました!」

 

そう言って、二人は歩き始めた。許昌の外に馬車を止めているらしく、そこに向かうとの事だ

 

猪々子「じゃあ、行ってきまーす!」

 

咲夜・零士「行ってらっしゃい」

 

挨拶を済ませ、あたいも歩き始める。

零士も咲夜も、姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。それが無性に嬉しくなる

 

麗羽「本当に、良い家族ですわね」

 

麗羽様が、ポツリとそんな事を呟いていた

 

猪々子「はい!あたいの自慢の家族です!どうですか?

麗羽様も引退したら、あそこで一緒に住みません?あたいが養っていきますよ!」

 

あたいがそう言うと、麗羽様は少し考え、フッと笑ってくれた

 

麗羽「えぇ。それもいいかもしれませんわね。

私の役割を全て果たし、若い世代に想いを託し終えたら、そうしましょうかしら」

 

斗詩「ふふ、素敵ですね。またあの時みたいに、三人でやっていきましょう!」

 

斗詩の言葉に、あたいも麗羽と強く頷く。

 

この三人と、そして【晋】のみんなと一緒に暮らしていく。

そんな平和な未来があるなら、あたいもそれに向けて頑張りたい。

きっとそれは、何よりも温かくて、素敵な世界だから

 

 

 


 
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