No.74612

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第1話

ささっとさん

大陸の王となった華琳の覇道を見届けた一刀は華琳の前から消えた。
しかし、消えたはずの彼が目を覚ました場所は……

2009-05-20 17:00:59 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:62931   閲覧ユーザー数:45587

 

納得しているかと聞かれれば、勿論納得なんてしていない。

 

 

『さよなら……誇り高き王……』

 

 

それでも持てる全てを出し切って最善を尽くしたのだから、悔いはない。

 

 

『さよなら……寂しがり屋の女の子』

 

 

ただせめて、ホンの少しでもいいから……そう思うのは俺の我侭なんだろうか。

 

 

『さよなら……愛していたよ、華琳――――――』

 

 

その言葉を最後に、俺の意識は闇の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ました時、眼前に広がっていたのは何処までも続く荒野。

 

 

「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」

 

 

そして忘れようにも忘れられないチビデブノッポな黄巾党3人組。

 

 

「………え?」

 

 

北郷 一刀にとって、2度目の乱世が始まった瞬間だった。

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第1話 1周目~4周目

 

 

 

大陸の王となった華琳の物語を最後まで見届ける俺は役目を終えた。

 

このまま消えてしまうにしろ元の世界に戻るにしろ、

俺の心にはもう二度と華琳に逢うことは叶わないだろうという確信があった。

 

だからこそ目を覚ました時に見た眼前の光景が信じられなかった。

 

何しろそこは俺がこの世界で一番最初にいた場所だったのだから。

 

そして直後に自分の置かれている状況を知り愕然とする。

 

追い剥ぎをするべく俺に絡んできた黄巾党の3人組。

 

その3人組をあっという間に叩き伏せた趙雲さんとの出会い。

 

この頃は趙雲さんと一緒に旅をしていた風と稟との出会い。

 

そしてこの3人との別れの直後に華琳、春蘭、秋蘭との出会い。

 

あろうことか、俺は全てが始まった瞬間にまで戻ってしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体何が起こったのか全く理解出来なかった俺だが、

それでも華琳達に再び出会えた喜びに比べたら些細な問題でしかなかった。

 

現代知識に加えてこの乱世を華琳達と共に生き抜いた経験を生かし、

一度目よりも遥かに上手く立ち回った2周目。

 

勿論のことだが、俺は華琳の覇王としての夢を叶えるべく奔走した。

 

あの占い師から一字一句同じ台詞を言われた時は不覚にも取り乱してしまったが、

その後はさらに覚悟と決意を持って華琳のために行動した。

 

そして時が流れ三国同盟の成った日、俺は華琳と共に別れの場所へとやって来ていた。

 

そこで俺は思いもよらない光景を目にすることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………いかないで、一刀』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度目の別れの時、彼女は最後まで俺の方を見てくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ずっと私の傍に……いてくれるって、言ったじゃない……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度目の別れの時、彼女は最後まで毅然とした態度を崩さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お願い、だから……私を一人にしないで………かずとぉ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな最後の最後まで覇王たらんとした彼女の姿は何処にもない。

 

ただ、俺との別れを前に泣きじゃくる寂しがり屋の女の子がそこにいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ゴメン、華琳』

 

 

そんな彼女に対し、俺は優しく抱きしめて謝罪の言葉をかけるくらいしか出来ない。

 

一度目の世界でもこれほどまで思い知らされた事はなかった。

 

『天の御遣い』と大層な呼び名で呼ばれていながら、たった一人の女の子の笑顔さえ守れない。

 

自分はなんて無力なんだろうと。

 

 

『あやまら、ないで、よぉ……おねがいだから、かずと……』

 

『ゴメン、本当にゴメン……華琳』

 

 

華琳の言葉の一つ一つが俺の胸を奥に突き刺さる。

 

俺だって出来るならずっと華琳の傍にいたい。

 

でも、どれだけ願ったところで無力な俺には何一つ変えることなど出来ないんだ、華琳。

 

 

『かずと、からだが……ッ!』

 

 

ゆっくりと俺の身体が薄れていく。

 

驚きながらも消え逝く俺を必死に繋ぎ止めようとする華琳。

 

しかしその手は空を切るばかり。

 

今この世界に確かに存在している華琳には、もう俺に触れる事は出来ないんだ。

 

 

『さよなら……誇り高き王……』

 

『まって、いかないで、かずと!!!』

 

 

そして身を引き裂かれるような思いで紡ぐ別れの言葉。

           

 

『さよなら……寂しがり屋の女の子』

 

『いやよ、そんなのいや、ぜったいにいや!!!』

 

 

一度目の別れよりも遥かに辛い別れ。

 

 

『さよなら……愛していたよ、華琳――――――』

 

『かずと!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

華琳の悲しい叫びに包まれながら、俺の意識は闇の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

3度目となる世界で目を覚ました俺は、驚きもそこそこにある決意を持って華琳達に接触した。

 

俺が何もしなければ歴史は史実どおりに進み、華琳の夢は潰えてしまう。

 

俺が華琳のために尽力すれば、最後の最後で彼女を絶望の淵に落としてしまう。

 

覇王としての華琳と女の子としての華琳。

 

そのどちらもが俺の愛した華琳の姿であり、どちらかを切り捨てる事など出来はしない。

 

ならばどちらも切り捨てないためにはどうすればいいのか?

 

決まっている、代償を差し出せばいいのだ。

 

 

「華琳さま! こやつは……」

 

「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男だと聞いたわ」

 

「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」

 

 

正直、これをやれば女の子としての華琳の幸せを奪うことになると思う。

 

だけど、華琳にあんな悲しみを味あわせるよりは遥かに良い………良いに決まってる。

 

 

「………貴女が曹 孟徳か」

 

「あら、私を知っているのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから俺は無表情の仮面をかぶり、愛しい彼女に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知っているとも。この後に魏の国を起こし、大陸にその名を轟かせる乱世の奸雄よ」

 

「っ!!!」

 

 

途端に華琳の雰囲気が変わるが、俺は構うことなく言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名は北郷 一刀。天の意思によってこの地に遣わされた者。乱世を統べる英雄を見届けるために」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつては華琳によって突然背負うことになってしまったこの名、今度は自らの意思で背負う。

 

『北郷 一刀』としてではなく『天の御遣い』として、俺の持てる全ての力でもって君の夢を成就させよう。

 

俺の想いの全てを捨ててでも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな一見馬鹿げてるとしか思えない考えは功を奏した。

 

繰り返した事でさらに濃さを増した経験と現代知識を惜しげもなく使い、

内政面は言うに及ばず2周目でも行わなかった軍事面についても支援を行う。

 

これによって魏の勢力は瞬く間に拡大し、予想よりも早い段階で大陸の統一を成しえようとしていた。

 

さらに肝心の華琳だが、彼女とはあくまで魏の王と天の御遣いという間柄で協力関係を結んでいるだけ。

 

恋仲の男女が持つ親しさはおろか、友人としての気安ささえも俺達の間には存在していない。

 

必死に自らの欲求を押し殺した俺は、ただひたすら華琳の覇道を叶える事だけに集中していたのだ。

 

だが、物語は思わぬところで終焉を迎えることとなる。

 

 

『北郷、覚悟ッ!!!』

 

 

それは自らが率先して引き受けた街の治安維持、警備隊隊長としての職務中だった。

 

見慣れぬ男が突然飛び出してきたかと思えば、隠し持っていた短刀を抜いて俺に肉薄する。

 

全く想定していなかった事態に俺は頭が真っ白になってしまい、

気づいた時には胸に強烈な痛みと熱さを感じながら地べたに這い蹲っていた。

 

その男はすぐさま周囲にいた兵士達によって取り押さえられたようだったが、

その後どうなったのかは知らない。

 

何故なら俺は二度とその場から動く事が出来なかったのだから。

 

 

 

 

4度目の世界で目覚めた俺だが、正直なところ今回の記憶は酷く曖昧だった。

 

 

「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」

 

 

と言うのもこの時の俺は初めて直接的な『死』に触れ、ただただ恐怖に苛まれていたからだ。

 

 

「……おい、聞いてんのかテメェ! 何とか言いやがれ」

 

 

ましてそれが自分自身の『死』であるのだから、正気を保っていられるわけがない。

 

 

「この野郎、下手に出てりゃ付け上がりやがって……」

 

 

ただ、お馴染みの3人組の誰かがこの台詞を言ったことだけはハッキリしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このガキが! 調子こいてると『ぶっ殺す』ぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、自分の中で何かが弾けたような感覚があった。

 

そこから先の事は全くと言っていいほど憶えていない。

 

ただ意識が闇に落ちる寸前、何故か左腕から血を流しながら俺に槍を突き立てる趙雲さんが見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ました時、俺の眼前に広がっていたのは何の変哲もない現代風の部屋。

 

「待ってたわよん、ご主人様ぁん♪」

 

そして一度見たら絶対に忘れられないであろうガチムチ変態生物(仮)。

 

「………………」

 

本郷 一刀にとって、人生で初めて自ら進んで意識を手放した瞬間だった。

 

 

 

 

あとがき

 

 

お初にお目にかかります、『ささっと』と申します。

 

SSではありがちな逆行物ですが第1話にして既に3回(+1回)も逆行してます。

 

と言っても話的にはまだまだプロローグ、序章的な位置ですんで展開が速いです。

 

とりあえず早めに本編に持っていけるよう頑張ります。

 

あと、作者的には華琳様と風が真・恋姫2大ヒロインで決定していますんで、ハイ。

 

贔屓やら捏造やらのバランスが多くなると思いますが勘弁してください、ハイ。

 

 

 

それでは最後までお付き合いいただきますよう、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

PS:ちょっと短かったかな?(文章の量的な意味で)

 

 

 

 
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