No.745365

機動戦士ガンダムSEED 夏の始まりからやってきた白の騎士

PHASE4 覚悟完了

今年も残り8日間!なんとがんばってDESTINYを投稿したい諸行でございます故!応援よろしく!!

2014-12-23 23:27:44 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3099   閲覧ユーザー数:3023

ヘリオポリスが崩壊した。

 

一夏はそれが今、目の前で起こっている事を黙って見ているしかない事に歯痒さを覚える。ついさっきまで、あそこで平和に暮らしていたはずの人たちが踏みしめていた大地が、バラバラに四散し、宇宙空間を漂っていた。

そんなときだ、バラバラになるヘリオポリスの隙間から何か白いものがこちらに流されて来るのがモニターに映った。

 

「あれはストライク……キラか!」

 

一夏は浮遊していた三枚のファンネルシールドを背中に固定させてから白式のスラスターを吹かして、漂流するストライクをキャッチし、頭の右後ろ辺りに意識を集中してストライクに通信を繋ぐ。

 

「キラ、キラ!」

 

「っ……一夏?」

 

返事が帰ってきた。一夏はキラが無事な事にホッとする。そして、キラと一夏は崩壊したヘリオポリスに視線を移した。

 

「ヘリオポリスが……」

 

「いったい、中で何が起きたんだ?」

 

「分からない……いきなりメインシャフトが爆発したと思ったら、外に放り出されて……気が付いたらこんな事に……」

 

『X105、ストライク。X105、ストライク。キラ・ヤマト!聞こえていたら応答しろ!』

 

すると、ストライクのスピーカーからノイズ混じりの通信が入る。通信の主はナタルだ。キラはハッとしてアークエンジェルに通信を開く。

 

「こちらX105、ストライク、キラです」

 

『無事か?』

 

あくまでも事務的な冷めた声音が今は彼らに冷静さを取り戻させていた。

 

「はい!」

 

『こちらの位置は分かるか?』

 

「はい……」

 

『ならば帰投しろ、戻れるな?』

 

ナタルはそれだけを言うと、通信を切った。

キラは通信が切れると、また、ヘリオポリスへ視線を向けた。

 

(父さん、母さん、無事だよね?)

 

キラはきゅっと口元を引き締め、改めてレバーを握り直した。両親の安否が気になったが、無事に避難しただろうと思うしかない。

 

「ん?キラ。ちょっと見てもらっても良いか」

 

「え?」

 

一夏が何かを見つけたらしい、白式の指差す方へカメラを向けると、ヘリオポリスのデブリに紛れて、何か光るモノが漂っている。

 

「あれは……ヘリオポリスの救命ポッドだ!」

 

「なんだって!?だったらすぐにでも回収しないと」

 

「うん!」

 

白式とストライクは武装をしまい、バーニアを吹かして、救命ポッド近づく。

 

 

「認められない!?認められないってどう言う事です!推進部が壊れて漂流してたんですよ!」

 

アークエンジェルに無事辿り着いたキラと一夏だったが、右舷に開かれたハッチのところでもめていた。白式は、その両手に一隻の救命ボートを抱えていた。

 

「このままこの人たちを見殺しにしろって言うんですか!たくさんの人がこの中に避難しているんでしょう!?」

 

最初、アークエンジェルに救命ボートを収容してもらおうと考えていた二人だったが、思わぬ事にナタルが避難民の救助に反対していた。

因みに、アークエンジェルとの通信コードを持たない白式はストライクの回線を通して話している。

 

『直ぐに救援艦がくる。アークエンジェルは今戦闘中なんだぞ!避難民の受け入れなどできるわけがないだろう!』

 

「あんたねぇ!」

 

思わずアサルトライフル“焔備“が変化したマシンガンタイプのレーザー銃“ゲーグナー“に手を伸ばしかけるのをぐっと堪えながら、一夏は画面の向こうにいるナタルを睨みつける。

 

『……いいわ、許可します』

 

『艦長!?』

 

ナタルはきっとなりながら艦長席に座る女性……マリュー・ラミアスを見上げる。

 

『壊れていては仕方ないでしょう。それに今はこんな事に時間を使いたくないの、収容急いで』

 

ストライクと白式、救命ボートが着艦したのは、カタパルトレールが細長く延びた発着デッキだった。ストライクと白式が奥の格納庫に入ると、エアロックの巨大な扉が閉まる。モビルスーツ用のメンテナンスベッドが奥に据えられ、その横には被弾したモビルアーマー“メビウス・ゼロ“が収容されていた。

 

「うおっ……と。そうか、これが宇宙なのか……」

 

白式から降りた一夏を襲ったのは無重力による浮遊感だった。

そもそも異世界から来た一夏はこの時までずっと重力のあるヘリオポリスの中にいたため、イマイチ実感が無かったのだが、ここに来てようやく理解しつつあった。

一方キラはというと救命ボートに入っていた中にいた見知った顔と思わぬ再開を果たしていた。フレイ・アルスターというその少女は、キラが片思いしている相手であり、同時にサイ・アーガイルの恋人である。

フレイのことを知らない一夏は、持ち前のキング・オブ・唐変木から恋人と間違えることなく友達と認識して、なにも言わずに白式を元のブレスレットに戻すと、先に居住区へと向かうことにした。

 

 

「う~ん、さっぱりわからんな……」

 

キラと別れた後、一夏は腕に巻かれた待機状態の白式からモニターを表示して件の画面を眺めていた。

 

GAT-X102 データインストール 【オールコンプリート】

 

GAT-X103 データインストール62%

 

GAT-X207 データインストール56%

 

GAT-X303 データインストール91%

 

GAT-X105 データインストール98%

 

甲装・牙【参】データインストール84%

 

BT-01 データインストール 【オールコンプリート】

 

RR-08/s2 データインストール74%

 

s-r.01 データインストール90%

 

xx-02 データインストール85%

 

わかったことと言えば、この上のX系統がすべて奪取されたモビルスーツ四機とストライクだということと、残りが俺の本来いた世界のISだということぐらいだ。

最初にオールコンプリートされたのがX系統の基盤“デュエル“。フェイズシフト装甲が白式にも使用出来たのはこれのおかげだろう。

元々ISには、操縦者及び機体が戦闘した相手のデータを得て、それを元に新しい武器なりシステムを操縦者に合わせて組み込んでいく自己進化システムがある。防御力が低い白式には機動力の阻害にならないこの装甲はうってつけなのかも知れない。それからもう一つのファンネルシールドは、セシリアのブルーティアーズから創ったものと見て間違いないだろう。なにせ聞いていたブルーティアーズの操作方法通り、イメージした通りに楯が動いたのだから。

そこから考えるに、この白式は今強力な機体のデータを同化しようとしていて、それが完了しているのがデュエルとブルーティアーズということになる。

 

(けどそれって他の奪取機や箒たちの兵器が使えるって事だよな……)

 

鈴の衝撃砲は宇宙じゃ使えなさそうだけどラウラのAICは使えそうだ。あとシャルのパイルバンカー。アレを喰らったラウラ、すげー痛そうだったし、脅しとかには役立ちそうだ。

箒……のは、ちょっと威力が高すぎるかな。それに全身展開装甲はもう使えちゃってるみたいだし。

 

「あっ、一夏さん!」

 

「一夏お兄ちゃん!」

 

「シン君、それにマユちゃんも」

 

食堂にまでたどり着いたところで迎えに来てくれたのであろうシンとマユが廊下の数十センチ上空を真っ直ぐ進んでいた。その後ろにはミリアリアたちも見えていた。無重力下では、ああやって床を蹴って宙を漂って行く方が、歩いて進むよりも楽な上に速いようだ。

 

「心配したんだよ!お兄ちゃんが宇宙に飛び出してからぜんぜん戻ってこなかったんだもの!」

 

「あはは、ごめんねマユちゃん」

 

そう言って、一夏が優しくマユの頭を撫でてやるとなぜか「ふぇっ!?」と驚いたような声を上げたが、次第に心地良くなってきたのかくすぐったいような表情を浮かべながら静かに受け入れた。

 

「……なんか微笑ましいね。こんな状況なのに」

 

「実のお兄さんよりお兄さんしてる一夏に一言どうぞシン君」

 

「た、たとえどんなに仲が良くてもマユは僕の妹です!!」

 

ミリアリアの言うとおり、へリオポリスが崩壊し、ザフトがまだ追いかけてくる可能性を払拭しきれていないこの状況下だ。それでありながら、この時この場だけは優しい雰囲気に包まれていた。

 

 

その後、キラたちと合流した一夏たちは再び居住区画の一部屋の集まっていた。その雰囲気は決して楽しいと言えたモノではなかった。

 

「どこに行くのかな、この艦」

 

抑えようのない不安が、カズイの口からこぼれた。

住み慣れたコロニーを失い、親や家族とは引き離され、その安否も知れない。こうして地球連合軍の軍艦に乗っている以上、いつまた戦闘が始めるかもしれないのだ。

 

「さぁ、一度進路を変えたよね?まだザフトがいるのかな?」

 

「この艦とあのモビルスーツを追ってんだろ?じゃ、まだ、追われてんのかもな」

 

トールの「追われてる」という言葉にフレイは血の気が下がる。

 

「じゃあ、コレに乗ってる方が危ないじゃないの!やだ、ちょっと」

 

「なら壊された救命ポッドの方がマシだった?」

 

「そうじゃないけど……」

 

キラは会話の外で自分のした事に後悔する。確かにこのアークエンジェルは軍用艦で、フレイの言うとおりこの船はザフトに狙われる危険性があるのだ。

一夏はそんなキラの浮かない顔に気づき、ポンっとキラの肩に手を置く。

 

「大丈夫だって。いざとなったらまた俺たちが追っ払えばいいんだから」

 

「またって……君はまた白式に乗って人を殺すの?」

 

まるで心外だと言わんばかりに驚愕した表情を一夏に見せつけながら質問を投げ掛けてきた。

 

「……そうだな。白式に乗って出ていけば、また敵を殺すことになるかもしれない」

 

今でも雪片でジンを叩き斬った瞬間と、その時のレバーの重みが忘れられない。あれにどんな人が乗っていたのかはもう知ることはないだろうが、それでも命を奪ったという事実が一夏に纏わり付いていた。

これからも白式に乗ってザフト軍と戦っていくのならば、嫌でもこの感覚が絡んでくるのだろう。

 

「だったら……」

 

「でもこの艦にはたくさんの民間人が乗っていて、ザフトはまだこの艦を狙っている。次に戦闘が起きてでもしたら俺たちが出ないと多くの人が死ぬかもしれない」

 

それだけは絶対に避けなくてはいけない。

戦争に関わりたくない一心で中立コロニーに住んでいただろうに、それをふざけた理由で巻き込まれ、あまつさえ軍と共に殺されるなんて話はあっていいはずがないというのが一夏の意見であった。

 

「正直言って連合軍は嫌いだ。けどいくら喚いたって状況が変わるわけでもないなら、俺は戦う。連合のためじゃない、ここにいる人たちを守るために」

 

「おやおや、ずいぶん格好いいこと言ってくれちゃったねぇ、この黒髪の坊主君は」

 

キラ達の部屋にひょっこり人懐こい笑顔で現れる人物がいた。

ヘリオポリスでストライクを収納する際にカタパルトへ姿を現した男、ムウだった。

 

「キラ・ヤマト!マードック軍曹が怒ってたぞ?人出が足りないんだ。自分の機体は自分で整備しろとよ」

 

「ぼ、僕の機体!?」

 

ぎょっとした風に動揺したキラの気持ちは誰もが手に取るように理解できた。

 

「今はそう言う事になってるってことだよ。実際、アレには君しか乗れないんだから」

 

「僕にしか……」

 

キラからすれば、冗談じゃない!と声を大にして叫びたい心境だろう。

これまで平和に時を過ごしてきたというのに、突然戦場を見せつけられたと思ったらモビルスーツに乗せられて……

だが一夏も言ったように、ここでわめき散らしたところで何も状況は変わらないし、むしろ逆に悪化させるだけだ。そう思うとキラはどうしようもない憤りが募るばかりであった。

 

「そうだ、今、この艦を護れるのは、お前達二人と俺だけなんだ。できる事をやれよ。悩んでる時間はないんだからな!それと、そっちの坊主は今から俺と一緒にブリッジに来い」

 

ムウは腕を組み、その人懐っこい笑顔を保ちながら視線を一夏に移した。

 

「え、俺ですか?」

 

「そうだ、艦長がいろいろ聞きたいそうだ」

 

「……分かりました」

 

一夏はある程度予想していたかのような顔でベットから立ち上がる。そしてムウと一夏はその場をあとにしようとすが、それはサイにより少し留まる。

 

「あの!この船はいったい何処へ向かってんですか?」

 

「ユーラシアの軍事要塞だ。ま、すんなり入れればいいがな……ってとこさ」

 

そう答えると今度こそムウと一夏は、その場をあとにした。

 

 

アークエンジェルのブリッジは、一夏の世界で言うSF物の宇宙戦艦のブリッジとよく似ていた。こうしてみると、アニメの世界に飛び込んだかのような親近感を覚えてしまうが、すぐさま思考を切り替える。

 

「織斑一夏……だったか?」

 

艦長席であろう場所には、マリューが座っており、その隣には先ほどの戦闘前にキラを高圧的な物言いで戦わせようとしていたナタルの姿が見え、真っ先に一夏に詰め寄ってきた。

 

「……はい」

 

「貴様はいったい何者だ?何故貴様のような子どもがモビルスーツを所有している?」

 

「それは……」

 

開きかけた口を一度閉じる。

これから話すのはあまりにも奇天烈で、信じがたい話だ。なにせ異世界から来た人間と、同じく異世界の技術で出来た機体がこの時代の兵器へと生まれ変わったと言うのだ。どこか姉、千冬と同じ匂いを漂わせる彼女が、果たしてそんな話をまともに聞いてくれるだろうか?一夏の脳内では、むしろ怒りを買って終わりのない言葉の投げ合いが続く未来しか見えなかった。

 

「どうした?何か答えられない事でもあるのか?」

 

ナタルの眉間のシワがグイッと深くなる。一夏はそれに若干引き気味だった。まさか素直に異世界から来ました、なんて馬鹿げた話を信じてもらえるわけがないし、下手に嘘を付けば帰って怪しまれてしまうだろう。

 

「まあまあ、坊主達のおかげで、この艦を護る事が出来たんだし」

 

「それとこれとは話が別です!私が言いたいのは、Gシリーズは極秘裏に造られたのにも関わらず、この少年はそのGに似たモビルスーツを持っていたのですよ?」

 

「そこの処、どうなの?」

 

ブリッジ中のクルーから視線が集まる。一夏は言うべきか、言わないべきか迷っていた。

 

と、そこに警報が鳴り響いた。

 

「大型の熱量感知!戦艦と思われます。距離二〇〇、イエロー三三一七マーク二〇〇チャーリー、進路ゼロシフトゼロ!」

 

「横か!同方向へ向かってる!?」

 

気づかれたのか?と、みな一瞬ぞっとする。

 

「だがそれにしては、大分遠い……」

 

ナタルがつぶやく。敵艦はアークエンジェルの左舷方向を、平行して航行していた。

 

「目標はかなりの高速で移動。横軸で本艦を追い抜きます!━━━艦特定、ナスカ級です!」

 

ムウが唸る。

 

「……読まれてるぞ。先回りしてコッチの頭を抑えるつもりだぞ!」

 

「ローラシア級は!?」

 

ナタルが焦って尋ねた。パルがあわてて計器を操作し、はっと息をのむ。

 

「……本艦の後方三〇〇に進行する熱源……!何時の間に……」

 

二艦に挟まれた━━━。恐怖に満ちた沈黙が、しばしブリッジの空気を支配する。その沈黙を破るようにムウが口を開いた。

 

「やられたな。このままではいずれローラシア級に追いつかれて見つかる……。だが逃げようとしてエンジンを使えば、あっという間にナスカ級が停止してくるってわけだ」

 

マリューもナタルも、呆然と黙り込むしかなかった。わずかに見えた希望が、今や完全に打ち砕かれたのだ。

 

「とにかく、キラ君をブリッジに呼び出して」

 

オペレーターの一人がすぐさま艦内放送を流す。

一夏はモニターに映し出されるアークエンジェルとナスカ級、ローラシア級と表記された点を見てグッと奥歯を噛みしめる。そして、そんな一夏がこんな状況でじっとしていられる筈もなかった。

 

「俺に行かせてください!」

 

「何だと!?」

 

一夏の言葉にこの場の全員が驚く。ナタルは一夏の真っ直ぐな目を捉えながら、一夏の目の前へと立つ。

 

「俺の白式であいつ等を追っ払います!」

 

ファースト・シフト(一次移行)を終え、新たな武装を手にした白式のスペックならば、先ほどムウが口にしていたアルテミスとかいう場所にまで逃げ延びることは可能なはずだ。

 

「私はまだ貴様を信用したわけではない!」

 

しかし、ナタルがそれを許すはずもなかった。彼女はこれまでの連合に対する批判的な態度から、彼は本当はコーディネイターで、ザフトのスパイではないかと密かに疑いをかけているのだ。それならばザフトが中立コロニーを襲ってきたことも、Gの情報が漏れていたことも、連合の信頼を損なわせるように動き回るのもすべてつじつまが合うからだ。

 

「今はそんな事を言ってる場合じゃないでしょ!この艦は沈ませちゃいけない、死なせちゃいけない人が大勢乗っているんですから!」

 

だが、そんな彼女の仮定を全否定するかのようにただまっすぐに守りたいという一点にこもった強い意志を宿した瞳が射抜く。

 

「……ナタルさん」

 

しばしの睨み合いのあと、先に口を開いたのは一夏の方だった。

 

「あなたが俺の事を信用出来ないのは、ごもっともです。俺も、正直言ってあなたたち連合は信用できませんからね。でも俺には、護りたい人達がいるんです。だから……俺にこの艦を護らせてください」

 

「織斑一夏。貴様は……」

 

護りたい気持ちは本物。ただしそれはあくまでこの艦に乗る民間人のことを指しているだけで、ナタルたち地球連合軍の味方になるというわけではない。

つまり、場合によってはザフトに味方する可能性もあるという事になる。ナタルが危惧しているのは、まさにそれだった。

 

「そこまでだ少尉、あんたの負けだ」

 

が、そこに割り込んでくる者が現れた。

 

「フラガ大尉……」

 

「今使える戦力は虎の子のストライクと俺のボロボロのゼロだけだが、そこにその白式ってのが加わるって言ってんだ。文句はねぇだろ?」

 

「それは……」

 

ムウの言うとおり、今は一機でも戦力が必要な状況だ。それに白式の性能は、あらかじめ整備士たちが一部を入手してきたものを送られてきたもので観覧したところ、Xナンバーすら凌ぎかねない力を有しているのは分かり切っていた。

 

「……分かりました。しかし、軍人でない者を戦わせるわけにはいかない。あなたを地球軍に仮入隊させます。それでいいですね?艦長」

 

「えぇ、構わないわ。でも最後だけ私にふらないでくれる?バジルール少尉」

 

「す、すみません……」

 

こうして、一夏は仮がつくものの、地球連合軍の一員として入隊することとなった。ここまできた以上は、全力で彼らと共に戦うまでだと内心覚悟を決める。

 

「よし、それじゃあ二艦のデータと宙域図、こっちに出してくれ」

 

ムウの声に、二人の女性士官は振り返る。

 

「なにか策があると?」

 

マリューの艦長らしからぬ狼狽に、ムウは溜め息を吐いた。

 

「━━━それをこれから考えるんだよ」

 

 

一夏は更衣室で着替えずにいた病院服からパイロットスーツへと着替える。見た目以上に中が窮屈だったが、ISスーツに慣れていたため、そんなに時間はかからなかった。そんな時、突然更衣室のドアが開いた。

 

「あ、一夏」

 

更衣室に入って来たのはキラだった。キラは無重力に流していた体を一夏の前で止める。

 

「キラ!まさかお前……」

 

「僕は戦いたいわけじゃない。でも、アークエンジェルは護りたいんだ。この艦には、みんなが乗っているんだから」

 

「そうだな……なら、絶対に生き残れよ!死んだら墓なんて作ってやんないし、遺品に落書きしてやるからな」

 

「ええっ!?それは酷いよ」

 

その光景はとても出撃前の戦士たちとはとうてい思えず、そして同時に出会ってわずか数時間程度の者たちが醸し出せる雰囲気ではなかった。

ふつうに考えれば異常なことだが、逆に言えば彼らの護りたいという強い気持ちの共通点が二人に固い絆を生み出したのだ。

 

「やれやれ、仲のいいこったなお前さんらは……」

 

再びドアが開き、今度はムウが流れる様に入って来た。

 

「よし、作戦を説明するぞ」

 

 

作戦の説明はモビルスーツデッキに着くまで続いた。

作戦の内容はムウの発案だった。いずれ追いつかれ、見つかるアークエンジェルに敵の攻撃が集中している間に、ムウがメビウス・ゼロでひそかに先行し、前方のナスカ級を叩く、というものだ。

 

「兎に角、艦と自分を守る事だけを考えろ!」

 

「「はい!」」

 

「いい返事だ!……あれ?あの白いモビルスーツは?」

 

ムウが白式が見当たらない事に気付き、辺りをキョロキョロと見渡す。整備班の人達は、何故かそんなムウをニヤニヤと眺めていた。

 

「そう言えば、まだムウさんには見せていませんでしたよね。来い、白式!」

 

そして再びこのモビルスーツデッキが光に包まれ、収まる頃にはムウの目の前にフェイズシフト装甲を得たことによって灰色のモビルスーツと化した白式が現れる。

 

「どぉわッ!?」

 

「ムウさん!」

 

当然ムウは度肝を抜かれ、足を踏み外してその場で反転するが、それをキラが手を延ばして助ける。

マードックを始め、目撃していた殆どの整備兵がお腹を抑えて小さく笑っていた。

 

「じゃあ、お先に」

 

一夏はモビルスーツデッキの床を蹴り、白式のコックピットへ一直線に飛び乗る。

 

「あいつ、本当に何モンなんだ?」

 

とてもこのコズミック・イラの世界で生まれ育った人間とは思えない考え、正義感を持つ一夏のことは嫌いではないが、どんな人生を歩んだらこうなるのか素直に気になるのも正直な感想であった。

 

「ええっと、実は一夏って異世界人なんですよ」

 

「は~……異世界人ねぇ」

 

ところがキラの口にした説明で、ムウは自分でも驚くほどに納得していた。

なるほど、そもそもこの世界に生きてきていないならコーディネイターを憎むはずがないわけだ。

 

「納得するの、早いですね……」

 

キラはムウの適応力に凄みよりも呆れが先に浮かんだ。

 

「そりゃお前、いきなりあんなドデケぇ物を出す技術なんて連合はおろか、もしザフトになんかあったら今頃、俺達ゃ負けてるよ」

 

ムウはそう言って、さっさとメビウスのハッチを閉じた。キラもストライクのコックピットを目掛け跳ぶ。

 

『メビウス・ゼロ。フラガ機、リニアカタパルトへ』

 

ナタルのアナウンス通りにムウはメビウスを発進シークエンスへ移行する。

 

「ムウ・ラ・フラガ。出る!━━━戻って来るまで沈むなよ!」

 

シグナルのサインがABORTからLAUNCHに変わり、メビウスはカタパルトから射出された。

続いて、白式がリニアカタパルトに接続した。

 

(ムウさんが先行して、目の前の戦艦を叩いて道を作る。その間は俺とキラが後ろから来る敵の相手をするわけだけど……やれるよな、白式?)

 

ゲーグナーを握り締めながらシグナルがLAUNCHに変わるのを待つが……なかなかABORTのまま変わらない。

 

(え~っと、この場合はマリューさん達に何か言えばいいのかな?確かブリッジはあの辺りに……)

 

そう思い、一夏はISのときと同じように後ろにインカムを取り付けるイメージをしながらアークエンジェルのブリッジに回線を繋いだ。

 

『あ、繋がった!よかったぁ、白式の回線コードが分からないからどうしようかと思ったよ』

 

「ミリアリア?」

 

インカムをつけたミリアリアが、モニターの中で真面目くさった顔をしていた。一夏は知らなかったのだが、実はキラが部屋を出た後にトールたちがブリッジに乗り込んで一夏と同じように仮入隊を果たしていたのだ。

 

『以後、私がモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制となり……』

 

『ちょっと待て!?何故貴様がこの艦の回線コードを知っている!』

 

ヤブ蛇だった……つい思わずISの要領で回線を繋いだら、かえってナタルの不信感を仰いでしまった。

 

「いや、その……出撃前に何か言うのかなぁ、と」

 

『誤魔化すな!だいたい貴様は信用ならなかったが、今度こそ……』

 

『はいはい。敵がそこまで来てるんですから、そう言うのは後にしてくださいね』

 

ナタルがミリアリアによってモニターの外に追い出された。

 

『おっほん、えぇとね出撃する前に、自分の名前と、機体の名前を言ってから出撃してね』

 

最後に照れ隠しのように笑いながらウィンクして、後ろからトノムラに『「官姓名と機体を報告してから出撃してください」だよ!』と叱り飛ばされる。一夏は思わず吹き出した。おかげで緊張が少しほぐれたような気がする。

 

「はは……分かったよ。織斑一夏、白式、いきます!」

 

シグナルのサインがLAUNCHに変わる。

白式は再び、宇宙(そら)へと舞うのだった。

 

 

現在の白式の簡易設定です。???のところはのちのち武装の追加を予定しています。場合によっては増えたり減ったりがあるかもです。

 

白式

装甲

・フェイズシフト装甲(色は白)

武装

・雪片

・ゲーグナー(蒼穹のファフナーより)

・ファンネルシールド(機動戦士ガンダムUCより)

・ビームサーベル×2

・イーゲルシュテルン

・???

・???

・???

特殊システム

・展開装甲天羽ヶ斬(アマノハバキリ)

・???

・???


 
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