No.744675

咎を受けし御使いの最後の旅~二人の御使いと二人の劉備~

ユウヤさん

拠点風のお話です。
最初は一騎対皆。
次は璃々ちゃんのお話。
では本編どうぞ

2014-12-20 20:01:36 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2845   閲覧ユーザー数:1941

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咎を受けし御使いの最後の旅~二人の御使いと二人の劉備~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北郷一刀の物語

 

 

 

 一騎(・・・なぜ、このような事になっている?)

 

 一騎は詠と董卓軍残留組をひとまずいち早く向かわせる為に馬を用意してさっさと向かわせたのだが、どうにも今の状況が理解できないでいた。

 

 馬車内で彼は胡坐をかいている。そこまでは良い。彼の右足には風が頭を乗せ、彼の左足には柳琳を乗せ、彼の正面には璃々ちゃんが丸くなって寝息を立てていた。それを紫苑はほほえましく見守っている。そして―――

 

 華琳「一騎?(^^#)」

 

 一騎(今の俺には華琳の覇気等取るに足らん・・・が、怖い!かつてを思い出し恐怖がこみ上げる!ああ、これが恐怖・・・ついぞ忘れ去った感情がよみがえる!?)

 

 紫苑「ふふふ、羨ましいですわね。」

 

 最初は璃々ちゃんが彼の膝に丸まって寝始めたのが発端で、抗議しようにも相手は璃々ちゃんと言う事も有り、風、柳琳、凪、華琳は顔をしかめながらも黙っているしかなかったのだ。

 

 そして誰が思い付いたか片方ずつの膝が開いてるではないか?と・・・思い立ったが吉日とばかり風、柳琳が我先にと占拠してしまったのだ。

 

 霞「いやぁ、ええ肴や。」

 

 霞はそれを肴に一杯ひっかけている。

 

 雪蓮「そうよねー。あの華琳の顔・・・ぷぷぷwww」

 

 雪蓮と一緒に。

 

 一騎「華琳、俺と背中合わせでもたれかかれば良い。やってみろ。」

 

 華琳「背中合わせで?」

 

 雪蓮の笑いを睨みつけていた華琳は一騎の言葉に首をかしげながら言われた通りにした。グッと一騎の背中にもたれかかるように体重を掛けると、一騎は軽く支える程度の力で押し返してやる。

 

 しばらく華琳はこれがなんだと思っていたが、存外嫌では無い。背中に一騎を感じられるというのは彼女にとっては結構嬉しい事だったらしい。

 

 華琳「悪く・・・ないわ。」

 

 ちなみに凪は早々諦めて式神から手綱を預かって外に居る。

 

 星「ほう・・・懐かしいですな。かつて主と私はそうやって語りあったことがありました・・・。ああ、華琳殿そう怖い顔をしないで下され。“前の外史で”でありますよ。」

 

 一騎「そういえば・・・ついぞ聞かなかったな。君が仕えた北郷一刀に付いて・・・」

 

 星「では酒の肴、寝物語に聞かせて進ぜましょう。」

 

 星は始まりの外史の事を語りだした。一騎からすれば初めて聞く別の北郷一刀の物語。外史を知る人間からすれば、やはり一刀かと納得する物語。聞きなれない者からすればまるで夢物語の物だった。

 

 春蘭「・・・星、それでお前は納得したのか?」

 

 星「ふむ・・・納得は出来ぬ。だがな・・・主が求めたたった一人が愛紗・・・あの時の関雲長だったのだ。共に戦った仲間は納得はしなかったが、認めていたよ。あの二人ならば安心だと・・・」

 

 秋蘭「悲しくも、共感できる話だな。私も華琳様がそうしたいと望まれるのならば、納得はせずとも信じ付いて行く。そして必要ならば別れもするさ。」

 

 華琳「秋蘭・・・」

 

 星の話を聞きながらいろんな思いを全員が胸に抱く。そこからどうやら北郷一刀の話をする事に決定してしまったらしい。次に雪蓮が話し始めた。

 

 雪蓮「じゃ、次は私ね。本当は華琳には話したくなかったんだけど・・・」

 

 華琳「どうしてよ。」

 

 雪蓮「ん~・・・絶対華琳ってば気にするから。」

 

 華琳「はぁ?」

 

 雪蓮の言葉に華琳は首をかしげることしかできなかった。

 

 雪蓮「じゃ、始めるわね。私が一刀とであったのは美羽の所で客将をしていた時、夜の巡回をしていた時の事よ。真っ暗な風景が一気に目を開けていられないくらい光り輝いたの。その時一緒に居たのが祭――黄蓋だったんだけどね・・・」

 

 そのまま雪蓮は一刀との思い出を語り始めた。酒をくすねて周瑜に説教された話。そのついでに一刀が周瑜に引きずられ矯正勉強会を開かれた話。政務を抜け出して周瑜に追いかけまわされる話。一刀を囮にして逃げ切った話。戦に出て勝利した話し。一刀がその策を出して、見届けた後吐いた話。賊討伐で血が暴走して手がつけられなかった話。一刀がその餌食になった話。そして――

 

 雪蓮「そして始まったのは華琳――曹操との大戦。でも・・・私は曹操軍に取り込まれていた許貢の残党に毒矢を受けてね・・・大号令までは持ったんだけど、そのまま。」

 

 華琳「・・・そんな致命的な失敗を・・・私が?」

 

 雪蓮「ええ。だから・・・私は貴女が嫌いよ。」

 

 華琳「――っ!」

 

 雪蓮「でも・・・私は貴女を信じているわ。」

 

 華琳「雪蓮・・・」

 

 二人はこの短いやり取りで何かしらを感じ取っていた。小覇王と覇王、同じ“覇”を掲げた者同士にしか分からないものがあるのかもしれない。

 

 華琳「それじゃあ・・・美羽。貴女はどうなの?」

 

 美羽「ん?妾か?そうじゃの・・・妾の話はあまり面白くないぞ?それこそ華琳が聞けば頭を抱えるぐらい愚かしい話じゃからな。」

 

 華琳「貴女達私を引き合いに出すの好きね。」

 

 美羽「うはは、それは華琳が皆から信頼されてる証じゃろ。まあ、話は戻すが・・・妾は麗羽姉さまをもっと子供にして我がままにして憶病にして馬鹿にした感じじゃった。」

 

 華琳「・・・」

 

 華琳は美羽の話を聞くのを頭を抱えてためらい始めた。

 

 美羽「ここからは本当に面白くない話じゃ。雪蓮姉・・・孫家に反董卓連合後裏切られ、完全に滅ぼされた。殺されそうな時に気まぐれで追放と言う形になったのじゃ。」

 

 華琳「へぇ?」

 

 美羽はそのまま張勲との旅の話をした。どこぞの森で蜂蜜を取って食べただの。そこで生えてはいけない物が生えてしまっただの。(ちなみに華琳はそこをもっとkwskと迫ったが一騎に止められた)何時の間にか乱世が終わり、三国同盟が成されたと話してくれた。

 

 美羽「その後主様に七乃と共に拾われて三国同盟の中で勉強しながら暮らして行ったのじゃ。ほら、面白くもなんともない話じゃろ?」

 

 一騎「あれ?それだとその武は誰に教わったんだ??」

 

 美羽「独学じゃ。主様に色々物語を聞いていたのを思い出しての。何か自分の武器に合いそうなのは無かったかと思った矢先、芭蕉扇なんかは片手持ちで楽そう・・・と言うのが最初の動機じゃな。」

 

 なんて不純な動機だろう。雪蓮も呆れていた。

 

 美羽「も、勿論鉄製なのじゃ!かなり重かったのを覚えておるのじゃ!!それから自分があまりにも未熟すぎるというのが分かっての・・・体力をつけながら氣の書物をよみあさり、最終的に習得したが・・・今度は鉄芭蕉扇が軽すぎる事に気が付いた。結果・・・」

 

 一騎「結果があの扇状の特大戦斧か。」

 

 美羽「なのじゃ。」

 

 美羽のとんでも行動力に袁家の片りんを見つつ、今度は華琳の番となった。

 

 華琳「・・・私?え??そ、そうね・・・風。」

 

 風「すやすや・・・」

 

 華琳「・・・これはマジ寝ね。凪・・・は外だし・・・」

 

 一騎「俺から話しても良いが?」

 

 華琳「待って、私が話す。雪蓮にならって、出会いの話からしましょうか。」

 

 星は違うのか?と言う事になるが星はそこまで詳しく話してないのが現状だ。

 

 華琳「一刀・・・此処では一騎と言った方がいいわね。彼との出会いはある書物を追いかけていた時の事よ。出陣前一筋の流星が流れていったわ。そこで管路の占いの話が出たんだけど、それよりも自分の足で歩いて行くことを私は重んじていたし、占いなんて不確定な物に頼っては良き為政者には成れないもの。」

 

 一騎はそれでも自分の事に対した占いだと結構気にするんだろうな、この寂しがり屋さんは。と思っていたが顔にも出さず、ただ華琳の話を聞いていた。

 

 華琳「一騎の知識は当時からすれば私自身も目から鱗だったわ。今思えば及川の献策にも感動を覚えなかったのは当然ね。内容は一緒なのに、やる事が粗末だったもの。一騎は献策するにも民の生活を、兵士の仕事を、目ざとく手回しまでして政策を打ち出していたもの。それもこれも民の為・・・私の覇道の為に・・・」

 

 一騎「・・・」

 

 一騎だけは華琳の声の質が悲しみと後悔に彩られたことに気が付いた。

 

 一騎「ここからは俺が話そう。」

 

 一騎の言葉に全員が一騎に向き直った。

 

 一騎「俺が拾われた初期の段階である街に視察に出た。メンツは春蘭、秋蘭、華琳、そして俺。そこで俺は許子将と言う占い師・・・此処では人物鑑定士とでも言うべきか・・・その人に会ったんだ。いや、今思えば華琳の最終的な目的はあの人だったんだろう。そこで言われたんだ。」

 

 一騎はそこで言ったん言葉を止めた。言うべきか・・・言わざるべきか・・・此処まで来て言わない選択肢は無い。

 

 一騎「大局には逆らうな、逆らえば身の破滅。流れに逆らわず、流れのままに・・・その言葉をちゃんと理解するのはかなり後になっての話だけどな。」

 

 斗詩「つまり・・・一騎さんは大局に逆らったんですか?」

 

 今まで話に付いてこられなかった斗詩だが、此処で直接一騎の話と聞いてなんとか質問を飛ばした。

 

 一騎「ああ・・・春蘭はその言葉を華琳に逆らうなって話だったんだけど・・・それは間違いだった。大局とはすなわち・・・歴史だ。」

 

 それを聞いた外史認知組はまさかと声を上げ、彼が別世界の人間だと認識してる者も何となくことを察した。

 

 一騎「俺は変えた。沁は定軍山を覚えているか?」

 

 沁「ああ・・・あれは確か・・・そうか・・・そう言う事か・・・」

 

 沁は話の内容からどう言う事か察した。変えた歴史、それすなわち夏候淵の死。それを変えたのだ。もちろんそれだけでは無い。

 

 一騎「赤壁も魏の勝利に捻じ曲げた。それが最終的な決定打だったんだろう。俺はあの外史をはじき出されたんだ。」

 

 華琳「・・・ぐす・・・」

 

 不意に華琳が愚図り出してしまった。

 

 一騎「華琳・・・俺は俺の意思を持ってそうしたんだ。そして俺の唯一の後悔が・・・それを華琳が望んで無かったこと。泣かせてしまった事を後悔した。俺は俺の責任を全うした気になっていた。だけどそうじゃなかったんだよな。あの時泣かせてしまった俺を許してくれ。」

 

 華琳は黙った頷いた。もとより怒ってなどいない。そして、馬車内がしんみりした所でいきなり馬車が止まったのだ。もちろんそんな揺れは無い。だが全員が止まったと認識できるぐらいの気配は感じられるようにしていた。

 

 一騎「・・・何かあったみたいだ。出てみよう。風、柳琳、璃々ちゃん。ちょっと外に行ってくるよ。」

 

 三人に声をかけて起こすと、一騎は馬車の外に出た。

 

 

 

 

 神なる獣に愛された少女

 

 

 

 凪「ああ、隊長の膝枕・・・今度の閨では絶対物にして・・・」

 

 馬車内で一騎談義が執り行われていた中、凪はいずれ必ず一騎の膝枕を独占しようと画策していた。

 

 凪「それにしても・・・寂しいですね。上海。」

 

 上海「シャンハ~イ」

 

 皆さんお忘れでしょうが、璃々ちゃんの護衛兼愛玩人形の上海です。

 

 凪「・・・霧が濃くなってきましたね。赤兎、少し速度を落として下さい。これだと石に車輪が取られ横転してしまいます。」

 

 赤兎「ブルルルル」

 

 凪の言葉に赤兎は従う。速度を落としたと思ったのもつかの間、赤兎はそのまま停止してしまったのだ。

 

 凪「赤兎??」

 

 馬車内から停車を確認した一騎が出てくるのに時間はかからなかった。

 

 凪「あ、隊長。」

 

 一騎「どうした?」

 

 凪「赤兎が止まったんです。どうやら何かある様で・・・ってあれは!?」

 

 凪は正面を凝視しながら目を細めたが、霧が薄らと明け始めて正面にある物がその存在を顕した。

 

 一騎「・・・石造りの・・・建物?」

 

 凪「な、なんでしょうこれ。」

 

 一騎も凪も驚いてどうした物かと思っていたが、一騎があるものに気が付いた。

 

 一騎「・・・蛇の彫刻?円を描いて尾を喰らう蛇、ウロボロス?いや、中央にある球体は地球・・・この場合・・・ミッドガルドか。って事はこれはヨルムンガンド?あの戦場に出て来た紛い物じゃなく、それこそ本物を祭る神殿か!?」

 

 それは地球を忠実に再現した球体に巻き付いた尾を喰らう蛇の彫刻だ。それを見て一騎は今導き出せる最高の答えを導き出す。

 

 一騎「こんなもの危険極まりない。此処で破壊、もしくは別の場所に転移させなきゃならんな。」

 

 そう言って神殿の壁に手を置こうとした瞬間。

 

 バヂィ!

 

 一騎「痛ぅ!?」

 

 完全に弾かれた。その痛みは尋常では無かった。

 

 一騎「おいおい・・・俺が太刀打ちできないレベルかよ・・・」

 

 自身すら超える存在を久しぶりに見たと神殿を見上げる一騎だったが、正面入り口にいつの間にか璃々ちゃんがいる事に気が付いた。

 

 一騎「璃々ちゃん!?」

 

 璃々「おじちゃん・・・呼んでるの。璃々を。行かなきゃ。」

 

 一騎「ま、待て璃々ちゃん。これはさすがにまずい。君一人じゃ駄目だ。だれか・・・クソ、俺が付いて行ければ・・・」

 

 紫苑「わたくしも駄目見たいですわ。」

 

 一騎が見渡すと他の皆も弾かれた様だった。唯一璃々ちゃんの首に掛けられた白狼の召喚石と、外に出た時にすぐさま頭の上に乗っかった上海だけが傍に居た。

 

 一騎「く、上海。璃々ちゃんをこっちに連れて来るんだ。」

 

 上海「(ご主人、こうなった璃々は止められない。大丈夫、私が守る。)」

 

 上海は全員に聞こえるように念話で会話する。

 

 一騎「・・・無茶はするな。璃々ちゃん、本当にまずいと感じたら白狼を呼んで全力で逃げて来るんだぞ。」

 

 璃々「うん!」

 

 璃々ちゃんはそのまま元気良く頷くと神殿の中に入って行った。

 

 紫苑「璃々・・・」

 

 一騎「紫苑、大丈夫だ。最初であった時も思ったがあの子はしっかりした子だ。だから・・・大丈夫。」

 

 紫苑「はい・・・」

 

 一騎は紫苑の肩を抱き寄せると神殿に入って行った璃々ちゃんを見送った。

 

 

 

 

 神殿内

 

 

 璃々「ねえ上海。」

 

 上海「(何?)」

 

 璃々「これ・・・扉?」

 

 上海「(でっかいねぇ・・・)」

 

 2人が神殿に入ってしばらくすると石造りの巨大な大広間に出た。と同時に奥には巨人が出入りするんですか?と言いたくなるような巨大な扉が姿を現した。

 

 上海「(璃々、何時でも白狼様を呼べるようにしてて。私は周囲を見て来るから。)」

 

 璃々「うん、分かった。」

 

 上海はそのまま四方八方飛びまわりながら怪しい物が無いか見て回る。その間璃々ちゃんは扉の前まで来ると自分の視線の高さに明らかに文字が書かれた区画を発見した。

 

 璃々「・・・うん、読めない。上海~!此処の文字読める~??」

 

 上海「(ん?どれ??)」

 

 璃々ちゃんに呼ばれた上海はその扉の文字を見ると、はい?と言う顔をして首をかしげる。

 

 上海「(何で日本語??北欧神話なら英語ぐらいにしとけよ!)」

 

 つい突っ込んでしまった。

 

 璃々「あ、文字が変わったよ?」

 

 上海「(変わるのかよ!だったら漢文でもいいじゃん!!)」

 

 璃々「あ、今度は読めるよ。」

 

 上海「(・・・何々?そうだったね、ごめんねごめんね~。・・・馬鹿にしてんのか!?)」

 

 璃々「上海、落ち着こう。そう言う人がいるんだよ。」

 

 上海「(・・・なんかこう、最初から不安しかない。)」

 

 上海は頭を抱え、地面に跪いてしまった。

 

 璃々「えっと・・・『貴女の右手には貴女の命が、貴女の左手には大切な人に命が、手に取れるのはどちらか一方、貴女はどちらを捨てる?』―――うん、右手!」

 

 璃々ちゃんはその文字を最後まで読みあげるとほんの一瞬考えたのちためらわず自分の命を捨てると言った。

 

 上海「(ちょ!?)」

 

 ガゴン!

 

 璃々「??」

 

 その瞬間天井が開き、石槍だらけのつり天井が璃々ちゃんめがけて落ちて来たのだ。

 

 上海「(んなくそ!やらせるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)」

 

 その刹那、上海は自身の得物の一つの西洋槍を具現化させ横殴りにしてその釣り天井を吹っ飛ばしたのだった。

 

 璃々「上海、大丈夫!?」

 

 上海「(・・・・・・このお馬鹿璃々!!)」

 

 スコーン!

 

 璃々「痛!?」

 

 上海「(なんであんな答えをしたのさ!璃々は馬鹿なの?馬鹿なんだね?馬鹿だよ!)」

 

 璃々「だ、だって・・・璃々の命でお母さんでしょ?おじちゃんでしょ?ワンちゃんでしょ?華琳お姉ちゃん達でしょ?それに・・・上海も助かるならいいかなって・・・」

 

 上海「(璃々・・・。)」

 

 上海は璃々の言葉に涙を流しそうになりながらもまた璃々の頭を小突いた。

 

 上海「(璃々・・・璃々はやっぱり馬鹿だ。璃々は璃々の命を大事にして。私達は璃々に守られるほど弱くない。皆そう。璃々が大事だから簡単には死なない。璃々が勝手に璃々の命を使って私達を助けても私達は悲しい。だから・・・だから自分を勝手に捨てないで。)」

 

 璃々「上海・・・うん、ごめんね。」

 

 上海はいつの間にか消えていた扉の先を見据え、静かに怒りをあらわにする。

 

 上海(・・・んのクソ神がぁ・・・璃々になんて問答させてんだこの駄神。今回ばかりはこの上海様も怒り心頭、神殺しにでもなっちゃるぞごらぁ・・・)

 

 その怒りは静かに彼女の心の中で赤く燃えたぎる。それを知る者は誰もいない。

 

 璃々ちゃん達はそのまま廊下をひたすら歩き進む。時々広くなる部屋にはちょくちょくお宝やら、美味しそうな料理やら、美形のお兄さんやらと普通の女の子なら傾きそうな誘惑が有ったりしたが、璃々ちゃんはそれが何するものぞと言う勢いで進んでいった。

 

 上海「(此処までは欲の誘惑の試練っぽかったけど・・・?)」

 

 するとまた最初の部屋のような大広間にまた似たような扉が存在していた。

 

 上海「(また同じ扉。)」

 

 璃々「えっと・・・『貴女の目の前には貴女の大事な人を奪おうとする人がいます。その人を殺さないと貴女の大事な人が殺されてしまいます。貴女はどうしますか?』」

 

 上海「(おいこら!クソ神が!!璃々になんて問答させてやがる!!出て来い、私がぶっ殺してやる!!)」

 

 璃々「しゃ、上海!?」

 

 上海「(二つに一つを選べだ!?そんなの上から物を考える奴の極論だろうがよ!!大事な人を救って殺そうとした奴を殺さない程度にぶちのめすじゃ駄目なのかよ!そこんところ答えろやこのクソ神がぁぁ!!!)」

 

 璃々「・・・上海。」

 

 白狼『ふむ・・・至言じゃな。』

 

 此処で黙っていた白狼も口をはさむ。

 

 白狼『姿を見せい、クソ蛇。儂の可愛い璃々に神が傲慢によって問う愚問にもはや答える余地は無い。その喉食いちぎってやるから出てくるがいい。』

 

 ??「いや、待って、ちょい待って。これだって一応マニュアル通りだから!ボクの望む所じゃないから!だからそんな怒らないで!!」

 

 上海と白狼のドスの利いた脅迫に屈したのか、大きな扉が見た目にそぐわない軽快な音を立てて開いて行った。そう・・・それはまるで自動ドアのようにスイーっと。

 

 ??「は、はじめまして。初代様の代から数えて・・・何代だっけ?とにかくヨルムンガンドの神格保有者です。ヨルンとお呼びください。」

 

 そこに出て来たのは確かに大きな蛇だった。大きさは白狼より少し小さめだがその姿は確かに既存の蛇とは規格が違う大きさだった。長さもさすがヨルムンガンドを名乗るだけも有り、とぐろを巻くのにも一苦労だろうと言う長さだった。

 

 上海「(・・・え?ちょっと待って。なに?神様って世襲制?)」

 

 白狼『儂も初耳じゃな。』

 

 ヨルン「あ、はい。(ひと)によっては世襲制です。生物の姿を模していれば大抵が世襲制ですよ。」

 

 白狼『・・・儂も後継者を探してたのぉ、忘れておった。』

 

 上海「(忘れないで!?)」

 

 璃々「えっと・・・ヨルン・・・君?」

 

 ヨルン「はい!貴女のお傍に這い寄る蛇少年、ヨルムンガンドのヨルンです!!」

 

 上海「(寄るんじゃねえこの駄神!)」

 

 ズガン!

 

 白狼『調子に乗るな小僧。』

 

 ズガン!

 

 上海の槍と白狼の前足(召喚石から前足のみ)がヨルンを攻撃した。

 

 ヨルン「ぷぎゃ!」

 

 その攻撃に目を回したヨルンを璃々はそっと突いて、その後頭を撫でてやった。

 

 上海「(璃々、ばっちぃ!)」

 白狼『璃々、ばっちぃ!』

 

 ヨルン「ば、ばっちくない!!」

 

 二人の言葉にすぐに意識を覚醒させたヨルンが突っ込みを入れた。

 

 璃々「二人とも・・・めっ!ヨルン君は悪い子じゃないよ!」

 

 上海「(うぅ・・・はい。)」

 

 白狼『うぅ、儂間違ってないもん・・・』

 

 そのまま二人はうなだれてしまった。(白狼はどうだか分からないが・・・)

 

 璃々「それで・・・ヨルン君が璃々を呼んだんだよね?どうして??」

 

 ヨルン「えっと・・・気になった・・・んです。はい、そうなんです。気になってしょうがなくて・・・璃々さんに御近付きになりたくて呼びました。め、迷惑だったでしょうか!?」

 

 璃々「うぅん。璃々もね呼ばれてから会いたくなったの。だから・・・ヨルン君、璃々のお友達になって。」

 

 ヨルン「・・・・・・は、はい!喜んで!!あ、これボクの召喚石です。何時でもお呼びください!!」

 

 璃々「うん!よろしくねヨルン君!!」

 

 こうして世襲制の神様、ヨルムンガンドのヨルン君が璃々ちゃんの仲間になった。後に分かった事だが、あの問答の答えはどっちを答えてもヨルンと戦闘になったらしい。上海曰く―

 

 上海「(アーチャー様に作ってもらったインドラの武具が火を噴いていたね。)」

 

 だとか・・・。さらに白狼曰く―

 

 白狼「一騎に作ってもらった儂専用のスペカが火を噴いた。」

 

 と言っていた。

 

 ヨルン「インドラって神鳴りの神様の事?ボク・・・無事でよかったなぁ・・・」

 

 ちょっと上海と白狼の認識を改めた幼い世界蛇だった。

 

 

 

 

 あとがき

 

 

 

 ふ・・・やっちまったなぁ!

 

 一刀「ああ、とんでもないくなって来ちまったな。」

 

 だが後悔していない。今後も増えるぜ璃々ちゃんの召喚仲間!!

 

 一刀「今度はどんな奴が仲間になるんだか。」

 

 それは俺の興味にご期待ください。

 

 一刀「興味が無いと仲間になれないとか・・・超横暴。」

 

 さて、次回は・・・

 

 一刀「流した!?」

 

 一騎が心配性発動。

 

 一刀「何をした!?」

 

 そして近くに寄った村であんな事が!?

 

 一刀「何があった!?」

 

 次回を・・・待て!

 

 一刀「どうしよう・・・心配しかない。」

 


 
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