No.744615

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~11話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
兵は神速を尊ぶ、という事でまたもや、早めに投稿。
今回、オリキャラが出るので苦手な人は戻るをお願い致します。
…本来はオリキャラ出す予定などなかったのですが、
何故か書く内に、出て来ちゃいました。

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2014-12-20 14:49:26 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6761   閲覧ユーザー数:5424

「嘘よ!!ねぇ、嘘だと言ってよ!!だって一刀が、一刀が死ぬ筈ないもん!!!!」

 

 

信じたくない、軍医からの非常なる通告。この世との別離が決定され、

 

一刀との永遠の別れが迫っている事に、私はどうしても信じられなかった。

 

 

「……残念ながら、もう施す術がございません。

 こうしてまだ、息があるのが不思議な位です」

 

「……っ……はぁ……はぁ」

 

 

寝床で苦しそうに呼吸をする一刀。お姉ちゃん達を送り終えた後から、

 

まだ一度も目を覚ましていない。わかっている事は徐々に衰弱していると言う事だけ。

 

 

「命に別状はないって言ったじゃない!!貴女軍医でしょう!!

 なら、身命をとして一刀を助けてよ、お願い!!!!」

 

 

気が動転する、一刀を失うなんて嫌だ…怖い!!

 

心が恐怖に支配され、頭が正常に働かない。このどうしようもない気持ちを

 

軍医にぶつけるしかなかった。すがる様に、只、一縷の望みを軍医の口から聞きたかった。

 

今、言った事は冗談だと、治療する術があるから心配いらないと。

 

けど、軍医の口から出た言葉は、予想すらしていなかった返答だった。

 

 

「命に別状はない?私はその様な事を一度も仰っておりません」

 

「だって、一刀を診てくれた時にそう言ったって聞いたもん!!

 皆、それで安心したんだから!!」

 

「私が北郷様を?何時それを御聞きなさいましたか。

 北郷様を診断致したのは、今日初めてでございます」

 

「えっ!!」

 

 

診断していない!?なら、他の軍医が診断した!?ううん、それはない。

 

目の前に居るのは孫呉随一の軍医、わざわざ、他の軍医に診せるなんて、

 

そんな馬鹿な真似はしない。じゃあ、どうして。

 

確かあの時。一刀の容体を報告したのは冥琳。

 

………まさか、最初から!!

 

 

「………そう。全ては俺が冥琳に頼んだ。偽りの報告を」

 

「一刀!!!?」

 

「北郷様!!!?」

 

 

一刀は目を覚まし寝床から、上半身を何とか起き上がらせ呼吸を整え始めた。

 

だが、その効果は現れず、呼吸は荒く顔色は蒼白のままだった。

 

 

「はは……皆が心配で休んでなんていられないよ。

 …っつ!!ゴホ……ゴホッ!!」

 

「喋らないで安静にしていて!!そうすればきっと…きっと良くなるから!!」

 

 

自分に言い聞かせるように叫び、そう願いながら一刀の手を握る。

 

もう、治す術がない、頭の中でこの言葉が消えず離れないでいる。

 

 

「………申し訳ありません、暫くシャオと二人きりにして頂けますか。

 それと、俺の容体はくれぐれも内密にして頂きたい。

 風の噂で戦場の兵の連携や士気を損ないたくありません。

 全て、孫呉の為と思って、どうかお願い致します」

 

「御意、仰せのままに。

 ………しかし、北郷様。私は、私は――情けなさで胸が一杯です。

 私が神医なる腕をお持ちになっておれば、北郷様をお救いになられたのやも知れません。

 申し訳、申し訳――御座いません。……北郷様」

 

 

軍医の目から、大粒の涙が溢れ、それに気付いた軍医は手で顔を覆うようにして隠し天を仰ぐ。

 

涙は頬部から頬骨部の方へと行き場を変えるが、流れる水量は変わりはしない。

 

軍医もまた、自分の無力に嘆いていたのだと気付かされる。

 

非常なる物言い、彼女もまた、私と同じく悲しみに心を支配されていたんだ。

 

 

「…俺は貴女の性格を存じております。貴女は懸命に俺の治療にあたってくれていたのでしょう。

 この様な結末になり気に病む必要は御座いません。全ては俺がまいた種、

 自分自身で選んだ道です」

 

「うっ…うっ……北郷…様――――」

 

 

身体の力が抜けたのだろう、泣き崩れ、軍医はその場に倒れてしまった。

 

顔を覆っていた手が剥がれるが、涙は更に水量を増し、止まる気配は一向にない。

 

 

「…これでは、二人きりになれないな」

 

 

一刀はこんな状況下でも苦笑を漏らす。

 

どうして、どうして笑えるの…一刀。

 

 

「申し訳……御座いま…せん」

 

「こちらこそ、ごめん。此処に居られても宜しいですが、

 ゴホッ……先程も言った通り他言無用でお願いします」

 

「…はい。……はい」

 

「……さて、シャオ。俺は…この世と別れなくてはいけない。

 この意味、わかるよな?」

 

 

突き刺さる現実、私は幼子の様に思いっきり首を横にする。

 

意味なんて解りたくない。この先もずっと一刀と一緒に居たい。

 

只、それだけを願っているのに……

 

 

「…っぐ……解ってくれ、じゃなきゃ、俺も安心して旅立てない。

 頼むよシャオ」

 

「…嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき!!命に別状はないって言ったじゃない。

 一刀は冥琳は私達を騙したの!!そんな人のいう事なんて理解出来ない!!

 だから、だから、お願いだから、生きて生きてよ!!!!」

 

 

一刀の手を握っていた手が弱くなり、力なく解けていく。

 

私もまた、涙が溢れ必死に反発する。

 

 

「…シャオ」

 

 

私の状態を見兼ねてか、一刀は私を抱きしめ宥める様に頭を撫でる。

 

だが、普段の温かさが全く感じられない。それ所か、まるで血が通ってない存在に、

 

抱き締められている様な感覚、生命の鼓動が徐々に失われてる。

 

私は血が滲む位に思いっきり、唇を噛む。

 

全てが夢であってほしかった。

 

 

「…ごめんな、シャオ。だけど冥琳は責めないでやってくれ。

 皆に黙って欲しいって頼んだのは俺なんだ。

 冥琳は共犯者ではなく被害者。全部俺が悪いんだ」

 

 

最早、私は聞く事しか出来ない。いや、それしか出来なかった。

 

 

「…皆に動揺を広めたくなかったんだ。戦場で相見えるのは大陸にその名を轟かせている曹軍。

 戦に勝つには、少しの不安材料を取り除きたいと考えた。その為に皆に伏せていたんだ。

 軽蔑してくれても失望してくれても構わない。

 それでも、孫堅さんから受け継いだ遺志を持つ皆と、孫呉に関わっている全ての人達の為にも

 嘘を貫き通さなければならなかった」

 

「う、うわあああああぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 

私は堪える事が出来なくなり、一刀の胸の中で思いっきり涙を流した。

 

 

「ごめん、ごめんな。シャオ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…落ち着いた?」

 

「…落ち着ける訳ないじゃない。でも、足を止める時も許されないのね」

 

「…うん」

 

「…わかったわ。私だって母さんの血が流れてるもん。

 やるべき事をやるわ」

 

「流石はシャオだ、頼も……!!ゴホッガハッッ!!!!」

 

 

ビチャビチャビチャ!!!!

 

 

「一刀!!」

 

「北郷様!!」

 

 

一刀の口から大量の血が溢れ出る。口に手を押さえたが為。

 

真っ赤な鮮血が手を汚し、布掛けへと滴り落ちる。

 

 

「だ、大丈夫、だ。…はっ、はっ!!……布掛けを、掛けていてよかった。

 これなら、着替える必要は、ないな。

 …シャオ、これから物見櫓に行こうと思う。すまないが支援を頼むよ」

 

「そんな身体で何言ってるのよ!!」

 

「そうです!!安静にしていなければ死期を早めるだけです。

 今は少しでも延命に努める様、お願い致します!!」

 

「………死期、か」

 

 

私と軍医は抑制するが、一刀は一瞬、陰りのある表情を浮かべ、何事もなかったかの様な

 

振る舞いで食い下がった。どうしても、自分の目で戦況を見届けなければならない

 

理由があると言う。そこまでの覚悟を見せ付けられたら、肯定するしかなかった。

 

私も、覚悟を決めなきゃいけないのね。

 

 

「…わかったわ」

 

 

私は一刀に肩を貸し寝床から起き上がらせる、そして机の上に畳んでいた一刀の上着を着せ

 

再度、肩を貸そうとするが首を横に振られた。

 

 

「…支えなく自分の足で少しでも歩きたい。肩を貸すのはどうしようもない時に

 お願いするよ」

 

 

そう言うと一刀は一歩一歩、地面の感触を確かめる様にゆっくりと歩いた。

 

そして、速度を徐々に速め、野営の幕に到達した。

 

私も急いで一刀の下に駆け出し、外に向かおうと幕に手を掛け開けようとするが、

 

後ろにいる軍医から声が掛かる。彼女は負傷兵が運ばれてくる可能性がある為、

 

本陣から動いてはいけない身、ましてや、ここから物見櫓への距離はわりと遠い。

 

一刀ばかり気にしていたら、他の人の治療が出来ない。

 

つまりは、…一刀と共にいられる最後の時、となる。

 

 

「あの、北郷様…」

 

 

軍医はその後の言葉が出てこない。掛ける言葉が見つからないのだろう。

 

その気持ちは私もよくわかる。一刀を想えば想う程、何を言えばいいのか、

 

伝えればいいのか、それがわからなくなる。

 

 

「…彩華(サイファ)さん」

 

「…!!」

 

 

一刀はその場で踵を返し軍医と対面した。軍医は口に手を当て驚きの眼で一刀を見つめている。

 

一刀が口に出したのは軍医の名だという事は、表情でわかる。

 

 

「ど、どうして私の名を…!!」

 

「…大事な仲間の名を知らぬ程、俺は薄情者では御座いません。

 ましてや、貴女は努力を惜しまず、深夜まで医学に励んでいた姿を拝見致しました。

 貴女は尊敬に値するお人です、どうか、これからも医師を目指した当初の心をお忘れなく、

 初志貫徹の精神で人々をお救い下さい。…お元気で、彩華さん」

 

 

一刀は自分の気持ちを伝えると、軍医に背を向け、早く外に出ようと促す様に、

 

私の背中を押した。私は野営の幕を上げ一刀と共に外に出る。

 

その際に後方から聞こえてくる、嗚咽交じりの泣き声が耳に入り、

 

改めて残酷な現実であると思い知らされた………

 

 

 

 

 

 

 


 
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