No.740554

寂しがりやな覇王と御使いの兄23話

あなたまさん

吼える驍将・猛る霞
2016/1/22 手直しOK

2014-11-30 06:25:16 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:9774   閲覧ユーザー数:7233

漢中の難所として知られ歩くのも困難とされる秦嶺山脈、虎などの猛獣も生息する危険な場所であり、案内人などを雇わずに挑む者はまずいないだろう。一刀達は一般の案内人は雇っていないのだが、大陸各地を旅しており、秦嶺越えを何度も経験していた華陀が道案内を務めていた

 

何度も秦嶺に足を踏み入れてるだけあって、比較的道幅が広い所、猛獣が出難い道、野宿に適した土地に一刀達を導き、華陀の医術で疲労回復にも余念がなく最高とも呼べる環境を維持する事が出来た。

土地勘や医術の差は戦にかなりの影響をもたらす、その事を再確認する事となった

 

華陀「この辺りは陳倉道と呼ばれている場所だ、ここまで来れば目的地である天水まではもうすぐだ」

 

(ここが史実で蜀の右将軍・諸葛亮孔明と、魏の将軍だった郝昭が激突した場所か。確かにここは防衛に適した堅牢な土地、諸葛亮が郝昭を破る事が出来なかったのも納得だな)

 

一刀「お前の目的地は長安だったのに、俺たちに付き合ってくれて助かるよ」

 

華陀「なに、親友を助けるのは当然の事だ」

 

一瞬、史実での出来事を思い出した一刀だが、すぐに頭の隅に追いやり華陀の会話を楽しみ始める

一緒に旅をしているハズなのに、全く疲れを見せない男性陣に珍獣を見てるかのような視線が突き刺す

 

 

稟「あなた達どんな体力してるんですか。あの難所を越えてきたのに全く疲れを見せていません、特に一刀殿はやはり異常です、どんな妖術を駆使したんですか」

 

一刀「妖術の類を信じない稟が言い出すなんて珍しいな。俺にその手の類は使えないし、使えてたら桂花辺りに自慢してるさ」

 

無駄にいい笑顔で言い切る一刀を見て、稟は溜息を一つ吐いた。稟の心境としては『自慢する内容がしょうもない、他に自慢出来る所があるでしょう……』なんだろうが、当の本人は本気で妖術が使えたらな~と悔しがっていた。そんな態度も一刀殿らしいですね、と納得してしまう稟もだいぶ染まってきているが

 

明命「確かに一刀様途中で、疲れた稟さんを背負って山道登ってました」

 

以前の外史では親友の風、星と大陸を旅していたとはいえ、稟には漢中の難路は厳しく途中で足を痛めてしまった。痛めてた足は華陀の的確な治療のお陰ですぐに完治したが、治ったばかりの足で難路に挑むのは危険と診断され、一行で一番元気が有り余っていた一刀に背負ってもらい難路を越えたのだ

 

愛紗「私も途中で代わるつもりでしたが、必要なかったようですね」

 

いくら一刀が規格外でも、大人の女性を背負ってこの難路を踏破するのは困難だと考え、一刀が疲れたらいつでも代わろう準備していたのだが、その心配は杞憂に終っていた

 

一刀「慣れてるっていったじゃないか」

 

稟「それにしても限度あると思うのですが…」

 

限度という言葉に、愛紗や明命、それに親友の華陀も同意するように、うんうんと頷く

華陀も口は出してはいなかったが、親友の体力がおかしいと思っていたようだ

 

稟「一刀殿、本当に体は問題ないのですか?」

 

一刀「大丈夫だって、稟も意外と心配性だな」

 

稟「誰のせいで心配性になったと思ってるんですか」

 

稟が心配性になった背景には、一刀が消えてしまうきっかけとなった体調不良を見抜く事が出来なかった事が関係している。自分達を心配させないように『大丈夫、大丈夫』と言い続けた一刀の言葉を信じた結果……蜀を下し大陸を統一したその日に……一刀は自分達の前から姿を消した

 

一刀の不調に完全に気がつきながらも、自分が唯一愛した男に自分の夢、信じる道を一刀に見せ続けた華琳

完全とは言えないが一刀の隠している事に気がつき、一刀の覚悟、決意を汲み取り、一刀が成し遂げた偉業を影から見届けた風

 

華琳と風が貫いた姿勢は違えど、自分の気持ちを押し殺したという点は合致していた。それをおくびにも出さずに日々の政務や蜀呉との決戦に挑んでいたのだ

 

成都で華琳が告げた内容を聞き、稟は気がつけなかった事を深く悔いていた。敬愛している主、親友にばかり重きを負わせ、自分は何も知らずに過ごしていた…

 

その過去をいまだに稟は引きずっており、一刀の体調には人一倍神経を尖らせているのだ

 

一刀「大丈夫だって、華陀も毎朝の診察で問題無いと言ってくれているからな。もし体調が悪くなったらすぐに華陀に言うから」

 

一刀は稟を安心させようと稟を自分の下に引き寄せゆっくり抱きしめる。稟はその行動に驚きながらも、抱きしめを解こうとせずに、一刀に体を預け頬を少し赤くしながら一刀の腕に抱かれていた

 

 

 

明命「何か難しそうな顔をしてると思っていたら、今度は赤くなってます!」

 

愛紗「私達には解らない話をしているんだろう。私も一刀様が抱える事情を知りたいが…一刀様が話しくださるのを待つだけだ」

 

明命「はぅわ!愛紗さんが嫉妬しないなんて・・・・天変地異の前触れでしょうか!?」

 

愛紗「どういう意味だ明命!」

 

明命「今までの行動を見直して考えてください!」

 

愛紗が嫉妬せずに、冷静に言い放った事を受け、明命は全身に衝撃が走った。汝南で山越軍と激突した時、一刀の傍に女性が居るっていう理由だけで自我を無く暴れまわった。更に荊州でも嫉妬に狂い、一刀を棒切れのようにボコボコにしたのは記憶に新しい。それほど嫉妬、独占欲が強い愛紗が冷静にしてるのが信じられないのだ

 

明命と愛紗が言い争いをしていると、いつの間にか華陀の隣に一刀と稟がやって来ていた

 

華陀「もういいのか?」

 

一刀「あぁ、心配かけたな。それに・・・気が付いたか?」

 

華陀「あぁ、天水に近づいているのに、近隣住人の気配が全く感じられない」

 

一刀「なにかあったと見るべきか…明命!」

 

明命「あ、はい!なんでしょうか」

 

一刀は華陀と意見が一致するとすぐに言い争いを継続していた明命を呼び寄せる、明命もそれに応え、愛紗との言い争いをすぐに中断して駆けつける

 

一刀「街の様子を見てくれるか?天水の城に近づいているが、人の気配が無いんだ。その理由を探ってほしい」

 

明命「確かに……全然人の気配を感じないです。解りました!すぐに調べて来ます、少々お待ち下さい!」

 

指示を受けた明命はすぐに天水の城目掛けて走り出す

それと同時に、愛紗も異変に気が付き一刀の下へやって来た

 

 

愛紗「戦……でしょうか」

 

一刀「まだ解らないが…その可能性が高いな。何事も無ければいいんだが、この状況じゃ望み薄だよな」

 

稟「この場に居るのならば、戦に巻き込まれるのは必然でしょう。すぐに対応出来るように準備をしておきましょう」

 

稟の言葉を受け、一刀と愛紗はそれぞれ黄龍偃月刀、青龍偃月刀を手に取り臨戦態勢を高める。稟と華陀は一刀達の後ろに控える。有事の際は華陀も戦うと言っているが、怪我を治す事を生きがいにしている華陀に手を出させないと一刀の戦意は高まっていた

 

 

 

 

明命「一刀様お待たせしました!どうやら涼州の将、韓遂と異民族の中でも力を持つ西羌が手を結び、5万の兵を率いて攻め込んで来たようです!」

 

一刀「韓遂か…また野望を秘めた男が出てきたな。攻め込まれた天水軍はどうしている?」

 

明命「華雄将軍と張遼将軍が2万を率いて迎撃しているみたいですが、数の差が多く劣勢だそうです。それと、韓遂軍に連れ去れそうになっていた少女を保護したので連れて来ました!」

 

 

 

??「危ない所を助けていただき…ありがとうございます」

 

一刀「あれ・・・君は確かあのときの」

 

??「え~と、どこかでお会いしましたでしょうか?」

 

一刀「いや、気にしないでくれ」

 

慌てて誤魔化す一刀だが、目の前に居る少女には見覚えがあった

かつて連合軍として参加し、洛陽を開放した時・・・炊き出しを行っていた劉備軍に居たのを思い出していた

 

かつては洛陽、そして今は天水、身分の高そうな衣服を着込んだ少女…一刀は確信を持って、その少女の名前を口に出す

 

一刀「君が天水太守の・・・董卓仲穎さんかな」

 

??「!?」

 

名前は言い当てられた少女の表情は驚きに染まる

韓遂軍に拉致されそうだったところを助けてくれた事には感謝しているが、初めて会った人物が自分の姓、名、字すべて言い当てた事で、董卓と呼ばれた少女は目の前に居る男に警戒心が生まれる。

 

稟「一刀殿、見ず知らずの私達がいきなり名前で呼んだら警戒されるのは当たり前です」

 

そういえばそうだった…と稟に指摘され、自分の配慮が浅かった事に気が付き、すぐに敵意がない事をアピールする

 

一刀「君に危害を当たるなんて事はしないから安心して?俺たちは大陸を旅している者なんだ」

 

董卓「その旅人さんがなんで私を助けたんですか?私の事を董卓だと解ってて助けたのんですよね?」

 

愛紗「あなたが天水太守の董卓様ですか」

 

董卓「はい…私が天水太守・董卓仲穎です。覚悟は出来ています。ですが、私の命と引き換えに、みなさんの命だけは助けて下さい」

 

自分が董卓だと明かし、自分の命で天水に住まう民達を見逃して欲しいと一刀達に頼み込む。

どうやら、一刀達の事をただの旅人だと信じておらず、自分の事を董卓と知ってるならば韓遂軍に与し、自分を捕らえ金を得ようとしている一団だと勘違いしているのだ

 

先ほどのなぜ旅人さんが私を助けたんですか?の問いに、一刀が答える前に愛紗が新しく被せてしまったのが原因ではあるのだが・・・

 

一刀「だから俺達は韓遂とか全く関係無いって。どう言えば信じてもらえるかな~」

 

稟「一刀殿が男なのがいけないのでわ?私達同様に、女になれば警戒心も薄らぐはずです」

 

明命「それは名案です!一刀様、すぐに女の子になってください!」

 

愛紗「そうですね、私も一刀様が女になった姿が気になります」

 

稟の馬鹿げた提案に、明命と愛紗はなぜかノリノリで稟の提案に同意する

 

華陀「なんだ、一刀が女になれば大丈夫なのか?なら俺の秘術で一刀を女にする事が出来るが」

 

性別転換なんて空想上の出来事が出来るはずがないと思っていた所に、まさかの親友から爆弾発言が投下される。一刀は女3人の方を恐る恐る見てみると…かなり嬉しそうに目を輝かせていた

 

一刀「あの……なんで君達はそんなに期待してるの?普通に考えて、性別変えるなんて出来ないからね?それと華陀!状況を読め状況を!お前の医術は得体の知れないモノが多いんだから、時と場合を考えて発言しろ!!」

 

華陀は五斗米道の医術だけじゃなく、五斗米道を元とした自己流の医術も完成させており、その度に一刀に完成した医術を披露している。なので……こいつならもしかしたら性別転換をやりかねないと危機感を覚え、すぐに華陀の説教に入る

 

 

そんな5人のじゃれ合いを間近で見ていた董卓はクスと微笑みを浮かべ、一刀達を警戒していた自分がバカだったなと、警戒心を解き肩の力を抜いていた

 

董卓の心の変化をすぐに察し、一刀は話しかけるのは今だ!と華陀の説教を中断して董卓に話しかける

 

一刀「董卓さん、なぜ1人で居たのですか?太守の身分なら護衛の将が就いているハズですが」

 

一刀の問いに、董卓は言うか言わないか迷う素振りを見せたが、いま自分1人で状況を打開する事など出来ない。ならば断られて元々、自分を救ってくれた人たちに援助を申し出る事にした

 

 

董卓「私の護衛を務めてくれていた華雄さんと張遼さんは、此度の戦は開幕から不利な戦でした。なので、私を逃がすために韓遂軍に突撃し、奮戦してくれています。私も残って戦うと言ったのですが詠ちゃん…軍師の賈詡ちゃん達に止められ、恥じを忍んで逃げて来ました。私の傍に居てくれた詠ちゃんとも途中ではぐれてしまい、1人で彷徨っている時に助けていただきました」

 

状況を伝えた董卓の顔からは、戦う力が無い自分を悔いている事がはっきりと読み取れた

一刀も魏の警備隊隊長を務め、一般兵士よりかは強い技量を持っていたが、戦場ではいつも魏の将が戦っているのを見ているだけの無力だった。

 

一刀はうな垂れる董卓を見てそんな事を思い出していた、それと同時に目の前に居る少女を絶対に助けてやると決意した

 

一刀「明命、華陀と董卓さん護衛頼む」

 

旅の一員に加わってからまだ日が浅いが、一刀が今言わんとしている事、やろうとしている事をすぐに理解し、『お任せ下さい!』と胸を張って応える

 

明命の返事に満足したのか、次は一刀の隣に佇んでいる稟に顔を向ける

 

稟「一刀殿、私は貴方がする事を止めたい…でもここで尻込む貴方は見たくありません。なので約束してください、必ず張遼を・・・霞を助けて必ず戻ってきてください!」

 

稟の心からの叫びを聞き、一刀の決意は固まった

普段冷静な彼女にここまで言われて、約束を違える気など一刀の中には存在しない

一刀は両目に涙をうっすら浮かべている稟の頬を優しく撫で、ゆっくりと手を離す

 

一刀「愛紗、背中を任せるぞ」

 

愛紗「この命に代えましても、必ずや一刀様をお護りいたします」

 

闘気を迸らせながら一歩、また一歩、韓遂・西羌の連合軍と、天水軍が入れ混じる戦場に向かって歩みだす。その背中を護るのは自分の役目、青龍偃月刀をぎゅっと握り締めながら一刀からのすぐ後ろに続き歩みだす

 

 

一刀と愛紗のしようとしている事を理解した董卓は、慌てて一刀と愛紗を諌める

 

董卓「まさかお二人で助けにいくつもりですか!?危険です!」

 

一刀「たとえどんな危険があっても、助けに行かないといけないんです。そこに大事な人が戦っていればななお更ね」

 

董卓「大事な人ですか・・・張遼さんと会ったことあるのですか?」

 

一刀が大事な人と表現する人を董卓は知らない。

張遼の名を出してはみたが、彼女が一刀達の事を話していた記憶は無く、当てずっぽうで答えたのだが、それが正解だったとすぐに理解した

 

張遼と言い当てられた一刀の表情は悲しみに彩られていたのだ

 

一刀「”いまは”ありません。それでも言える事は…張遼さんが覚えていなくても、俺は彼女を救い出すために戦います」

 

董卓「逃げた私が言えることではありませんが・・・張遼さんと華雄さんを助けてください!それと・・・お守りとしてこの剣を受け取って下さい」

 

一刀なら本当に救い出してくれるかもしれない…そう思った董卓は自分の家に代々伝わる宝剣・七星宝剣を手渡す。

手渡された一刀はまさかこのような場で、王允が持っていたとされる七星宝剣を目に出来ると思わず、高めた闘気が若干離散してしまった

 

董卓「私の家に伝わる宝剣です。戦場にいけない私の代わりに護身刀として持っていってください」

 

一刀「この戦が終るまでお借りいたします。華陀・明命・稟……行ってきます」

 

七星宝剣を背中に背負った一刀は一気に速度を上げて敵陣へと向かう、愛紗もそれに置いていかれることなく、速度を上げて一刀に続く

 

一刀と愛紗を見送った稟達からは悲壮感など一切感じらない、一刀なら必ずやり遂げて返ってくると信じているのだ

 

董卓「どうかご無事で・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場・霞サイド

 

 

 

張遼「ッチ、あかん数が多すぎる。やはり数の暴力には勝てへんか…隊列を崩すな!崩れればそこを突かれ隊は瓦解するで!」

 

張遼率いる天水軍は倍以上いる韓遂・西羌連合軍相手に一歩も引かずに戦っていたが、華雄将軍が暴走し、勝手に敵軍に突っ込んでいったせいもあり、次第に劣勢になりこれ以上戦線維持は不可能…撤退しなければ全滅は免れないのだが、敵軍がべったりくっ付いてるせいで撤退が上手く運べていない

 

踏みとどまって指揮を続けている張遼も迫り来る”死”を覚悟して戦っていた。

 

その時

 

 

 

 

 

ダメだよ霞、霞はこんなところで死んだらダメだ!

 

 

 

この雄たけび、鉄と鉄がぶつかる音が鳴り響く戦場とかけ離れたとても優しい声

それが聞こえた気がした張遼は周りを見渡すが、自分の周りには首を捕ろうとする雑兵のみ、群がってくる敵兵を倒しつつも、死が近づいた事で幻聴が起きたのだと自分に言い聞かせるが

 

 

 

霞の強さは誰よりも俺が知っている。だけどそんな強い霞も可愛い女の子なんだから、自分を粗末にしないでくれ。そして、生き延びてくれ

 

 

再び張遼の耳にスっと入ってくる優しい声

それはなぜか懐かしく、聞けて嬉しい……そんな声だった

誰の声かは思い出せないが、声を聞いて自分の心がとても温かく感じた。

この温もりを手放す事なんて出来ない、張遼は覚悟した”死”を捨て去り、無様な姿を見せようとも”生”を選ぶ

 

張遼「おうおまえら!方円の陣に切り替えや!敵の攻撃を一度受け止めた後偃月の陣に変更や!うちを先頭に敵軍を突破し戦場を離脱するで!月っちを逃がすには充分時間を稼いだ!今度はうちらの番や!」

 

張遼の激は劣勢に追い込まれていた兵士達の戦意を沸き興し、再び生気を目に宿らせる事に成功。

この場に居る兵士達は誰も死を覚悟してないない、全員で生き延び、敬愛する主君の下に帰ると心を一つにして戦っている

 

張遼「きたで!この攻撃は全力で受け止めや!後ろにそらすんじゃないで!」

 

張遼軍兵士「おう!」

 

 

 

 

張遼が死の覚悟を捨て去った同時刻、連合軍総大将である韓遂は本陣で戦場の流れを冷静に見極めていた

 

韓遂「いかに神速の張遼といえど、この兵力差と足を引っ張るの猪がいれば力を発揮できまい、これで天水を取れれば馬騰にようやく復讐が出来るわ」

 

韓遂は涼州全域を手中に治めようと度々軍を興しているのだが、ことごとく西涼の雄・馬騰に破れている。そこで馬騰に比べて防衛能力が劣っている天水を落とし、国力の差で馬騰を呑み込む。そんな野望が彼の頭の中を支配していた

 

伝令「韓遂様、天水軍に動きがありました、張遼が方円の陣から偃月の陣に切り替えています。一点突破を狙っていると思われます」

 

 

韓遂「ほう、やはり華雄などと比べものにならんな、ここで殺すのは惜しい、捕らえて我が配下に加えたいものだ。手下八部に伝令、張遼にわざと一点突破させ、突破させた進軍路に伏兵を配置しろ!鶴翼の陣で包囲殲滅を謀れ!張遼は殺さず捕らえ、わしの下に連れて来いと伝えろ」

 

伝令「華雄はいかがいたしますか」

 

韓遂「わしの狙いは張遼のみ、捨て置け。捕縛の邪魔するようならば殺せ」

 

主君の命を受けた伝令はすぐに手下八部と称される将の下へと駆け出す

 

韓遂「これで張遼が配下に加われば、わしの野望を邪魔し続ける馬騰に殺す事が出来る……覚悟していろ馬騰!」

 

 

 

 

 

 

 

 

韓遂の指示を受けた手下八部の将はすぐに行動を開始、張遼にばれないように巧みに軍を動かし、わざと薄い箇所を作り出し、伏兵の配置も完了させた

 

一点突破からの離脱を目論んでいた張遼は今が好機!と軍を動かし突破に成功するが、瞬く間に完全包囲され、孤立状態に陥る

 

兵士「張遼様!四方から韓遂軍の将、楊秋・侯選・張横・李堪・馬玩・梁興軍が迫ってきており、完全に包囲されています!」

 

完全包囲された後でようやく罠だったと気がつくが、時すでに遅し

自力で抜け出すことはもやは不可能だった

 

張遼「罠やったか!うち一人に絞ってきおったか」

 

兵士「張遼様!敵将張横・李堪・馬玩・梁興・楊秋・侯選が迫ってきてます!お逃げくだ・・・」

 

危機を知らせに来た兵士が最後まで言葉を発することが出来なかった

韓遂軍、手下八部の1人、侯選が兵士の喉を剣で突き刺していた

 

侯選「そこにいたか張遼!韓遂様がお前を連れてくるのを望んでいる、我々と来てもらおう」

 

張遼「誰がお前達なんぞと一緒にいくか!うちをなめるのも大概にしとき!」

 

実力から言えば手下八部の将は全員張遼の格下なのだが、この戦況において、張遼1人の武など恐れに値しない。1人がダメなら2人。2人だけなら3人でかかればいいだけの話なのだから

 

楊秋「ならば無理やりにでも連れて行くとしよう」

 

張遼「自分ら、うちに勝てるとおもってるんか?」

 

梁興「お前こそ、この状況で我々6人に勝てるとおもっているのか?」

 

いまだ闘志は衰えない張遼だが、梁興の言う通り、疲れきったいまの状態で6人を同時に捌くのは無理だと自分が一番理解していた

 

だが、張遼は今ここで倒れるわけにはいかない

 

誰かと交わした約束

思い出すことは出来ないが、自分にとってとても大切な約束

その約束を思い出し、果たすためにも……自分はここで倒れることは出来ない!

 

その一身が張遼を再び奮い立たせる

 

張遼「たとえうちは死んでもお前達には下らん!うちが力を使いたいと思っているのは…誰よりも一緒にいたいとおもっているのは……”北郷一刀”だけや!こい!韓遂の軟弱な将共!何人たりともうちには触れさせん!神速と謳われる張文遠の実力受けてみ!」

 

 

 

 

 

 

 

the next time

 

 

 

 

 

 

 

韓遂・西羌連合軍VS天水董卓軍中篇 吼える驍将・猛る霞です

 

 

どうでしょうか?霞の心境がうまく伝わればいいのですが・・・

最後の名前を呼びましたが、無意識で言い放った事であり、完全には思い出せてませんそれはご了承ください

手下八部の将は侯選、張横、程銀、成宜、李堪、馬玩、梁興、楊秋の8名で、三國志演義では旗本八旗と描かれています

 

華陀との出会い・幼少の話は旅が終わり次第公開です

 

指摘がありました一刀(真名)の部分を呂珂に変更しておきました

劉備軍との801本はどこかで必ず出します!


 
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