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真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第五十七話・後編


 それでは後編をどうぞ。

2014-10-23 20:45:27 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:5428   閲覧ユーザー数:3862

「…取り乱した所をお見せしました」

 

 しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した文鴦さんはそう言って頭を下げる。

 

「とりあえず落ち着いた所で…一体何があった?賊が襲った時には既に何者かが襲っ

 

 た後だったと聞いたが?」

 

 空様の問いに文鴦さんは悔しげに唇を歪める。

 

「数日前の事でした…母様を訪ねての急な来客があったのですけど…」

 

 そして文鴦さんが語った所によると、母親の文欽さんへの客と名乗る者達が文欽さ

 

 んを拉致して何処かへ連れ去った二日後に『劉宏』と名乗る者が『悪者を断罪する』

 

 と言いながら、大勢の兵と共に押し寄せて来て屋敷を壊していき、それが去ったと

 

 思った直後に賊が押し寄せ、抗う術も無く蹂躙されたとの事。文鴦さんは最後まで

 

 戦おうとしたのだが、使用人に『あなたはまだ此処で死んではいけない』と昏倒さ

 

 せられてあの場所に運ばれていたらしい。ちなみにその人は俺達が見た死体の山の

 

 中にいたのは言うまでもない。

 

「でも、おかしいな…『劉宏』って悪党を成敗してるんじゃなかったのか?それとも

 

 その文欽さんって人は何か悪い事に手を染めていたのか?」

 

「そんなわけ無いでしょう!母様は、私達は自分の利益のほとんどを貧しい人達への

 

 救済に当てていたわ!感謝こそされても誰かに恨まれるような事はしてないわ!」

 

「それじゃ、何故『劉宏』は此処を狙う?しかも文欽さんを拉致した後を狙ったかの

 

 ようにね」

 

「つまり、文欽を連れ去った奴らと『劉宏』は最初からつるんでいた…という事にな

 

 るのか?」

 

「となると…『劉宏』が悪党を成敗していたとかいう噂も怪しいという事じゃの?」

 

 

 

「そういう事や」

 

 そこに現れたのは及川であった。

 

「すまないな、わざわざ此処まで」

 

「何言うてんねん、ワイは一応かずピーの部下なわけやし、指示された仕事に対して

 

 一生懸命やらせてもらうだけや」

 

「そうか、それはありがとう。で、どうだった?」

 

「此処以外はみ~んなガセやな。何処の悪党も襲われてへんし、貧しい家に金がばら

 

 まかれたなんていう事実も何処にもあらへん。多分全ては此処を襲う為に仕組まれ

 

 た事やないか?」

 

「そんな…だったら何故此処だけが狙われるのよ!?何故母様が連れ去られるのよ!」

 

 確かにそこは文鴦さんの言う通り、何故文欽さんが狙われていたのかという理由は

 

 それだけでは分からない。

 

「そうか…もしかして、犯人は王雲か!?」

 

 空様が言ったその名を聞いた皆の顔に疑問符が浮かぶ。

 

「母様、その王雲というのは?」

 

「昔、文欽の部下だった奴だ。そもそも文欽は桓帝のお気に入りの側近だった。そし

 

 て私はその頃、桓帝に対し度々意見をしていたのであやつとは対立関係にあったの

 

 だ。そして王雲は当然それを知っていたはず…それでおそらく『劉宏』の名を使う

 

 事で文欽に対して脅しをかけていたという事だろう」

 

「しかし母様に何の脅しをかけるというのです!?」

 

 

 

「これは何の確証も無い話なのだがな…桓帝の御代まで漢の宮中には膨大な隠し金が

 

 あるという噂があってな、桓帝はそれが私に引き継がれるのを嫌がって、何処かに

 

 埋めたという話が私が即位した直後位に噂としてまことしやかに広まっていたんだ」

 

 おや、古代中国にも埋蔵金伝説とかあるとは驚きだな。世界や時代が変わってもこ

 

 ういうのはあまり変わりないという事か。

 

「その与太話と母様が脅されていたのとに何の関係があるというのです!?そんなの

 

 文家には何の関係の無い話では無いのですか!?」

 

「つまり、その隠し金を埋めるように桓帝に指示されたのが文欽だったという話にな

 

 るという事じゃな、母様?」

 

「ああ、しかも文欽には桓帝の側近時代に色々と良くない噂を流されてな…私が即位

 

 した直後に引退したのも、史那を私にしばらく預けていたのも、全てはそこから遠

 

 ざかる為だったという事だ」

 

 なるほど…ならばこれは全てその王雲とやらが仕組んだ話という事か。多分、王雲

 

 はその埋蔵金伝説を信じているのだろう。そして、文欽さんが貧しい人達への救済

 

 に当てていた資金がそこにあると睨んだ王雲は『劉宏』の名で脅しをかけてその金

 

 を取ろうとしたが、文欽さんにしてみればまったく身に覚えの無い話である以上は

 

 王雲の思い通りに進むはずもなく…遂に実力行使に出たという事か。『劉宏』が悪

 

 党を成敗しているという噂が先行している状況で文欽さんの昔の良くない噂を知っ

 

 ている者が『あそこが襲われたのは昔に悪どい事をやっていたからだ』などと言い

 

 始めれば、それ以上詮索もしないだろう事も計算に入れてという考えもあるのかも

 

 しれない。

 

 

 

「ならば、早くしないと文欽さんの命も危ないという事になりますね。おそらく王雲

 

 は連れ去った文欽さんを拷問にかけてでも口を割らせようとするでしょうし」

 

「なっ!?そんな事になったら…」

 

 そう言った文鴦さんの顔色がみるみる変わる。

 

「落ち着け、史那。及川、王雲の居場所は分かるか?」

 

「住んでた家は既にもぬけのからでした。おそらく他に隠れ家があると思われますん

 

 で、今部下に言うて総出で捜させてます。そないに時間はかけまへんので、少しお

 

 待ちください」

 

 空様の問いに及川は即座にそう答える。

 

「及川、俺からももう一つ頼みたいんだが…」

 

「分かっとる、もうすぐ龐徳はんと馬岱はんと黄忠はんが到着するはずや。それに、

 

 馬騰はんが馬休はんと一緒に洛陽に向かってる最中やったし、そっちにも声をかけ

 

 ておいたからそう遠くない内に来るやろ」

 

「さすが及川、仕事が早いな」

 

「褒めても何も出えへんで。むしろかずピーから何か出してな」

 

「分かってる、だから…」

 

「ああ、ワイも探索に行くし少し待っとれ」

 

 及川はそう言うなり駆け出して行く。

 

「ねぇ、あいつに任せておいて大丈夫なの!?早くしないと母様が…」

 

「文鴦さん、焦る気持ちも分からないではないけれど、今は及川以上に素早く情報を

 

 掴める者もいない。俺達はそれまで待つしかないよ」

 

 俺がそうなだめると、文鴦さんは悔しげに唇を噛みしめていた。

 

 

 

 ~???~

 

「なかなか強情ですね、文欽様?素直に隠し金のありかを吐けば楽になるものを」

 

 眼の前にいる傷だらけの女性に、そう言っていやらしい笑みを浮かべるこの男こそ

 

 王雲である。そしてその傷だらけになっている女性こそが文鴦の母の文欽であった。

 

「何度言ったら分かるのかしら?そんな物は最初から存在しない、あれはただの噂だ。

 

 私にはそれ以上何もないわよ」

 

「ほほぅ…此処まで痛めつけられて、まだそのような口をききますか。ならば、もう

 

 少しその身体に聞きましょうか!」

 

 王雲はその手に持っていた鞭を激しく文欽の身体に打ち付ける。

 

「あぐっ、がっ、ああっ!!」

 

「そらそら、痛いだろう痛いだろう!?それが嫌だったらさっさと金のありかを吐け

 

 って言ってんだよ、このあばずれ女が!!」

 

 王雲の拷問はそれから小半刻ばかり続いたが、当然文欽から何かしらの情報が出る

 

 はずもなく、ただ文欽の身体の傷が増えていくだけであった。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁ…ふん、本当に強情な女だな。ならば今度はお前の身体の中

 

 に聞いてやろう」

 

「はっ、私を犯すってのか?そんなのに私が屈すると思うか?」

 

「残念だが、俺は若い娘が好みでね…お前みたいなおばさんにゃ全く興味は無いんだ

 

 よ。お前の中に入れるのは、これだ」

 

 そう言って王雲が持って来たのは、熱せられた火箸であった。

 

 

 

「…まさかお前がそこまで鬼畜だったとは思わなかったよ」

 

「そんな口がきけるのも今の内だ。お前がこれを中に突っ込まれて何処までその強情

 

 が保てるか楽しみだ…おい、お前ら。これが入りやすいようにあの足を広げろ。そ

 

 れと舌を噛み切られても面倒だから口も塞いでおけ」

 

 王雲の命を受けた男達は下卑た笑みを浮かべて文欽の両脚を広げようとする。文欽

 

 も抵抗しようとはしたのだが、縛られている状態ではそれにも限界があり、しばら

 

 くすると猿ぐつわをかまされて、王雲の前に完全に足を広げた形になっていた。

 

「くっくっく、良い光景だ。お前が後二十年ばかり若ければまずはじっくり味わう所

 

 なのだがな…さて、それでは覚悟は良いかな?」

 

 王雲はその下卑た笑みをさらに歪めながら火箸を文欽の足の間に差し込もうとする。

 

 さすがの文欽も眼の前の光景に耐えられず眼をつむったその時…。

 

「申し上げます!この周りが軍勢に囲まれています、その数約一万!!」

 

「なっ、一万だと!?一体何処の軍勢だ!!」

 

「旗印は『馬』・『龐』・『黄』・『文』、そして『十』です!!」

 

 それを聞いた王雲の顔が驚愕に彩られる。

 

「何だと、その旗印はまさか…何で此処に、何故俺がそのような事に!?」

 

 王雲のその疑問に答えられる者は誰もいなかったのであった。しかもその時点で王

 

 雲の部下達のほとんどが投降しており、もはやなす術は無かったのである。

 

 

 

「一刀様、捕まえた者達は既に檻車に入れて洛陽に送りました」

 

「一刀お兄様、こっちにももう誰もいないよ」

 

「こちらも既に制圧完了だ。仄、そっちはどうだ?」

 

「こちらも全て制圧済です。後はあの館のみですね」

 

 よし、とりあえず此処まではうまくいったな。これも及川が此処をすぐに見つけて

 

 くれたおかげだな。後は何とか文欽さんを助け出す方法だが…。

 

「北郷様、あそこに母様がいるのでしょう!?このまま一気に攻め込んで王雲の首を

 

 取ってしまいましょう!この私に先陣をお言い付けください!!」

 

 そう言ってきたのは、文鴦さんであった。

 

「先陣と言ってもその僅かな手勢では大して何も出来ないのでは?」

 

「確かに我らの手勢は僅かなれど、決して他の誰にも劣りはしませぬ!!」

 

 劣らぬと言われても…さすがに十人にも満たない軍勢に先陣っていうわけにもいか

 

 ないし。実は文鴦さんの家人の中には、襲われた当日に遠くの街に出かけていたり

 

 親戚の家に行っていて留守だった人達もいて、その人達が急ぎ戻ってきたので一応

 

 軍勢という形にしてはいるのだが、その人数は七人のみだったりする。

 

「とりあえず、中に文欽さんがいる以上は穏便に解決するに越した事は無い。まずは

 

 降伏勧告が先だ」

 

 俺のその言葉に文鴦さんは不満気な表情を見せるが、母親の安否が気になるのは事

 

 実のようで、不承不承ながらも従ってくれた。

 

 

 

「しかし降伏勧告といってもどうするのだ?誰かを使者に立てるのか?」

 

「一応、矢文を送ってみます」

 

 そして俺は紫苑に矢文を射こませ、返答を待ってみる。とりあえず向こう側の関係

 

 者とおぼしき人が回収するのは見たので内容は伝わったはずなのだが。

 

 ・・・・・・・

 

「遅い、遅すぎる!北郷様が矢文を打ち込んで既に半刻が過ぎています!!どういう

 

 返答にしろ、普通もっと早くに出すものです!やはり此処は一気に…」

 

「文鴦さん、あなたはお母上の事は心配にならないのですか?それとも、もし考え無

 

 しに突っ込んでお母上の身に何かあった時のお覚悟は持っていらっしゃるという事

 

 ですか?」

 

 はぁ、既に何度目だろう?さっきから文鴦さんはずっとこの調子で息巻いているの

 

 をなだめるのを繰り返していたりするのだが…ちょっと疲れたんだけど。誰か変わ

 

 って、結構本気で。

 

「一刀様、あれを!!」

 

 すると沙矢が慌てた様子で指差すのでそちらを向くと、数人の男達がこちらを警戒

 

 しながら、一人の傷だらけの女性を引きずるように連れてくる。そしてその後ろか

 

 ら一人の男が現れる。それを見た文鴦さんの顔色が変わる。

 

「…母様!おのれ、王雲!!母様に何をした、母様をすぐに放せ!!」

 

 やはりあの後ろにいる男が王雲であの女の人が文欽さんなのか。

 

 

 

「王雲殿?何のおつもりかは存じませんが、そのままではあなた方にとって何の益も

 

 ありませんよ?とりあえず文の内容を理解していただけたのなら、すぐに文欽さん

 

 を放していただきたいのですが?」

 

「お前が北郷か!この状況を見たらどっちが有利かなんてすぐ分かるだろう!こいつ

 

 を無事に帰してほしけりゃ道を開けろ、そして俺達全員の逃走資金と逃げる為の馬

 

 も用意しろ!!」

 

 こっちの世界に来て、まさかドラマの人質立てこもり犯みたいな台詞を聞けるとは

 

 思わなかったが…何処をどう見たらあちらが有利だと思うのだろうか?

 

「やれやれ…では仕方ない。文欽さん、お覚悟は出来ていますか?」

 

 俺がそう言った瞬間、王雲の顔色が変わる。そして…。

 

「私の事は構いません!どうかこの者達を存分に処分してください!!」

 

 文欽さんが重傷を負っているとは思えない程の大きな声でそう叫ぶと同時に、王雲

 

 の表情が完全に驚愕に包まれる。

 

「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!そんなの、そんな事があるか!!お前達、文欽を殺

 

 せ、殺してしまえ!!」

 

 王雲のその命令に配下の男達は逡巡を見せる。よし、今だ!

 

「紫苑!」

 

「はい!!」

 

 俺の合図と共に紫苑の放った矢が過たずに王雲の肩に刺さる。王雲はそれを喰らっ

 

 たと同時にひっくり返り、配下の奴らはそれを呆然と見ている。それを見逃す文鴦

 

 さんではなく、一気に駆け込むと文欽さんを捕えていた王雲の配下の者を一気に斬

 

 り殺して文欽さんを救出する。

 

 

 

「ひ、ひぃ!!お、お助けを!!」

 

「まさかこの期に及んで助かるなどと思っているのか!覚悟しろ、王雲!!」

 

 そして文鴦さんが王雲を斬ろうとしたのだが…。

 

「そこまでだ、文鴦さん」

 

「何故です、北郷様!?」

 

 その一撃は俺が受け止める。

 

「た、助かった…」

 

「助かる?何を馬鹿な事を…王雲、あんたはこれから裁きを受けるんだよ。死ぬのは

 

 それからだ」

 

「なっ!?裁く…誰がだ?お前がか!?」

 

「いや、裁くのは…あの方だ」

 

 そう言って俺が指差す方に翻ったのは…。

 

「えっ!?あれは…まさか、皇帝陛下の牙門旗!?」

 

「そうだ、お前を裁くのは劉弁陛下だ。皆の者、皇帝陛下の御出座である!頭が高い、

 

 謹んで礼を取れ!!」

 

 俺のその言葉で皆が一斉に平伏する。おおっ、なかなか爽快な光景だな、これは。

 

 そしてその間を悠然と歩く命の姿は普段と違って、まさしく皇帝にふさわしい威厳

 

 を放っていた。

 

「さて…王雲とやら、お主は己の欲望を満たさんが為に文欽を拉致監禁の上で重傷を

 

 負わせ、さらにその為に我が母の名前を使って脅迫していた。その罪は明白である。

 

 よってこの場にて死罪を申し渡す!お主に一片でも誇りがあるというのであれば今

 

 此処で自害せよ!!」

 

 

 

「おのれ…こうなれば、覚悟!!」

 

 王雲は何を思ったのか短剣を抜いて命に斬りかかろうとするが、短剣は空様の一振

 

 りにより右腕ごと飛ばされる。

 

「往生際の悪い奴めが…構わぬ、成敗!!」

 

 命のその言葉と同時に文鴦さんと葵さんが剣を王雲の身体に突き立て、王雲はその

 

 場に崩れ落ちて二度と動く事は無かったのであった。

 

「これで悪党退治は完了じゃな…さて、文欽よ身体は大丈夫か?」

 

「はっ、この程度の怪我が如き大した物ではありません」

 

 文欽さんのその気丈な言葉に命は笑みを浮かべる。

 

「そうか、それは重畳。それとこれは妾の願いでもあるのじゃが…もしお主さえ良け

 

 れば、また妾の下へ出仕してもらえぬじゃろうか?」

 

「申し訳ございません、文欽の名は既に多くの穢れを背負った物、陛下の新しき政に

 

 差し障りこそあれ助けになどなりは致しませぬ。よって、私の代わりに娘の文鴦を

 

 お側においてくだされば幸いにてございます」

 

「母様!?私などではとても陛下のお側になど…」

 

「史那、これからは若き陛下の下で新しき政を担う若き力が必要な時代、何時までも

 

 古い世代の者ばかりいるようでは前進する事などあり得ないわ。だから、私では無

 

 くあなたが陛下のお力になって差し上げなさい。良いわね?」

 

 文欽さんのその言葉に文鴦さんは少し迷いを見せながらも頷いていたのであった。

 

 

 

「そうか…ならば、史那。これからよろしく頼むぞ」

 

「はっ!粉骨砕身勤めに励む所存にてございます!!初めての方達もおられますれば

 

 改めまして…我が名は文鴦、真名は史那と申します!若輩の身なれど、一生懸命に

 

 陛下にお仕えする所存なれば、これより何卒お引き回しの程をよろしくお願い申し

 

 あげます!!」

 

 こうして新たな仲間として文鴦さんが加わった。武の方もなかなかだし、何よりも

 

 真面目そうな人だからこれからも頼りになりそうだな。

 

 ・・・・・・・

 

 そして俺達は洛陽へと戻ってきたのだが…。

 

「あれ?あそこにいるのって…月だよな?」

 

 城門の前にいたのは確認するまでもなく月のはずなのだが…何だか怖い雰囲気を纏

 

 っていたりする。何かあったのだろうか?

 

「おかえりなさいませ、命様。ご無事の帰還で何よりでございますが…何時誰があな

 

 た様の外出を許可したのですか?そもそも皇帝たる御方がそうホイホイと外出する

 

 ような事があってはいけないと思うのは私の気のせいでしょうか?」

 

 月は満面の笑顔のままそう命に詰問していたのだが…その笑顔が怖すぎる。笑顔だ

 

 け見ていれば最上級の癒し系アイドルばりなのだが、その身体から立ちのぼるオー

 

 ラはもはや毘○門天クラスだったりする。その威圧感に、さすがの命もタジタジに

 

 なっていたりする。

 

 

 

 

 

 

「これはやばいな…一刀、私は一旦消える。後は任せた」

 

 そして空様はそう言うなりさっさと逃げ出してしまう。此処は俺も…。

 

「一刀さん、逃げられるとお思いですか?」

 

 しかし逃げようとした俺の背後には笑顔一杯の月がしっかり立っていたりする。

 

「えっと…何で俺まで?」

 

「ふふ、どう考えても命様が来た時点でお止めしないばかりか、私や夢様に全くお知

 

 らせしなかったあなたも同罪に決まっているではありませんか。空様に逃げられた

 

 のは残念ですが。それでは参りますよ、お二人とも」

 

 そして俺と命は笑顔の月にそのまま引きずられるように連れていかれていったので

 

 あった…明日の朝日は無事に拝めるのか、俺?

 

 その疑問は風の中へ消えていったのであった。

 

 

                                    続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 投稿が遅れて申し訳ございません。

 

 何だか最初に考えていたより遥かに長い話になって

 

 しまい、一つの話を前・後編と分けさせていただき

 

 ました。

 

 とりあえず今回から新キャラの文鴦の登場です。

 

 本来、文鴦は三国時代の終わりの頃の武将なのです

 

 が…まあ、此処は外史という事で一つ。

 

 とりあえず次回も拠点です。次回は…遂に命の登場

 

 です!果たしてその結末や如何に!?

 

 

 それでは次回、第五十八話にてお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 これ以後の文欽さんの登場は無しですが、彼女は

 

    一応四十代半ば位の設定でした。娘の史那は一刀

 

    と同年代ですので。

 

 

 

 

 

 


 
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