No.713912

リリカルなのは~翡翠の戦士と七つの才牙~

第49話 ヴァンデル対剣也

2014-09-05 22:54:58 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1968   閲覧ユーザー数:1892

「小賢しい!!」

 

ヴァンデルは氷の刃を伴わせた竜巻……氷竜嵐を冥撃で相殺する

 

[冥撃]

 

人が空気中のエネルギーを操作して繰り出すのが天撃ならばヴァンデルは大地に眠る邪悪な力「冥力」を攻撃や防御のために転化したもの。 「火」「水」「風」「雷」「魔」「土」「闇」「邪」「狂」の9属性に分類され、天撃同様、それぞれに初歩的なものから上位冥撃と呼ばれる高度なものま でが存在する。強力な冥撃になるほど、大地から発生するという要素がより顕在化する 。

尚、「土」「闇」「邪」「狂」の四属性は作者が考えた属性である

 

しかし、剣也はそのまま真正面からヴァンデルに突っ込んでいく

 

ヴァンデルは剣也の攻撃を冥力を纏った腕で正面から受け止める

天龍刃(ドラグエッジ)と両腕がぶつかり合い、鍔迫り合いで火花が弾ける

 

その時だった。ヴァンデルの両腕に込められた冥力が天龍刃(ドラグエッジ)に吸い取られていき、ヴァンデルの身体から も吸い上げられている……天龍刃(ドラグエッジ)の効果、それは、相手の攻撃を無効化……なんて軽いものではない

 

「まさか、その才牙の能力は……」

 

ヴァンデルが顔を青ざめながら呟く

そう、龍の才牙の能力……それは……

 

相手の冥力、天力をはじめとしたありとあらゆる異能の力を喰らい、強くなる事である

しかも転生してからは魔力、エスパーの力すらも対象としている

神の力すらも例外でなく最後まで喰らい尽くされると神の存在意義は無くなり、消えてしまう……

その為、そのあまりにも強力な力である"龍"の属性は封じられたのである

 

剣也は踏み込む

目の前のヴァンデルを……アリシアの母を殺した奴を叩き潰す為に!!

 

天龍刃(ドラグエッジ)を握り、左右から絶え間ない打撃、斬撃を繰り出す。打ち合い、流し、身をかわし。互いに打撃と斬 撃の応酬を繰り返す

 

並みのモンスター……てか一般の魔導師であればとっくに余波で死ぬ程の威力で攻撃を繰り出しているのだが、ヴァンデルと剣也は異に返さない。

 

これを見ているアースラ内部の人たちの殆どは呆然とし、シグナムとフェイトは戦いという思いを必死に抑えていたりする

 

剣也の一撃を受け止めながらも、体重と膂力に任せて押し返そうとしてくるヴァンデル。 しかし剣也は一瞬力を込めてから脱力する事で受け流し、ヴァンデルの身体が流れた所を天龍刃(ドラグエッジ)の逆端の刃で下から掬い上げるように振り切る

 

「ちっ!」

 

顎先を掠める。上体を逸らしたヴァンデルが舌打ちしながら後ろに退く

剣也は退いた分だけ間合いを詰める。後ろに下がらせ、自身の後方へと抜けようとする動きを天龍刃(ドラグエッジ)による打撃や斬撃の軌道で塞ぐように制していく

 

ヴァンデルは壁際に追い詰められそうになり、大きく後ろに飛んで、壁をぶち破って外――研究所の中庭に飛び出す

 

それに対し剣也はヴァンデルの着地予想地点に向かって間合いを詰める――

と、そこでヴァンデルは予想外の挙動を見せた。空中で静止し、腰だめにした手刀を真っ直ぐに繰り出してきた

 

剣也は天龍刃(ドラグエッジ)の先端に魔力を込め、向こうの切っ先(?)とぶつけ、巻き込むように搦める事で軌道を逸らす。 ヴァンデルの足元には禍々しく渦巻く風…風の冥撃を利用したらしい

奇襲が不発に終わった事を悟り、ヴァンデルは憎々しげに舌打ちをする

 

「猿真似だな」

 

剣也はそう断じて、ヴァンデルに肉薄する。剣也とヴァンデルとでは空中戦の経験値に関してはケタが違う。ヴァンデルのそれでは精々、空中で体勢が整えられるようになった程度のものである

 

それはヴァンデルも分かっているのだろう。空中に留まる事には拘らず地上に降り立ち、迎撃の構えを見せる。あくまで地上に留まって切り結ぶつもりらしい。たしかに正しい判断ではあるだろう……

 

剣也はミッド式"ラウンドシールド"を大きく展開させ突っ込む。ヴァンデルの手刀はシールドに刃を食い込ませてきた。僅 かに鈍らせたものの、剣也に迫る

 

其を剣也は天龍刃(ドラグエッジ)で斬撃を受け止め

 

「属性、"風"」

 

サイガ式"風"を展開しながらそのまま懐まで滑り込み……

 

「武天流体術、"対空砲風掌"!!」

 

風の魔力を込めた掌底で下から打ち上げた。 ヴァンデルは咄嗟に空いた腕で受けながら飛ぶ。衝撃は殺されたが、大きく上に飛ばされる事になる

 

打ち上げられたヴァンデルに向かって手を翳す。ミッド式"ラウンドシールド"を展開。その後ろでサイガ式"火"を展開

ヴァンデルは"冥撃の獄炎"を放つがシールドが防ぎ、 シールドに守られたサイガ式"火"には届かない

 

ヴァンデルが目を見開いた

 

「"フレイムスプレッド"!!」

 

シールドの解除と同時に炎の散弾が射出される

だが、ヴァンデルは射線上から風の冥撃で離脱する。 それは正しい選択だろう。だからこそ、剣也はその回避行動を予期している(・・・・・・)

 

闇の散弾を放った時にはその結果を見届けもせず、既に"月歩"で飛ぶ。ヴァンデルの回避先側 へと回り込み、天龍刃(ドラグエッジ)で打ち掛かって否応なく空中戦に追い込む

 

天龍刃(ドラグエッジ)で後方へ弾き飛ばし、剣也は空中を蹴って迫る

剣也は蹴りながら分身を出す"霊術 分身"を発動

左右に分かれる剣也の動きに、ヴァンデルの判断は一瞬遅れる

が、"冥撃の魔弾"が分身に当たり、分身が歪む

間一髪。剣也の一撃を両腕で受け止める。足の甲に古代ベルカ式を展開

 

「武天流体術……」

 

脚甲に氷を纏わせながら……

 

「"剣斬氷脚"!!」

 

蹴撃。ヴァンデルは避けられないと判断したか、脇腹に冥力を集中させて受ける

 

「ぐっ!」

 

重い感触。ヴァンデルは顔を顰めて吹き飛ばされながらもそのまま反撃

右腕に冥力が絡みつく。力任せに振り抜くと剣閃(だよな?)が飛来

それに対し剣也は全く同じ軌道をなぞるように天龍刃(ドラグエッジ)で迎撃する

 

 

「全く――恐ろしい坊やね」

 

ヴァンデルは言いながら左手に何かを取り出す。それは――刀身のない剣の柄、と言った風情の品だった。鍔の部分に宝石のようなものが嵌っている。剣也はお構いなしに追撃を仕掛けようとして――剣也は目を見開いて止まった

 

宝石が輝き出し、凄まじい魔力が噴出し始めたからだ

 

「ふふっ。展開に少々時間がかかるのが難点だけど――これの威力は強烈よ? 滅多に出せるものじゃないから、餌食になるのは坊やが初めてなのよ♪」

 

「それは――」

 

ウィルが驚く……剣也も驚く

アリシアがくれたデータの中にその光の刃が持つ紫色の魔力の波長が記録されてあったからである

 

「プレシア・テスタロッサの……魔力」

 

それの意味する所は1つしかない

剣也は思考が……感情が冷えていくのが解る

 

「あら? 解るの? そうよ。あの女から殺して奪ったリンカーコアを魔道具に組み込ませて貰っているの。大魔導師と呼ばれた女の魔力……その威力が想像出来るかしら?」

 

ヴァンデルは自慢の玩具でも見せびらかすように得意げな笑みを浮かべて、光の刃を振るえば、中庭の地面に斬撃の痕を刻んでいく

 

其をみて剣也は――大きく息を吸い、言った

 

「よぉく、分かった…………加減する理由が消えたって事がな」

 

「へ?」

 

次の刹那、剣也は爆ぜるような速度で踏み込む。ヴァンデルは右腕で咄嗟にそれを受ける

構うものかと剣也は力任せに荒々しく天龍刃(ドラグエッジ)を叩き付けていく

2度3度と打ち込むと、ヴァンデルが衝撃に表情を歪めた

 

歯を食いしばるロイの左手が振るわれる。屈めた頭上を通過していく斬撃の気配

当たれば両断される

 

「当たらなければ意味がない」

 

剣也は無表情で呟きながら攻める

 

「それは……そのリンカーコアはプレシア・テスタロッサのだ。お前のじゃない。アリシアから母を奪って。プレシアから魔力を――奪って。そうやって手に入れたものだろうが」

 

2本の腕と天龍刃(ドラグエッジ)の交差。右腕で天龍刃(ドラグエッジ)を受け止め、魔力弾を魔道具で散らす

 

手数的には五分に

光の刃も、当たれば一撃必殺……

 

「で? だから何だ?」

 

剣也は無表情に呟きながらお構い無しに攻める

 

攻める……

 

攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める……

 

打ち合い切り結び、薙ぎ、払い、突いて巻き込み。そのやり取りの中で、剣也は笑う。 切る伐る叩く斬る打つ叩く伐る叩く斬る切る叩く斬る叩く。混じって廻る、巡る巡る。天龍刃(ドラグエッジ)が喰らう。まだまだまだまだ。もっともっと喰らって高めていく

 

周囲が光で照り返されるほどに、天龍刃(ドラグエッジ)が白熱し、唸り声を上げていると思うほどの音を立て。青白いスパークを撒き散らす

 

「な、んなの?……その、馬鹿げた――」

 

呆然とした表情を浮かべたヴァンデルに、有無を言わせず剣也は突っ込む。 打ち合えば、その度に軋むような音が周囲に響 く。何の音か。ヴァンデルの骨格が軋む音だ。叩き付けるたびにヴァンデルの表情が苦悶に歪み、剣也は歯を剥いて笑う

 

生半可に腕が立ち。半端に冥力で強化している。 だから、それだけの衝撃でも意識が飛ばないのだろうが……

 

ーーまだ弱いんだよ!雑魚が!!

 

魔道具に微細な罅が刻まれていく

 

「お――お、おおおっ!?」

 

魔道具の亀裂が大きくなるにつれて、魔力の光が罅の間から漏れ出す

 

「砕けろ」

 

言って、天龍刃(ドラグエッジ)の力の限り振り抜く。光の刃を一撃を受ける。それでも無駄だった。 魔道具が砕け、リンカーコアの魔力が炸裂する。それより前に、サイガ式"エレメントシールド"を展開して剣也は後ろに飛ぶ。ヴァンデルの方はそれも叶わず、魔力衝撃波に巻き込まれて高く空を舞った

 

それと同時にプレシアのリンカーコアは消えた

 

「拳撃、展開」

 

剣也は其を見ずに覇気でヴァンデルのいる場所を確認しながら天龍刃(ドラグエッジ)の柄を短くし、ナックルの形にし、その内外で「全属性」の魔力、「龍」の天力を渦巻かせ る……と同時にこの戦いの間に喰らった冥力や空気中の魔力を思いっきり増幅させ、限界まで圧縮しながら構え、"間接強化"、"武装色の覇気"で威力の底上げを図る

 

ヴァンデルを確認すると両腕は不自然な方向に曲がっていたが……

 

「ばけもの、が――」

 

「お前らに言われちゃお終いだ」

 

ヴァンデルも剣也も――笑っていた

 

「穿て」

 

そして、拳を突き出すのと同時に開放し……さらに同時に、圧縮させたエネルギーを真正面に打ち出すように開放……

 

エネルギーの奔流が破壊光線となって放たれヴァンデルを飲み込んだ……


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択