No.713297

義輝記 星霜の章 その十四

いたさん

義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。

2014-09-03 01:56:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1085   閲覧ユーザー数:947

【 一刀の苛立ち の件 】

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営付近 にて 〗

 

華琳「…………敵陣営の動きは、あれから一日……何も無かったわね?」

 

桂花「斥候には、かなり遠くに見張らして、敵陣営の動きを当たらせていますが、動きはありません!」

 

華琳「………私もまだまだね。 颯馬の策謀の凄さばかり目に入り、その過程を見誤るなんてねぇ? 今まで一度も、そのような失敗は無かったのに……」

 

秋蘭「華琳様も人の子、間違いも御座います。 問題は、その失敗を繰り返さない事です! 歳久殿に謝罪する事が肝要かと!」

 

桂花「しかし、王である華琳様が、頭を下げる事でしょうか? どちらかと言えば、島津側の謝罪が必要ではないか………と存じます!」

 

華琳「…………………」

 

曹兵「ほ、報告します! 晋軍! 前進して、此方に渡河する準備を始めた模様! 同時に、別働隊も先に渡河を開始! 此方に向かう様子です!」

 

華琳「全軍に命令を! 黄河の岸に木の杭を打ち込み、敵の渡河の遅延を図れ! 発石車の準備、移動を北郷隊に命じ、何時でも発射できるように手配を伝えよ!」

 

曹兵「はっ!」

 

華琳「桂花! 一部の隊に、重要物を陣営より運び出す事を命じなさい! 秋蘭は、敵本隊の行軍を、なるべく時間が掛からせるように、弓兵を持って遅延工作を行いなさい!!」

 

桂花、秋蘭「「 はっ! 」」

 

華琳「私は、全部隊に指示を出し対応する! 以上!」

 

★☆☆

 

〖 曹操軍 右翼 〗***《 兵数…… 十万 》

 

右翼大将……諸葛孔明 (朱里)

 

北郷一刀、張儁乂、紫、袁本初、李曼成、于文則

 

島津義久、島津義弘、島津歳久、島津家久、顔良

 

****************

 

曹兵「敵別働隊! 二里(約830㍍)範囲内に入りました!」

 

味方の兵の敵来襲の報告が聞こえる! その声を聞き反応した者が二人!

 

儁乂「北郷様は此処へ! 私達が迎撃してきます!!」

 

紫「…………コクッ」

 

一刀「───駄目だ! 俺も行く!」

 

俺は、血相を変えて──二人に同行する事を強く求めた!

 

儁乂「しかし、貴方は我々の主! 貴方に……もしもの事があれば!!」

 

一刀「頼む!!! もぅ……左校達のように見捨て、自分だけ逃げるなんて出来ない!! あんな……自分の信念に背く事など──したくないんだぁ!!」

 

儁乂「………北郷様。 私達は……貴方様が大陸に平和を齎す方だと信じて、行動しております。 そのために私達は戦場で死しても本望! 屍を乗り越えて、家族達の幸せを築いて頂きたいのです。 左様な感情など無用と……」

 

一刀「馬鹿を言うなぁ! 俺の為に君達まで亡くなって、誰が喜ぶんだ!? 少なくとも俺は悲しむぞぉ!! これ以上、身近な人が亡くなって、悲しむ俺が……他の人達を幸せにする事なんかぁ出来るものかぁ────!!!」

 

儁乂は、ちょっと考えた後…………紫に話す。

 

儁乂「……私に何かあれば、北郷様をお連れして戦場を離脱しろ! 北郷様が反抗するなら、多少痛めつけてもいい。 ──必ず二人で脱出するんだ!!」

 

紫「─────!」ブンブン!

 

儁乂「主命だ! 拒否も許さん! ………元気で暮らせ!」

 

紫「……………儁乂……さま」プルプル

 

一刀「紫ちゃん! そんな事させないよう……俺、頑張るから!!」

 

紫「………」コクリ

 

ーーーーー

 

斗詩「一刀さん! 別働隊が近付いてきます! 兵数五万! 歳久殿、家久殿達が、弓兵で一斉に攻撃を開始致しました!」

 

一刀「分かった! ───真桜! 沙和! 発石車を頼む!! 俺達は別働隊の進行を防ぐから!! 何かあれば、華琳達の下に行けぇ!!!」

 

真桜「隊長! 発石車は任せとき! だから……必ず戻って来るんやで!!」

 

沙和「絶対、無事で居て欲しいのぉ!!」

 

朱里「ご、ご主人様~!」

 

斗詩「………お気を付けて!!」

 

一刀「………朱里も…斗詩も…真桜達も! また、必ず会おう!!」

 

ーーー

 

俺と儁乂達率いる五万の兵が、別働隊迎撃に向かう途中、麗羽が追い掛けてきた! 右翼の将として残してきたのだが……?

 

麗羽「ハァハァハァ………わ、我が君! 別働隊大将が分かりましたわ!! わたくし達を追い詰め、仲間の皆さんを殺害した……あの女が!!!」

 

一刀「つ、筒井順慶か───!?」

 

麗羽「歳久殿が……筒井順慶と確認しましたわ! そうなれば、我が君や貴方達だけでは不安ですもの! わたくしも……お供させて頂きますわ!!」

 

反対する俺を……巧みに封じ込め……俺達は死地に向かった!!

 

◆◇◆

 

【 順慶との対決 の件 】

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営付近 にて 〗

 

俺達が動くと、敵別働隊が間近で止まり……一人の将が現れる。

 

紛れもなく……筒井順慶……その人!

 

順慶「あらっ? 貴方ですの……北郷一刀! それと……見慣れない方々! あぁ……服装からして、私に挑んだ愚かしい人達の仲間ですか! あの人達も浮かばれませんわねぇ? 命掛けで助けたのに、また私の相手………」

 

一刀「黙れぇぇ!! 俺や華琳達を……命掛けで救ってくれた……皆を悪く言うなぁ!! 俺が───左校や大洪達の仇、取らせて貰うぞぉ!!」

 

儁乂「私の名は『張儁乂』! 亡き先代達より北郷様に仕える者だ! 神の御遣いと名を騙り、我々を愚弄し続けた『筒井順慶』! 貴女を倒し、先代達に、あの世で詫びるがいい!!」

 

紫「─────おっちゃん達の仇!!」

 

麗羽「────────覚悟!!」

 

順慶「ふふっ……あの撤退する際に、泣き叫んでいた貴方が……よくぞ大口を叩ける程になって。 ですが、弱き者が何人集まって掛かって来ても、貴方達では相手になりませんわ! ───全軍、私の指示があるまで待機なさい!!

 

まぁ……折角の挑戦者ですもの。 私が一人お相手致しますわ。 皆さんは何人でも宜しいから、御自由にどうぞ…………?」

 

一刀「その余裕! 今の内だあぁ!! 麗羽! 軍勢の指揮を任す!!」

 

麗羽「はっ! お気を付けて!!」

 

ーーーー

 

一刀は『猿叫』という叫び声を上げ、蜻蛉の構えより迫る!

 

一刀「チエエェェェ─────ィイ!!」

 

順慶「相変わらず……煩い声です事。 それでは、わざわざ斬る行為を、私に教えているようなモノですわ?」

 

一刀の攻撃を読み、袈裟斬りの反対方向に、軽く体捌きで避ける順慶。

 

順慶「一撃一撃が重い分、避けられると……隙だらけですわね!」

 

身体が刀の動きで流れ、目では順慶を認識出来るが……対応が出来ない! 順慶は、一刀に打撃を与えようと、手刀を頭上に上げるが───!

 

儁乂「………貴女こそ、隙だらけですよ!」

 

順慶「こんな物など………えっ!?」

 

儁乂は、鎖で繋いだ『九節鞭』の先を、順慶に向かい投げ飛ばす! 先は携帯し易いよう、尖りが甘く出来ている。 ……とはいえど鉄製のため、重量もあり……当たれば一溜まりもない!

 

順慶は、自分の顔に向かってきた九節鞭を、薄笑いを浮かべつつ軌道より外す。 だが……軌道を外した九節鞭は、儁乂の手の動きに合わせ、軌道を修正して二度目の攻撃を仕掛ける!!

 

儁乂「私の武器は文字通り『九節鞭』! 相手が、どのように逃げようが追尾して行くぞ!!」

 

対処した九節鞭の先が……顔に近付くのを辛うじて避け、一刀への攻撃を一時諦める! そして、態勢を直して動こうとした時、後ろから殺気が──!

 

紫「…………ぇぃ!!」

 

順慶「きゃあ!!!」

 

頭を慌てて下げると、短い短剣が頭の上を凪いだ!! 紫が頬を膨らませ、外した事に怒っている! 順慶は……三人より離れて様子を見た。

 

儁乂「北郷様! 大丈夫ですか!?」

 

一刀「あ、ありがとう!! 大丈夫だ! それに……敵は慌てている! これなら、勝機が見えるぞ!!」

 

★☆☆

 

順慶は、一刀の話を聞いて一瞬目を開いたが……口に片手を添え、さも可笑しそうに優雅な動作で笑っていた。

 

順慶「……うふっ! うふふっ! 面白い、面白いですわぁねぇ! その冗談! 誰が誰に勝てるのですって? ────北郷一刀! 貴方は……やはり、颯馬様にまだまだ及びませんわ? 素直に感情を出し過ぎですわよ!!」

 

一刀「何故、天城様と見比べる!? あの人と俺は、立場も過去も……生き方さえも全く違うのに!」

 

順慶「それはですねぇ………」スッ!

 

順慶の姿が消えた為、慌てて一刀の前に出てくる儁乂と紫!!

 

儁乂「来るぞ! 紫『ガッ!』ゴホッ───!!」

 

紫「儁乂──くっ!『ガキィ───ン』きゃあ───っ!!」

 

一刀の前に居た儁乂が、腹を蹴り飛ばされ、その横に居た紫は……咄嗟に気付き防御したものの、同じようにふっ飛ばされた!!!

 

順慶「颯馬様と貴方が………この世界を維持する鍵だからだ……と聞いたからですわ! あの颯馬様と貴方のような未熟者が!!」

 

一刀「儁乂! 紫──!」

 

麗羽「あ、危ない───っ!!」

 

一刀「はっ!?」

 

順慶は、既に一刀の後ろに回っている!!

 

順慶「………他人の心配をしている場合ですか? 北郷一刀?」

 

あの時……華琳達と共に蹂躙された……恐怖と悲痛の記憶が、一刀の頭の中に蘇る!!

 

一刀「チ、チエエェェェィイ───!!」

 

順慶「はっ! 甘いですわ……」

 

袈裟斬りで攻撃する一刀に瞬時に近付き、斬りの動作が終了した瞬間、軽く一撃を見舞う。 軽く……軽く撫でるような攻撃なのだが………。

 

一刀「ぐほぉっ────!!」

 

麗羽「我が君ぃ─────!!」

 

麗羽は叫ぶが──攻撃には参加出来ない! 何故なら、軍勢の指揮を任された身。 自分まで行って倒されれば、軍勢の崩壊が始まる!

 

即ち………曹操軍の負けである!!

 

麗羽は……断腸の思いで……様子を見ているしかなかったのだ!!

 

ーーーーー

 

儁乂「………ほ、北郷さ……ま!!」

 

紫「儁乂ぃ……さ……まぁ……」

 

二人共、あの時に致命傷は避けれた為、命は無事だが……あまりの打撃の重さに、直ぐに起きれそうもない!!

 

ーーーーー

 

一刀は痛烈な痛みの為────意識を失い前屈みに倒れる! 

 

そこへ、順慶が倒れそうな一刀を抱き寄せ、肩に乗せて移動を試みた! 

 

順慶「………さて、于吉との約束も……果たせそうですわね。 貴方は私が丁寧に運んで差し上げますわ!! 後は将が残っていますが、この軍勢に襲撃させれば問題無し。 それでは……『待って貰おうか!!』………誰!?」

 

曹操軍勢より、長い槍を持った少女が……ゆっくりとした足取りで、麗羽の横に立つ! 青ざめていた麗羽の顔に、うっすらと朱が戻った!

 

麗羽「星───っ! お願いです! 我が君が! 我が君がぁ!!」

 

星「………皆まで言うな。 よく頑張った! さて、ここからは私が相手をしてやる! 筒井順慶───!!!」

 

趙子竜……真名は星! 満を持しての登場である!

 

 

◆◇◆

 

【 順慶と星の死闘 の件 】

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営付近 にて 〗

 

順慶「まぁ、まぁ! まぁ──!! 私をコケにしてくれた趙雲が、この場所に来てくれるなんてぇ!!! この北郷一刀の捕獲といい、貴方の対決といい、今日は──なんて素晴らしい日なんでしょう!?」

 

星「私は最悪だ! 折角……徐州で購入したメンマの試食をしていたら、華琳様に見つかり、別働隊の対処に向かわされ……。 来てみれば、二度会いたくない貴公がいる………。 だが、主が拐かされ所に間に合ったのも奇縁!」

 

麗羽に……『そこの二人を連れて下がれ!』と指示し、軍勢も更に後方へと下がらせた星。 言動はオチャラケていたが、戦闘に対する意気込みは本物!!

 

順慶も、軍勢に自分達より離れるように指示する。  

 

『近付いたら、死んでも知りませんよ?』と一言添えるのも忘れない!!

 

それぞれの軍勢が距離を開け離れて行く中、順慶と星が近付いた。

 

順慶「待っていましたわ! 貴女との対戦を!!」

 

星「……やれやれ……しつこい御仁だ。 私は、『二度と御免!』と断りを入れたのだがな」 

 

順慶「貴女に無くても、私は会いたかった! 貴女を完全に破り、私の前で無様に這いつくばせ、涙を流して負けを認めさせる事が目的! 今度こそ、今度こそ……私が勝ってみせます!!!」

 

星「ふっ! 戦いたくなかったのだが……主の危機ならば───話は別だ! 全力を尽くすのが士としての務め! ────筒井順慶よ! 主を離せ!!

 

主達の受けた借り、キッチリ利息を付けて返してやる!!!」  

 

順慶「………そうですわね。 このまま巻き込まれば容易く死にますでしょうね! 用が無くなれば、離れて貰いますわよ! 北郷一刀!!!」

 

順慶は、気を失った一刀を軽々片手で持ち上げると、前方に放り投げた!

 

星「─────!」ダッ!

 

順慶「引っかかっりましたわねぇ!」シュッ!

 

星が受け止めようと走れば、順慶が動き──星に攻撃を仕掛ける!

 

星「主────ぃ!!!」ボスッ!

 

星が受け止めたが、順慶はすぐ傍に居る!! 

 

満面に笑顔を向けて手刀を振りかざす!!  間合いは一尺 (約23センチ) も無い!!! 星は、自分の身体を楯にして、一刀を庇う!! 

 

順慶「趙雲! 討ち取ったり───ぃ!!」

 

勝利を確信した順慶は、勝ち鬨を上げた─────!

 

★☆☆

 

………ポタッ! ポタポタポタポタ───ッ! 

 

ブシュッ───!!

 

身体から……血が吹き出した! 

 

順慶の綺麗な顔にも血飛沫が付着し、血化粧に染める!!!

 

順慶「フッ、フフフフフッ!! 驚きましたわ! やるではありませんかぁ!! そこの───おチビさん!!!」

 

目を見開き、紫達の居る方を睨む順慶! 

 

順慶の攻撃した右腕には、短剣が一本刺さっている!! その痛みで反射的に腕を引いた為、星達には攻撃が届かなかったのだ!!

 

無論、その短剣の持ち主も遣い手も……紫ただ一人! 

 

しかし、指示したのは、紫の傍で一刀の無事に安堵する……張儁乂である。 

 

順慶の一刀の扱い方、星への恨みの深さからして、このような手段を講じるのでは無いかと予測! 比較的元気な紫に、順慶へ短剣を投擲するよう命じたのだ!!

 

紫「儁乂様……当てたよ? 紫、凄い? 凄い!?」

 

儁乂「あぁ、凄いよぉ……紫……」ナデナデ

 

どや顔で自慢する紫に、力少なく撫でる儁乂………。

 

ーーー

 

しかし、順慶は刺さった短剣を抜くと、遠くに放り投げる! そして、腕に気を集中させると………刺された傷が無くなった。 気による瞬間的な治癒力である。 因みに、前の戦で毒煙を吸ったのに平気なのは、これのお陰である。

 

★★☆

 

星「麗羽! 一刀殿を……主を頼む! 武人の戦を汚す順慶に目にものを見せてやる! 我が愛槍《龍牙》とメンマの名に掛けて!!」

 

麗羽「分かりましたわ! 最後の方は意味不明ですが……納得してあげます! わたくし、物事に寛容ですから!」

 

星「一度、メンマの事で……じっくり話さなくてはいかんな? おっと、それでは任せた!!!」

 

麗羽「星……貴女も死んではいけませんよ? 我が君は、どの方が亡くなっても……悲しんで、重みとして背負う方ですので………」

 

◆◇◆

 

【 それぞれの 最終奥義 の件 】

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営付近 にて 〗

 

順慶「…………邪魔が入ってしまいましたわね。 仕切り直しに───」

 

星「もはや、武人としての戦いをも忘れたか! 筒井順慶! 来い……相手をしてやる!!」

 

星が龍牙を構え、順慶に向ける。 例の如く腰を落とし、目を閉じて『気配』と『音』を感じて対処する『座頭市戦法』をとる。

 

順慶「そのような戦い方、怖くも何もないですわ!」

 

★☆☆

 

───!

────!

ーーーーー!!!!

 

星「 (………………順慶の気配、足音が近付くか。 間合いは三歩、私の目の前で止まる───!!! 気配が……四つに別れただと!?) 」

 

馬鹿な!?っと思い、目を見開くと………順慶が四人に!!

 

順慶「気を応用して作った『影分身』ですわ! 貴女は、気配と音で感じるのなら、気配を作り出せばいい! 足音は……今です!!」

 

順慶が命じると……晋軍の兵士達が、思い思いに足音を鳴らす!

 

万の兵士が鳴らすため、とてもではないが聞き取りは……難しい!

 

順慶「貴女の得意な戦法は、この通り封じ込めましたわ!!」

 

星「くっ!!」  

 

順慶「さぁっ────覚悟なさい!!」

 

ーーーーー

 

四つの影、見極めが難しい攻撃、千差万別な動き、集中力を乱す足音!

 

星も槍を使い、影を一斉に横凪で払ったり、無数と思える高速の突きを繰り出すが、どれも当たらない。 しかし、本体は一人! 当たらないのは、瞬時に後方に下がったりした為で、他の影のように身体を透けて通る訳ではない!

 

だか、それを見極めるには……集中力が必要であり、姿身が一緒の順慶を探るには、時間が無さ過ぎる! ただでさえ、攻撃を受けるため防御の方へ意識を持っていかねばならぬ故、苦戦を免れない!!

 

順慶「ほらほらぁ! こっちですわ! こっち!」シュン!

 

星「ムッ! 『スカッ!』───くそぉ! これも影かぁ!!」

 

順慶「こっちですわ!」ブーン!

 

星「グッ!!」ザシュッ!

 

影は気だけで出来ているため、喋る事も攻撃を受けても負傷はしない。 だが、腹話術を使い喋るように誤魔化したり、本人が紛れているため、気が抜けない! そして……疲労ばかりが蓄積していく。

 

順慶「……趙雲。 今の状態を何と言うかご存知ですか?」

 

星「………はぁはぁ……はぁ?」

 

順慶「───無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁですわ!」

 

星「………そうか。 其処まで……言われるのであれば……止むを得ない! 我が奥義を持って、相手してやる!!」

 

そういうと、星は懐に手を伸ばし───『メンマ壺』を取り出した。

 

◆◇◆

 

【 星の秘奥義 の件 】

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営 にて 〗

 

星は、懐からメンマ壺を取り出し、一口食べる。

 

星「うむっ! 今までの疲れが、スカッと爽やかに吹っ飛んでいく!!」

 

順慶「メンマが栄養食? 有り得ませんわ! それが奥義でしたら、もう終わりですわね! これで止めを───!」

 

星「慌てるな! これを撒けばぁ……よっと! ほれっ!!」

 

星は、もう一掴みメンマを口に入れると、メンマを自分の周りに撒き散らす!

 

星「我が奥義『メンマ結界陣』! 順慶よ……これで御主の命運は、このメンマ達の犠牲と引き換えに終わるのだ………!!」

 

順慶「はっ? 何を馬鹿な事を! 貴女こそ、これで……終わりですわ!!」

 

順慶が影と共に攻める! 前面、左右を影に任せ、自分は後ろに廻る。

 

順慶「 (さらばですわ! 趙雲!!) 」

 

順慶達が攻撃を仕掛けた瞬間、クチョ!と小さな音が鳴る。 

順慶が間合いを詰める為、一歩踏み出した足下には……例のメンマを踏みしめている!

 

星「───────そこぉ!!」

 

星の龍牙が……瞬時に獲物を定め、後ろの順慶の肩に刺さる!!

 

順慶「えっ!? あっ! う、嘘ぉ……」ガクッ

 

三つの分身が姿を消す! 順慶が刺された様子を見て、晋軍の足音が止まる!

 

星「幻影は幻影に過ぎぬ! 実体しか体重は無いからな! メンマ達の力! 思い知ったかぁ!!」

 

星は、別のメンマ壺を取り出し、一本のメンマを口に咥える。

 

順慶「ま、まだ……これが──ありますわ!」

 

順慶は地面で拾った石を投げようとした。 

 

前よりも強力に気を注入された石の投擲! 腕や足に当たっても、全身の気の流れが狂い………死に至らしめる! それ程の力を秘めた物を、順慶は作り出したのだ! 

 

勿論、それだけの気を入れては、順慶も只では済まない。 それでも、自分を連続で敗北に落とそうとする将に──復讐したい! その一念だった!!

 

星「プッ───!!」

 

順慶「きゃあぁぁ! 目が痛い! 痛いぁ───い!!」ボトッ!

 

星は、咥えていたメンマを順慶に飛ばし────目に当てた! 

 

順慶は痛がり、石を投げ捨てて目を押さえ、転げ回る!!  

 

星「我が最終奥義……『飛翔メンマ』! このメンマは、先端に『董辛子』を塗ってある。 当たれば、体験している通りの結果になる代物だ! それにな……一度見た技など二度目と通用などしないぞ!! ……真の武人にはなぁ!!」

 

順慶「うぐっ~!! 私がぁ! 私がぁぁ!!」

 

星「私に……この最終奥義を出させた事は、敬服しよう! しかし、様々な我々に対しての暴虐! 我が主の身柄を拘束した事! 更にメンマを馬鹿にした言動などの罪は絶対に許せ………ん!!!」グラッ ガクッ!

 

星は、それだけ言うと片膝を付く! それだけ順慶の攻撃は……星に負担を掛け、肉体的、精神的に追い込んだ証拠であった!!

 

ーーーーーー

 

────星は、麗羽達に順慶を捕獲するように指示を出すが、晋軍側が先に動き順慶を救出! 

 

別働隊は、そのまま順慶を介抱しつつ、本隊に連れていった。 指揮官が居なければ、只の烏合の衆。 無駄に戦力を減らすより、一カ所に固まった方が、指揮系統や戦力的に妥当と判断したためであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

どうしても、書いておきたかった話があったため、合間を見つつ仕上げました。 星と順慶との最終決着は、これで終わります。

 

明日から、忙しくなるようですので、急ぎで投稿しました。

 

誤字等は……おいおい直していきますので。

 

また、宜しければ………お願いします。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
6
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択