No.709249

トトトトカラカラ  ストライクウィッチーズ二次創作

土と油さん

エースだけがウィッチじゃない!・・・それ以前にこのウィッチは戦わない。
イラストを御城伸座氏よりいただきました。
ありがとうございます。

2014-08-16 20:38:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1005   閲覧ユーザー数:992

なぜこんな事になってしまったのだろう。

村の集会所で見た巡回の戦意高揚映画。

真っ赤なストライカーで蒼空を駆け、次々とネウロイを撃墜するエース、メヒティルト・フォン・リヒトホーフェン。

彼女にあこがれて軍に志願したはずなのに、今私は壕の中で砂まみれになりながら震えていた

 

 

元々私の魔法力発現は16歳と遅かった。

ウィッチの養成学校の生徒は皆私より幼かったが優秀だった。

いや、私の魔法力が弱すぎたのだ。

航空適正なし、射撃技術なし、現行型の大出力魔導エンジンを動かせる魔法力もなし。

「君が配属されるのは陸軍通信隊だ」

そう伝えられ目の前が真っ暗になった。

私は飛びたかったのに・・・。

 

 

「ゾフィー・ザクセンベルク軍曹!ザクセンベルク軍曹は居るか!?」

上官のラルス・エルツベルガー少尉が血相変えて飛び込んできた。

「はっ!はい!」

「緊急の任務だ、お前にしかできない。早く来い!」

少尉の後を追い、交通壕を走り行く先に私のストライカーはあった。

Ⅱ号戦闘装甲脚、私が扱えるギリギリのストライカー。

それには電話線を巻いた大量のコードドラムが取り付けてあった。

「さっきの攻撃で連絡が途絶した。あそこの高地、見えるな?

砲兵隊の観測所があるからそこまで電話線を敷設しろ。それがお前の任務だ。」

「はっ、はい!」

「全速で行け!ただし電話線はぶち切るな!」

「はい!」

嫌だ!あそこまで身を隠せる障害物は何もない!

電話線のドラムがストライカーの両脚に6個、背負子に3個、拳銃を持たされたが小型ネウロイにだって通用しないのは解ってる。

ウィッチの怪力と機動性だけ買われた場末の任務。

「今だ!行け!」

「はい!」

ネウロイのビームがやんだ瞬間壕から飛び出す

                   

 

Ⅱ号がトトトと軽いエンジン音を響かせながら走る、背中のドラムがカラカラと音を立てる、このドラムの電話線は500メートル、あと50、30 、20・・・。

時々上空にビームが走る、怖い!

急停止しドラムを廃棄、新しいドラムと交換し、恐怖に震える手で泣きながら電話線をペンチでつなぐ。

するとすぐ近くに赤いビームが走り爆発する。

見上げれば飛行型ネウロイ!?

Ⅱ号と私のシールドでは防げない!

思わず頭を抱え込む。

その瞬間、それは銃弾の雨の中砕け散った。

見れば航空ウィッチがストライカーの爆音を立て、上空を旋回しながら耳を指さすジェスチャーをしている

インカム?そんな高価な装備うちの小隊にはない。

空に敬礼し再び高地を目指す、カラカラカラ。

しばらく進むと数名の兵士が偽装網がかけられた壕から身を乗り出し手を振っているのが遠くに見えた。

あそこか?

電話線の残りを気にしながらひたすら進む。

あれ?おかしいな?もしかしてもう魔法力切れ?

くそう!あと50メートル!

壕から満面の笑みを浮かべた兵たちが飛び出してきた。

ふんばれ20ートル!

魔導エンジン停止。

喜びの叫びを上げ私に駆け寄る兵士たち。あはは、やったよ・・・。

前のめりに倒れる。

きっと顔は涙と鼻水と砂でぐしゃぐしゃだ。

「やった!電話線だ!」「これで勝てる!」「すごいタイミングだ!」

背中からドラムが外され、それだけ持って走る兵士たち。

ええっ!私は置いてけぼり!?ううっ、また涙出てきた。

壕の中で慌ただしく動く兵士たちの気配。響く怒声

「おい!早く壕へ!」砲兵隊の階級章を付けたゴリラみたいな曹長が私に走り寄る。

そして襟首つかまれ壕まで引きずられていく。私は物ですか?

「よし!ここが特等席だ!」砲隊鏡の横に座らされる。

 

                              5

「嬢ちゃん、みものだぞ!」曹長の指さす先には濛々たる砂煙。そしてその光景に戦慄を覚えた。

なんて数の陸戦型ネウロイ!

あんなのが来たらここの陣地なんか壊滅してしまう!  

「初弾!来ます!」野戦電話機に取り付いていた兵士が叫ぶ。

シュルシュルという音を立て上空を何かが通過した

遠くにものすごい砂煙と轟音!

砲隊鏡を覗いていた兵が叫ぶ「着弾!修正右3度!仰角2度!」

「修正右3度!仰角2度!」

野戦電話機に取り付いている兵士が復唱する。

「次弾!来ます!」

再度上空を空気を切り裂く音が通過する。

次の砲弾の嵐は、見事ネウロイの群れの上に炸裂した。

黒い影が爆発に巻き込まれ次々と白い光となって消えていく。

「やったー!」「うおおお!」「馬鹿野郎!観測続けろ!」

「すごい・・・」

「171mm重カノン砲の一斉射撃だ!嬢ちゃんが電話線を引いてくれたおかげだ!」

ゴリラ曹長が乱暴に私のヘルメットをバンバン叩いた

 

 

数度にも渡る砲撃でネウロイの大半は撃破され、残りも逃走した。

この大戦果は、ノイエ・カールスラントの新聞に大々的に報道されたが、当然ゴリラ曹長の観測班の活躍も私の事も新聞には載らない。

しかし、今私は自分の仕事に誇りを持っている。

そして今日も古びたストライカーで電話線を敷設するのだ。

トトトト カラカラ・・・

 

 

 

 

―完―

 

 

 

 

 


 
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