No.703635 九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~竜神丸さん 2014-07-25 17:17:52 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:7546 閲覧ユーザー数:1878 |
「ぐ、げほ、ごほ…!!」
『ン……グ、ゥ…!!』
大規模に街中の建物を破壊しながら、今まで激闘を繰り広げ続けていたショウとガドル。周囲が瓦礫だらけだったり地割れが多く出来ている中、二人はボロボロの身体を根性で支えている。
「はぁ、はぁ……正直、今の僕には驚き以外何にも無いよ…ここまで強い奴との戦いは、本当に久しぶりだったからね…!」
『フッ……それはこちらとて、同じ事だ…ここまで気が高まる戦いは、クウガとの戦い以来だ』
「へぇ、あのクウガと同等に見られるとは…実に光栄だね…!」
そう告げる間も、ショウの両手の爪は長く伸びて鉤爪へと変化し、ガドルも両腕の肘から長く鋭利な刃を出現させる。
「全く、本当に嬉しいよ……だからこそ、こんな状況で君と戦っている事自体が非常に残念で仕方なく感じてしまうよ!!」
『同意見だな…!!』
ショウの振るった鉤爪とガドルの構えた腕の刃がぶつかり合い、そのたびに起こる衝撃波が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。このままでは埒が明かないと踏んだのか、ガドルの右足がショウを空高く蹴り上げられ、ショウは蹴り上げられながらも体勢を立て直し両足の爪も鷹のように鋭利化させる。
「そこぉっ!!!」
『ヌンッ!!!』
ショウは空中から落下する勢いを利用し、ガドルに向かって右足を突き出し飛び蹴りを放つ。しかしそれも読んでいたかのようにガドルはショウの右足を掴んで真横に投げ飛ばし、左手から連続で闇のエネルギー弾を発射し爆破。煙が上がる中、すぐにショウが飛び出しガドルに殴りかかる。
『まだだ……貴様の力は、こんなものではない筈だ!!』
「何処まで期待してくれているのかは分からないけど、そこまで言われちゃ期待に応えなくちゃね!!」
『この俺に誇りに思わせろ!! 死してなお、貴様のような者と戦えた事を!!』
「ならば君にも、僕の願いを聞いて欲しい!!」
ショウの繰り出すパンチはガドルによって全て受け流され、代わりにガドルの拳がショウの腹部に命中。それによりショウの口から多量の血が噴き出るも、その両手はガドルの拳を掴んで離さず、ガドルの顔面に拳を炸裂させる。
『ヌゥ…!!』
「ッ…君は僕にとって、最高の
ガドルが力ずくで振り払い、ショウの右肩を蹴りつける。
「恥じる事なく、後悔が残る事なく!!」
右肩を犠牲に、ショウの左拳がガドルを殴り倒す。
「―――最後まで、僕と全力で戦って散って欲しい!!!」
『…ギギダソグッ!!!』
二人の回し蹴りが同時に炸裂し、互いに吹き飛ばされて建物の中に突っ込む。どちらもすぐに瓦礫を退かして外に出て来るが、既に二人の体力は限界を突破していた。それでも戦おうとしているのは、彼等の内側に燃え上がっている闘争心と、強敵と戦えている喜びが何よりも勝っていたからなのだろう。
「ボセゼゴバサゲジョグゼザバギバ、ゴ・ガドル・バジョ!!」
『ゴロギソギ!! ババデデブスガギギ、ショウ・ブレイブ!!』
ショウは悪魔のエネルギーを右足に、ガドルは闇のエネルギーを右足に纏わせ、素早く駆け出してから大きく飛び上がる。そして飛び上がった先で二人は飛び蹴りの体勢になる。
『ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
二人の繰り出したキックがぶつかり合い…
『グ、ゥ…オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!?』
「う、ぐ…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
結果、大爆発を引き起こす事となった。
一方、他のメンバー達はと言うと…
≪スキャニングチャージ!≫
「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『ヌグォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!?』
分身によって50人まで増えたオーズ・ガタキリバコンボは、一斉に繰り出したガタキリバキックを十面鬼に炸裂させる。いくらゴーストショッカーの幹部である十面鬼と言えども、流石に量も質も両方ある数の暴力には防ぎ切れる術など存在していない。連続で決まったガタキリバキックで吹っ飛ばされた十面鬼に、他のディアラヴァーズ達が一斉に攻撃を仕掛ける。
「出でよ、
「斬り裂け、
「一気に倒してやるさぁ、『ゴールド・エクスペリエンス』!!』
「
「貫け、
「喰らい尽くせ、
「うにゅ? それぇー!」
「コイツも喰らっとけ、クソ野郎!!!」
「さぁ、踊り狂いなさい♪」
「よいしょっとお!!」
「奇跡の力、見せてあげましょう!」
「死に曝せ、ゴミが」
『ぬ、ぐぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』
『『『『『イィィィィィィィィィィッ!!?』』』』』
ディアラヴァーズや咲良、合流したmiriや朱音、蒼崎や早苗、そしてデルタの攻撃が一斉に炸裂。十面鬼を守ろうとしたショッカー戦闘員は全滅し、十面鬼も防御し切れずに大ダメージを負ってしまう。
『グ、ゥ…お、のれぇぇぇぇぇぇぇ…!!』
「んじゃ、最後は俺達がトドメって事で」
「そういう事だ」
≪ハイ・ハイ・ハイ・ハイ・ハイタッチ!≫
『ッ!?』
ズタボロの状態で立ち上がろうとした十面鬼の後方では、ウィザード・インフィニティースタイルがアックスカリバーを、Unknownが闘鬼神を構えていた。
≪プラズマシャイニングストライク!≫
「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『ぬがっ!? ぐ、ごは…!?』
「そぉい!!!」
『ぐばぁ!? ば、馬鹿、な…この私が、こん、な……所、で…ガァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
ウィザードの投擲したアックスカリバーが連続で十面鬼の身体を斬り裂いていき、最後はUnknownが真上から十面鬼を一刀両断。十面鬼は成す術も無く爆散した。
「「…ふぃ~」」
「ここらも一通り全滅させたな。早いところ、あの無駄にデカいドラゴンも潰しに行くぞ」
「おー! …ところで、Blazはどしたの?」
「Blazは……うん。彼は、非常に残念だったよ…」
「あ、原因はそこの男の娘な」
「ちょ、何故あっさりバラすか!?」
「「「「「アン娘さんェ…」」」」」
「おい君達、そのジト目は何かね!? わざとじゃない、決してわざとやった訳じゃないぞ!!」
「うるさいですね。どう弁解しようとあなたの部屋からコジマが消失する事は確定してるんで、いい加減諦めたらどうです?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
(あぁ、泣いてるアン娘も凄く可愛いわハァハァ…♪)
(うんうん、ハァハァしてる朱音さんもなかなか…)
(いかん、別の意味で危ない人が約二名)
デルタの無慈悲な一言がトドメとなり、Unknownは大号泣。そんな彼を見た朱音は涎を垂らしながらカメラにその姿を激写しまくっており、蒼崎はそんな朱音の姿を見てニヤニヤしており、miriはこの状況を見て内心ではとてつもなくデカい不安に駆られるのだった。
ちなみに…
「う、うぅ~ん……く、来るなぁ…亡霊がこっちに来るぅ~…!!」
クロガネ艦隊に回収されたBlazは、寝込んでいる間も亡霊達に追いかけ回される悪夢をしばらく見続けていたという。
場所は戻り、街の中心部…
『……』
「……」
何もかもが崩壊したその地点にて、ショウとガドルは全身ボロボロの状態で倒れていた。ガドルは辛うじて息はしていたものの、ショウの方はうつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。
『…ん、ぐ』
そんな中、ガドルはゆっくりと立ち上がる。彼はショウの倒れている方に振り返り、未だ動かない彼を見下ろしていた……その時だ。
『……ぐ、ぅ…ッ!!』
突如、ガドルが腹部を押さえて苦しみ始めた。それと共にショウの上半身の禍々しい刺青がほんの少しだけ大きくなり、ショウの指先がピクリと動く。
「…僕の勝ち……で、良いのかな…?」
『ッ……あぁ…そのよう、だ…』
“蘇生”したショウは、その場からゆっくりと立ち上がる。代わりに今度はガドルがその場に跪き、その身体が少しずつ粒子化し始める。
『見事、だった……ショウ・ブレイブ…』
「…来世でまた会おう、友よ」
『フッ……そう、だな…友、よ…』
人間態に戻ったガドルは小さく笑みを浮かべてから、粒子化して消滅。その魂が“誘いの鍵”の浮遊する方向へと吸い寄せられていくのを眺めた後、ショウは足元がフラつき出し…
「―――お疲れ様、ショウ」
倒れかけるショウを、エリカが優しく抱き留める。
「…こっちは終わったよ、エリカ」
「もう、あまり無茶はしないで頂戴。あなたの命だって無限じゃないのよ?」
「あぁ、すまない…ッ!!」
『『『グガァァァァァァァ…!!』』』
傷付いたショウは地面に座り込み、エリカが彼の傷を
「ッ…ショウに手出しはさせないわよ!!」
まだ回復し切っていないショウを守るべく、エリカは障壁を張りブロバジェル達の攻撃を防御。その障壁を潜り抜けたキグナス・ゾディアーツの手刀を回避し、アルマジロイマジンやブロバジェルの攻撃を凌ぐ。
『ギシャアッ!!』
「!? ぐ、この…!!」
「エリカ!!」
ブロバジェルの腕から流れた電流がエリカの全身を麻痺させ、キグナス・ゾディアーツが彼女の右足を蹴りつけて怯ませる。妻のピンチに立ち上がって応戦しようとするショウを、アルマジロイマジンが左腕の爪を振るい容赦なく襲い掛かろうとした……その時だった。
「「―――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
『グガァッ!!?』
駆け付けたソラとロキの二人が、アルマジロイマジンに跳び蹴りを炸裂させた。吹っ飛ばされたアルマジロイマジンはエリカに襲い掛かろうとしていたブロバジェルに激突し、キグナス・ゾディアーツも突然の乱入に動揺する。
「ッ……君達は…」
「危ないところだったね、ショウ君」
「後は俺達に任せて下さい……うぉらあっ!!!」
『グァッ!?』
迫って来たキグナス・ゾディアーツをロキが顔面にキックして薙ぎ倒し、ソラはブロバジェルの放った電撃を物ともしないままパンチの一撃で粉砕。更に別方向から蜘蛛男やカクタスオルフェノクが出現するが…
「―――らぁっ!!!」
『『ガァ!?』』
駆け付けたルカが、その二体を同時に蹴り飛ばす。
「お、やっと来たのか愚弟よ」
「愚弟って言うな!! アリサへの説明が大変だったんだから……あ、どうもショウさんエリカさん」
「あら、こんにちはルカ君」
ルカはロキの愚弟発言に突っ込みを入れつつ、エリカ達とも挨拶する。その横ではソラがショウに手を差し伸べていた。
「すまない、手間をかけさせたね」
「問題ない。襲い来る敵は一人残らず殲滅し、助けられる者は助ける。それだけの事だ」
「そういう事です。という訳で、ここからは俺達のターンだ」
「―――行くぞ!!!」
「「応!!!」」
『『『『ガ…グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』』』』
長男、ソラ。
次男、ロキ。
三男、ルカ。
タカナシ家の三兄弟は高く跳び上がり、怪人達を跳び蹴りで粉砕してみせるのだった。
場所は変わり、浮遊する暗黒竜の周囲…
『『『『『キュォォォォォォォォォォォォォッ!!?』』』』』
「!?」
「な、何だ…!?」
「今のは…」
ファイズ、龍騎、ギャレンを追いかけていたマザーサガークやギガンデスヘブンの大群が、何処からか放たれた巨大な斬撃によって切断される。
「お前達、大丈夫か!!」
「俺達、復活!!!」
「aws、FalSig!!」
「え、誰?」
復活したawsとFalSigの救援にファイズは仮面の下でニヤリと笑い、龍騎は初対面である彼等に対して思わず首を傾げる。
「すまない。妙な甲冑の男にやられて、傷の回復に専念していた」
「妙な甲冑……あぁ、あの鎧の野郎か」
「アイツ、一体何なんすか? 俺が魔眼で見ても何も見えないし、明らかに普通じゃないっすよね」
「奴の方には支配人とディアーリーズ達が向かってるよ。とにかく、俺達はあの凶暴化した怪物共をどうにかしなきゃならな―――」
「怪物? あの蚊みたいに落ちていってる奴等すか?」
「「「…え?」」」
FalSigの指差した方向では、先程まで活性化して暴れ回っていた筈のウブメやハイドラグーン、ギガンデスヘブンやマザーサガークの大群が次々と力尽きて地面に落下していく光景があった。想像を遥かに絶するこの光景にファイズと龍騎は唖然とし、ギャレンは「あぁ…」と理解したかのように手をポンと叩き、awsは苦笑しながら頭を掻く。
「…早い話、あの程度の怪物達ならFalSig一人でも問題ないそうだ」
「そういう事♪」
「…一城」
「…何だ、真司」
「…俺達の苦労って、何だったんだっけ」
「…すまん、聞かれたところで俺も答えられん」
アッサリと怪物達を処理してしまったFalSigのドヤ顔を見て、ファイズと龍騎は思わずドラグランザーの背中の上で脱力してしまうのだった。
その時…
-ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!-
「「「「「!?」」」」」
彼等の耳に爆発音が聞こえてきた。
「今のは…!!」
「あそこ、鍵の方からだ!!」
その爆発音が聞こえた、暗黒竜上層では…
「神槍『スピア・ザ・グングニル』」
『ヌ、グゥゥゥゥゥ…!!』
ガルムの投擲した赤い槍がアザゼルの振るった剣とぶつかり合い、再び爆発を引き起こす。その爆発の中でガルムは既に次のスペルカードを用意していた。
「霊符『夢双封印』」
『!? ゴァァァァァァァァァァッ!!!』
「恋符『マスタースパーク』!!」
ガルムが手を振った瞬間にアザゼルの周囲を無数の光弾が攻撃し、そこに反撃の隙も与えないかの如くガルムは二丁のビームハンドガンから巨大なエネルギー光線を発射しアザゼルに命中させる。
「禁弾『スターボウブレイク』!!!」
更にはアザゼルだけでなく、現在自分達がいる巨大暗黒竜の背中にもエネルギー弾を乱射し、連続で爆破し続ける事で爆発の煙が発生。数秒経ってから煙が晴れると、そこには傷付きながらも仁王立ちしているアザゼルの姿があった。
『ク、ククククク……無駄な事ダ…貴様の攻撃デハ、この誘いの鍵を鎮メル事は出来ン…!!』
「あぁそう、なら何度でも攻撃してやるさ……氷符『アイシクルフォール』」
『ム、ヌォ―――』
ガルムの両手から放たれた冷気が瞬時にアザゼルの身体を凍結させ、そのまま暗黒竜の背中も少しずつ凍結させていく。ガルムはアザゼルの動きが停止したのを確認し、右腕に多角柱型の砲台らしき物が装備され、その先端にエネルギーを収束させる。
「爆符『ペタフレア』!!!」
そこから発射された火炎弾が凍結したアザゼルを飲み込み、暗黒竜の頭部をも爆破させる。ガルムは一旦暗黒竜の背中に降り立つ。
(少しくらい、ダメージ通っててくれよ…)
しかし…
-ザシュッ!!-
「ッ!? ちぃ…な!?」
煙の中から飛び出した一本の魔剣が、ガルムの右肩に突き刺さる。ガルムは苦痛に耐えながらも刺さった魔剣を力ずくで抜き取るも、その直後に巨大な黒いエネルギー砲がガルムを飲み込み、大爆発を引き起こした。
『ヌゥゥゥゥゥ…』
「―――チッ、冗談じゃねぇぜ」
片方の煙からはアザゼルが、もう片方の煙からはリザレクションで再生したガルムが姿を現す。
「ここまでやってほぼ無傷か……全く、何をどうしたらお前を傷付けられるんだ?」
『無駄だと言っテイルのが分からナイヨうだな……仕組みを知ラン貴様では我ダケデない、この“誘いの鍵”を落とす事ナド到底出来はシナイ…!!!』
「いちいち言動がうるさい野郎だな…ッ!?」
その時、アザゼルの下半身が少しずつ暗黒竜の体内に取り込まれ始めた。
「何…!?」
『貴様等は何トシテでも、コノ場で捻り潰しテヤル…!! 何トシテデモナァッ!!!』
アザゼルの全身が取り込まれた瞬間、ゆっくり飛行していただけだった暗黒竜の目が赤く発光する。
「コイツ、竜と一体化したのか……うぉわとと!?」
『滅ボス!! 生キトシ生ケル命ハ全テ、滅ビユク
アザゼルと一体化した暗黒竜は高く咆哮を上げ、空高く舞い上がり始めた。背中から振り落とされたガルムは空中で体勢を立て直すが、そんな彼に向かって暗黒竜が口を大きく開けて襲い掛かろうとする。
『マズハ貴様カラダ!! ソノ命、我ガ息吹キデ焼キ尽クシテクレル!!』
「うっへぇ、また面倒な…」
暗黒竜が口元に闇のオーラを収束し始め、ガルムもそれを防御すべく目の前に結界を張ろうとする。するとその時だった。
『―――!? グ、ヌブ…ゥオ…』
「?」
息吹きを吐こうとした暗黒竜が、口元で何やら苦しみ始めた。そして…
『グ、ブ…ウォエエエエエエエエエッ!?』
『―――ミギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
「!? 何だあれ…」
暗黒竜の口の中から、鰐のような形状をした時の列車―――ガオウライナーが鳴き声を上げながら飛び出して来たのだ。しかも飛び出して来たのはガオウライナーだけではない。
「―――ぷはぁ、やっと出られた…!」
「美空さん、大丈夫ですか?」
「大、丈夫…です……お母さんも、ちゃんと…います…!」
「!? 支配人、ディア、それに美空ちゃんまで…!?」
支配人達も同じように、暗黒竜の口の中から飛び出して来た。それを見たガルムはすぐさま足元に魔法陣を展開させ、支配人達をそこに着地させる。
「よ、ガルム。足場作ってくれてサンキューな」
「竜の口から出て来るたぁ、随分と危なっかしい事やってるなお前等」
「す、すみません。緊急時だったもので……それより、アザゼルは今何処に?」
「アザゼル? あぁ、あの鎧野郎なら竜と一体化してるぜ」
「竜と一体化…!?」
「となると……アレその物がアザゼル、という事か」
『グギャォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』
そのアザゼルが一体化した暗黒竜はというと、先程一番最初に飛び出して来たガオウライナーを撃墜しようと攻撃を繰り返していた。ガオウライナーは飛んで来る攻撃を全て回避し、鳴き声を上げながら口元や後部車両からエネルギー砲やミサイルを発射して暗黒竜を攻撃する。
「それで、あの列車は何だ?」
「時間を喰らうと言われる神の列車、ガオウライナーだ。今、あれにZEROが乗ってる事だろうよ」
「はぁ、ZEROが!? …おいおい、アイツにそんなもん操縦させちゃ駄目でしょうに」
「確かにな。だが、今はそうも言ってられない。一刻も早くアザゼルを倒さなければ、亡霊達の暴走も止められないんだ」
「だが、どうするんだ? さっきから奴にはほとんどダメージを与えられてないんだが―――」
「それならご心配なく」
「「「!!」」」
支配人達の前に、一人の魔法使いが姿を現す。
「クリムゾンさん!?」
「どうも、またお会いしましたね。それよりもあのドデカい竜、打ち破る方法は何とか見つかりそうですよ」
「? どういう事だ」
「えぇ、実はですね―――」
『ミギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 喰い応えがありそうだなぁ……この俺が、欠片も残さず喰らい尽くしてやるよ…!!」
操縦していたガオウは仮面の下で狂気の笑みを浮かべながら、暗黒竜に向けて一斉射撃を繰り返す。暗黒竜も負けじと火炎弾を連続で放つ。
『チィ、小賢シイ真似ヲ…!!』
「クハハハハ、今に喰ってやるよ…『ZERO、聞こえるか?』…あ?」
その時、ZEROの脳内に支配人からの念話が届く。
「何のマネだ。俺はとっととあの竜を喰いたいんだ、邪魔をするな」
『その事なんだが、あの竜は喰っちゃっても構わない。だから手伝って欲しい事がある』
「手伝って欲しい事だぁ? 支配人、テメェどういうつもりだ」
『単純な話だ……もっかい奴の中に乗り込んでくれ!!』
「…何だと?」
「うぉぉぉぉぉ!? ちょ、支配人さん、結構速いですねこの列車…!!」
「振り落とされんなよディア、ここからが正真正銘の正念場だ!!」
ガオウライナーの上では、支配人とディアがこっそりと乗り込んでいた。
「それより支配人さん、さっきのクリムゾンの話って…!!」
「さっきの話が正けりゃ、俺達はもう一回奴の中に乗り込まなきゃならない!! 今度こそ、これで決着をつけるぞ!!」
『図ニ乗ルナ、人間共ガァッ!!!』
暗黒竜が発生させる竜巻をガオウライナーが連続で回避し、そのたびに支配人とディアは振り落とされそうになるも何とかしがみ付き続ける。
「ZERO、マジで頼むぜ!!」
『ふん、横取りしたら容赦せんぞ』
「いや横取り出来ませんからねあんなデカいドラゴン!?」
暗黒竜の攻撃を掻い潜りながら、ガオウライナーは一気に暗黒竜の目の前まで接近してく。しかし簡単に突入させる程、暗黒竜も甘くはない。
『喰ラエェッ!!!』
「ッ…よし、来たな…!!」
暗黒竜が巨大な火炎弾を繰り出し、ガオウライナーを撃墜しようとする。しかしこの攻撃こそ、支配人達の狙い通りだった。
「―――美空さん!!」
「ッ…
『ッ!?』
暗黒竜の目の前で、繰り出した火炎弾が爆発四散する。美空が
「オラオラオラオラオラァッ!!!」
「悪いな、そこ通して貰うぜ!!!」
『ナ…グォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!?』
更に、暗黒竜の目の前に転移したクリムゾンとガルムが同時にエネルギー光線を発射。それによって暗黒竜が怯んだ隙に、ガオウライナーが一直線に突っ込んで行く。
『ブレーキは効きそうにねぇ、掴まってなきゃ振り落とすからな!!』
「!! ディア、掴まれ!!」
「はい!!」
『ナ、何ヲ…オガァッ!?』
ガオウライナーが暗黒竜の口の中へと突っ込み、そのまま再び暗黒竜の体内へと突入していく。暗黒竜の内部では相変わらず亡霊達が漂っており、ガオウライナーの突撃を邪魔しようとする。
『邪魔だ、どけ』
『ミギャァァァァァァァァァァンッ!!』
ガオウライナーの発射するエネルギー砲が亡霊達を退ける。その隙に支配人とディアーリーズは素早くガオウライナーから飛び降り、その真下にある足場へと静かに降り立つ。
「支配人さん、これが…」
「あぁ、間違いない。これが……
支配人とディアーリーズの目の前には…
-ドクン…ドクン…ドクン…-
生物のように鼓動を鳴らす、赤く巨大な魔法石が浮かび上がっていた。
数分前…
『一心同体?』
『えぇ、その通りです』
支配人達は再び暗黒竜の内部に突入する前に、クリムゾンからある話を聞かされていた。
『あのアザゼルとかいう奴は、あの竜と常に一心同体の状態。つまり今のままでは奴は倒せません』
『ならどうすれば…』
『もう一度、奴の内部に飛び込んで下さい』
『『『…へ?』』』
クリムゾンの言葉に、支配人達は思わず間抜けな声が出る。
『冷静に考えて下さい。奴等は常に一心同体、故に片方だけ倒そうとするのは無理な話』
『まぁ、確かに…』
『という事はですよ? 片方ずつで倒せないのであれば、両方纏めて倒してしまえば良い』
『? それってどういう…!』
クリムゾンの言葉に、支配人はすぐ理解出来たようだ。
『外部からでは攻撃は受け付けにくいでしょう。その為、もう一度奴の中に飛び込み、内部から奴等を破壊してしまうのがベストかと思われます』
「確かに、さっきはこんな物なかったもんな」
『アザゼルの考えそうな事だよね』
フィアレスの言葉に苦笑してから、支配人はキングラウザーを構える。
「つまり、暗黒竜にとって心臓とも言えるこの石を破壊してしまえば…」
「暗黒竜を破壊し……亡霊達の暴走も、止められる…!!」
ディアーリーズもレオーネを起動し、目の前の魔法石に狙いを定める。
「行くぞ!!」
「はい!!」
二人は互いに顔を見合わせてから、同時に飛び掛かる。そんな彼等を止めようと亡霊達が襲い掛かるが、もう遅い。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」
そして…
-バキィィィィィィィィィィィィィィン…-
“心臓”として機能していた魔法石は、粉々に破壊されるのだった。
『ヌ、グワァァァァアァァアアアァァァァアアァァァッ!!?』
「「「!?」」」
突如、暗黒竜は宙に浮遊したまま苦しみ始めた。それと同時に、街中で活性化していた亡霊達も一斉に動きが鈍くなる。
「やったのか、アイツ等…!!」
「見ろ、奴の力が一気に弱まってくぜ!!」
「てぇ事はだ、今なら外部からも奴に攻撃が届く!!」
『グヌゥゥゥァァアアアァァァアアアアアアアアッ!!! オノレ、オノレェェェェェェェッ!!?』
「よっと」
「ふっ……変身!!」
≪オリジン・ナウ!≫
「これで、終わらせます!!」
≪イエス・スラッシュストライク! アンダースタン?≫
暗黒竜の腹部から、再びガオウライナーが飛び出す。それと同時に支配人とディアーリーズも飛び出し、ディアーリーズはすかさずウォーロック・オリジンスタイルへと変身し、素早く必殺技を繰り出す体勢に入る。
『力の方は問題ないよ、レイ!』
「うし……ケリをつけるか、アザゼル!!」
支配人とウォーロックは空高く舞い上がり、暗黒竜を見下ろす状態となる。暗黒竜は宙に高く飛んでいる二人を睨み付け、苦し紛れにエネルギーを収束し、強力な黒いオーラによる息吹きを発射する。
『オノレェ……消エ失セロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」
しかし、それでも二人の勢いは止まらない。二人が振り下ろした剣は一気に黒いオーラを斬り裂き、そのまま暗黒竜目掛けて剣を振り下ろし、その身体を容赦なく両断していく。
『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!? マダ、ダ……マダダァァァァァァァァァァァッ!!!』
「二人で駄目なら、全員でならどうだ?」
『ッ!? グァァァァァァァァァァァァッ!!!』
その瞬間、転移したUnknownが闘鬼神を振るい、暗黒竜の顔面を思いきり斬り裂いた。斬られた箇所からは黒い瘴気が溢れ出し、暗黒竜は前足で斬られた箇所を押さえる。
『何故ダ、何故ダ…何故コノ我ガ、人間如キニィィィィィィィィィィィィィッ!!!』
「行くぞFalSig!!!」
「ヒャッホウ、トリガーハッピーで万歳だぁっ!!!」
苦しむ暗黒竜に、awsの居合い斬りやFalSigの無限射撃が次々と炸裂。当然これだけでは終わらない。
≪イエス・キックストライク! アンダースタン?≫
「とっととくたばれや、未練タラタラの鎧野郎がぁっ!!!」
「俺も同感だぜ…『地獄極楽メルトダウン』!!!」
「お見せしましょう…奇跡『神の風』!!!」
『ゴワァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』
クリムゾンが右足にエネルギーを纏って繰り出したストライククリムゾンと、ガルムと早苗の張った弾幕が暗黒竜の顔面を連続で攻撃。暗黒竜は想像以上のダメージに怯む中、その真上からはまた別の攻撃が繰り出されようとしていた。
≪Exceed Charge≫
≪FINAL VENT≫
「行け、真司!!」
「あぁ!!」
ファイズ・ブラスターフォームがファイズブラスターから放った光線は、一直線に飛んで暗黒竜の頭部に命中。それと同時に龍騎サバイブを乗せたドラグランザーは変形してバイクモードとなり、暗黒竜の背中を猛スピードで走りながらそこら中に火炎弾を連射していく。
『ヌグ、ゥ…ァガ、ア……調子ニ乗ルナ人間メ―――』
≪BULLET≫
≪FIRE≫
≪RAPPID≫
≪BURNING SHOT≫
『ヌガァァァァァァァァァァッ!!?』
「させない…!!」
「ありがとう、ユイちゃん!!」
背中を走るドラグランザーを尻尾で薙ぎ払おうとした暗黒竜だったが、その尻尾をギャレン・ジャックフォームが射撃した事で失敗。その間に龍騎サバイブはドラグランザーを運転して暗黒竜の背中を連続で焼き尽くしていく。
「飛べ!! キリヤ、アキヤ!!!」
「応、兄さん!!!」
「これで潰す!!!」
更に別方向から飛来したタカナシ家の三兄弟は、同時に跳び蹴りを放ち暗黒竜の翼を二枚同時に貫く。これにより暗黒竜はバランスを崩し、その直後に龍騎サバイブを乗せたドラグランザーも離脱。その瞬間、別時空からSLらしき形状をした時の列車―――オーライナーが飛び出し、ガオウライナーと共に暗黒竜に向かって一斉射撃を放つ。
「ZERO殿、共に行くぞ!!」
「ふん、俺に命令するな…!!」
『グ、コノォォォォォォォォォォォォォ…!?』
レンゲルの操縦するオーライナーとガオウの操縦するガオウライナーは一斉射撃で暗黒竜を攻撃し、山の方まで吹き飛ばして行く。
『何故ダ!! 何故ダ!! 何故ダ何故ダ何故ダァッ!!! 何故貴様等人間如キガ、コノ我ニ歯向カオウトスルノダァッ!!!』
「貴様が人間を信じないからだ!!」
暗黒竜の目の前に、げんぶの変身したダブルオーライザーが飛来する。
『何ィ…!?』
「トランザム…ライザァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
『グォワァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』
ダブルオーライザーの大技も炸裂し、一気に暗黒竜は地上まで落下。その後も一斉攻撃は続く。
「くたばれクソッタレがぁっ!!!」
「味わいなさい、神をも殺す毒を…!!」
「踊れ、狂乱の
「俺だって忘れて貰っちゃ困る!!」
≪スキャニングチャージ!≫
≪チョーイイネ・フィニッシュストライク! サイコー!≫
「もう一丁行くよ、せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「俺も行くぜ、どぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
≪≪≪MIGHTY≫≫≫
「フレイア、シグマ、俺に合わせろ!!!」
「この儂に命令とは…良いじゃろう、今回は特別に許す!!」
「思いきって行こうぜぇ、ヒャアッハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
miriのロケットランチャーによる砲撃、デルタの振るう短刀から放たれる一撃、朱音と蒼崎が繰り出す無数の斬撃が暗黒竜を襲い、オーズ・タジャドルコンボが繰り出したプロミネンスドロップ、ウィザード・インフィニティードラゴンが繰り出すインフィニティーエンド、更には救援として駆け付けたグレイブ、ラルク、ランスの必殺技も連続で命中。暗黒竜はこれまでに無いダメージを負っていく。
『ナ、何故ダ……何故、死ヌ以外ニ何ノ価値モ無イ、奴等ニ…コノ、我ガ…!!』
「人間を見くびった事、それが貴様の敗因だ」
『!?』
暗黒竜が振り向いた先からは、コーカサスオオカブトを模した黄金の戦士―――仮面ライダーコーカサスが見下ろしていた。
「人間の底力を貴様は甘く見ていた。その時点で、貴様の敗北は決定していたのだよ」
『人間、戯言ヲォ…!!』
「その戯言に、貴様は打ち砕かれる」
≪Maximum Rider Power≫
「ライダーキック…!!」
≪RIDER KICK≫
『コノ…グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??』
コーカサスの繰り出したライダーキックが暗黒竜の腹部から背中を貫き、暗黒竜はこれまで以上に大きな断末魔を上げる。
『オノレ、オノレオノレオノレオノレオノレェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!』
「さぁ、決めてやれ」
コーカサスが告げると共に、暗黒竜の目の前から再び支配人とウォーロックが駆け出す。
『レイ、もう大丈夫なの!?』
「あぁ、これ以上お前に負担はかけられない……変身!!」
≪TURN UP≫
支配人からフィアレスが分離すると同時に、支配人はブレイド・キングフォームに変身。ウォーロックと共に空高く跳び上がる。
≪KICK THUNDER MACH≫
≪イエス・キックストライク! アンダースタン?≫
「終わりだ、アザゼルゥッ!!!」
≪LIGHTNING SONIC≫
『コノォ……下等ナ、人間ナンゾガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』
暗黒竜は最後の悪あがきとして、最大級の威力を誇る火炎弾を発射する。それでもブレイドとウォーロックは止まらず、その火炎弾すらも簡単に打ち破る。そして…
「「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」
『グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??』
二人の繰り出したダブルライダーキックは、暗黒竜の身体に風穴を開けてみせた。二人は地面に着地し、風穴を開けられた暗黒竜は身体中から亡霊達の魂を放出していく。
『ガァァァ、ア、ガァ……我、ハ…決シテ、屈シナイ……“貴様”ナンゾニハ…絶対、ニ―――』
その言葉を最期に、暗黒竜は大爆発を引き起こした。暗黒竜の体内に囚われていた死者の魂は、次々とその中から解放されていく。
『『『『『!? グ、ガァ、アァァァァァ…』』』』』
「!?」
暗黒竜が倒されたからか、ショウやエリカと戦闘中だった怪人達が一斉に消滅していく。それ以外の怪人や亡霊達も次々と街中から消滅していく。
「ショウ…!」
「あぁ……勝ったんだ、僕達が…!」
「耕也、見ろ! 亡霊達が…」
「!! 消えていく…?」
「お化け~消えた~!」
怪人や亡霊達が消滅し、白蓮や蓮は騒動が解決したと大喜びだった。しかしこの時、白蓮達の下に降り立ったげんぶは何故か内心ではそれを嬉しいと思っていなかった。
「くそ、つまんねぇな…………ッ!? 俺、今何を…」
「? どうした耕也」
「あ、いや…何でもない」
とにかく、今は騒動の解決を喜ぶとしよう。そう考えたげんぶは、白蓮や蓮と楽しく抱きしめ合う事にしたのだった。
『「「「「レイ!!」」」」』
「兄さん…!」
「おう、帰って来たぜ」
フィアレス達の下まで、無事に帰って来た支配人。彼はすぐに仲間達の下に駆け寄り、未だ眠っているクレアの様子を窺う。
『…ん、ぁ』
「!? クレア!!」
クレアが目を覚ました。クレアは支配人と視線が合い、嬉しそうに微笑んでみせる。
『おかえり……レイ』
「…あぁ。ただいま、クレア」
「「「「「ウルーッ!!」」」」」
「お兄ちゃーん!」
「うわ、ちょ、多過ぎ…うわっと!?」
ディアラヴァーズと咲良に飛びつかれ、そのまま転倒させられるディアーリーズ。最初は彼女達と勝利を喜び合う彼だったが、今の彼には重要な事がまだ残っていた。
「待った、雲雀さんの件がまだ解決してない!!」
「!! お母さん…」
「ディア、美空ちゃん」
ガルムが軽い調子で指さす。
「お呼びだぜ、お前が助け出した人から」
「え…」
ディアーリーズと美空の前に、一人の女性が姿を見せる。
『久しぶりね、ウルちゃん。そして……美空ちゃん』
女性―――篝雲雀は、二人に対してにこやかに笑ってみせる。その笑顔にはもう、今までのような凶暴性は存在していなかった。
『ありがとう……あなた達のおかげで、私は自分を取り戻す事が出来たわ』
「え、いや、あの、その……えっと…」
『ふふ、相変わらず緊張しやすいわねウルちゃんは……それと』
「あ…」
雲雀と美空が正面から向き合う。
『大きくなったわね、美空ちゃん』
「あ……えっと…」
「ッ…雲雀さん、美空さんは今―――」
『分かってるわ』
「え?」
雲雀がディアーリーズの言葉を遮る。
『どういった事情があれど……篝美空、あなたは間違いなく私の娘よ』
「あ…」
『大丈夫、怖がらないで。思いきり飛び込んでらっしゃい』
「あ、ぁ……ッ…!!」
美空はこの時、雲雀に対して躊躇してしまっていた。自分が娘で良いのか、母親の事を忘れてしまった自分が本当に彼女の娘で良いのか。しかし、雲雀は拒絶しなかった。彼女は両手を広げ、美空が飛び込んで来るのを待っている。
そうと来れば、もう迷ってはいられなかった。
「―――お母さぁんっ!!!」
『美空ちゃん!!!』
美空は母親の懐に飛び込み、雲雀は飛び込んで来た娘をしっかり受け止めた。美空は彼女の懐で涙を流し、雲雀もそんな彼女を抱きしめながら涙を流すのだった。
「美空さん……雲雀さん…」
「…やっぱ、親子って良いもんだねぇ」
「はは、確かに」
「~~~~~~…ッ!!」
「…おいおい真司、まさか泣いてんのか?」
「ッ…だ、だって、凄く良い親子愛じゃないかぁ……これが泣かずにいられるかっての…!!」
「はいはい、分かった分かった。ハンカチくらいなら貸してやるよ」
思わず貰い泣きした真司にハンカチを貸すokaka、篝親子の様子を見て嬉しそうに笑うディアーリーズやその仲間達。一同はしばらくの間、楽しく笑い合い続けるのだった。
「あ、帰って来た!」
「兄さん!」
「!」
一方、街の外に避難したユウナ達もタカナシ三兄弟と合流していた。ロキが戻って来たと知った途端、刀奈は誰よりも真っ先にロキに抱き付いてみせる。
「お、おいおい。いきなりされたら苦しいって」
「ッ……だって、だってぇ…!」
「全く……ただいま、皆」
「おかりなさい、キリヤ兄さん」
「ソラ兄さんと、アキヤ兄さんも」
「「「キリヤさーん!」」」
「…やれやれ」
ユウナとルイ、ユウナの教え子達も駆け寄り、ロキ達の帰還を喜び合う。そんな彼等の様子を、スノーズは離れた位置で静かに見守っているのだった。
ようやく、幽霊騒動にも終幕が下ろされたのだった。
「チッ……ま、無いよりマシか…」
ちなみに暗黒竜の残骸は、ZEROが忘れず吸収し尽くしたという。
Tweet |
|
|
4
|
0
|
追加するフォルダを選択
幽霊騒動その23