No.682600

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第52話

葉月さん

初めての人も、お久しぶりな人もこんにちは、葉月です。

『なんだ、生きてたのかよ』っと言われそうですが、しぶとく生きています。
それにしても、前の投稿から約4か月も経っているんですね。
その間、愛紗に睨まれながちょこちょこと書いてやっと投稿できる量になりました!

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2014-04-29 21:38:04 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:7754   閲覧ユーザー数:5707

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第52話

 

 

 

 

【旧知の仲。その名は、厳顔】

 

 

 

《桔梗視点》

 

「「うぉぉおおおおおっ!!」」

 

戦場(いくさば)の至る所で、怒号が飛び交う中、ワシは得物を担ぎ歩いていた。

 

(けんか)が始まり、半刻は過ぎただろうか、徐々にではあったがワシの軍は押され始めていた。

 

一点突破のつもりで一直線に進軍してきたが、徐々に陣形を崩され横に広がってしまっていた。

 

「中々良い軍師がいるようだのう。劉備軍は人材が豊富と聞くからな」

 

口元をにやりと吊り上げて笑いながら呟く。

 

くっくっく、不利な状況での(けんか)ほど、燃えるものはないからのう。

 

「うぉおおお!」

 

「そんな攻撃では、ワシは倒せんぞ!ふんっ!」

 

(ドゴッ!)

 

「がはっ!」

 

太刀を振り上げ、襲い掛かってくる劉備兵の腹に一発拳を放つ。

 

練度はそれほど悪くはなかったが、得物を使うまでもない為、拳で相手をする。

 

「こんな雑魚では話にならんわ!誰か、ワシを楽しませてくれる猛者はおらんの!」

 

高々と声を上げ、相手を探す。

 

「では、私がお相手を仕ろう。厳顔」

 

すると、凛とした声とともに兵の間を割り一人の武将が姿を現した。

 

「お主は……」

 

艶やかな黒髪に身の丈より長い偃月刀。

 

「関羽か」

 

「っ!ほう、私の名を知っていようとは」

 

「はっはっは。洛陽から離れていても噂好きな連中が大勢やって来るからな。自然と耳に入ってくるわ」

 

「そうか……だが、あえて名乗らせてもらおう。我が名は、関羽!我らが主、一の家臣にして矛なり!そして、これ以上進ませはせんぞ、頑厳!」

 

高々と名乗りを上げるとともに得物を構える関羽。

 

「良い覇気だ。久々に楽しい(けんか)ができそうだのう!」

 

得物を構える関羽にワシも同じように得物を構えた。

 

「良いか!手出しは無用ぞ!手出ししようものなら、味方でも容赦はせぬぞ!」

 

周りにいる兵たちに告げ、意識を関羽に集中する。

 

「……その得物、弓矢か?」

 

「まあ、似たような物だ」

 

「そうか……」

 

「今、当たらなければどうということはないと思ったな」

 

「ああ、所詮は飛び道具。多数ならまだしも、一張だけなら怖くもない」

 

「ならば、その慢心。この一撃を受けてから後悔するがいい!」

 

(ドンッ!)

 

ワシは、言葉と同時に関羽に向けて一撃を放った。

 

「っ!?」

 

ドゴーーンッ!!

 

一直線に飛んで行った弾を、関羽は紙一重のところで横に避けられ、大きな音を立てて地面に穴をあけた。

 

「ほう、今の攻撃を紙一重で回避したか。噂通りの手練れのようだの」

 

「な、何だ今の攻撃は!?」

 

「今のは鉄の弾よ」

 

驚く関羽に攻撃の正体を明かす。

 

「さあ、(けんか)は始まったばかりだ。楽しませてもらうぞ!」

 

(ドンッドンッ!)

 

ワシは、関羽目掛けて攻撃を再開した。

 

……今頃、焔耶も暴れている頃かのぅ。いや、今は焔耶のことは後回しだな。

 

(けんか)のさ中、ふと、焔耶のことを思ったが、隙を見せれる相手ではない為、すぐに戦いに集中した。

 

こんな楽しい(けんか)は久々だからのう。

 

「楽しませてもらうぞ。関羽よ!」

 

≪焔耶視点≫

 

ドゴーンッ!

 

「「うわーーーっ!」」

 

ドゴーンッ!

 

「「ひぃーーーーーっ!」」

 

荒野に爆音と共に劉備兵たちの悲鳴が響き渡る。

 

「ほらほら、どうした!その程度なのか、劉備軍の兵どもは!」

 

ふん、対したことないな。桔梗様の手を煩わせるほどでもない。

 

「うぉおおおおっ!」

 

「ふん。挑んで来たことに誉めてやろう。だが、そんな攻撃で私が倒されるわけがないだろ!うぉおおりゃ!」

 

ドゴーンッ!

 

「ぎゃーーーっ!」

 

「まったく、手応えの無い奴らだ。この調子なら北郷とか言う奴も噂ほどではないな」

 

噂など簡単に尾ひれ、背びれがつくものだ。どうせ一万人もの黄巾党を一瞬で倒したとかも尾ひれがついただけに決まっている。

 

そんな噂ごときにいちいち構っていられるか。

 

「誰か、私を打倒そうと言う奴は居ないのかっ!」

 

そう叫んだその時だった。

 

「「ここにいるぞーーーーっ!!(こ、ここに居ますっ!)」」

 

「っ!誰だっ!」

 

私の挑発に乗り、名乗りを上げる声が聞こえあたりを見回すと、名乗りを上げたとみられる三人が立っていた。

 

「誰だ!っと聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け!」

 

「大陸の混乱を防ぐため」

 

「一刀君の貞操、じゃなかった、大陸の平和を守るため!」

 

「愛と真実の正義を貫く」

 

「可愛くて魅力的な女の子」

 

「馬岱!」

 

「太史慈!」

 

「ふぇ!え、えっとえと……姜維、です」

 

「大地を駆ける、北郷軍の三人には」

 

「日輪照らす白い明日が待ってるよ!」

 

「にゃ、にゃ~んてにゃ……ふぇ~、は、恥ずかしいです」

 

「……」

 

口上?を述べる三人を見て私はただただ、呆然と立ち尽くしていた。

 

「あれ?反応がないね」

 

「聞こえなかったんじゃない?」

 

「なら、もう一回やろうか!」

 

「ふぇ!?ま、また、言うんですか!?」

 

呆然と立ち尽くしていると、三人の武将らしき(まあ、一人は武将には見えないのだが)人物は、私が反応を見せなかったことで何やら相談をしているようだった。

 

「よし、それじゃ、もう一度行くよ……誰だ!っと、き」

 

「いや、ちゃんと聞こえていた」

 

「なーんだ。だったら少しは、反応を見せてよね。面白くなーい」

 

槍を持った女……確か、馬岱とか言ったか。馬岱は口をとがらせて文句を言ってきた。

 

「まあまあ、意表を突くって意味では十分効果があったみたいだし、よしってことにしておこうよ。それに、私は、雪華ちゃんが恥ずかしそうに台詞を言うところが見れて大満足だよ~♪」

 

太史慈と名乗った女は、遠慮しがちに名乗った姜維に抱き着き、頬ずりをし始めた。

 

「ふぇ!?ゆ、優未さん!みんなが見ているところで抱き着かないでくださ~い」

 

太史慈に抱き着かれ、恥ずかしそう抗議をする姜維。

 

「……で、お前ら、なんなんだ」

 

呆れながら、突如現れた三人に話しかける。

 

「っ!お前らなんなんだ、と、言われたら!」

 

「それはもういい!」

 

「ちぇー。乗りが悪いな~」

 

また、口上を始めようとしたので無理矢理止めさせると、馬岱がまた口をとがらせて文句を言ってきた。

 

「それで、誰が私の相手をしてくれるんだ?見た感じ、お前が一番強そうに見えるが」

 

姜維に抱き着いていた太史慈に話しかけ得物を構える。

 

「私?のんのん、私は、雪華ちゃんの保護者!雪華ちゃんに襲い掛かる悪漢から守るために居るだけだよ」

 

「ふぇ。わ、私もちゃんと戦えますよ、優未さん」

 

「だめだめ~。こんなスベスベでプニプニな肌に傷がついたら大変でしょ?」

 

「ふ、ふぇ~」

 

頬ずりしながら答える太史慈に姜維は、困ったような声を上げていた。

 

とりあえず、戦う気のない奴は放っておこう。

 

「それじゃ、お前が相手か?」

 

「そう言うことになるのかな?」

 

「ふん。お前みたいな弱い奴が、私に勝てるとでも思っているのか?」

 

「むっ!誰が弱いって言うのよ!少なくとも、あんたみたいな脳筋馬鹿よりはましだよ」

 

(びきっ)

 

「っ!だ、誰が脳筋馬鹿だって!」

 

「あんたよあんた。金棒振り回して突進してくるなんて脳筋馬鹿のすることじゃん」

 

(びきびきっ)

 

「~~~っ!ワタシの一撃を受けてから戯言を言うんだな!はぁああっ!」

 

どごーーーんっ!

 

馬岱目掛けて鈍砕骨を振り下ろす。

 

「ふん。どうだ。これでもまだ、減らず口が叩けるか?」

 

「ふ~ん。対したことないね」

 

「なっ!」

 

土煙が収まり、そこに現れたのは、無傷の馬岱だった。

 

「あは!もしかして、今の一撃で倒せると思ったの?そんなわけないじゃん。これだから脳筋馬鹿は」

 

「~~~~っ!また言ったな貴様!もう、手加減はなしだ!」

 

「わわわっ!なにムキになっちゃってるの?」

 

「ふふん!今更、命乞いしても遅いぞ!そりゃーーーっ!」

 

どごーーーんっ!

 

「ひょい♪」

 

「んなーーーっ!?」

 

「楽勝、楽勝♪」

 

馬岱は、ワタシの攻撃をいとも簡単に避けてしまった。

 

「やっぱ、脳筋だから攻撃も単調だよね~。そう思うよね、雪華」

 

「ふぇ!?あ、そ、その……」

 

「ほらほら、敵なんだから遠慮しないで言っちゃいなよ、雪華」

 

「……え、えっと……攻撃が単調で読みやすいと思います……あ!で、でも、私は避けられないかもしれませんけど」

 

「もう、別に敵なんだからずばっと言いきっちゃってもいいのに。ホント、雪華はお人好しだな~」

 

「何言ってるのよ。そこが雪華ちゃんの良いところじゃないの!ね~、しぇ・ん・かちゃん♪」

 

「ふぇ~~~~!?む、胸を揉まないでくださいぃ~~~!?」

 

「……ワタシを無視して、勝手に話をするなーーーっ!」

 

ワタシを無視して話をする三人に怒りの声を上げた。

 

「あ、まだ居たんだ」

 

「こっ!~~~~っ!」

 

(ぶちっ!)

 

「もう、ゆるさーーーんっ!」

 

「あ、キレた」

 

「せい!」

 

「ひょい♪」

 

どごーんっ!

 

「はぁっ!」

 

「ひょい♪」

 

どごーんっ!

 

「どりゃぁあっ!」

 

「あらよっと♪」

 

どごーんっ!

 

「あはは、全然当たんないね♪」

 

「~~~~~~っ!」

 

ワタシは何度も鈍砕骨を振り下ろすが、馬岱にはかすりもしなかった。

 

「……ねえ、本当に武将なの?」

 

「当たり前だ!」

 

首を傾げ問いかけてくる馬岱に、考えるまでもなく即答をする。

 

「それにしては、一回も蒲公英に当たってないよね」

 

「ぐっ!」

 

「……」

 

「……」

 

「……ぷっ」

 

「~~~~~っ!!」

 

しばらくの沈黙の後、馬岱は口元を手で押さえ笑った。

 

「こ、このぉおおおおっ!」

 

「わあっ!襲ってきた!」

 

両手を上げて逃げる馬岱に、鈍砕骨を振り上げて追いかける。

 

「待てっ!」

 

「待てと言われて、待つ馬鹿は居ないでしょ。ホント、脳筋なんだから~」

 

「貴様~っ!また脳筋と言ったな!ええい!正々堂々と勝負しろ!」

 

「やっだよ~♪脳筋武将とは戦いたくないもんね~」

 

こ、このぉ~、ワタシを馬鹿にして!

 

ワタシは、逃げ回る馬岱を追いかけまわした。

 

……

 

…………

 

………………

 

「はぁ、はぁ、もう逃げないのか」

 

「し、しつこいな~、これだから脳筋は、嫌なんだよね」

 

散々逃げ回った馬岱だったが、観念したのか、大岩の前で足を止めた振り返った。

 

「はぁ、もういいよ。戦えばいいんでしょ、戦えば」

 

「ふん、最初からそう言って居ればっ――」

 

ごんっ!

 

「うっ……」

 

一歩踏み出した途端、宙に浮かぶ感覚が襲い、その後、頭に強い衝撃を受け、ワタシは意識を手放した。

 

≪蒲公英視点≫

 

「ふん、最初からそう言って居れば――」

 

逃げるのをあきらめたと思ったのか脳筋、じゃなかった。魏延が一歩前に踏み出した時、蒲公英は、にやりと笑った。

 

一歩踏み出した魏延は、一瞬にして蒲公英の前から姿を消した。

 

なぜ姿が消えたのか、それは、魏延が地面を踏んだ場所に蒲公英が落とし穴を仕掛けたからなんだよね。

 

つまり、魏延は、蒲公英が仕掛けた落とし穴にまんまと引っかかったってこと。

 

「うっわ~……ものの見事に引っかかったわね」

 

「だ、大丈夫でしょうか。魏延さんは」

 

遠目で見ていた雪華と優未は、魏延のことを心配したり、呆れたりっしながら近づいてきた。

 

「それにしても、静かね」

 

「……そう言えば静かだね。あれだけ騒いでたのに」

 

「もしかして、気絶してるんじゃないの?」

 

「まっさか~。そんなことあるわけ……うわ、ホントに気絶してる」

 

「うきゅ~~~……」

 

優未の言ったことを否定しながら、穴の中を覗くと本当に気絶してた。

 

「どうしよっか」

 

「ん~、生き埋め?」

 

「ふぇ!?だ、だめですよ~。縄で縛って、ご主人様の所へ連れて行きましょう」

 

どうするか雪華と優未に尋ねると、優未の提案?に雪華は慌ててご主人様のところへ連れて行こうと提案した。

 

にしても、雪華は、真面目にとらえ過ぎだよね。明らかに冗談で言ってるのに。まあ、そこが雪華の良いところでもあるんだけどさ。

 

「っと。とりあえず勝鬨を上げないとね……西涼の馬岱!魏延を打ち取ったり~~!」

 

「「うぉおおおおおおおおっ!!」」

 

蒲公英は、高らかに勝鬨を上げると、周りに居た兵たちも声を上げた。

 

「う~~ん!やっぱり、勝鬨を上げるのは気持ちが良いよね!」

 

意気揚々と勝鬨を上げて、雪華たちに向き直る。

 

「ホント、気持ちが良さそうですね。私は、一度もありませんが」

 

「そうなの?」

 

思わぬ雪華の告白に思わず聞き返した。

 

「はい。元々、武官より文官として朱里先生や雛里先生の補佐をしていましたから」

 

「ふ~ん。でも、武官としては、私くらいの力はあるんだよね?」

 

「そ、そうでしょうか?私は、蒲公英さんの方がお強いと思いますが」

 

「え~、そうかな?優未は、どう思う?」

 

否定する雪華に蒲公英は、優未の意見を聞いてみることにした。

 

「そうね~……まあ、今までの鍛錬とかを見てきたわけじゃないけど、見た感じ力量なら蒲公英と同じくらいあると思うよ?まあ、実戦経験で蒲公英に軍配があがるとは思うけどね」

 

いつもは、雪華贔屓なのにこと、武に関しては真面目に答える優未に普段もそうしていれば良いのに、と思った。

 

「蒲公英、今、失礼なこと考えたでしょ」

 

「そ、そんなことないよ~」

 

図星を突かれて、思わず視線を外した。

 

「はぁ。これでも、一部隊を預かる呉の将なんだからね。力量くらい公平にみるわよ。いくら、雪華ちゃんが、可愛くて、ずーーっと抱きしめていたいって思ってもね」

 

最後の一言がなければ、良い将なんだろうけど。まあ、ああいう性格だから、話しやすいんだけどさ。

 

「武に関してだけは、まともな優未が言うんだから間違いないよ、雪華」

 

「ちょっとぉ、誰が、武に関してだけは、なのよ。失礼しちゃうなぁ~。ねえ、雪華?」

 

「あは、あはは……」

 

同意を求める優未に、雪華は、苦笑いを浮かべてた。

 

「ひどい!雪華ちゃんもそう思ってたんだね!よよよ、もう、この世に生きている意味がなくなっちゃったよ……死のう」

 

衝撃を受けた優未は、よろよろと地面に倒れこみ肩を落とし、ウソ泣きをして見せていた。

 

いや、そんな演技で騙せる訳が……

 

「ふぇええ!?だ、だめですよ。優未さん!死ぬなんて!」

 

騙されちゃったよ、この娘!いやいや、どう見てもウソ泣きでしょ!はぁ~、雪華は、良い意味で優しいんだから。でも、騙され過ぎでしょ、本当に軍師として大丈夫なの?

 

蒲公英、雪華のこれからのことがちょっと心配になってきたよ。

 

「だって、雪華ちゃんに嫌われたら生きていけないよ」

 

「別に嫌いになんてなっていませんから」

 

「……本当に?」

 

「はい。だから、死ぬなんて言わないでください」

 

雪華は、微笑みながら地面に倒れこむ優未に手を差し伸べた。

 

あ~、きっとこれ、抱き着かれるんだろうな~。

 

「雪華ちゃん……愛してるぅ~~~~~♪」

 

「ふぇぇえええ!?ゆ、優未さん!?」

 

優未は、雪華に抱き着き頬をすりすりと頬ずりし始めた。

 

「……ちょいや!」

 

蒲公英は、優未の脇腹を軽く突っついた。

 

「はぅ!な、何するのかな?せっかく、雪華ちゃん成分を補充しているところなのに」

 

優未は、驚きの声を出し、雪華から飛び退き、蒲公英に抗議してきた。

 

「抱き着くの禁止されてたよね。ご主人様に言いつけちゃおうかな~」

 

「うぐっ!た、蒲公英」

 

「蒲公英?」

 

「蒲公英、さん、秘密にしててくれないかな~?」

 

「どうしよっかな~?でも、黙ってても蒲公英に利があるわけじゃないしな~。逆にご主人様に言いつけてそれを見ている方が楽しいんだよね」

 

「う~~……それじゃ、街についたら屋台で……」

 

「さ~ってと、早くご主人様のところに戻らないと~♪」

 

「~~~っ!わかった、わかりました!街に入ったら美味しいお店で奢ってあげるから!」

 

「よし、決まりだね!雪華も一緒だからね」

 

「ふぇ!?わ、私は別に……」

 

「ダメだって、迷惑かけられたんだから、雪華にそれくらい要求しても良い立場なんだよ!そうだよね、優未」

 

「はい……お金、足りるかな……いや、雪華ちゃんの為なら血反吐してでも……」

 

なんか危ないことをぶつぶつと言ってる気がするけど、聞かなかったことにしよう。

 

「でも、そっか~。やっぱり、雪華は、蒲公英と同じくらいの力量あるんだ。……そうだ!今度一緒に鍛錬しようよ!いつも翠姉様とか、菫叔母様とか、愛紗とかしか鍛錬してないからさ。たまには、違う人と鍛錬したいしさ。どうかな?」

 

雪華に一緒に鍛錬をやろうって誘ってみた。

 

「で、本音は?」

 

「強い人たちと鍛錬して、負け続けてるから、蒲公英と同じ力量の人と鍛錬がしたい!あわよくば、勝って優越感に浸りたい!……あっ。ちょ、優未!?」

 

耳元からのささやきで、思わず本音を言っちゃった。

 

「やられっぱなしじゃ、癪だからね♪」

 

優未は、にやりと笑い蒲公英に仕返しをしてきた。

 

「あは、あはははは……えっと、私でよければ、お相手しますよ、蒲公英さん」

 

「ホント!?やったー!約束だよ!」

 

「はい」

 

雪華は、苦笑いを浮かべながらも一緒に鍛錬してくれるって約束してくれた。うぅ~、持つべきものは友達だよね!

 

「さてさて、良い好敵手も見つかったみたいだし、早いところ穴に落ちて気を失っている魏延を縄で縛りあげて一刀君の所に連れて戻りますか」

 

「はい」

 

「は~い!それじゃ、さくっと縛っちゃおうかな♪」

 

「あ!ねえねえ、一つ試してみたいことがあるんだけど、良いかな?」

 

「?別に良いけど、逃げられない?」

 

何かを思いついたのか優未はすごい良い(悪い)笑顔をして蒲公英に提案してきた。

 

「だいじょ~ぶ!もがけばもがくほど、縛り上げていくっていう、万能な縛り方だから!」

 

「なにそれ、面白そう!蒲公英にもできる!?」

 

「もっちろん!覚えちゃえば結構簡単なんだよ。教えてあげるからやってみる?」

 

「やるーー!雪華はどうする?」

 

「そうですね。少し興味があります。もし有効なら皆さんにもお教えしたいですし」

 

「えっ!?、あ~……うん。雪華は、止めておいた方がいいかな~って、私は思うよ」

 

「?なぜですか?」

 

「そ、それは~……まあ、見てもらった方が早いかな」

 

雪華は、首を傾げて優未に理由を聞くと、しばらく悩んで見た方が早いと判断したみたい。

 

まあ、なんで優未が悩んだのかは、さっきの良い(悪い)笑顔でなんとなく分かった。

 

「それじゃ、まずは、魏延を穴から引っ張り出そうかな。二人とも手伝って」

 

「了解!」

 

「わかりました」

 

「それじゃ、蒲公英。私が言ったように縛って」

 

「は~い」

 

気絶してる魏延を三人で引き上げ、蒲公英は縄を手に取った。

 

「それじゃまずは、縄を二つ折りにしてその中心を首に掛けて」

 

「こう?」

 

「そうそう、それじゃ次は……」

 

優未の説明通りに縄を掛けていく。

 

「次は、こう回して」

 

「えい」

 

「ふえ!?」

 

「次にこっちの縄の間を通して」

 

「んっと、こうか」

 

「ふぇえ!?」

 

「そして、下を通して」

 

「下をっと」

 

「~~~~~~~っ!?!?」

 

優未に教えてもらいながら縄を縛ってると、蒲公英の横で見ていた雪華は、縛るたびに声を上げ、最後には、声にならない声を上げ、手で顔を隠しちゃった。

 

まあ、仕方ないよね、これじゃ……

 

「ほい、これで完成だよ」

 

「ふぅ……これは、中々」

 

「でしょ?それじゃ、さっそく一刀君の所にお披露目、もとい、戻ろうか!」

 

「は~い!」

 

「ふぁ~~~い」

 

雪華は、顔を赤くし、のぼせた見たいにふらふらとしながら返事をした。

 

「やっぱり、雪華ちゃんには刺激が強すぎたかな」

 

優未は、そんな事を言いながらも、雪華を見てどこか満足そうにしてた。

 

「……やっぱり、ご主人様に言っちゃおうかな?」

 

「それだけは止めて!?」

 

蒲公英が呟いた言葉に優未は悲鳴にも似た叫びを上げてきた。

 

≪愛紗視点≫

 

「「うぉおおおおおおおおっ!!」」

 

遠くで、勝鬨の声が聞こえてきた。

 

「どうやら、あちらは終わったみたいだな」

 

「そのようだのう」

 

互いに振り向きもせずに得物を構え対峙している。

 

「どちらが勝ったのかのう。どう思う、関羽よ」

 

「どうであろうな。だが、一言言わせてもらえば、そう簡単に負ける腑抜けた仲間は居ないとだけ言っておこう」

 

「はっ!言いよるわ。ならワシも同じことを言わせてもらうとしようかの。魏延は、そう簡単に負ける腑抜けた鍛え方はしておらんぞ」

 

ニヤリと笑い言い放つ、厳顔。

 

厳顔、紫苑の旧友だけあり、中々の武の持ち主だ。やはり、紫苑が言っていた通り、仲間になってくれれば心強いことだろう。

 

だが、仲間になって貰うには、まずはこの戦いに勝たなければならない。

 

それに、この戦いに勝てぬようでは、桃香様やご主人様が掲げる願いすらも叶わぬ。

 

「……負ける訳にはいかないな」

 

「ん?何か言ったか、関羽よ」

 

「いや。こちらの話だ。しかし、そろそろ、こちらも決着を着けねばならんな」

 

「確かにの。こんなに楽しい(けんか)は、久々で時を忘れてしまった。名残惜しいが仕舞いにするか」

 

言い終わるや否や、厳顔から立ち込める殺気が強くなった。

 

まだこれほどまでの殺気を……だが、私とて負ける訳にはいかないのだ!

 

私も負けじと、殺気を強める。

 

「ほう、まだそれほどの殺気をだせるか……はっはっは、だが関羽よ。その殺気もワシに近づけなければ意味がないぞ?」

 

「くっ!」

 

確かに厳顔の言う通りだ。私は、あの攻撃のせいで近づくことが出来ないでいた。

 

近づけたとしても、厳顔は、接近戦も得意としているのか、得物を棍棒のように巧みに使い、私に攻撃を仕掛けてくる。

 

一体どうすれば……

 

「っ!そう言えば……」

 

ふと、私は、あることを思い出し。

 

試してみるか……だが、我が天龍偃月刀が耐えられるであろうか……

 

ご主人様が私に託してくださった天龍偃月刀に目を向ける。

 

「……っ!」

 

一瞬だが、天龍偃月刀の龍の赤い目がさらに赤く光ったように見えた。

 

その輝きは、私がやろうとしていることに『大丈夫だ』と語りかけてきているような気がした。

 

……わかった。共に厳願を打倒すぞ、天龍偃月刀!

 

私は、力強く天龍偃月刀を握りしめた。

 

「……っ!こい、厳願!」

 

「その心意気やよし!では行くぞ、関羽!」

 

(ドンッ!ドンッ!ドンッ!)

 

厳願が打ってくる弾を左右に移動して避ける。

 

「どうした!避けてばかりでは、ワシには勝てんぞ!」

 

(ドンッ!ドンッ!ドンッ!)

 

「……」

 

「だんまりか、それも良かろう、まだまだ行くぞ!せいや!」

 

(ドンッ!ドンッ!ドンッ!)

 

そんなことは分かっている。私は、待っているのだ。好機を……

 

次々に襲ってくる弾を避ける。

 

(ドンッ!ドンッ!)

 

っ!今だ!

 

(ザザァァッ!)

 

私は、向かってくる弾の軌道から少し外れたところで立ち止まり厳願を正面に見据えた。

 

(ギュッ)

 

「はぁぁぁあああああっ!!」

 

天龍偃月刀の柄の端側を両手で力強く握りしめ、片足を上げ、向かって来る弾が天龍偃月刀に当たる少し前に上げた足を地面に着き振り抜いた。

 

(ガキッ!)

 

厳願が撃った弾の一つが天龍偃月刀の柄に当たると鈍い音がした。

 

「くっ!」

 

手に伝わってくる衝撃に顔を歪める。

 

くっ!なんて衝撃だ。弾かれてしまいそうだ!だが、失敗は許されない!

 

「~~~~~~っ!ぬぁぁあああああああっ!!」

 

竹のように撓る天龍偃月刀を私は、力の限り振り抜き、弾を弾き返した。

 

「なっ!?」

 

(ガンッ!)

 

弾き、いや。打ち返した弾は、厳願へとまっすぐに飛んでいった。

 

打ち返してきたことに驚き、避ける好機を逃してしまった厳願は、自らの得物で自ら放った弾を防いだ。

 

今だっ!

 

「はぁああああっ!」

 

私は、この好機を使い、一気に厳願との間合いを詰めた。

 

「しまっ!?」

 

(ガキンッ!)

 

厳願が得物を構えようとしたが、私はそれよりも早く、得物を払い除け、首級に刃を立てた。

 

「……」

 

「……」

 

「……参った。降参だ」

 

暫しの沈黙の後、厳願は負けを認めた。

 

「ワシはどうなっても良い。だが、兵たちは無事に返してやってくれ。あ奴らには家族や大事な人が居るのだ」

 

「もとより、これ以上の無益な戦いはするつもりはない。それに、私は、あなたを我が主たちの元へお連れする為にここへ来たのだ」

 

「では、なぜ戦った?最初から、そう言えば良いではないか」

 

「一度、戦い、打ち負かした方が厳願は話し易いと助言を貰ったのでな」

 

「……紫苑の奴め、余計な事を」

 

まだ誰とも伝えて居なかったが、発案者が紫苑だと直ぐに分かり、厳願は顔をしかめて、一言つぶやいた。

 

「まあ良い。ワシは、負けたのだからの。敗者は、勝者の言葉に素直に従おうではないか」

 

「では、厳願よ、こちらへ――」

 

「ちょいと待て、関羽よ」

 

ご主人様たちが待つ本陣へお連れしようと歩き出そうとした時、厳願殿に呼び止められた。

 

「なんですか?まさか、やはり先ほどの戦いは不服だったと?」

 

「違うわい。お前さんが勝ったのだから、しっかりと勝鬨をあげろっと、そう言いたかっただけだ。よもや、忘れていたわけではあるまい?」

 

「……」

 

厳願の指摘に私は、動きを止めた。

 

言えぬ、ご主人様に勝ったことを早くお伝えたしたいが為に、忘れていたなどと……

 

「なんだ。まさか、本当に忘れておったのか?」

 

「う、うるさい!あ、あげれば良いのだろ!?あげてやるとも!……劉備が一の家臣、関羽!厳願を討取ったりーーーーっ!!」

 

「「わぁぁぁあああああああっ!!」」

 

図星を突かれ、半ば自棄になりながら勝鬨を上げた。

 

「これで良いのであろう!さあ、我が主であるご主人様と、桃香様の元へ向かうぞ」

 

「くっくっく……あい分かった。では、参ろうか、関羽よ」

 

厳願は、笑いを堪えながらも、頷き、私の後を付いて、ご主人様たちが待つ本陣へと付いてきた。

 

≪桔梗視点≫

 

「……何をしておるんだ、焔耶よ」

 

「き、桔梗様!?」

 

関羽に連れられて本陣へ来たワシの目に飛び込んできたのは、焔耶の縛り上げられた姿だった。

 

いや、それにしても、なんという縛り方……

 

その縛られ方は、もがけばもがくほど、きつく締め上げられる縛られ方になっているようだった。主に、乳房など、だが。

 

「ち、違いますよ、桔梗様!決して私は負けたわけではありません!」

 

「ほう?ではなぜ、縛り上げられておるのだ?」

 

焔耶の言葉に声の音を少し下げた。

 

「そ、それは、こいつが!私を罠にはめて」

 

「馬鹿もんがっ!」

 

(ごんっ!)

 

「痛っ!?」

 

焔耶の言い訳にワシは、一喝と共に頭に拳骨を喰らわした。

 

「あれほど、戦では、油断をするなといったであろう!」

 

「で、ですが、あんなところに落とし穴なんて……」

 

「まだ言うか!」

 

(ごんっ!)

 

呟くように言い訳をする焔耶に再度、頭に拳骨をした。

 

「戦に正道も卑怯もあるか!敵の罠にはまったのは、己の未熟さ故だ。それを他人のせいにするなど、恥を知れい!」

 

「うぅ……」

 

縛りあげられた状態で頭を落とす焔耶。

 

まったく……これは、もう少し根性を鍛えなおさなければいかんかのう。

 

そんなことを考えていたその時だった。

 

「まあまあ、それくらいにしておいてあげて」

 

「むっ?」

 

焔耶を庇う声に、ワシは顔を上げて、声のした焔耶の後方に目を向けた。

 

「「「ご主人様っ!」」」

 

関羽を含めた、数人が嬉しそうに声を弾ませて声の主の名を呼んでいた。

 

そこには、微笑みながらこちらに歩いてくる、白く輝いた服を着た男と、同じように微笑み、物腰が柔らかそうな桃色の髪の女がいた。

 

あやつらが、噂の二柱の主、天の御遣い、北郷一刀と、劉玄徳か……

 

「初めまして、厳願さん。俺は――」

 

「知っておる。この世に太平をもたらすと言われている、天の御遣い、北郷一刀殿であろう?そして、困った者に愛の手を差し出す聖人、劉備殿」

 

「えぇぇっ!?わ、私、そんな風に言われてるんですか!?は、恥ずかしい……」

 

「何言ってるんだ。桃香らしくていいじゃないか。それに、本当のことだしさ」

 

「あぅ……ご主人様にそう言われると、もっと恥ずかしくなっちゃうよ……でも、ありがとう、ご主人様♪」

 

なんとも、戦場(いくさば)なのに、和やかな雰囲気になった。

 

「はぁ、ご主人様、桃香様。いちゃつくのは良いですが、せめて客人の前では謹んでください」

 

「っと、厳願殿を討取り、ご主人様に褒めて貰おうと待ち構えていたが、桃香様とイチャつきだし、ヤキモチを焼いた愛紗がおっしゃっているぞ、主よ」

 

「なっ!せ、星!わ、私は別に、ヤキモチなど焼いていないぞ!」

 

「はっはっは!何を言う、羨ましそうに見ていたではないか」

 

「~~~~っ!!」

 

「まあまあ、愛紗もご苦労様。怪我しなかったかい?」

 

「は、はい!もちろんです!この体、魂は、全てご主人様のものです。誰一人、ご主人様以外の者に傷を着けさせたりはしません!」

 

「愛紗よ。お主も、客人の前で言う台詞ではないと思うが?」

 

「っ!?」

 

「「「あははははははっ!」」」

 

周りに居た者が一斉に笑い出す。

 

なんとも、異色な連中たちじゃのう。だが、嫌いではない。

 

「っと、ごめん。話がそれちゃったね」

 

北郷一刀は、思い出したようにワシに向き直ると、周りに居た者たちも一斉にワシらを見てきた。

 

「……で、これを縛ったのは、誰?」

 

北郷一刀は、焔耶を見ながら、誰が縛ったのかを聞いてきた。

 

「は~い!たんぽぽで~す!優未に教えてもらいながら、やってみた!どうどう!すごいでしょ!」

 

「うん、なんて言うか……解いてあげて」

 

北郷一刀は、苦笑いを浮かべながら、焔耶の縄を解いてあげろと言ってきた。

 

「えーっ!せっかく上手く、縛れてるのにもったいない!それに、一刀君は、こういうの好きでしょ?」

 

「ご主人様……」

 

「ふぇ……そ、そうなんですか?」

 

「あわわっ!?」

 

「はわわっ!?」

 

一斉に疑いの目が北郷一刀へと注がれる。

 

「そ、そんなわけないだろ!?とにかく早く解いてあげて!」

 

「は~い……ちぇっ……まあ、あの態度からすると、嫌いではないってところかな……にひひ。一刀君帳に書いておかないと」

 

何やら、ぶつぶつと呟き、笑いながら焔耶の縄を解いていた。

 

「ん~っと、ほい!解けたよ」

 

「礼は言わんぞ!貴様のよう人質を取り、桔梗様の友人を裏切らせるような事をする奴にわな!」

 

「え?」

 

焔耶の罵声に北郷は、首を傾げた。

 

あやつは……まだ、信じておったのか。

 

「え、えっと……そんなことはされてないわよ、焔耶ちゃん?」

 

「紫苑さま!いいえ、良いのですよ!どうせ、この男にそう言えと脅されているのでしょ!」

 

紫苑が困惑しながら前に出て、誤解を解こうとしているが、焔耶はそれにも耳を貸そうとはしておらんかった。

 

「……ねぇねぇ、ご主人様。やっぱり、さっきみたいに縛っておかない?ついでに煩いから、口も塞いでさ♪」

 

北郷一刀に近づき、もう一度縛ろうと提案しているのは、おそらく、真名であろう、たんぽぽと名乗った女武将だった。

 

「ふん!もう二度と同じ手は効かないぞ、卑怯者め」

 

「その卑怯者の落とし穴に落ちたのは何処の誰だったかな~、の・う・き・んさん♪」

 

「~~~~~っ!貴様ぁ~~~っ!」

 

「いい加減に――」

 

焔耶に三度目の拳骨をお見舞いしてやろうとしたその時だった。

 

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

 

二人の間に割って入るように、微笑みながら劉備殿が仲裁に入った。

 

「ふん、敵の指図はうけ、な……」

 

そこで焔耶の動きが止まった。

 

「蒲公英ちゃんも、あまり魏延さんを挑発しちゃだめだよ」

 

「は~い」

 

「すみません、魏延さん。……魏延さん?」

 

劉備殿は、焔耶の反応がなかったので、もう一度、名を呼んでいた。

 

「……美しい……」

 

「え?」

 

「あ、いや!なんでもありません。劉備様!」

 

「り、劉備、様?え、えっと」

 

いきなりの「様」付けに戸惑う、劉備殿。

 

あやつ、男に興味が無いと言っておったが、よもや、そっち系だったとはのう……

 

焔耶の豹変っぷりに長年一緒に居たワシも驚いてしまった。

 

まあ、これで少しは話が進むだろう。と、その時のワシは思った。

 

「そ、それでね。魏延さん」

 

「はい!」

 

「実は」

 

「なんでしょうか!」

 

「……」

 

「何なりと、お申し付けください!」

 

「ご、ご主人様~」

 

焔耶の気迫?に劉備殿は、御使い殿に助けを求めた。

 

あのバカは……

 

「おい、そこの娘」

 

先ほど、自身の真名を呼んでいたので知ってはいるが、真名は、心を許したものでなければ呼ばせてはいけない真の名。仕方がなく、その者の横に行き呼びつけた。

 

「蒲公英のこと?」

 

「ああ、ワシが許可する。焔耶……魏延を縛り上げてくれ」

 

「え、いいの?」

 

突然の申し出に戸惑う娘。

 

「ああ、このままでは、話が進まん。しばらく黙らせて欲しい」

 

「了解!それじゃ、おばさんの許可も出たことだし、もう一度縛り上げだ~~♪」

 

「おばっ!?……ま、まあ、今は我慢しよう。今は……」

 

ワシは、まだおばさんと呼ばれるほど、紫苑より歳は取っておらんわ!

 

「……っ!桔梗?今、とっても失礼なことを考えなかったかしら?」

 

「何の事じゃ?」

 

顔だけは微笑みながら紫苑は、ワシに話しかけてきた。

 

紫苑のやつ、相変わらず歳のことになると妙に勘が良くて質が悪い……

 

「むがーーーっ!!ひひょーひゃまーー!?」

 

「ふぃ~、これでいいかな?」

 

「すまんの。焔耶よ、少しそこで黙っておれ」

 

礼を言い。焔耶に向き直り一言告げる。

 

「んんーーーーっ!」

 

「ええい、煩いわ!」

 

(ごちんっ!)

 

「んぐっ!~~~~~っ!?!?」

 

三度目の拳骨を貰い、縛られて頭を押さえられず悶える焔耶。

 

「まったく……すまんな、礼のなっていないやつで」

 

「いや、それは良いんだけど……良かったのか?」

 

北郷一刀殿は、焔耶を見ながら訪ねてきた。

 

「ああ、構わん。ああでもしないとゆっくりと話が出来そうになかったからの」

 

「あ、あはは……」

 

「むぐぅぅ……っ!!うぅうううっ!!」

 

焔耶を睨み付けると押し黙ったが、北郷一刀殿が苦笑いを浮かべると、打って変わり、睨み付けうなりつけていた。

 

まったく……少しは、ワシの立場を考えろと言うに……まあ、先ほどのやり取りをした限りでは、無礼を働いて即打ち首になるようなことはなさそうではあるがな。

 

「ではまず、名を名乗ろう。ワシは、厳顔。そして、そこで縛られ、もがいておるのが魏延だ」

 

「俺は、北郷一刀。字はないから、好きなように呼んでもらって構わないよ」

 

「次は私ですね!私は、劉備、字は玄徳って言います!よろしくお願いしますね、厳願さん!」

 

軍の中心人物である、天の御遣い殿と劉備殿の自己紹介のあと、他の武将たちも次々に名を名乗った。

 

「さて、天の御遣い殿。ワシらを捕虜とし、一体何を要求するのかのう?」

 

「要求ってほどでもないんだけど。ここを通して欲しいんだ。それと、俺のことは、天の御遣いじゃなく、名前で呼んでほしいかな。あんまり言われ慣れてないんだよね、天の御遣いってさ」

 

何とも変わった彼奴じゃ。もう少し堂々としておれば良いのに、なんとも謙虚な彼奴じゃ。

 

「了解した。では、北郷殿と呼ばせてもらうとしようかの」

 

「うん。ありがとう」

 

「っ!」

 

その、自然な笑顔とお礼に思わず胸のあたりがきゅっと絞められた。

 

な、なんじゃ、今の感覚は……

 

「で、では、北郷殿。何故、ここを通りたいのだ?まあ、おおよそ検討はついておるが」

 

ワシは、動揺を隠すように話を進めた。

 

「成都へ、劉璋を討つ為に通して欲しいんだ」

 

真っ直ぐな瞳でワシを見つめる北郷殿。

 

「厳願さんもわかっていると思う。今の蜀は、覇権争いで戦をお越し、政が疎かになっている。そのせいで、民たちは、その日の生活すらままならない状況だ。民あっての国だっていうのに」

 

確かに、北郷殿の言うことはもっともだ。民が居なければ国は栄えることが出来ない。

 

「しかし、だからと言って、攻め入る理由にはなるまい。北郷殿たちが行っていることは侵略じゃ」

 

「それを言われちゃうと、正直何も言い返せなくなっちゃうな」

 

「ご、ご主人様!?」

 

頭を掻きながら苦笑いを浮かべる北郷殿の横で、関羽が慌てていた。

 

「でも、このまま、覇権争いが続けば、どうなるか。厳願さんは分かるよね?」

 

「……」

 

北郷殿の言葉に言い返すことが出来なかった。

 

「では、北郷殿なら。この戦いを止められると?思い上がりも甚だしいな」

 

「……厳願よ、ご主人様を愚弄するつもりか?」

 

ワシの言葉にすかさず反応を示したのは、ここへ連れてきた来た関羽だった。

 

「そう取られても、おかしくはあるまい?自分なら出来る、やれる。そんなもの、自惚れでなければなんともうすか」

 

「くっ!言わせておけば」

 

「あ、愛紗ちゃん、落ち着いて!」

 

「で、ですが、桃香様!ご主人様をあのように言われて黙っては居られません!」

 

「今は、ご主人様と厳願さんがお話してるんだから、口を挟んじゃダメだよ」

 

「桃香様……わかりました……」

 

劉備殿に宥められ、渋々引き下がる関羽。

 

「厳願の言う通り、俺一人じゃ無理だと思う。でも、俺には桃香や愛紗、鈴々、星、朱里、雛里、雪華、沢山の仲間が居る。今すぐには無理かもしれないけど、不可能ではないと思ってるよ」

 

「……」

 

周りを見回すと、北郷殿の家臣たちは、一様に頷き頬を高揚させて微笑んでいた。

 

みんなで、か……

 

「そして、その夢を実現する為に、厳願、あなたが欲しい」

 

「んなっ!?」

 

「むがっ!?」

 

北郷殿の言葉に思わず声を上ずらせ驚いてしまった。よく見ると、焔耶も縛られながらも驚きの声を上げて見ていた。

 

「はぁ、ご主人様……」

 

「え、どうかした、愛紗?何か変な事でも言った?」

 

「愛紗よ、あれが主だ。諦めろ」

 

「それはそうなのだが……分かっていても、納得が行かない事もある」

 

「ふふふ、そこが、ご主人様の良い所ではないかしら、愛紗ちゃん」

 

「紫苑の言う通りですよ、愛紗。まあ、だからこそ、(わたくし)は、ご主人様に惚れてしまったのですけれど」

 

「ねねは、嫌いですぞ!」

 

「恋は、ご主人様のこと、好き」

 

「なんですとーー!?恋殿、早まってはだめですぞぉぉっ!!」

 

「ふぇ、えっと……そういうご主人様だから、好きになったというか……はぅぅぅぅ」

 

「私も、一刀君から『優未、君が欲しい!』なんて言われてみ~た~~い~~~~!」

 

「わお、みんなに大人気だね、ご主人様。もちろん、蒲公英もご主人様のこと好きだよ!お姉ちゃんもそうだよね」

 

「は、はぁ!?なんで、あたしが!いや、まあ、嫌いじゃないけど……だからって、す、すす、うわーーー!変なこと言わすなよ!」

 

「自分で、勝手に言ってるだけじゃん」

 

「煩いぞ、蒲公英!」

 

「妾も主様のことは、嫌いではないぞよ!」

 

「美羽様を保護してくださる限り、好きということにしておきますね」

 

「あ、あたしも、嫌いではないが……って、と、桃香。なんだか怖いぞ」

 

「あはは、そんなことないよ。白蓮ちゃん。ご主人様?あとで、お話しようね♪」

 

「え?え?なに?どういうこと?え?」

 

皆から口々に自身のことを言われ、戸惑う北郷殿。

 

うむ、中々良い絆がある陣営のようだな。まあ、劉備殿だけ、笑顔に凄みを感じるが、まあ、やきもちといったところであろう。

 

「……ふ、ふははははっ!」

 

「へ?厳願さん?」

 

北郷殿は、急に笑い出したワシに驚き、ワシの名を呼んだ。

 

「気に入った!北郷殿、いや、お館様。ワシを陣営に居れてはくれないだろうか」

 

「きひょーひゃま!?」

 

口に縄を挟まれ、喋り難そうにワシの名を呼ぶ焔耶。

 

「げ、厳願よ。そんな、簡単に決断しても良いのか?私から言うのもなんだが、少しは、考えた方が」

 

「なに、考えた結果、お館様の傘下に入ろうと決断したのだ。それとも、何か問題でも?」

 

愛紗の言葉に、何の問題もないと告げ、逆に聞き返した。

 

「いや、特に問題も無いのだが……」

 

「ああ、これで、ご主人様の垂らしにまた一人落ちてしまった。これでは、私を愛してくれる時間が減ってしまうではないか。……っと、愛紗が申しておりますぞ」

 

「なっ!?せ、星!何を言い出すのだ!私は、そんなこと言ってはいないだろう!」

 

「なに、心中を代弁したまでだ。礼には及ばん」

 

「何が、礼には及ばん、だ!今日という今日は、もう許さんぞ!その性根を叩き直してくれる!」

 

「はっはっは!出来るものならやってみるがいい!」

 

「~~~っ!待てーーーーっ!」

 

関羽は、白服で水色の髪をした娘、星にからかわれ、追いかけ回し始めた。

 

「……良いのですかな?」

 

「ああ、うん。まあ、いつものことだし。星が満足したら戻ってくるよ」

 

「なるほど」

 

笑顔で答えるお館様を見て、これが日常なのだろうとワシは勝手に思った。

 

「っと、そろそろ、魏延さんの縄を解いてあげないと」

 

「おお、そうであった。すっかり忘れておった」

 

「え~、きっとまた騒ぎ出すから、蒲公英はこのままで良いと思うな、ご主人様」

 

「そうはいかないだよ。仲間になったんだからさ」

 

「はぁい、はぁ、ホント、どうなっても知らないんだからね……」

 

馬岱は、縄を解きながら、ブツブツと呟く。

 

まあ、この馬岱の言っている通り、わからなくもないがな。

 

「ぷはっ、まったく、ひどい目にあった……」

 

「自業自得でしょ。脳筋」

 

「なんだとっ!貴様、また私を脳筋と言ったな!」

 

「脳筋だから脳筋って言って何が悪いのさ」

 

「~~~~っ!こ――」

 

「いい加減にせんか!馬鹿者共が!」

 

(ごんっ!)

 

「ぎゃっ!」

 

(ごんっ!)

 

「きゃふっ!」

 

延耶と馬岱に拳骨をお見舞いする。

 

「き、桔梗様。痛いですよ」

 

「うぅ~、なんで蒲公英まで……脳筋のせいだからね!」

 

「なんだと!?」

 

「まだ、仕置きが必要のようだな……」

 

「「っ!(ぶんぶんっ!)」」

 

二人は慌てて首を横に振る。

 

「まったく……これでは、落ち着いて真名を伝えられんではないか」

 

「し、しかし、桔梗様。なぜ、こんな男に下るのですか!卑怯な手を使って、紫苑様を仲間にするような奴を!」

 

「「「「え?」」」」

 

「はぁ~~~……まだそんなことを信じていたのかお前は」

 

お館様や劉備様が一斉に疑問の声を上げる中、ワシだけは、深い溜息を吐いた。

 

「え、えっと、焔耶ちゃん?(わたくし)がどうかしたのかしら?」

 

「どうかって、この卑怯な男に、最愛の娘である、璃々を人質に捕られ、泣く泣く言いなりになっているのですよね?」

 

「……え、えっとね、焔耶ちゃん?別に、璃々を人質に捕られて仲間になった訳ではないのよ?」

 

「……え?」

 

苦笑いを浮かべて、焔耶の話を訂正する紫苑。

 

「はぁ、だから再三言ってきたではないか。違うと、紫苑は、自らの意志でお館様の傘下に入ったのだ。そうだろ、紫苑よ」

 

溜息を吐きながら、焔耶に説明をし、紫苑に同意を求めた。

 

「ええ、桔梗の言う通りよ、焔耶ちゃん」

 

「えぇえええっ!?劉備様なら兎も角、こんな弱そうな男の言いなりに!?」

 

「……焔耶よ、それは、本気で言っておるのか?」

 

「え?はい。見た目からして、弱そうではありませんか。どうみても、私の方がつ――」

 

「馬鹿者がっ!」

 

(ごんっ!)

 

「痛っ~~~~~っ!?!?」

 

「あれほど、人を見た眼で判断するなと言ったであろうに。お前は、そんなことも忘れたのか」

 

「で、ですが、桔梗様。どう見ても、一万もの賊を一瞬で倒せるような強さを持っているとは、私には思えません。四、五人が精々かと」

 

「お前と言う奴は……お館様よ」

 

「え?あ、なに?」

 

「申し訳ありませんが、焔耶に稽古をつけては頂けますかな」

 

「い、今、ここで?」

 

「はい。今、ここでですぞ。さらに、全力で、完膚なきまでに叩きのめして頂いて結構」

 

「さ、流石にそれは……女の子だし」

 

「お館様よ、あなた様は、我らの頂点に立つお方ですぞ。なのに、配下の者に舐められて良いとお思いですかな?」

 

「う……」

 

「それに、どうやら焔耶の言葉に反感を覚えているものが何人か居るようですぞ。それを鎮めるためにも一度、焔耶と手合わせをし、焔耶を納得させねば収まりませんぞ」

 

周りを見回すと、関羽は、見るからに不機嫌そうに焔耶を見つめ、その他、いや、殆どの将たちも顔には出していなかったが、不満に思っている事だろう。

 

「うー!お兄ちゃんはとっても強いのだ!お前みたいなツンツン頭なんかには負けないのだ!」

 

いや、もう一人居たな。確か……張飛と言ったか。こやつも、関羽に負けず劣らずの実力があるように見えるな。

 

「なんだと!良いだろう。なら、戦ってそれを証明してやろうじゃないか。どちらが強いのかな!」

 

張飛の挑発とも取れる言葉に焔耶はすんなりと乗ってしまった。

 

あれほど、冷静になれと言いているのだがな。

 

「あんな簡単な挑発にも乗るんだね。あれで良く将をやっていけてるよね……まあ、簡単に挑発に乗ってくれたから、捕まえるのは楽だったよね。雪華」

 

「ふぇ!?あ、えっと、その……あ、あはは」

 

馬岱の言葉に戸惑いながら苦笑いを浮かべる姜維。

 

「もういいじゃん。さっさと倒して休もうよ。疲れちゃったよ」

 

太史慈は、口を尖らせて文句を言いながらお館様に摺り寄っていた。

 

「お、おい、優未。ご主人様に近づき過ぎるぞ!」

 

「ええ?そんなことないよ。ね~、一刀君♪私は、いつもこんな感じだよね~」

 

関羽の忠告にも聞く耳を持たず、さらに体を摺り寄せて、お館様の腕に胸を押し付けていた。

 

「あ、あの、優未?当たってるんだけど……」

 

「当ててるんだよ♪もう、一刀君ったら、恥ずかしがり屋さんなんだから。可愛いな~♪」

 

「~~~っ!ご主人様!!」

 

「お、俺のせいなのか!?」

 

「~~~~~~っ!!ええい!やるのか!やらないのか!はっきりしろ!」

 

等々、焔耶は、痺れを切らし怒鳴り声を上げた。

 

「わ、わかった。手合わせするよ。だから優未、離れててくれるかな」

 

「えー、一刀君なら、こんな奴、片腕で十分でしょ?」

 

皆からの視線に耐えられなくなったのか、お館様は、焔耶の挑戦を受け、自分から離れるようにと太史慈にお願いをしていた。

 

「いやいやいや!?無理だからね!?お願いだから、離れてて」

 

「ぶー。仕方ないな~。それじゃ、後で一杯甘えるからね♪」

 

「え?ちょ、優未?!待って!?」

 

「それじゃ、一刀君、頑張ってね~♪」

 

太史慈は、お館様が止めるのを無視して、離れていった。

 

「~~~♪」

 

「……くっ」

 

にこにこと微笑む太史慈を関羽は苦い、いや、悔しそうな顔をし、劉備様は、微笑みながらも、やはり、何処か羨ましそうな雰囲気が出ていた。

 

中々に面白い陣営のようだの。さて、これから面白くなりそうだな。

 

ワシは、これから起こるであろう、楽しくも騒がしい日々を思い浮かべ、心の中でにやりと笑った。

 

《To be continued...》

葉月「や、やっと書き終わったーーーーーーーっ!?!?」

 

愛紗「いや、なぜそこで、疑問符が入るのだ?」

 

葉月「いや。もうね。こう、間を置いて書いていると分からなくなるんですよ。色々と」

 

愛紗「ふむ。まあ、現実では色々とあったようだな」

 

葉月「ええ。ここには書きませんが色々とあったんですよ。まあ、この話は、ここまでにして、本作の奥付とまいりましょう」

 

愛紗「しかし、やはり焔耶は、っと、まだ真名を交換していなかったな」

 

葉月「奥付だから気にしなくてもいいのに。私は、真名で呼びますけどね!」

 

愛紗「……ま、まあ、相変わらず魏延は、挑発に乗りやすいな」

 

葉月「蒲公英の挑発にいとも簡単に乗りますからね」

 

愛紗「うむ……しかしだな……雪華たちの登場場面は何とかならなかったのか?」

 

葉月「え?あれ、ダメですか?私は、結構気に入っているんですが」

 

愛紗「そうなのか」

 

葉月「それに、結構前から考えてたんですよ」

 

愛紗「そうなのか!?」

 

葉月「最初は、雪華と蒲公英であとセキトを入れてやろうかなって考えていたんですよ。でも、優未が加わったことで、『あれ?これ、優未と雪華と蒲公英の方が、良くないか?』なんて、思ったらこうなったんですよ」

 

愛紗「だがしかし、優未と蒲公英は乗り気だったようだが、雪華は違うだろ?可哀想ではないのか?」

 

葉月「可愛かったから良いじゃないですか」

 

愛紗「いや、しかしだな……ん?なんだそれは」

 

葉月「……(ピッ)」

 

雪華『にゃ、にゃ~んてにゃ……ふぇ~、は、恥ずかしいです』

 

愛紗「っ!?!?」

 

葉月「ふっふっふ。これでもまだ言いますか?(ピッ)」

 

雪華『にゃ、にゃ~んてにゃ……ふぇ~、は、恥ずかしいです』

 

愛紗「うぅ……」

 

葉月「ほれほれ♪また押しちゃいまっ――ぶはっ!」

 

愛紗「はぁっ!はぁっ!やめんか!これ以上やるようならただではおかんぞ!」

 

葉月「す、既に殴っておいてそれはないですよ」

 

愛紗「うるさい!まったく……こ、これは、没収する!」

 

葉月「……」

 

愛紗「な、なんだ、その眼は」

 

葉月「べっつに~♪」

 

愛紗「こ、これは、またお前が、私をからかわないようにする為だ!決して自室でこっそり聞こうとは思っていないぞ!本当だぞ!」

 

葉月「はいはい。そういう事にしておきます。まあ、でもこれで、ようやく、蜀軍の全メンバーがそろいましたね」

 

愛紗「……ああ、そうだな。しかし、誰か忘れていないか?」

 

葉月「え?……ああ。南蛮の子たちですね」

 

愛紗「いや。確かにあ奴らもそうだが……もっと、こう……騒がしいと言うか、お邪魔虫と言うか」

 

葉月「……あ~、ちょろぎとお供の二人ですね」

 

愛紗「ちょ、ちょろぎ?」

 

葉月「ああ。通じる人にだけ通じれば良い暗号です。ちゃんと出しますよ。安心してください」

 

愛紗「いや。何を安心すれば良いのか分からんが……そうか。出てくるのか……」

 

葉月「あれ?もしかして……『また、ご主人様を思う娘が増えるのか……』なんて思いましたね?」

 

愛紗「っ!そ、そんなこと思っていないぞ!私は、騒がしくなって困ると思っただけで、別に――」

 

葉月「……斗詩」

 

愛紗「っ!?」

 

葉月「にゅふふ~……ホント、愛紗は、分かりやっ――どわっ!」

 

愛紗「それ以上言うと……分かっているな?」

 

葉月「……っ!(こくこく)」

 

愛紗「ならば良い」

 

葉月「はぁ……事あるごとに得物を振り回すの止めてくれませんかね?」

 

愛紗「止めて欲しいのなら、余計な事を言わなければ良いではないか」

 

葉月「それは無理です!」

 

愛紗「い、言い切ったな」

 

葉月「ええ。言い切りますとも!だって、言わないと愛紗を弄れないじゃないですか!」

 

愛紗「はぁ……ご主人様以外に頭を悩ませる者がここにも居ようとは」

 

葉月「いや~、それほどでも~」

 

愛紗「褒めてない!」

 

葉月「おおっ!?」

 

愛紗「まったく……所で話は変わるが、私が厳頑との戦いの時に打ち返したあの技はなんだったのだ?」

 

葉月「あれは、技なんかじゃないですよ。あれは野球の原理ですね。まあ、愛紗が何で野球を知っているかについては、後日談として次の話で書こうかと思ってます」

 

愛紗「ふむ。なるほどな」

 

葉月「いや~。それにしても、そろっちゃいましたね~」

 

愛紗「?何がだ?」

 

葉月「何がって。そりゃ、三熟女がですよ。一刀もこれから大変ですね」

 

愛紗「お、おい。それを言ったら……っ!?」

 

??「「「……」」」

 

葉月「え?どうかしました――」

 

紫苑「あらあら、なんだか呼ばれたような気がしたわ」

 

菫「そうですね。とても悪意に満ちた言葉が聞こえましたね」

 

桔梗「これは、少し仕置きが必要かのう」

 

葉月「……え、えっと……き、急用を思い出したので私はこれで!あとは、宜しくお願いしますね、愛紗!」

 

愛紗「あ、おい!」

 

紫苑「ふふふ、逃がしはしないわよ。桔梗」

 

桔梗「ああ、わかっておる。逃げる標的を射るのは爽快だからのう!」

 

菫「逃げる相手では、流石に槍では不利ですね。ここは大人しく、先回りをして一撃与えることにいたしましょう」

 

愛紗「……はぁ。ま、まあ、いつものことだな……では、皆の者また次回会おうではないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「だ、誰か、助けてくれーーーーーーっ!」

 

紫苑「フフフフフ……逃がしはしませんよ。葉月さん」

 

桔梗「ハーッハッハッハ!ほれ、逃げろ逃げろ!逃げないと当たってしまうぞ!」

 

葉月「ひっーーーーーー!」

 

菫「……えい♪」

 

葉月「わひゃーーーっ!?ま、待ち伏せとか卑怯ですよ!」

 

菫「これも、兵法のうちですわ。フフフフフ……」

 

葉月「もう、らめーーーーーーーーっ!」


 
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