No.682257

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その4

2014-04-28 15:37:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:975   閲覧ユーザー数:647

『ギギャァァァァァァァァァァァッ!?』

 

『フン』

 

『『クケェ…!?』』

 

デス・ドーパントの大鎌に斬られた幽霊が一瞬で浄化され、その場から消滅。それを見た他の幽霊達は恐れをなして、すぐさま逃げ出そうとする。

 

『逃がしませんよ?』

 

『『!?』』

 

しかし、それを許さないのが竜神丸という男。持ち前のテレポートでデス・ドーパントが瞬時に幽霊達の前に先回りして、そのまま幽霊達を一閃。幽霊達は断末魔すら上げられる事なく成仏させられる。

 

『駄目ですよ~? 死んだからには、ちゃんと冥界に行って下さらないと…』

 

死神らしく不気味に笑い、デス・ドーパントはその場からゆっくりと姿を消していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、小学校屋上…

 

 

 

 

 

 

 

 

『アァァァウゥゥゥゥゥゥ…』

 

「おう、成仏しとけや」

 

地面を這いずっていた幽霊が、シグマの斧を喰らい消滅。幽霊が一通り退治されたのを確認し、シグマはつまらなさそうに腰掛ける。

 

「あ~あ、つまんねぇな。もうちょっと強力な悪霊でも何処かにいないもんか……まさか、スノーズの方に亡霊共が集中してるとかねぇだろうな…?」

 

せっかく幽霊との〝遊び”で退屈しないで済むと思っていたのに、これでは暇潰しにもならない。シグマはブツブツ呟きながら予め用意していた握り飯を取り出し食べ始める。

 

「ムグムグ……ん?」

 

握り飯を食していたその時、シグマは何かに気付き体育館のある方向を見据える。

 

「…へぇ、生きた人間か?」

 

シグマは小さく笑みを浮かべてから悪魔の翼を展開、体育館に向かって飛来していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シグマが目指す、体育館前…

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…!!」

 

「急げ静香、こっちだ!!」

 

ある二人の学生が、亡霊達に追われているところだった。小柄の女子学生の手を掴みながら、坊主頭の男子学生が急いで体育館へと逃げ込む。その後方からは数体の亡霊達が、不気味な笑い声を上げつつ追いかけて来ている。

 

「ここなら…ッ!?」

 

しかし、逃げ込んだ先も危険地帯だった。

 

『『『クケケケケケケケ♪』』』

 

『『『ウゥゥゥゥウゥゥゥウゥゥウゥゥゥ…!!』』』

 

体育館内も、既に亡霊達によって支配されていた。何体もの亡霊が館内を彷徨い歩いており、天井に浮遊している個体も複数存在している。

 

「くそ、ここもかよ!!」

 

「ひっ…優馬君…!?」

 

「ッ!? くそ、来んじゃねぇ幽霊野郎共がぁ!!」

 

入って来た入口からも亡霊達が現れ、とうとう逃げ場を失った二人は館内の隅まで追い込まれる。男子学生が悪あがきのように手に持っていた鉄パイプを振り回すが、実体の無い亡霊達にその攻撃が当たる筈も無い。

 

『『『アァァァァァ…!!』』』

 

「ゆ、優馬君…!!」

 

「ッ…静香!!」

 

もう駄目だ。遂に諦めてしまったのか、男子学生は鉄パイプを捨てて女子学生と共に身を屈める。そんな二人に亡霊達が一斉に取り囲もうとしたその時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ガシャァァァァァァァァンッ!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『…!?』』』』』

 

「ヒャアッハァァァァァァァッ!! 俺様、参上ォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

「「―――え?」」

 

天井を突き破り、シグマが豪快に館内へと突入して来た。それに亡霊達が驚くと同時にシグマが体育館の床に降り立ち、手に持っていた斧を豪快に振り回す。

 

「おうおう亡霊さん達よぉ? そんな寄って集って、ガキ共を苛めてんじゃねぇぞぉ!!!」

 

『ウォォォォォォォォ…!?』

 

『ヒギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』

 

『アァァァァァァァァウゥゥゥゥゥゥ…』

 

『ケキャァァァァァァ…!?』

 

「「……」」

 

シグマの振るう斧で亡霊達が次々と退治され、その数もどんどん減っていく。普通だったら亡霊相手にあり得ないであろうその光景を見て、学生二人は呆然としている。

 

「これで…最後じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『『『『『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ…!!?』』』』』

 

気付けば、大量にいた筈の亡霊達はシグマ一人の力で全滅してしまっていた。シグマは一息ついた後に斧の刃を床にドカッと刺し、両手を払ってから学生二人の方に振り向く。

 

「よぉ、そこのガキンチョ共。怪我ねぇかよ?」

 

「「……」」

 

亡霊達に追い詰められていたのに、気付けば一人の男が全滅させていた。しかも男の背中には、普通なら見えない筈の悪魔らしき翼も見えており、それを除いてもその風貌はどう考えてもヤンキーにしか見えない。

 

「あ? おい、聞こえてんのか?」

 

「「…え、あ、はい」」

 

あまりに不思議過ぎる状況に、学生二人が思わず片言な返事しか出来なかったのも必然と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別の場所では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

こなたが一人、謎の美容院らしき建物に籠っている状態だった。

 

「…あるぇ~?」

 

裂け目に入る時はディアーリーズ達と一緒だった筈が、いつの間にか自分一人だけになっていた。彼女はそんな現実を時間が経つたびに少しずつ把握していき、同時にその顔も少しずつ青ざめていっているのをより正確に感じ取っていた。

 

「ど、どうしよう……一人になっちゃった…」

 

元々幽霊を苦手としており、お化け屋敷も一人で入る事も出来ないこなた。最初はkaitoの言っていた〝死者の誘い”に関しても若干の恐怖を感じていたのだが、ディアーリーズ達と一緒にいれば大丈夫だと思い、一緒に裂け目に飛び込んだ。故に、今のような自分だけ一人という状況は想定していなかったのだ。

 

「ヤバい、めちゃくちゃ怖いよこの状況……やっぱり飛び込むんじゃなかったよぉ…!!」

 

真っ暗な部屋の中、こなたはビクビクしながら美容院の中を捜索していくが、やはりこういった暗い場所が怖いからだろう。

 

「あぅぅ……せめて誰か一緒にいてくれたら良いのに…」

 

その時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チョキン……チョキン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!?」

 

突然聞こえてきた鋏の音。こなたはビクッと反応し、ブリキのように音の聞こえる後方へゆっくり振り返ってみると…

 

『……』

 

「…え」

 

錆びた鋏をチョキチョキ鳴らしながら、こなたを見据えている女性美容師の亡霊がいた。美容師の亡霊は無言のまま何も言わず、こなたはまた更に顔が青ざめていく。

 

『……』

 

「……」

 

『…ニタァ』

 

「―――!!!」

 

そこからのこなたの行動は異常に早かった。すぐさま美容師の亡霊から逃げるように控室前まで移動し、急いで扉を開けようとドアノブに手をかける……が、何故か扉は開かない。

 

「ちょ、ま、待って!! ちょっと待って!! マジで待って!! 本当に待って幽霊さん!! アレだ、一回話し合おう!! ね!? ね!? 話せばきっと分かりあえる筈だよ!? そうでしょ!? そういう訳だからさ!! そんな危ない物を構えてこっちに来ないで!! そんなメッチャ怖い笑顔しながらこっちに来ないでお願いだから!! ていうか早く開いてよこのポンコツ扉!!」

 

どれだけドアノブを捻っても扉が開かない為、遂に実力行使で扉を破壊。控室に逃げ込んだこなたを、美容師の亡霊は未だ不気味な笑顔のままゆっくりと追いかけて来る。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! 助けてウルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」

 

あまりの恐怖にとうとう泣き始めたこなた。そんな彼女に、美容師の亡霊は容赦なく接近していく。部屋の隅で泣き叫ぶこなたにゆっくりと鋏を向け、そのまま一気に突き立てる―――

 

 

 

 

 

 

≪カメンライド・ヒビキ!≫

 

 

 

 

 

 

―――事は無かった。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『…ッ!?』

 

プロトディケイド響鬼(以下PD響鬼)が割って入り、太鼓のバチを模した武器〝音撃棒・烈火”による打撃を美容師の亡霊に向かって炸裂させたからだ。清めの力を持っている音撃に美容師の亡霊は苦しそうな表情をしながら持っていた鋏を床に落とす。そこへPD響鬼はベルトのバックル部分に装備されていた太鼓型の武器〝音撃鼓・火炎鼓”を投げつけて美容師の亡霊に取り付け、一気に駆け出す。

 

「音撃打…爆裂強打の型ッ!!!」

 

『…!!』

 

二連続で炎の打撃を喰らい、美容師の亡霊は炎に包まれたまま壁まで吹っ飛ばされ壁ごと爆発。美容師の亡霊が消滅した後はPD響鬼も変身を解除し、okakaの姿に戻る。

 

「ふぅ……さて、大丈夫かいこなたちゃん」

 

「あ、ぅ…びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!! メヂャグヂャ怖がっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ぬぉう!? …はいはい、後でディアに目一杯慰めて貰いな。だからあんまり俺のズボンを鼻水で汚さないでね?」

 

「おーいokaka、そっちはどう……あれ、何この光景」

 

okakaのズボンが汚れるのも気にせず、怖い思いをしたこなたはしばらく大泣きし続け、okakaも困ったかのような表情をしつつ彼女の頭を優しく撫で、後からやって来たFalSigは何が何だか分からないので取り敢えず首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に場所は変わり…

 

 

 

 

 

 

 

「…また暗い場所に来ちまったな」

 

「てか、何か暗過ぎない?」

 

人もおらず、檻も壊れ、凄惨な状態となっている動物園跡地。そこにやって来たげんぶと凛は、思わずそんな感想を述べる事しか出来なかった。

 

「しっかし、裂け目の先がこんな場所に繋がってるとはな。あちこちに霊気を感じる」

 

「あちこちにって、何処にもいないじゃない。何処にいるってのよ?」

 

「ん、いるぞ? 例えばそう……お前の真後ろとか」

 

「え? いやいや、流石にそんな訳ないでしょ―――」

 

『…アゥ』

 

「っていたんかい!? そして凄いビックリしたぁ!!」

 

目元の見えない男性の幽霊が、ニコリと笑いながら軽く手を上げていた。凛は思わず飛び退いてげんぶの後ろに隠れ、げんぶは男性の幽霊に近付いてみる。

 

「アンタ、俺の言葉が分かるか?」

 

『アァァァ…』

 

「…一応、分かるようだ」

 

男性が笑ったまま頷いたのを見て、げんぶはひとまず調査に取り掛かる。

 

「ここは何処だ? もし分かるなら、分かるだけでも教えて欲しいんだが」

 

『ウァァァァ……アゥゥゥゥゥ…』

 

「ふむ……ほうほう……なるほど。そういう事なのか、うんうん」

 

(え、分かるの?)

 

男性の幽霊はジェスチャーで何かを伝えようとしており、げんぶには伝えようとしている事がひとまず伝わっているようだ。もちろん、凛の視点から見れば何のジェスチャーなのかもチンプンカンプンなのだが。

 

「分かった。ひとまず、アンタも成仏させてやるよ」

 

『ウ~ア~…』

 

「そういう事だ…………結び割れ、蜻蛉切(とんぼきり)

 

げんぶの取り出した刀が瞬時に槍状の武器へと変化し、げんぶの手に収まる。

 

「んじゃま、成仏してくれや」

 

『アァ~…』

 

げんぶの振るった蜻蛉切の力により、男性の幽霊は爽やかな笑みを浮かべながら少しずつ消滅していった。

 

「…で、何か分かったの?」

 

「色々とな。まずここは、俺達の知っているこの世じゃない」

 

「は?」

 

「この世とあの世の間……つまり、天国と地獄の狭間に存在する空間なんだとよ」

 

「天国と地獄の狭間……それが、一体何だって言うの?」

 

「さっきの幽霊の話だと、自分が死んだ後に気付けばこんな世界にいたらしい。本来ならこの空間に、死者の魂が集まるような事なんてそうそう無い筈なんだが…」

 

「そうそう無い筈って……え? じゃあまさか…」

 

「あぁ…………何かがこの空間に、死者の魂を留めている可能性がある」

 

 

 

 

 

 

『ほほう、察しが良いようじゃのう…』

 

 

 

 

 

 

「「!」」

 

げんぶと凛の前に、杖を持った老人らしき亡霊が薄らと現れた。

 

『そなたの言う通り……今この空間では、何かが起こり始めているようなのじゃよ…』

 

「…あなたは?」

 

『む、儂かの? 儂はとっくの昔に死んだ老害の身じゃよ。ホッホッホ』

 

気軽に笑う老人の亡霊に、げんぶと凛は思わず顔を見合わせる。

 

『そなた等も、ここに迷い込んで来た人間かのう?』

 

「へ? あ、はい、そうですけど…」

 

「迷い込んで……というより、自分で飛び込みましたけどね」

 

『ふむ、自分でかのう? 最近は勇敢な若者もおるものじゃなぁ……と言っても、そなたは若者という訳じゃなさそうじゃが』

 

「!」

 

老人の亡霊が告げた言葉を、げんぶは聞き逃さなかった。

 

「…分かるんですか? 俺の事」

 

『転生者なのじゃろう? 儂にも、それくらいなら分かるぞ』

 

「!? お爺さん、何で転生者の事も知ってるの!?」

 

『まぁ、儂も昔は色々あっての……あぁそうじゃ、そなた等に告げておこう』

 

「「…!?」」

 

老人の亡霊が指差した方向を見て、げんぶと凛は驚愕する。

 

「…何だこりゃ」

 

げんぶの視線の先には、空間が捩れて不安定になっている箇所が存在していたのだ。捩れた空間の所為で動物園の檻が歪みに歪んでおり、そこにブラックホールのような真っ暗な穴が存在している。

 

『この世界は何処か不安定での……このように、別の場所に繋がるという事もしょっちゅうあるんじゃ。これからこの空間で行動するのであれば、覚えて損は無いぞ』

 

「ここから…」

 

凛が覗き込んでみると、穴の中はまさに闇その物だった。もし飛び込んだら、そこから先は永遠に落ち続けていくのではないかと思えるくらいの闇だ。

 

『ここは比較的亡霊も少ないから良いんじゃが、他の場所は悪霊化している亡霊もおる。行くのであれば気を付けて行くのじゃぞ……最も、そなた等は問題なく対処出来そうじゃが』

 

「恐縮です」

 

実際、亡霊が襲って来てもげんぶなら問題なく対処出来てしまう。その事も分かっていたのか、老人の幽霊はそこまで警告はしなかった。

 

「色々教えてくれてありがとう、お爺さん」

 

『ホホホ。何、お嬢さんも気を付けての』

 

「それじゃ、ちょっと行ってみようかね。ルイちゃんと咲良ちゃんも見つけなきゃいけないし」

 

「本当よね。早く見つけて、楽園(エデン)に帰って休みましょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園(エデン)、じゃと…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、老人の亡霊は表情が一変する。

 

『そ、そなた等! 何か、組織に所属しておらんか?』

 

「?」

 

「組織って……まぁ、はい。そうですけど…」

 

『その組織の名前……まさか、OTAKU旅団ではあるまいな?』

 

「!? 何故その名を…」

 

『な、何という事じゃ……まさか、あの組織に属しておるとは…!!』

 

「お爺さん、どうしたんですか?」

 

突然の変わりように、流石のげんぶと凛も不審に思えた。先程まで気軽そうだった老人の亡霊が、自分達が旅団に属する者と知った途端に真剣な雰囲気に変わり出したのだから。

 

『お、お前達! まさかとは思うが……〝アレ”には選ばれておるまいな?』

 

「?」

 

「〝アレ”? 何ですかそれは」

 

『…その様子じゃと、知らないようじゃな。良かった良かった』

 

「あ、あの、どういう事ですか? 〝アレ”とかって一体…」

 

『お前達……悪い事は言わん、今の内に旅団から離れるんじゃ』

 

「「!?」」

 

老人の亡霊から告げられた言葉に、げんぶと凛は思わず眉を顰めた。

 

『あの組織に属してはいかん……早く身を引かなければ、お前達に不幸が訪れてしまう…!!』

 

「な、何を言ってるの!? それってどういう事なの!?」

 

『よく聞くんじゃ、旅団には、絶対に関わってはならんのじゃ!! 旅団は今、この世界を―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっと、亡霊さん発見でーす♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

『ぬ、ぁ…が…!?』

 

その時、老人の亡霊の身体が真っ二つに斬られた。後ろから現れたデス・ドーパントが、大鎌を使って老人の亡霊を一閃したのだ。

 

「な、ドーパント!?」

 

『ぬぐぁ、か……キサ、マ…!!』

 

『駄目ですよ、ご老体。死んだのであれば、ちゃ~んと冥界に行って下さい』

 

『ッ…まさか貴様、竜じ―――』

 

言いかけた直後、老人の亡霊が一瞬で消滅。デス・ドーパントがげんぶと凛の方を向き、二人は一斉に武器を構える。

 

『おやおや、お二方。私ですよ』

 

「「!?」」

 

デス・ドーパントが変身を解き、ドライバーを装着したまま大鎌を構えている竜神丸の姿となった。

 

「竜神丸!?」

 

「どうも、お二方。こんな所で会うなんて奇遇ですねぇ♪」

 

亡霊とはいえ、老人すらも躊躇なく斬って捨てた竜神丸。その男が挨拶しながら見せる笑顔に、二人はほんの少しだが恐怖を感じてみせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某小学校、校舎2階…

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか?」

 

「…うん、こっちは大丈夫みたいだ」

 

亡霊に襲われかけていたところを、スノーズに助けて貰ったユウナ。一人で行動するのは危険な為、現在二人は共に校舎を捜索して回っているところだった。これまでにも何度か亡霊達は襲って来たのだが、それらは全てスノーズのPSIによって撃退されている。

 

「さっきはありがとうございます。私はユウナ・タカナシです、あなたは?」

 

「スノーズ・ウィンチェスターだ、よろしく。さっきの事なら礼を言われるまでもないよ」

 

「いえ。あの時スノーズさんが来なければ、私は今頃…」

 

「そうならなくて本当に良かった。目の前で誰かが死ぬのは、こっちも良い気分にはならないからね……ところで、ユウナちゃんはどうしてここに?」

 

「それが…」

 

ユウナは自分がこの小学校にやって来た経緯、人魂から告げられた事など、一通りの事情をスノーズに説明。ちなみに彼女の説明を聞いている間、スノーズは無言のまま周囲を警戒し続けていた。

 

「…という訳なんです」

 

「なるほどね…………やっぱり、彼も関係してるのかな…?」

 

「え?」

 

「いや、何でもないよ。それより、まずは他に誰かいないか探してみた方が良いだろうね。一人でも多い方が心強いだろうし」

 

「はい」

 

スノーズが氷の拳銃を構えて警戒しながら進み、その後をユウナが続いていく。この時、ユウナはスノーズの後ろ姿を見つめる。

 

(へぇ、凄く優しい人だな…………でも)

 

それでも、ユウナは気付いていた。

 

(何でだろう……この人の眼、凄く冷たく見える…?)

 

先程スノーズが幽霊を凍らせて粉砕した際、実はユウナの視界にも映っていたのだ。

 

 

 

 

スノーズの眼に込められていた、〝冷たさ”と〝狂気”の両方が。

 

 

 

 

それがユウナには、何となく怖く感じ取れた。自分に向けられた物でなくとも、周囲に恐怖を感じさせる程の物は充分に持っていた。

 

(とても怖くて……悲しそう)

 

現時点で、スノーズはユウナを幽霊から助け出した時以外は彼女とほとんど視線を合わせていなかった。自分がどれだけ彼の眼を見ようとしても、彼自身が彼女と視線を合わせないようにしているのだ。ユウナにはそれが不可解で、同時に何か不愉快に感じていた。

 

「あの…」

 

「静かに」

 

突然、スノーズは前方を警戒し始めた。空気を察したユウナはすぐに口を閉ざすも、話そうとしたのを阻止された為に若干の不満を感じていた。

 

「…誰かいる」

 

「え?」

 

他にも生存者が?

 

その疑問を解決するべく、二人は三階に続く階段の前まで歩いていく。

 

「聞こえたのは、この上からだね」

 

「三階? 一体誰が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと雅也、良いから早く来なさいよ!! 私が怖いじゃないの!!」

 

「あのねぇ刀奈さん、もう少し警戒して歩いたらどうなのさ? さっきから幽霊に会うたび、君が真っ先に逃げてばっかじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ」

 

階段の上から、何やら二人の学生の会話が聞こえてきた。その二人分の声に、ユウナは僅かだが聞き覚えがあった。

 

(もしかして…!)

 

「ユウナちゃん?」

 

ユウナは急いで階段を駆け上がっていき、スノーズも後に続く。階段を上り切ったユウナの視線の先で、二人の学生による言い争いが行われていた。

 

「何よ、アンタは幽霊怖くないっていうの!?」

 

「幽霊なんて非科学的な存在、僕は信じてなかったからね。まぁ今になっては、本物がいるとまでは想定してなかったけど」

 

「そんな事は良いわ、それよりあの幽霊はどうすりゃ良いのよ!! アンタ頭良いでしょ、何でも良いから何か考えてよ!!」

 

「無茶を言わないでくれ。僕だって今回のような事態は初めてなんだ、そんなあっさり思いつくようなら誰だって苦労はしない」

 

「あ~も~!? 静香ちゃんや優馬のバカとは逸れるし、散々じゃないの私達!!」

 

「いや、それは僕に当たられても困るんだけど」

 

「何よ、アンタは静香ちゃんが心配じゃないの!? 優馬のバカはともかく!!」

 

「誰も心配してないとは言ってないだろ? というかさり気なく一人ディスってないかい?」

 

長い髪をポニーテールに結んだ女子学生と、眼鏡をかけていかにもガリ勉に思える男子学生。ギャーギャーと言い争っている二人を見て、ユウナは確信した。

 

「湯島さん、羽柴君!」

 

ユウナに呼びかけられた二人は同時に振り向き、彼女の姿を見て目を見開いた。

 

「「…タカナシ先生?」」

 

「…久しぶりですね、二人共」

 

ユウナの見せる笑顔に、二人は驚くを隠さずにはいられなかった。そんな三人の様子を、スノーズは氷の拳銃を隠しながら離れた位置で見守っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、楽園(エデン)では…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ウル、さん」

 

屋外広場にて、美空が風に当たりながらディアーリーズの身を案じていた。現在他のメンバーは任務に向かったかこの楽園(エデン)で待機しているか、そのどちらかだ。

 

「帰って、来て下さい……ウルさんが、いないと……私は…」

 

その時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1名様、ゴ案内デェス…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!?」

 

美空の目の前に、突然あの裂け目が出現したのだ。美空は驚いてその場に尻餅を付く。

 

「これ、は…!」

 

 

 

 

 

 

「ほう、これがその裂け目って奴か…?」

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!?」

 

聞こえる筈の無い声に、美空は思わず震え上がった。何故なら彼女の後ろには、気付けばZEROが満面の笑みを浮かべて立っていたのだから。

 

「なるほど、実に面白そうじゃねぇか…!!」

 

「!? キャ…!!」

 

ZEROは裂け目に飛び込むべく美空を突き飛ばす。その結果…

 

「!? う、あ…キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

「クハハハハハハハ…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」

 

巻き添えを喰らう形で、美空も裂け目に落ちてしまったのだ。そのまま楽しそうに飛び込んでいくZEROと共に美空も悲鳴を上げながら異世界へと導かれていき、そして裂け目はすぐに消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの世とこの世の狭間、とある場所…

 

 

 

 

 

 

 

「―――ハハハハハハハハ…!!」

 

洞窟と思われし場所にて、一人の男が怪しい行動を取っていた。

 

「面白くなって来たじゃないか…!! もっとだ……もっともっと、我々を楽しませて貰おう…!!」

 

「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」」」」」

 

『『『『『ウオォォォォォオォォオオォオォォォオォォォォォォォォ…』』』』』

 

「グハハハハハハハ…ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

男が高笑いすると共に、男がいる高台の下にいた異形達はそれぞれの得物を持って一斉に吠え上がり、宙に浮いている無数の亡霊達も叫び声を受けて大きく震撼していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅団メンバー達の思っている以上に、事態は深刻化していた…

 


 
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