No.674459

戦国†恋姫~新田七刀斎・戦国絵巻~ 始章

立津てとさん

はじめまして、たちつてとと申します
戦国†恋姫の二次創作小説です
本編をプレイしてお話に惚れ込み、某野望ゲーを買ってしまうほどになってしまい、投稿しました
どうかよろしくお願いいたします

2014-03-29 04:36:19 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5730   閲覧ユーザー数:5218

 

 

 

「まったく、一刀伯父さんもいい加減なんだから・・・」

 

ある日の昼下がり、新田剣丞は伯父である北郷一刀に言われて家にある古い倉の中で探し物をしていた。

探している物というのは、倉の中にあるという刀である。

 

「この中華風な倉・・・意外と広くて困るんだよなぁ・・・」

 

その刀は倉の奥深くにあるのか、探しても探しても見つからない。

探し始めて約30分。剣丞が刀を見つけたのは倉の中でも特に薄暗い所だった。

 

「あった!って、どれだ?」

 

剣丞の目の前にある刀は全部で7本。

刀を取って来いとしか言われていなかった剣丞は混乱したまま片っ端から色々な刀を手に取る

 

「紛らわしいなぁ・・・長いのから小刀まであるや」

 

刀の種類は普通の刀が2本、脇差が2本、小刀が2本、そして長刀が1本と4種類があった。

 

「鞘の形がみんな同じだし、これで1セットなのかな?」

 

長さは違えど、7本の刀は柄と鞘のデザインが統一されていた。

 

「まぁいっか。さっさと戻ろう・・・ってどわぁ!?」

 

倉を出ようと踵を返した時、剣丞は何かに足を引っ掛けて転んでしまった。

その拍子に腕に抱えていた刀を全部ばら撒いてしまう。

 

「いっつつ・・・なんだ?」

 

ムクリと起き上がり、足下を確認する。

そこには錆びついた丸く平たいものが転がっていた。

 

「これって、銅鏡か?すげぇ・・・教科書で見たやつまんまだ」

 

銅鏡を 手に取り鏡であろう部分を覗き込むが、期待したものは目に入ってこない。

 

「映らない・・・まぁそっか。かなり前の時代の物だろうし映るわけ――」

「剣丞ー!いつまで倉にいるんだ」

 

倉の外から聞き慣れた女性の声が聞こえてくる。

それを聞いて剣丞は銅鏡から顔を背けた。

 

「いけね、次の特訓凪姉ちゃんが相手だったのか・・・早く行かないと」

 

銅鏡を元あった場所であろう所に戻し、急いで刀をかき集め再び立ち上がる。

 

 

剣丞が倉の外に出ると、スタイルの良い銀髪の女性が待ち受けていた。

 

「あれ、凪姉ちゃん。それって昔の?」

「ああ、特訓だし動きやすい方がいいと思ってな」

 

凪と言われた女性は、昔使っていたという戦闘服らしき物を着込んでいた。

昔から思っていたことだが、凪という女性の体には傷が多い。

「自分は常に第一線で戦ってきた」という言葉と、伯父である一刀のことを『隊長』と呼ぶこと。それに体中の傷も相まって自衛隊かなにかの職に就いていたのかとも思ったが、一刀の経歴にミリタリー関連のものはない。

 

それに引き換え、剣丞が今着ている服は自身が通っている聖フランチェスカ学園のものだ。

一刀や他の姉たちが家にいる時には特訓時であろうと極力着ているようにと言ってくるので渋々着てはいるのだが、そろそろ生地がヘタってきている。

 

(いつものことながら不思議な姉ちゃんたちだよな)

「剣丞、何をボサッとしている!早く訓練所に行くぞ!」

「は、はい!」

 

いつもより厳しめの凪の声に慌ててついていく剣丞。

訓練所とは、剣丞たちが住んでいる屋敷のはずれにある広場の事で、木人や射撃用の的など古風な訓練用具が設置してある。

そして2人が訓練所に着くと、見知った顔が待っていた。

 

「よぉ、随分遅かったな」

「申し訳ありません隊長。剣丞がいつまでも倉から出てこないもので」

「だって伯父さんの言ってた刀が全然見当たらないんだもん」

 

広場で待っていた男――北郷一刀が2人を迎える。

 

「悪い悪い、その刀も使ってたのはかなり昔だからさ。俺自身もどこにしまっちゃったか忘れてたんだよ」

 

まるで自分が昔使っていたかのように言う一刀。

その物言いに違和感を覚えたが、一刀はさっさと話を進めてしまっていた。

 

「さて、持ってきてもらったその刀だがな・・・それらには使い方があるんだ」

「1つ質問」

「何だ?」

「何でこの時代に刀の使い方を覚えなきゃなんないの?」

 

剣丞の質問はもっともだった。

しかし一刀は涼しげにその問いに答える。

 

「その質問をして納得いく答えが返ってきたことがあったか?」

「・・・・・・無い」

 

剣丞は今まで色々な武器の使い方やサバイバル術など様々な特訓をさせられてきたが、毎回この質問をして返ってくる答えは『いいからやれ』であった。

 

「な?だから今回もいいからやってりゃいいんだよ」

「はいはい、わかったよ・・・で、その使い方っていうのは?」

 

すると一刀は持っていた鞄から1本の黒い帯のような物を取り出した。

 

「・・・ホルスター?」

 

その帯の形は、よく映画などで見かける銃のホルスターのようなものだ。

ただ銃を入れるようなポケットは見当たらない。

 

「そう、お前が持ってきたその刀をこのホルスターの穴に通すんだ。こんな感じに」

 

一刀は剣丞から1本ずつ刀を受け取り、ホルスターに差し込んでいく。

 

「よーしできた。ほれ、腰に着けてみろ」

「う、うん」

 

剣丞は長刀を除いた6本の刀の重さ分足された重量のホルスターを受け取り、腰に装着した。

 

「この長い奴はどうするの?」

「これは背中に背負って使うんだ。こんだけ長いと腰に差せないし他の刀にぶつかって邪魔になるからな」

 

ホルスターを巻いたことによってそれぞれの刀の位置は、脇差が上、普通の刀が下で1本ずつ腰の両サイドに、小刀は腰の後ろ部分にある。

よって長刀は背負うことになるのだった。

 

「刀って結構重いな・・・」

「我慢しろ剣丞!私と共にやった龍玉修行法を思い出すんだ」

「ああ、アレね・・・」

 

昔凪とやった特訓の中に、マンガを読みながら一刀が提案した体に重りをつけて特訓するという内容の修行があった。

わざわざ姉の月と詠がよなべして作ってくれた超重量のリストバンド、靴、シャツを身に着けての修行は今でも思い出すだけで目頭が熱くなる。

 

「確かにアレに比べたらこんなのは軽く感じるけど・・・」

「まぁ長刀は慣れないと使いにくいし、しばらくは普通の刀を中心につかっていけばいいさ」

「長刀なら、明命に頼めば使い方を教えてくれるのでは?」

「明命姉ちゃんか・・・サバイバル術の時といい一番お世話になってる気がするな」

 

サバイバル術なら明命の他に思春という姉も教えてくれていたのだが、彼女は蓮華という姉の付き人らしいので明命ほど顔を合わせてはいない。

 

「まるで昔の隊長を見ているようだ・・・よし、では早速特訓するぞ剣丞!」

 

手甲をガキンと鳴らせて臨戦態勢を整える凪。

その迫力に剣丞は思わず物怖じしてしまった。

 

「ちょ、ちょっと待って!凪姉ちゃん、さすがにいきなりは戦い方がわからないというか!」

「それは戦いの中で見いだせ、いくぞ!」

「勘弁してくれぇぇぇー!!」

 

 

 

 夜

 

夕食と風呂を済ませ、部屋着に着替えた剣丞が自分の部屋に向かっている。

 

「はぁ~疲れた・・・流琉姉ちゃんがご飯を早く作ってくれていてよかったよ」

 

特訓は夕方まで続き、屋敷の料理番である流琉が呼びに来るまで凪と一方的な模擬戦をしていたのだった。

 

「でも凪姉ちゃんはちゃんと手加減してくれるからまだマシだな。春蘭姉ちゃんは手加減という言葉を知らないし恋姉ちゃんは手加減しても死にかけるし・・・」

 

これ以上言ってもキリがない上に涙が出てきそうになるので止める。

 

「まぁいいや、さっさと寝よう」

 

部屋に着いた剣丞が襖を開ける。

他は中華風な部屋なのだが、何故かここだけ和室である剣丞の部屋の真ん中にある布団は恐らく月と詠が用意した物だろう。

 

「毎日ありがたいなぁ・・・ん?」

 

常にメイド服のようなものを着て生活している2人の姉に感謝しながら布団に潜り込もうとすると、布団の中でもぞもぞと動く物体があった。

 

「はぁ、またなの?美羽姉ちゃん」

 

布団をめくると、金髪の小さな姉がカタカタと震えながら丸まっていた」

 

「おお剣丞、助けてたもー!」

「助けてって、七乃姉ちゃんは?」

 

いつも美羽の世話をしている姉の姿が見えない。

剣丞はすぐに遊ばれていると見抜いたが、敢えて口にはしないことにした。

 

「それが今日に限って七乃はどこかに行ってていないのじゃ。このまま夜を過ごしたらあやつが、あやつが・・・」

「あやつ?」

 

どうせあの人のことだろうと推測する。

その予想を裏切らず、廊下から女性の声が聞こえてきた。

 

「みーーーーーーうーーーー?」

「やっぱり雪蓮姉ちゃんか」

「ぴぃ!身を隠せ剣丞!」

「いやそんなこと言われても・・・」

 

雪蓮と言われた声が徐々に剣丞の部屋に近づいてくる。

美羽と雪蓮は日頃からこうして逃走劇を繰り広げていて、その様はまるでライオンと羊だと剣丞は子供の頃よく思っていた。

 

「け、剣丞、今日は一緒に寝てくれぬかのう?」

「えーやだよ。美羽姉ちゃんと一緒に寝ると必ず姉ちゃんおねしょするじゃん」

「頼む剣丞!後生じゃ「みぃぃぃぃぃつけたぁぁぁぁぁ」ぴぃぃぃぃぃ!!」

 

部屋の襖を開けて雪蓮が姿を現す。

その後ろには苦笑いを浮かべる一刀の姿もあった。

 

「悪いな、夜分遅くに」

「あれ、一刀伯父さんどしたの?」

「さっき一刀が剣丞の部屋に行くって言ってたからね。美羽を探しがてら一緒に来たのよ」

「ぬ、主様ぁ~!助けてたも~助けてたも~!」

 

美羽が必死に一刀に助けを求めるが、雪蓮に間に入られてしまった。

 

「まさか2人の目標が同じ場所にあったなんてねぇ・・・手出ししないわよね一刀?」

「お、おう・・・」

「ぬじざまぁ~!」

「それじゃあ剣丞、頑張ってね!」

「頑張って?う、うん」

 

こうして美羽は雪蓮に拉致され、後には剣丞と一刀だけが残った。

 

「ヘタレだなぁ伯父さん」

「おいおい、雪蓮に俺が逆らえると思うか?」

「そりゃないけど・・・夫ならもっと堂々とすればいいのに」

 

はっはっはと笑って誤魔化した一刀の手には、先程の7本の刀と銅鏡があった。

 

「伯父さん、それって・・・」

「ああこれか?刀はもうお前の物なんだから肌身離さず置いておけ。こっちはまぁ、ついでだ」

 

一刀は刀をホルスターごと剣丞に渡し、銅鏡を畳の上に置いた。

 

「ついでってなんだよ・・・邪魔だから片付けてきてよー」

「まぁそう言うなって。それじゃあ剣丞、頑張れよ」

「あっ、逃げないでよ!」

 

言いたいことを言って一刀は部屋を出て行き、後には刀と銅鏡だけが残された。

 

「はぁー・・・相変わらず食えない人だ。もう寝よう、銅鏡は明日倉に戻せばいっか」

 

今度こそ剣丞は布団に潜り込み、夢の世界へと旅立つことを決めたのだった。

 

 

 

 深夜

 

寝息を立てる剣丞の近くに放置された銅鏡。

昼は何も映さずただくすんでいた鏡が、突然光りだした。

 

「くかー・・・んん・・・」

 

部屋を包み込む程の眩い光にも起きない剣丞。

しばらくして銅鏡は光を放つのを止め、部屋は元の暗闇が戻ってくる。

 

しかしその部屋に、剣丞の姿は無かった。

 

 

ちょうどその頃、中華風な部屋の中で1組の男女が晩酌を交わしていた。

 

「ついに行ったか・・・頑張れよ、剣丞」

「本当に行かせてしまってよかったのでしょうか、ご主人様」

「ハハハッ、愛紗は心配性だなぁ」

「そ、そんなことはありません!ただ・・・剣丞は大丈夫なのかと」

 

不安がる女のコップに、男は酒を注いでやる。

 

「・・・俺たちにできることはもうやり終えた。後はアイツがどうにかするしかないさ」

「剣丞・・・武運を」

 

女は長い黒髪をいじりながら酒を飲み、旅立った弟の顔を思い出すのだった。

 

 

 
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