No.66497

無題

星 倫吾さん

ついカッとなって書いてしまった。だが私は謝らない!
……エイプリルフールだしネ。

2009-04-01 22:37:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1526   閲覧ユーザー数:1417

「おはようございます、プロデューサー」

「ちはやん、おはよーん」

「プロデューサー、お話しがあるのですがよろしいでしょうか?

 出来れば……ここではなくて別の部屋で」

 

くだけすぎた挨拶に硬い表情を崩さないまま、千早はプロデューサーに言った。

よほど重要な話なのだろう……二人にとって。

 

「分かった。小会議室が空いているはずだから、そこで聞こう」

「ありがとうございます……あの、誰にも聞かれたくない話なので助かります……」

 

 

「朝早くからお時間を取らせてしまって申し訳ありません」

「ところで話というのは何だ?」

「はい。……ん……してしまったらしいのです……」

「すまん、よく聞こえんのだが……」

「……妊娠……して……」

「……不躾なことを聞くが、いつから生理が来ないんだ?」

「二ヶ月ほど来てません……。で、今朝、市販の判定薬で調べてみたら……」

「なるほど。避妊はしていても、100%じゃないからな。……で、千早はどうしたい?」

「え……?」

「これからのことだよ。千早の意見を聞かせて欲しい」

 

千早の中にもう一つの命を与えたのは、紛れもなく自分だ。

責任を取ると一言で言っても、カタチは一つではない。

出来れば彼女が望むカタチで取るのが、俺にとっての一番の誠心誠意でありたい。

 

一秒を刻むが一分にも感じられるほどの長い沈黙。

千早が重く唇を開いた。

 

「これから、お休みを頂いてよろしいでしょうか? 病院に行って……」

「行って、どうするつもりだ?」

「……事務所にも、プロデューサーにも、迷惑はかけられませんから……」

「待てよ、千早!」

 

意を決したように席を立った千早を、後ろから捕まえる。

 

「俺にはそれが千早の本心だとは思えないよ。

 大切な人を失った悲しみを知っている千早が、

 そう簡単に自分に宿った一つの命を消せるはずがないよ」

「簡単じゃありません。……私だって、本当は……」

「結婚しよう、千早」

「……え?」

「千早が母親になりたいなら、俺は父親になるまで、だろ?

 もう一人で抱え込むのは止めろよ、千早」

「プロデューサー……!」

 

 

「はーい、エイプリルフール名物、『どっきりカメラ』でーす

 もー、千早ちゃん、なんだかんだ言ってプロデューサーさんに愛されているんじゃない!

 憎いよこのど根性ガエル!」

「……え? じゃあ、千早、その、妊娠したというのは……」

「申し訳ございません……じゃんけんで負けなければ……くっ!

 でも、その嬉しかったです……プロポーズ……」

 

千早は何かに浸っているように、頬を赤らめたままうつむき、何かをかみしめているようだ。

 

「今のはノーカウント、無効だ! こっちは騙されていたんだからな!」

「まさか、男に二言はないわよねぇ? 心当たり、あるんでしょ?

 今ならたるき屋の特ランチ・デザート付きで口止めしてあげるわよ?

 ホラ、千早ちゃんも……」

「分かったよ、おごるよ」

 

 

「仲良きことは美しきことかな、だな」


 
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