No.662845

外史の果てに 第二章 天に遣える者として(三)

あさぎさん

お久しぶりです、化石もといあさぎです。
今回は新メンバーが出るとこまでです。

2014-02-13 09:12:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5134   閲覧ユーザー数:3678

拝啓、曹操様へ。

 

私、北郷一刀は今水鏡学院にやって来ております。

ただ、事前にここが女子学校という情報はやはり教えて欲しかった訳で。

才女が集まるとは言っていましたが、基本男子禁制とは知らなかった訳で。

男である私はとても居心地が悪い訳で……。

 

「どうかなされましたか、一刀様?」

「いや、男の俺は場違いかな……なんて」

 

苦笑した一刀は仲達の方を向き、そこにある光景に溜め息を吐いた。

司馬仲達は三国志において有名な軍師である。

歴史の前後はありつつもそれはこの世界にも反映されているようで、水鏡学院に着くなり仲達は学院の生徒たちに囲まれてしまった。

優秀な家系より生まれた稀代の天才。それに見合う容姿と振る舞い。

要するに世の女子の憧れの的だったのだ。

離れたところで質問攻めに合う仲達を眺め、どこか他人事のように思っていた一刀が、

自分は観光でもしていた方が良かったのではないかと思うぐらいは許してほしい。

 

「司馬懿様、あちらの殿方はもしや司馬懿様の…こ、恋人ですか?」

「それは……」

 

いきなり突っ込んできたなと思っていたが、仲達はもじもじと口篭もるばかり。

ならばと一斉に視線がこちらへ向けられ、一刀は思わずたじろいだ。

どう答えれば正解なのか。

さっきまでとは打って変わり、唾を飲む音すらも聞こえそうな沈黙が更に居心地を悪くし、背中からは冷や汗が落ちた。

一刀の自惚れでなければ互いに好意はあるだろうし、何かしらの切っ掛けで恋人という関係になりたいとは思っていた。

しかし、この状況で明言するのが良いものなのか。

もっとこう、ムードというか相応の場が必要だと考えるのは自分だけなのだろうか。

 

………。

 

「まだ恋人ではないかな…」

「まだってことは…いずれは!?」

「れ、恋愛において可能性にゼロはないよね」

「因みに北郷様から見て司馬懿様というのは……」

「ズバリ可愛いよね。綺麗だよね。付き合いたいよね」

 

言って恥ずかしくなりながらも、仲達の顔がこれ以上なく紅く染まり筆舌に尽くし難い程可愛いかったので後悔はしていない。

周りではキャーという黄色い悲鳴が上がっており、どんな時代でも女の子というのは人の恋路が好物なのかなと思う一刀であった。

 

 

 

 

 

軍師探しは一先ず置いておく事にして、一刀は学院内を歩いていた。

あのまま場に居続ければまた矛先がこちらへ向く事になっただろうし、あれ以上根掘り葉掘りと聞かれるのは勘弁してほしかった。

すまない仲達、後でいつもの頭なでなでしてあげるから許してくれ。

気分を変えるため学院内を少し歩いてみたが、天気も良く心地良い風が運ぶ仄かな香りと甘さは女学院特有のものだろうか。

普段であれば入ることのできない場所ということもあってか、イケナイことをしているようで気分が高まる。

まるで公に認めてもらった上で悪戯をしているような、そんな感覚。

思えばこの世界に来てからは生きることに夢中であり、男の処理なんてことはしてないなと意識してしまったらもう手遅れ。

思い出される仲達の柔らかな身体と、いつまでも深呼吸をしていたいと思うような甘美な香り。そしてここは男子禁制の女学院。

反応しても決してやましいことはないのだと誰にでもなく言い訳してみる。

ふと木に腰掛けて読書に耽る女性を見つけた。

悲しいかな、こんな時繕うように自ら話し掛ける見苦しい男の姿を、笑いたければ笑うがいい。

 

「こんにちは」

 

一刀の言葉に反応した彼女は、ゆっくりと視線を上げなぞるように一刀を眺めていた。

 

「こんにちは……殿方ってことは、貴方が先生の言っていた曹操様の……」

「初めまして、北郷一刀と言います。ごめんね、読書の邪魔しちゃったかな」

「あ…いえ、一度…読んだ本なので構いません」

 

パタンと栞を挟み本を閉じた彼女は、きちんとこちらに向き直ってくれた。

黒髪を腰あたりまで垂らしており、前髪で目が隠れているため表情は分かりにくい。

物静かな声のトーンと持っていた本から、一刀は文学少女という言葉を思い出した。

 

「私は……徐元直と言います。何か御用でしょうか?」

「あ、用と言う程の事はないんだけどって…え?徐元直って言った?」

「は、はい……」

 

いきなり大物を見つけってしまった。これはもしや…と思ったところで思い出す。

そういえば徐庶は曹操に親を人質に取られ、無理矢理雇用されたという話ではなかっただろうか。

それは非常に良くない。事は穏やかに進めねばならない。

しかしながら悩みに悩んだ挙句に、口を出たのは渋谷のスカウトのような言葉。

 

「あのさ、軍師とか……興味ないかな?」

 

後になって思い返すともっと気の利いた台詞はあったろうに。

しかし、一刀が彼女とここで出会ったことにより彼女の歴史は大きく変わっていくことになる。

 

 

 

あとがき?

 

書くつもりは無かったのですが一つだけ。改ページした方が良いですかね。

した方が良ければ言ってください。次回以降で改善したいと思います。それではー

 

 


 
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