No.662217

ランドシン伝記 第20話

ヴィル達は何とか港町へと潜入に成功した。
しかし、そんな中、騎士達による包囲網が
形成されるのだった。

2014-02-10 19:47:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:146   閲覧ユーザー数:146

 第20話  風守(かざも)り

 

 雨は次第(しだい)に勢いを増し続け、暴風雨と化していた。

 そんな中、ヴィル達は護衛民のザンフの案内で、

港町クーリカ-への潜入に成功していた。

 今、ヴィル達は廃屋(はいおく)と化した宿屋に、潜(ひそ)んでいた。

ザンフ「もう少し、嵐が弱まったら、漁船を奪います」

ヴィル「分かった。船の操舵(そうだ)なら俺が出来るから、そこで

    別れよう」

ザンフ「はい・・・・・・」

 そして、ヴィル達は時を待ち続けるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 一方で、護衛民のレイヴン達のもとには、黒い仮面を付けた

騎士達が訪れていた。

レイヴン「これは、これは憲兵さん-がた。どうなされましたか?」

 すると、憲兵の隊長格が前に出た。

憲兵「昨夜、重大な反逆行為が行われた恐れがある。何か、

   話しておく事は無いか?」

 との憲兵の鋭い言葉に、レイヴンは-ひるむ事なく、

口を開いた。

レイヴン「そりゃあ、どういう意味ですか?俺達は普通に

     任務を遂行していましたよ」

 それに対し、憲兵は無言でレイヴンを見据(みす)えた。

レイヴン(チッ・・・・・・嫌な連中だぜ。仮面をしているから、

     表情が読めねぇ・・・・・・)

 と、レイヴンは思うのだった。

憲兵「ドルフェ殿。この者達の心を」

 すると、影のように一人の魔導士が進み出た。

レイヴン(チッ。魔導士か。だが、ヒトの心を読む程の力を

     持ってるハズが無い。それは神話級の使い手か、

     もしくは読まれる側(がわ)に油断があるかだ・・・・・・)

 とは思うものの、ドルフェの魔力を見るに、あながち、

本当に心を読まれるのでは無いかと言う恐怖も感じずには

居られなかった。

 しかし、歴戦の衛士(えいし)である彼ら-は、そんな事を-おくびにも

出さず、ただ、黙ってドルフェの魔術を見据(みす)えるだけだった。

 そして、長い長い数分がたち、ドルフェは術式を解いた。

憲兵「ドルフェ殿。結果は-いかに?」

ドルフェ「・・・・・・この者達、何やら心に秘めているモノが

     ありまする」

レイヴン「おいおい。そんなん誰にだって-あるだろ?なぁ、

     お前ら」

 とのレイヴンの言葉に部下達は笑った。

 それを見て、憲兵は抜剣した。

レイヴン「穏やかじゃないな・・・・・・。茶化した事は謝るぜ」

憲兵「お前は・・・・・・上手く-ごまかしているつもり-なのだろうな。

   だが、本当にシロな者は-そのような態度は取らないのだ。

   もっと、怯(おび)え、震えるか、もしくは-つまらぬ疑いをかけ

   られた事に憤(いきどお)るか。いずれにせよ、お前達の反応は

   演技が見える」

レイヴン「・・・・・・・意味が分からないな」

憲兵「我々を舐(な)めるな・・・・・・。違うのだ。お前達の行動は

   違うのだよ。無実な者と・・・・・・。今まで、多くの

   犯罪者を捕らえてきた。犯罪者は息をするように

   嘘を吐(は)く。だが、犯罪者の演技とは過剰なのだ。

   演技をしている分、自然さが失われる。

   お前達は落ち着きすぎだ・・・・・・。抜剣」

 との言葉に、他の憲兵も剣を抜いた。

レイヴン「やれやれ・・・・・・良く分からねぇが、やるっつー

     なら、相手をしてやるぜ。ただし、後悔はする

     なよ」

憲兵「その態度も不自然だと、気付かないのか?

   一つ教えてやろう。犯罪者は-こちらが信じて

いるかどうかを知るため、こちらの表情を-

伺(うかが)って来る。もっとも、そのための仮面なの-

だがな。いずれにせよ、貴様ら-は、こちらの

顔を覗(のぞ)きすぎだ」

レイヴン「チッ・・・・・・。何でもいいぜッ、かかって来いよッ!

     知った事かッ!お前達には分かるまいッ!

     あいつらの可能性を。

     あいつらは希望だッ!この世界の希望だッ!

     誰もが獣人を憎んだ。誰もが獣人を殺すのを

     当たり前と思ってきた。それをあいつらは否定

     した。分かるか?その意味が。

     それは今は、誰にも理解されないかもしれない。

     しかし、いずれ誰もが、彼らの思想を知る。

     誰もが、彼らの意思を知る。

     たとえ、その名が歴史に残らずとも、彼らの行(おこな)いは

     残り続けるだろう。

     その芽をこんな所で、潰(つぶ)されてたまるかッ!」

 と叫び、レイヴンは抜剣した。

 それに、レイヴンの部下達は続いた。

憲兵「気を付けろ・・・・・・。この男、聖騎士でこそ無かったモノの、

   元(もと)-教導-騎士団だ」

レイヴン「はっ。教導-騎士団っつっても、聖騎士とか呼ばれて、

     自分達が選ばれた存在だと勘違いしちまった馬鹿共

     の-伸びきった鼻を、叩き直してやるだけの、簡単な

     仕事だがな」

憲兵「なるべく、生かしたまま捕らえろ」

レイヴン「ああ。そうして-やるよ」

憲兵「・・・・・・かかれ」

 との命令を合図に、両陣営は-ぶつかりあった。

 

 ・・・・・・・・・・

 雷鳴が港町に、なり響いた。

 そして、黒い甲冑(かっちゅう)に身を包んだ騎士達が周囲を捜索して

いた。

ヴィル(マズイ・・・・・・。この様子だと包囲網が形成されて

    いる。しかも、これはプロだ。今までの追っ手と

    違い、簡単には逃げられない・・・・・・)

 すると、護衛民のザンフがヴィルに近寄った。

ザンフ「俺が囮(おとり)に・・・・・・なりましょう」

ヴィル「しかし・・・・・・」

その言葉に対し、ザンフは答えず、ゴブリンのレククの

もとへ歩いて行った。

 その巨漢にレククは思わず、怯(おび)えてしまった。

ザンフ「君は・・・・・・ゴブリンの姫・・・・・・なのか?」

 とのザンフの言葉を黒猫に憑いたトフクが訳した。

 そして、レククは-こくりと頷(うなず)いた。

ザンフ「俺の妹はゴブリンに殺された。酷(むご)たらしい殺され

    方(かた)だった・・・・・・。妹は・・・・・・俺と違い、母に似て

    美しく・・・・・・自慢の妹だったッ」

 と言って、ザンフは言葉を区切った。

ザンフ「・・・・・・母は・・・・・・心を狂わせ・・・・・・病気で死んだ。

    父は、怒り、義勇軍に参加し、戻らなかった。

    俺は村を守るために、残り、生き残った。

    俺は・・・・・・ゴブリンを許せない。絶対に」

 そう言って、ザンフは大剣を抜いた。

トゥセ「おいッ!」

ヴィル「待て・・・・・・」

 ヴィルはトゥセを制した。

ザンフ「答えろ・・・・・・。お前は、ヒトを殺すか?ヒトを殺す-

よう命(めい)じるか?どうだ・・・・・・?」

 との言葉をトフクは訳した。

レクク「ごめん・・・・・・なさい・・・・・・。ごめん・・・・・・なさい」

 と、レククは泣きながら謝るのだった。

 それに対し、ザンフは-ため息を吐(つ)き、大剣を背に戻した。

ザンフ「怖がらせて・・・・・・すまなかった・・・・・・。その言葉で、

    俺は戦える・・・・・・。ヴィルさん、後は任せます」

 と言って、ザンフは強面をほころばせた。

ヴィル「ああ。任せてくれ」

 そして、ヴィルとザンフは互いに敬礼を交(かわ)した。

ザンフ「では・・・・・・」

 そう言い残し、ザンフは音も無く、その場を後にした。

 しばらくし、遠くから怒声と金属音が聞こえた。

ヴィル「行くぞッ!」

 とのヴィルの言葉に、ヒヨコ豆-団は、答えるのだった。

 

 ・・・・・・・・・

 雨の中、騎士達を相手に、ザンフは鬼神の如(ごと)くに挑んでいた。

 そして、ザンフは大剣を鞘に入れたまま振るっており、

未(いま)だ騎士達に一人も死者は出ていなかった。

 しかし、ザンフの一振りで、また騎士達が吹き飛んで行った。

騎士A「ば、化け物かッ・・・・・・」

隊長「ええい、囲め、囲めッ!背には、目は付いておらん」

 との騎士の隊長の言葉に、騎士達はザンフを囲みだした。

ザンフ「オオオオオッッッ!」

 とのザンフの叫び声で、周囲の大気は震えた。

 しかし、騎士達も怯(ひる)まず、果敢(かかん)に立ち向かうのだった。

 それに対し、ザンフは巨体に似合わず俊敏(しゅんびん)な動きで、次々と

騎士達を倒していくのだった。

 すると、屋根の上から何かが降ってきた。

 ザンフは-とっさに大剣で、それを防いだ。

 見れば、黒の軽装備に身を包んだアサシン(忍び)がザンフに対し、

次々と攻撃を加えていた。

ザンフ(こいつッ・・・・・・暗部〈あんぶ〉かッ・・・・・・)

 と、ザンフは確信した。

 そして、ついにザンフの鎧のつなぎ目に、アサシンの短剣が突き刺さった。

 しかし、ザンフはアサシンを蹴り飛ばし、距離を保(たも)った。

 すると、ザンフは体の異変を感じた。

ザンフ(これは・・・・・・麻痺(まひ)?・・・・・・毒では無いだけ、マシか)

 と思い直し、大剣を構えるのだった。

 一方で、アサシンは新たな短剣を抜き、仮面ごしに無表情に

ザンフを見据(みす)えるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 一方、ヴィル達は漁船を奪いに駆けていた。

 見れば、嵐の中、漁師達が、船が流れていかないように、

係留索(けいりゅうさく)を増していた。

ヴィル「あれを取るぞッ!」

 そして、ヴィル達は一番-大きな漁船に乗り込んだ。

漁師(りょうし)「おいッ!何すんじゃ、ワレッ!」

 と、漁師は怒鳴(どな)るも、ヴィルの大剣が向けられると、

大人しくなった。

ヴィル「これで、許してください」

 そう言って、ヴィルはクオーツからもらっていた金貨の袋を

置き、係留索を斬った。

 そして、漁船はヴィル達を乗せて、嵐の中、流されていった。

漁師「ワシの船・・・・・・」

 と、漁師はポカンと呟(つぶや)くのだった。

 すると、漁師の見習いである-乗り子が叫んだ。

乗り子「お、親方(おやかた)ッ!」

漁師「な、何じゃ?今、それどころじゃ」

 しかし、その目も-乗り子の持つ金貨の袋に吸い寄せられた。

 漁師はバッと金貨の袋を奪い、辺(あた)りをキョロキョロ見渡した。

漁師「よし・・・・・・盗難-届けを出そうかの。グフフ、これで、

   損失金が返ってくれば、大もうけ-じゃないか。

   お前達、今、見た事を内緒だぞ。内緒。グッフッフ」

 と言って、漁師の親方は高笑いをあげるのだった。

 しかし、彼は知らない。

 後に-それがばれ、詐欺(さぎ)として捕まる事を・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・

 ザンフは動きを鈍らせながらも、必死に剣を振るっていた。

 その視界は霞(かす)み、全身は小刻みに震え、冷たい汗が流れた。

 それでも、懸命にザンフは戦い続けた。

 そんな中、ザンフの意識は朦朧(もうろう)としていった。

 そして、過去の情景、燃えさかる村の姿が脳裏に蘇った。

ザンフ(俺は・・・・・・逃げてしまった。あの日、ゴブリンが攻めて来た時、

    戦えなかった。アンネが、妹が奴らに連れ

    去られて行くのを見ている事しか出来なかった。

    この大きな体は何のために、あるのか・・・・・・。

    大切なヒトを守るためじゃ無いのか・・・・・・。

    だが、俺は・・・・・・。

    いや、だからこそ、俺は、今度こそ、誰かを

    守りたい。たとえ、それがゴブリンの少女

    だったとしても・・・・・・)

 と、決意を固め、ザンフは雄叫びをあげ、大剣を振るうのだ

った。

    

 いつしか、ザンフの意識は穏やかな日差しの中にあった。

 そこでは麦わら帽子をかぶった美しい少女の姿が-あった。

 それはザンフの妹-アンネのかつての姿だった。

ザンフ「アンネ・・・・・・?」

アンネ『お兄ちゃん、私は大丈夫だよ。お父さんと、お母さんと、

    こっちに居るよ』

 とのアンネの言葉と共に、ザンフの父と母も現れた。

 そして、アンネ達の姿は薄れていった。

ザンフ「待ってくれッ!俺は・・・・・・俺は・・・・・・謝りたいんだ。

    俺は逃げたんだ。逃げてしまったんだ」

 と、ザンフは涙ながらに言うのだった。

 すると、母が口を開いた。

母『でも、あなたは立派に戦っているでしょう、ザンフ?今、

  あなたは-とても立派な行(おこな)いをしているのよ・・・・・・。

  今、あなたのした行いは、きっと-あなたを救うわ』

 すると、リンと錫杖(しゃくじょう)の鳴る音がした。

父『ザンフ・・・・・・。大丈夫だ。お前は大丈夫だ。

  だから、そう泣くな』

ザンフ「俺は・・・・・・俺は・・・・・・ッ、許されたいんだ。

    許されたい・・・・・・」

アンネ『お兄ちゃん、私は、お兄ちゃんを恨んでないよ。

    本当だよ。だから、自分を許してあげて・・・・・・』

ザンフ「自分を許す・・・・・・」

アンネ「うん。ああ、もう時間みたい。お兄ちゃん、元気でね」

 そして、アンネ達の姿は完全に消えていった。

父『お前に、ミロクの加護が-あらん事を・・・・・・』

 との父の言葉が最後に聞こえた気がした。

  

 雨がザンフの血を流していた。

 ザンフは意識を失ったまま立ち尽くしていた。

 それを騎士達やアサシンは囲んでいた。

 すると、ザンフは笑い出した。

アサシン「狂ったか・・・・・・」

 とアサシンは、ぼそりと呟(つぶや)いた。

ザンフ「お前達・・・・・・お前達には分かるまい・・・・・・。俺は今、

    許された。許されたのだ・・・・・・。これが、俺にとり、

    どれ程の意味があるか、分かるまいッ・・・・・・。

    やっと、やっと、俺は自身を許す事が出来たんだ。

    感謝しよう。ヴィルさん、ゴブリンの少女よ。

    あなた達の-おかげで、俺の魂は楔(くさび)から解き放たれた」

 そう言い、ザンフは再び、大剣をゆっくりと構えた。

アサシン「お前達は見ていろ。私が-やる」

 そう言って、アサシンは魔力を高めた。

 一方で、ザンフは大剣に残る魔力を通すのだった。

 雨の音のみが辺りに満ちた。

 そして、アサシンが暗殺技を放ち、それをザンフが迎え撃った。

 次の瞬間、アサシンは吹き飛ばされ、騎士達にぶつかり、

地面を転がった。

アサシン「あ・・・・・・ガッ・・・・・・」

 と、呟(つぶや)き、アサシンは倒れた。

ザンフ「安心しろ・・・・・・。急所は外してある・・・・・・」

 と、ザンフは呟(つぶや)くのだった。

しかし、一方で、ザンフの右肘(ひじ)には、短剣が刺さっており、

ザンフの右腕は-もう動かなかった。

 そして、ザンフは大剣を地面に落とした。

隊長「か、かかれッ!」

 との隊長の言葉に、騎士達は一斉(いっせい)に襲いかかった。

 それをザンフは拳で殴りつけるも、次第に、残った-わずかな

体力も失われていった。

ザンフ(ヴィルさん・・・・・・どうか、ご無事で・・・・・・)

 そして、ザンフは意識を失うのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 ヴィル達は大時化(おおしけ)の中、必死に船が転覆(てんぷく)しないように

働いていた。

トゥセ「やべぇ、これはマジで、やばいって!

    カシム、結界とか張れないのかよッ」

 と、トゥセは叫んだ。

カシム「ッ、既(すで)に張ってます。ただ、長時間、これだけ大きな

    船にかけるとなると、どうしても微弱な結界になって

    しまうんです」

 と、カシムは叫び返した。

ケシャ「・・・・・・マズイですね。来ます」

 と、茶猫のケシャが呟(つぶや)いた。

 すると、嵐の中を何かが近づいて来た。

トゥセ「おいッ。う、嘘だろ・・・・・・」

 と、トゥセは唖然(あぜん)としながら言った。

アーゼ「風守(かざも)り・・・・・・」

 とのアーゼの呟(つぶや)きと共に、風守(かざも)りの

サリアは船へと降り立った。

ヴィル「・・・・・・サリア・・・・・・なのか?」

 とのヴィルの言葉に、サリアは悲しげに告げるのだった。

サリア「ヴィルさん、あなたをククリ島へと行かせるワケには

    いきません」

 と。

 

 ・・・・・・・・・

 

 


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