No.661946

ランドシン伝記 第19話

風守りのサリアはヴィルの事を思いだしていた。
一方で、聖騎士ミリトは嵐の中、一本の剣を
拾うのであった。

2014-02-09 18:19:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:141   閲覧ユーザー数:141

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 第19話 聖十字の剣(つるぎ)

 

 子供達が港町の外(はず)れの砂浜で遊んでいた。

 そこを風守りの女性が歩いて来た。

少年「あ。サリアお姉ちゃん」

 と、少年は手を止め、嬉しそうに言った。

サリア「みんな。今日も元気そうだね」

 との風守り-サリアの言葉に、子供達は元気よく答えた。

少女「お姉ちゃん。お話、聞かせて」

サリア「お話?そうね。じゃあ、今日は少し昔の話を

    しようかな」

少年「獣魔-大戦の?」

サリア「そう。この街の英雄の話を・・・・・・」

 そう言って、サリアは語り出すのだった。

 

 今から、十数年前、獣人達がヒトの国々に攻めてきました。

 その時、この国、エストネアにもゴブリンの大部隊が押し寄せて来ました。

 でも、エストネアは海軍が弱く、ゴブリンの海兵隊に、次々と軍船は

沈められ、上陸を許してしまいました。

 その後、何とか戦線を持ち直したエストネアは残った海軍を

王都-周域を守護する形で配備しました。

 でも、その結果、そこから外れた海岸には海軍は置かれませんでした。

 そう、この港町クーリカにも・・・・・・。

 軍の偉い人達は、ゴブリンが上陸しても、陸の上で叩けば

いいという考えだったの。

 

 すると、子供達は-あくびをし出した。

サリア「ご、ごめんね。今日は難しく話(はな)し過ぎちゃったね。

    えぇとね。でもね、危険なのに港町からは避難命令

    が出なかったの。それで、ヒトが大勢いる中、

    ゴブリンの軍船が押し寄せてきたの。この街に」

 と、説明し、サリアは記憶を呼び戻した。

 

 人々は悲鳴をあげて、港町から脱出しようとしていた。

 しかし、多くの者が大きな荷物を抱え、のろのろと逃げるのだった。

 そして、ゴブリンの船は-あっさりと上陸をし、烈火の如くに

侵略が開始された。

 自治組織である護衛民も必死に立ち向かったが、すぐに、

その喉(のど)をかっきられていった。

 当時、幼いながらも風守り-であったサリアも必死で闘った、

 しかし、すぐに魔力と体力は底を尽き、ゴブリンの戦士達に

囲まれてしまったのだった。

 サリアが死を覚悟した時、音が聞こえた。

 角笛の音。銅鑼(どら)の音。敵を威嚇(いかく)する-その音と共に、

騎士の遊撃-中隊が騎馬に乗って駆けつけて来た。

 そして、騎士達は騎馬から降り、一気にゴブリンへと

襲いかかった。

 その-すさまじい混戦の中、サリアは一人の聖騎士に

助けられた。

 それこそ、若きヴィルであった。

 そして、ヴィルはサリアに-大した外傷が無い事を見るや、

部下に彼女を任せ、騎馬に乗り、指揮を再開するのだった。

 結果、わずか数時間で、ゴブリンの部隊は撤退し、船に

乗って逃げ帰るのだった。

 夕暮れの中、無事に戻って来たヴィルを見て、思わず、

サリアはヴィルに抱きつくのだった。

 それに対し、ヴィルは困った表情を浮かべるも、

サリアの頭を優しく撫(な)でるのだった。

 

サリア「ヴィルさん-は、本来、この街は守護する部隊では

    無かったのに、助けに来てくださったの。

    『後で、怒られる』って言ってたわ」

 そう言って、サリアはクスクス笑うのだった。

少女「サリアお姉ちゃん、本当にヴィルさん-が好きなんだね」

サリア「そ、そんな。べ、別に・・・・・・好きとか、そんなんじゃ

    無くて、ただの憧れで・・・・・・」

 と、サリアは顔を赤くしながら言うのだった。

少年「嘘だー。だって、お姉ちゃん、この話する時、すごく

   楽しそうだもん」

 との少年の言葉に、子供達は『ねー』と相づちを打つのだった。

サリア「も、もー」

 と、サリアは困ったふうに言うのだった。

 すると、遠くから、黒い鎧に身を包んだ騎士達が歩いて来た。

サリア「みんな、ごめんね。少し、下がってて」

 そして、騎士達はサリアの前で足を止めた。

騎士「風守(かざも)りのサリア殿ですね」

サリア「はい・・・・・・」

騎士「ヴィル・・・・・・という剣士の名をご存じですか?」

サリア「はい・・・・・・」

騎士「それは良かった。話し-が早い。そのヴィルが反逆者と

   なりました」

サリア「反逆者?・・・・・・そんな・・・・・・何かの間違いでは?」

騎士「いえ。剣聖シオン殿の証言も-あります。ヴィルは

   ゴブリンをかくまおうとし、現在、共に逃亡して

   おります。そして、彼らの目的地はククリ島です」

サリア「あ、あの・・・・・・突然すぎて、おっしゃっている意味が

    良く分からないのですが・・・・・・」

騎士「申しわけありません。詳細は-この書状に記(しる)してあります。

   ですが、反逆者ヴィルは、この港町の船を利用して

   ククリ島へと向かう可能性が高いのです。どうぞ、

   反逆者、捕縛の-ご協力を」

サリア「あ、あの・・・・・・一つ、よろしいでしょうか?」

騎士「はい」

サリア「もし、捕縛されたとして、ヴィルは・・・・・・どうなって

    しまうのでしょうか?」

騎士「・・・・・・確定的な事は言えませんが、無罪と言うワケには

   いかないでしょう。しかし、今回の場合、色々と複雑で

   あり、恐らく、情状酌量の余地があると見なされ、

   恩赦(おんしゃ)が出ると思われます」

サリア「なら、ヴィルは-その、ひどい目には-あわないのですか?」

騎士「大人しく投降すれば、禁固数年-程度の罰で済むでしょう。

   しかし、万一、彼がククリ島へと辿(たど)り着いてしまった

場合、もし、再びエストネアの大地を踏めば、死罪を

覚悟する必要が出るでしょう」

サリア「し・・・・・・死罪・・・・・・」

騎士「ともかく、ご協力の程を、風守(かざも)り様」

サリア「わかり・・・・・・ました・・・・・・」

 と、サリアは青ざめた顔で、何とか返答するのだった。

 辺(あた)りは風が強まり、嵐の訪れを予感させた。

 

 ・・・・・・・・・・

 一方、白百合-騎士団と第三皇子のクオーツは騎士団の

地方支部へと辿(たど)り着いて居た。

エリー「何とか、雨の前に辿(たど)り着けました」

 と、聖騎士エリーはホッとしたように言った。

クオーツ「ええ。ところで、隊長さん-は大丈夫ですか?

     ずいぶんとショックを受けていたみたいです

     が」

エリー「はい。ですが、ミリト様は-お強い方です。今回の

    件もバネにして、必ずや成長なされる事でしょう。

    ですから、今は護衛も付いている事ですし、そっと

    しておこうかと・・・・・・」

クオーツ「信じられているのですね、聖騎士ミリトさん-の

     事を」

エリー「はい」

 と、エリーは嬉しそうに答えるのだった。

 すると、支部から二人の男が歩いて来た。

クオーツ「あれは・・・・・・」

エリー「せ、聖騎士ロー殿ッ。全体、止まれ」

 と言って、エリーは行進を止めた。

エリー「聖騎士ロー殿に敬礼ッ!」

 そして、白百合-騎士団は一斉に敬礼をした。

 それに対し、ローは敬礼を返し、そして、解いた。

ロー「ああ。今は、そうかしこまらないでくれ。私などより

   よっぽど尊い方が-おられるのだから」

エリー「全体、休めッ!」

 とのエリーの言葉で、敬礼が解かれた。

ロー「皇子殿下・・・・・・よくぞ、よくぞ、お越し下さいました」

 と、ローは片(かた)膝(ひざ)を着きながら、言うのだった。

 さらに、ローの従者とおぼしき小柄の男も、それにならった。

クオーツ「どうか、顔を上げて下さい」

ロー「ご命令とあらば」

 そう言って、ローと小柄な男は立ち上がった。

ロー「本来ならば、騎士が総出で迎えるべきでしょうが、

   今回の件は内密に済ませたいため、このような歓待

   で終わる事をお許しください」

クオーツ「いえ。聖騎士ローさんが直々に出迎えてくださり、

     嬉しいです」

ロー「もったいない-お言葉。さ、どうぞ、中へ。雨で殿下の

   御髪(おぐし)が濡れてしまっては-いけませぬ」

 と言って、ローはクオーツを支部に招くのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 クオーツとエリーと、ロー達は談話室に居た。

ロー「ここは、結界が有りますので、盗聴の恐れがありません」

 とのローの言葉にクオーツはホッとした様子を見せた。

ロー「しかし、無茶をなされる。まぁ、今回の件は私が責任を持って

   もみ消しておきましたが」

クオーツ「ありがとう-ございます」

ロー「いえ。とはいえ、元老院や王宮の諜報部(ちょうほうぶ)には-

   どうしても情報は漏れるでしょう」

クオーツ「でしょうね」

ロー「皇子殿下。今回、何故、エシュタス皇がククリ島への

   侵攻を強行されようと-しているか、ご存じですか?」

クオーツ「いえ」

ロー「まず、これには元老院と王宮との対立があります。

   我がエストネア皇国は、王宮をエルフ、元老院を人間、

   というように、種族により、政治的な地位が違います。

   そして、王宮と元老院は互いの権力を奪い合い、少し

   でも自分の力が増すように暗躍しているのです」

クオーツ「それは・・・・・・わかります・・・・・・」

ロー「しかし、それは内戦を引き起こしかねない非常に深刻な

   問題です。では、皇子殿下、その対立を解消するには-

どうすればよいと、思われますか?」

クオーツ「共通の敵を作る・・・・・・」

ロー「その通りです。それこそがエシュタス皇の狙いかと、

   私は考えます」

エリー「なる程、確かに-そう考えると-つじつまが合いますね」

ロー「ええ。今回の遠征は-その正否は重要で無い。種族の対立を、

   仮想敵へ押しつけたのです」

エリー「聖騎士ロー。それ以上は、皇族批判に当たります」

ロー「これは失敬。ですが、皇子。となると、皇子殿下が

   ゴブリンと仲良くされたら、困る者達も居れば、

   喜ぶ者達も居るワケです」

クオーツ「はい・・・・・・」

ロー「ともかく、お気をつけください、皇子殿下。貴方は

   今、非常に重要な立場に-おられるのですから」

クオーツ「分かりました。しばらく、身を潜めようと思います」

エリー「しかし、元老院や王宮は-どのように動くと考えますか?」

ロー「難しいですね。そもそも、元老院と王宮は表だって争う

   気は無いのです。内戦などとなれば国力がおち、

   近隣諸国や獣人の-いい餌食(えじき)でしょう。

   とはいえ、中には純血派も居ますからね。

   特にエルフでは-その思想に染まっているモノも多い。

   彼らは人間とエルフの子供、ハーフ・エルフを差別し、

   蔑(さげす)む。もちろん、人間の中でも、ハーフ・エルフを

   忌み嫌う年寄りは居ますがね」

エリー「ですが、エシュタス皇の-お働きにより、差別は大分、

    解消されたと思いますが」

ロー「ええ。そして、その意思を最も濃く継いでいるとされるのが、

   クオツェルナス殿下、貴方なのです。貴方は他の皇子殿下と違い、

   人間からの支持を圧倒的に得ている。だからこそ、まぁ、色々と

   問題に-なっているワケですが」

クオーツ「はい・・・・・・」

エリー「となると、今回の一件は純血派にとり、大きなネタ

    でしょうね。もし、今回の一件が公になれば、

    ククリ島への侵攻に疑問を持つ国民も出て来る

    やも知れません。そうなれば、国民の目は外から

    内に向かい、エルフと人間の両種族の対立が増す」

ロー「さらに、皇子殿下の人気が落ちれば、人間種の王家への

   信頼も下がるワケで、これも純血派にとっては-おいしい

   ワケですね」

クオーツ「すみません・・・・・・良く考えずに行動をしてしまい」

ロー「いえ。ですが、結果的には良いのかも知れません」

エリー「と言いますと?」

ロー「皇子殿下の人気は圧倒的です。そんな中、今回の件が

   噂になれば、国民も、獣人とヒトが争う無意味さを悟る

   でしょう。その時、エルフと人間が争う無意味さも同様に

   悟るやも知れません」

エリー「なる程・・・・・・。しかも、今回の一件、決定的な証拠

    が無いため、何が真実かを国民は議論するでしょう。

    そうなれば、より一層、深く種族に関して考察する

    事になるでしょうね」

クオーツ「な、なる程・・・・・・。な、何か他人事みたいに聞いて

     るんですが、俺は-どうすれば良いんでしょうか?」

ロー「ともかく、今は身を潜めてください。今回の件で、

   皇子殿下が目立(めだ)てば、最悪、他の王位継承者から暗殺者

   が送られる可能性もあります。考えたく無い話し-ですが」

クオーツ「いえ。だからこそ、俺は王位継承権を捨てて、放浪の旅

     に出ているワケなんですが」

ロー「まぁ、皇子殿下ほどの実力ならば、毒も奇襲も効かない

   でしょうが、万一もあります。この従士カポルを連れて

   いって下さいませんか?きっと、お役に立つと思います」

 と、ローは小柄な男のカポルを紹介した。

クオーツ「・・・・・・分かりました。じゃあ、よろしく、カポル」

 と、クオーツは手を差し伸べた。

カポル「は、はいッ!お、オイラ、が、頑張りますッ!」

 と、カポルは-どもりながらも、返事をし、手を服で必死に

こすって綺麗にし、おそるおそるクオーツの手を握った。

ロー「さて、では、善は急げ-です。この支部の中も安全とは

   言えません。ローブを用意して-あります。よろしければ、

ここの-隠し通路から、どうぞ、お出になって下さい」

 そう言って、ローは黒いローブをクオーツに差し出した。

クオーツ「何から何まで-ありがとうございます」

ロー「いえ。実は騎士団の中にも裏切り者が居るようなのです。

   エルフを憎む、純血派が・・・・・・」

クオーツ「ええ。私も以前、騎士団の宿舎で毒を盛られた事が

     あります・・・・・・」

エリー「そ、そんな事が・・・・・・」

クオーツ「ともかく、俺を軍事や政治に関わらせたくない者

     が居るのは確かです。今の所、旅の間は、暗殺を

     受けた事は-ありません。ただ、これからは今-以上

     に気をつける事にします」

ロー「是非、そうしてください。じゃあ、カポル。皇子殿下の

   案内と護衛を頼んだぞ」

カポル「了解」

 と、答え、カポルは床の隠し扉を開いた。

 すると、ローは奇妙な感覚に捕らわれた。

 自分の手の平から、光の雫(しずく)が-こぼれ落ちる感覚。

 ローの背筋に嫌な汗が伝った。

ロー「カポル・・・・・・」

カポル「隊長?どうしました?」

ロー「・・・・・・いや、何でも無い。気を付けろよ」

 そう言って、ローはカポルの頭を軽く撫(な)でた。

カポル「はいッ」

ロー「・・・・・・じゃあ、行ってこい」

カポル「はい。じゃあ、皇子殿下。付いて来てください」

クオーツ「分かった。あ、そうだ。俺の事は-これからは

     クオーツって呼んでくれ。いいかな?」

カポル「は、はい・・・・・・クオーツ様。では、参ります」

 そう言って、カポルは隠し階段を降りていくのだった。

クオーツ「では、聖騎士ロー、聖騎士エリー。失礼します」

ロー「ご武運を」

エリー「偉大なる皇(おう)の末裔(まつえい)に栄光あれ・・・・・・」

 そして、二人の聖騎士はクオーツに対し、敬礼をするのだっ

た。

 それに対し、クオーツは軽く敬礼を返し、急ぎ、隠し階段を

降りていくのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 雨が降り出していた。

 女騎士達の声が響いた。

女騎士A「ミリト様ッ!どこに-いらっしゃるんですッ!

     ミリト様ッ!」

 と、女騎士Aは叫ぶも、返事は無かった。

 すると、別の女騎士が駆けてきた。

女騎士B「おられたッ?」

女騎士A「駄目ッ!何て事。雨も-ひどくなってきてる

     のに」

女騎士B「私が一瞬、目を離したから・・・・・・」

女騎士A「仕方ないよ・・・・・・。まさか、用を足されると、

     嘘をおっしゃってまで-お逃げになるなんて・・・・・・」

女騎士B「でも、何処(どこ)へ行(ゆ)かれたの?」

女騎士A「分からないよ・・・・・・。でも、探そう。命に代えても

     探さないと」

女騎士B「そうだね・・・・・・」

 そして、二人は別れ、それぞれ聖騎士ミリトを探すのだった。

 

 一方、聖騎士ミリトは-うなだれながら野原に倒れていた。

ミリト「フフ・・・・・・雨、心地良い。フフ・・・・・・私が馬鹿だ。

    フフフ・・・・・・。私は求められていない。皇国のため、

    今日まで身を削って、鍛錬(たんれん)を積んできた・・・・・・。

    でも、全て否定された。否定されちゃったよ。

    実力も理念も・・・・・・全て・・・・・・。

    ふ、フフフ・・・・・・。

    私、どうしよう。どうすれば-いいのかな?

    何の為(ため)に生きれば-いいんだろう。

    フッ、お嫁さん-にでも、なろうかな・・・・・・」

 そこまで言って、ミリトは高笑いをあげた。

ミリト「出来るワケが無い・・・・・・。もう、淑女(しゅくじょ)には戻れない。

    騎士にもなれず、妻にもなれず、中途半端で使えない

    私・・・・・・。

    私、私、私・・・・・・。私・・・・・・」

 すると、ミリトは立ち上がった。

ミリト「違うッ!私は、私は-こんな所で終わりはしないッ!

    いずれ、あいつらに目に物を見せつけてやるッ!

    私、私はッ、こんな所で負けは-しないッ!

    天よッ!もし、私に生きるべき価値があるのなら、

    それを示してみよ。もし、無いのなら、その雷(いかずち)で

    我が肉を焼き尽くせッ!天よッ!」

 次の瞬間、雷光が-ほとばしった。

 一瞬、遅れて轟音(ごうおん)が響き、ミリトの意識は白に包まれた。

ミリト「う・・・・・・」

 気付けば、雷は間近に落ちており、周囲の草が-かすかに

燃えていた。

 地面は抉(えぐ)られ、周囲は-わずかに帯電していた。

 その中心に一本の剣が落ちているのをミリトは見た。

ミリト「こ、これは・・・・・・」

 そう言って、ミリトは剣に触れるも、剣に残っていた雷が

ミリトに流れ込んだ。

ミリト「ッ・・・・・・」

 痛みで顔をしかめるも、ミリトは-その剣を手放さなかった。

ミリト「この剣の紋様は・・・・・・聖十字?」

 と、ミリトは呟(つぶや)くのだった。

 しかし、彼女は知らない。

 その紋様は正統なる聖十字とは違い、微妙に歪んでいた事を。

 その時、ミリトの頭に鐘の音が直接-鳴り響いた。

ミリト「な、何ッ?」

 すると、いつの間にか雲は晴れ、雲の切れ目から光が差し込み、ミリトを照らしていた。

ミリト「え・・・・・・」

 見上げれば、そこには白い衣(ころも)をまとった神秘的な老人が

宙に浮かんでいた。

ミリト「あ、あなた様は・・・・・・」

 すると、老人が口を開いた。

老人「聖騎士ミリトよ。そなた-は選ばれた。そなた-は神の教えを

   この亜大陸に広めるという聖使命を持つのだ。

   獣魔を祓(はら)え。邪教を砕け。しかし、何も恐るる事は無い。

   そなた-は神の加護と共に-あるのだから」

 そして、老人は天へと昇っていった。

 ラッパを吹き鳴らす小さな天使達が老人の周りを飛び、

ミリトを祝福していた。

 気付けば、ミリトは意識を戻していた。

 あたりは、依然(いぜん)として、雨が強く降りそそいでおり、ミリトの

体を冷たく濡らしていた。

ミリト「夢・・・・・・?違う。私は確かに、得た・・・・・・。

    得たのだ・・・・・・天恵(てんけい)を・・・・・・」

 と、言って、震える手で聖十字の剣を掲(かか)げるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 


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