No.661274

東方百合事記1~パチェvアリ

初音軍さん

最近ブログに載せていたものを投稿します。
自分の中では安定のパチェアリですね。
アリスの夢の中に入ったりイチャイチャするだけの話ですが
よければみてってください。
他の新しい子たちの話も書いてみたいですが、

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2014-02-07 18:41:17 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1544   閲覧ユーザー数:1542

百合事記1~パチェアリ

 

<パチュリー視点>  

 

 最初はライバルというには格下で、後のパートナーになるには頼りない。

そんな元人間の魔法使いのアリスと知り合ってから徐々に

私の生活に色が出るようになった。  

 

魔法のことを教えている内にお互いの事情がわかってきて

友人に対するそれと似たような感情も芽生えてくる。  

 そういう感覚は何十年ぶりって感じで懐かしささえ覚えるくらいであった。

私の様子を見た親友のレミリアは好ましそうに悪戯めいた表情で笑いながら

時折トラブルを混ぜながらも私達の関係を応援してくれている。

 

 アリスとの関係が友とは違う道に入ってからもそれは変わらなかったし、

充実した生活に私もアリスも満足していた。そんな時だった。

 

 いつものように遊びにきていたアリスと本を読んでいるといつの間にか

眠気に襲われるようになり気付けば私の意識は溶け込んでいって

別の世界に誘われていた。夢の世界に…。

 

 

 えーん…えーん…  子供の泣くような声が真っ暗の空間の中で

響いていたのを聞いて私は目を覚ました。

 

 ひんやりして、心さえ冷えてしまいそうな中で小さく縮こまって

少女は泣いていた。

 

 後姿からしか確認が取れないが金髪で青を基調した

服とリボンをつけて初めてみたはずの人物なのにすごく身近に思えて

私は少女に気付かれないように少しずつ近づいていって

肩に手を乗せようとすると、霧のように霞んで消えていく。

 

 するとまた離れた場所に少女は同じように泣いていた。

何度か同じことしている内に私は少女に触れるには

何かの法則があるのではないかと模索した。

 

 まるで魔法の現象に近いものがあるから私は必死に考えるも

何も浮かばない。あまりに手がかりになるものが少ないから。

 

 それに…見覚えがないのに見覚えがあるように感じる

不思議な少女の顔をぜひとも見たかったから。

私には珍しいくらい積極的に動こうとしていた。

 

 その気持ちが言葉となって私は少女に声をかけた。

 

「あなたはだれ?」

「・・・あなたもだれ?」

 

 山彦のように似た言葉が涙ぐんだ声で返ってくる。

振り返る様子はない。だけど、声を聞いた私は自然と言葉が続いてきた。

 

「泣かなくて大丈夫よ、私がいるわ」

「・・・」

「何で泣いているのかしら・・・」

「・・・」

 

 それから何を言っても山彦すら返ってこなくて、

私は恐る恐る彼女に近付いていく。

 

 消えてしまう前に私は自ら名乗る。

 

「私はパチュリー、パチュリー・ノーレッジよ。あなたは?」

「アリス・・・」

 

 名前を聞いて確信した。

これは夢の中でここにいる少女は過去の彼女なのだと。

相変わらず振り返らない少女を怖がらせないように近づいていく。

 

 何度も何度も慎重に声をかけながら。

一つ間違えたら二度と会えないかもしれないという緊張を持ちながら。

まるで一つ一つの暗号を解くように爆弾の解除装置を

外すような慎重さを持ちながら。何度も私は彼女に声をかけた。

 

 そんな悲しそうにしてほしくないから。

「何があったかわからないけれど、私が傍にいるから。何があっても離さない」

「ほんと?」

「えぇ…」

「うん…」

 そういうとやっと振り返って泣き崩れた表情から無理にでも

笑顔にしようとするその表情にやられる。

 

 胸に刺さるような切ない気持ちになった。

私はあまりにアリスの過去について何も知らないし、

知ろうともしなかった。

 

 そもそもアリス自身が私に何かを語ろうともしなかったから。

自然とそういう形に収まったのだけど。

 もし目の前にいる今にも崩れて消えてしまいそうな少女のような

気持ちでいるんだったらあまりに不憫ではないか。

 私がアリスの手を触れた刹那。

まるで津波のような強い波に襲われて意識ごと奪われそうな感覚に襲われ

私はアリスと繋いだ手を離さないように必死に手に神経を集中させていた。

 

 やがて私の意識は遠く遠く離れていって。

目覚めた時にはいつもの魔法図書館の中にある机の上にいた。

 

 体を起こしてからしばらくぼんやりした後にアリスと一緒に本を

読んでいたことに気付いたが今目の前に彼女の姿はなかった。

 

 ドクンッ

 

 急に胸を打つような不安が波のように押し寄せてくる。

その時だった、近くに小悪魔が通ってきたから慌てるように

私は小悪魔にアリスがどうしたのか聞いた。

 

「アリスは?」

「先ほど目が覚めて帰っていきましたよ。パチュリー様を起こそうかと

聞いたのですが申し訳なさそうにして、断って・・・。

あ、そうだ。一冊本を借りていきま・・・」

 

 小悪魔の言葉を途中から切って私は入口に向かって飛んでいった。

このまま会えなくなったらどうしようという不安を抱えて。

 

 後々考えれば夢の出来事なんだから夢のように泡のように

消えたりはしないのだろうけど。

 今の私は無性にアリスに会いたくてたまらなかったのだ。

ゆっくり玄関まで歩いていたアリスに追いついて彼女の腕を強く掴んで

振り返らせるように引っ張ると、びっくりした表情をしながら私の顔を見ている。

 

「驚いた~。いったいどうしたの?」

「あ・・・ごめんなさい。急にいなくなったから」

「あぁ、それは悪かったわ。夢を見ていて、何だか貴女と顔を

合わせるのが気まずかったから・・・」

「夢?」

 

 私の顔を見るアリスの表情からは徐々に赤みさしていくのがわかった。

そしてアリスが脇に抱えてる本のタイトルがちらっとわずかに見えて気付いた。

 それは夢に関することを書かれている魔導書だった。

魔法と夢について関連付いたことやその周りとの関係によって

どう変化するかといったものも書かれている。

 

 私はこれまでずっと一人きりだったから今まであまりに無関心だったが…。

今回のことで完全に考えが変わっていた。

 

「これを使って・・・?」

「そうかも」

 

 意識して使っていたのではない、と彼女は言う。

その表情からは嘘は見受けられない。

 最近の私との関係を意識して読んでいるうちに眠気に襲われたのだという。

 

「恋人関係の人が見たらどういう夢を見るんだろうって思って調べてたのよ。

それに女同士だし、尚更ね。でもずっと読んでも何も書いてなくて」

 

 そのうち眠気の方が勝ったということらしかった。

 

「多分…アリスと同じ夢を見ていたかもしれないわね」

 

 アリスの目元がやや赤くなっていることに気付いて夢で泣いていたのが

そのまま現実に反映されているのだろうって思った。

 

 恥ずかしそうにするアリスだけど、そのあとは私が思うのとまったく違う反応を見せた。

 

「これはうれし泣きよ」

「え?」

 

 私が不思議そうに思うとアリスは照れ臭そうに私の手を取ってそっと

握ってくれた。暖かくて柔らかいアリスの手

 

「ずっと握っていてくれてありがとう」

「アリス・・・」

 

 私の中では最後まで握れていたかわからなかったけど、

彼女の方では私はしっかりと存在してくれていたらしい。

 

「それはよかったわ」

 

 本心がそのまま口に出ていく。

 

「これからは心細いときとか、孤独に感じる時には貴女を思っていていいのよね」

 

 アリスが切なそうにその言葉を口にすると私は静かに頷いて

握った手をわずかに力を加えて返事をする。

 

「パチュリー。私、あなたと出会えてよかったわ」

「アリス・・・」

 

 んっ  刹那、言葉にならないように口と口が重なりあっている。

互いの存在を確かめ合うように深く深く、私たちはキスをした。

 

 ねっとりとした感触が蠢いていて、何だか気持ちよくてこそばゆくて。

さっき図書館内で飲んでいた紅茶の香りが微かに鼻をついた。

 

「んんっ・・・」

「んぁっ・・・」

「ん・・・ふぅ・・・」

 

 ため息のような喘ぐ声が口の端々から漏れていく。

耳に入ってくるその声はとてもいやらしくて顔も熱くなってくる。

 

 種族とか寿命とかまったくその時は考えないで二人が想う気持ちが同じことを

確かめ合いながら時間を忘れながらキスを続けた。

 

 

 キスをしている内に無意識に両手を指を絡めるように握りながらしていたのが、

離れた時に気が付いて。

 

 誰にも見られていなかったのを確認してから

アリスと次の約束をしてから別れた。

 

 彼女との時間が過ごせないのがとても名残惜しいが、

向こうは向こうの生活があるから仕方がない。

 

 そう思いながら振り返る。

 

 彼女の過去に踏み込むことは恐らくできないのだろうけれど、

キスの後に語った彼女のことを信じて私は一緒にいるのだと確信できた。

 

『私の過去はパチュリーの知るところではないけど。

もう過去のことには縛られない。これからは別の人生として貴女の傍にいるから』

 

 それで大丈夫なのだろうかと問いかけたがアリスの表情からは清々しい

雰囲気が出ていて大丈夫だと感じていた。

 

 悩みは無いといったら嘘になるだろう。

しかし、一度結論を決めたことなのだからフラッシュバックのように思い出しても

傍に私がいてくれれば安心できるということだろう。

 

 彼女は上手く辛い過去と付き合ってるようだ。

 

「もうあんたたち結婚したらどうなのよ」

 

 玄関入るとすぐにレミィが呆れたような顔をしてチューのポーズをとって私をからかってきた。

 

「あ、あんた・・・。見てたの!?」

「もうバッチリ。他の子たちも見ていたわよ。小悪魔に咲夜、ほかにも」

「いやあああああ!」

 

 想像するだけで顔から火が出そうだった。

私はそれ以上聞きたくないからものすごい勢いで図書館まで

全速力で飛んで逃げるようにした。

 

 それからしばらくは誰とも顔を合わせることができずに

図書館の自室のベッドの中に引き篭もるのであった。

 

お終い


 
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