No.657020

真・恋姫†無双 裏√ 第五十話 悠里編其一

桐生キラさん

こんにちは!
とうとう五十話です!
今回はオリキャラ、張郃こと悠里にスポット当てた回です!

2014-01-23 21:20:20 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2147   閲覧ユーザー数:1860

 

 

 

 

 

幼い頃の夢を見た

 

 

 

 

 

村を、家族を、たった一人の男によって奪われたあの日の

 

 

 

 

 

当時のあたしはたったの五歳

 

 

 

 

 

でも、あの光景は今でも鮮明に覚えている

 

 

 

 

 

悲鳴と共に降る血の雨

 

 

 

 

 

一方的な虐殺だった

 

 

 

 

 

みんなが殺された

 

 

 

 

 

ただ、あたしを残して

 

 

 

 

 

やがて男はあたしに近づき、血で濡れた手であたしの頭を撫でる

 

 

 

 

 

「怖いか?憎いか?許せないなら、いつか俺を殺しに来い。待ってるぜ」

 

 

 

 

 

そして男は去って行く

 

 

 

 

 

「おとう?おかあ?」

 

 

 

 

 

当時のあたしは、自分の両親が死んだことも理解しておらず、

ただひたすらに、両親に語りかけていた。

やがて私は力尽き、両親のそばで眠り落ちた。

そして今のお父さん、大河さんに保護された

 

 

 

 

 

悠里「はぁ…」

 

 

 

やがてあたしは夢から覚める

 

 

 

忘れたくても、忘れられない過去

 

 

 

忘れちゃいけない、血で濡れた記憶

 

 

 

今日のあたしは、調子悪いみたいだ

 

 

 

 

 

 

悠里編其一

 

 

 

 

 

 

 

 

四年前

 

 

 

 

 

「邪魔するぜぇ!」

 

お食事処『晋』が開店して数ヶ月が経とうとする頃、あるお客さんが来店した。

一人はかなりガタイのいい屈強な男。もう一人は私と同い年くらいの黒髪の少女。

そしてその後ろには、数人の柄の悪い男達がいた

 

咲夜「あぁ?お前、昨日私がボコった奴じゃないか」

 

数人の男の中に一人だけ見覚えのある顔があった。

昨日、酔って店の中で暴れていたので軽く制圧しといた奴だ。

なるほど、今日は人数を呼んで復讐ってか?

 

チンピラ「親父!こいつでさぁ、昨日俺をぶん投げた女は!」

 

親父「ほぅ。この子が?」

 

親父と呼ばれた屈強な男が私の前に立つ。

相対して気づく、この男の実力。並の使い手でない事がわかる。

へぇ、凄い威圧感だ

 

親父「うちのもんが、世話になったみたいだな」

 

零士の方を見ると、あいつも警戒しているようだった。

やがて男はゆっくりと動き、そして…

 

親父「本当にすまなかった!」

 

頭を下げた。

は?なんだおい、喧嘩しに来たんじゃないのか?

見れば零士も驚いている。明らかに、謝るような空気じゃなかっただろ

 

大河「俺は大河って言って、この町で護衛業をやってるもんなんだが、

うちの組織のもんがここで暴れたと聞いてな。

堅気に手を出すなんざ、俺の名が廃るってんで、今日はこうして謝りに来たんだ。

本当、うちのわけェ奴が迷惑かけちまった。すまねぇ!」

 

私と零士は戸惑いつつも、状況を把握した。そして私と零士は目を合わせ、微笑を漏らす。

 

咲夜「あぁー、いやいいよ。うちはそういうの、日常茶飯事だし。な?零士」

 

零士「あぁ。うちは大丈夫なので、大河さんも頭を上げて下さい」

 

大河「しかし…」

 

咲夜「そうだな。悪いって思ってんなら、うちで食って売り上げに貢献してくれ。

それで十分だ」

 

大河「わかった!おいお前ら、全員二品以上頼め!わかったな!」

 

チンピラs「はい!」

 

それから私と零士は複数人の料理を提供した。

開店史上最高の売り上げを記録した日だった。

 

大河さんは、この町で知らない人がいないくらいの有名人だった。

人当たりはよくて情に熱い、外見からは想像もできないくらい出来た人間だ。

そんな大河さんは護衛業を営んでおり、主に商人や貴族の護衛を生業にしているとの事だ。

そしてその傍ら、仕事中見つけた孤児を引き取り育てる、孤児院をやっているとも言っていた。

その孤児院の一人目が、張郃こと悠里だった

 

咲夜「口にあったか?」

 

私は男の中で一人、黙々と食べている張郃に話しかけてみた。

すると張郃はご飯粒を口元に付け、満面の笑みでこちらを見た

 

張郃「はい!見たこと無い料理ですけど、とっても美味しいです!」

 

咲夜「そりゃよかった。それとお前」

 

私は張郃の口元についていたご飯粒をとってあげ、それを食べた

 

咲夜「あむ。…ご飯粒ついてたぞ。

美味いって言ってくれるのは嬉しいが、もっとゆっくり食え」

 

すると張郃は顔を真っ赤にして俯いてしまった。あれ?どうしたんだろう

 

張郃「あ、あの、あたしの事は悠里って呼んで下さい!」

 

咲夜「ん?真名か?いいのか今日初めて会ったばかりの奴に許して」

 

張郃「はい!構いません!」

 

咲夜「そうか。なら私の事も咲夜と呼んでくれ。じゃなきゃ不公平だろ?よろしくな、悠里」

 

悠里「はい!よろしくお願いします!咲夜姉さん!」

 

ん?あれ?私今、何かおかしな旗を立ててしまったか?

 

 

 

 

 

現在

 

 

 

 

 

咲夜「とまぁ、こんな感じが、私達と悠里の出会いだな。

あの日の翌日に、悠里がうちで働きたいって言って、今に至るって感じだな」

 

悠里「あの時以来、咲夜姉さんに惚れちゃってねー。

同じ女の子なのに、凄いドキドキしてさ。少しでも長く一緒に居たかったんだよね!」

 

詠「咲夜、あんた自覚無かったでしょ」

 

咲夜「当たり前だろ。まさかご飯粒取っただけで惚れられるなんて思うか?」

 

悠里「あたしの中の乙女心に火がついた瞬間だったぜ!」

 

月「ふふ、お二人ってとっても仲良しなんですね」

 

店内の客が帰って行き、やることがなくなった私は、月と詠に悠里との出会いを話していた。

四年前の事なのに、昨日の事のように思い出せる。それだけ印象に残っているんだろうな

 

零士「思い出話してるとこ悪いんだが、誰かお使い頼まれてくれるかい?

一人でも行けると思うけど、少し量があるから二人で行って構わない」

 

咲夜「リストは…確かに中途半端な量だな」

 

悠里「あたし行ってきますよ!」

 

零士「お、じゃあ頼まれてくれるかい?もう一人は…」

 

悠里「あー、これくらいならあたし一人で大丈夫ですよ!」

 

ん?なにか違和感が…

 

零士「そうかい?じゃあよろしく頼むよ」

 

悠里「はいはーい!行ってきまーす!」

 

悠里はそそくさと買い出しに行ってしまった。

気にしすぎか?どこか…

 

零士「悠里ちゃん、何かあったのかな?あの量なら絶対咲ちゃん誘うと思ったんだけど」

 

咲夜「!!零士もか。あいつ、無理してる感じがするな」

 

 

 

 

悠里視点

 

 

 

 

 

買い出しに出たあたしは、真っ直ぐ目的地を目指す。

空は曇天で、今にも雨が降りそうだった。早く帰んなきゃ、こりゃ濡れちゃうな

 

しばらく歩いていると、凪さんが深刻な面持ちで兵士さん達に指示を出していた。

なにかあったのかな

 

悠里「凪さーん。どうかしたんですか?」

 

凪「あ、悠里さん。買い出しですか?こちらは今捜査中でして」

 

悠里「捜査?なにか事件ですか?」

 

凪「はい。なんでも、洛陽で剣の盗難があったみたいで。

それでその剣を持った男を許昌で見たと報告が入ったので、こうして捜索中なんですが」

 

咲夜「なるほど。でもたかが剣で少し大袈裟じゃないですか?」

 

凪「眉唾な話ですが、どうもそれ、昔暴れまわった殺人鬼が持っていたとされる妖刀らしくて。

大事をとって、確実に見つけ出せと命令がありました」

 

悠里「殺人鬼の妖刀かぁ。それってどんなのなんですか?」

 

凪「かなり大きめの肉切り包丁のようなものらしいです」

 

かなり大きめの肉切り包丁…殺人鬼…まさかね

 

悠里「わかりました。こっちでも見つけたら教えますね」

 

凪「ありがとうございます!それではこれで!」

 

あたしは凪さんと別れた後、一人あり得ない想像を働かせていた。

もし、それがあたしの予想通りなら。もし、その殺人鬼が生きていたら…

 

悠里「あ、あり得ないあり得ない!さ、さっさと買い物済ませちゃおう!」

 

きっと今日見た夢のせいだろう。そんな想像をしちゃうのは。

あたしの両親を殺した仇は、既にこの世にいないはずだ

 

 

 

 

 

咲夜視点

 

 

 

 

 

悠里が買い出しに出てしばらくすると、一人の男が来店した。

だが、そいつの雰囲気は明らかにおかしい。

存在そのものが深い闇のような、他者に純粋な恐怖を植え付けるような、

そう、まさに殺人鬼と呼ぶに相応しい気配だった

 

恋「…」

 

普段寝ている恋が、珍しく起きており、男を見張っている。それほど異形なのだろう

 

男「うまかったぜ。金、置いとくぞ」

 

零士「あぁ」

 

幸いな事に、男以外に客はいない。あんなもの、普通に街中にいていい奴じゃないぞ

 

詠「なんなのよ、あいつ…」

 

月「へぅ…詠ちゃん…」

 

月と詠は奥で震えている。あの子達でもわかるほど、気配がおかしかったのだ

 

男が店を出る直前に、扉が開かれる。悠里が帰ってきたみたいだ

 

悠里「ただいま戻りましたー。いやぁ、さすがに一人は……!!」

 

男「あばよ」

 

男と悠里はすれ違い、そして男は出て行った。対して悠里は汗をかき、震えていた

 

悠里「あ…あ…な、なんで…なんで、あいつが…」

 

咲夜「悠里!」

 

悠里は突然膝から崩れ落ち、なにかブツブツ言っている。

その表情は絶望と恐怖で満ちていた

 

咲夜「悠里!おい悠里!大丈夫か?」

 

詠「悠里!」

 

月「悠里さん!」

 

みんなが一斉に駆け寄る。一体どうしたって言うんだ。あいつがなにか…

 

悠里「クッ…」

 

すると悠里が突然立ち上がり、鉄棍を持って店を飛び出して行った

 

咲夜「悠里!」

 

私は直ぐに追いかけるも、既に悠里は消えていた

 

 

 

 

 

 

零士視点

 

 

 

 

 

月「悠里さん…一体どうしちゃったんでしょう…」

 

詠「わからないけど、ただ事じゃないわね」

 

悠里ちゃんが突然膝から崩れたと思ったら、今度は店を飛び出して行った。

咲夜がそれを追いかけて行ったが…一体どうしたんだ

 

大河「邪魔するぜぇ。…あぁ?悠里いねーじゃねぇか。あいつどこ行ったんだ?」

 

しばらくすると、大河さんが来店してきた。

どうやら悠里ちゃん目当てみたいだったようだ

 

零士「いらっしゃい。悠里ちゃんなら…」

 

僕は先ほどまでの事を説明した。

すると大河さんは、深妙な面持ちでなにかを考えているようだった

 

大河「おい東。その男ってのは、どんな見た目だ?」

 

零士「身長は僕くらいで、全身傷だらけ。

特に顔の、目から頬にかけての傷が印象的な、髭面の30代後半くらいの男だ」

 

大河「そいつの雰囲気、殺人鬼みたいだったか?」

 

零士「あぁ。知っているんですか?」

 

大河「実はさっき、警邏隊の奴らと話しててよ。洛陽で妖刀が盗まれたみたいなんだ。

その妖刀を持った奴がこの街にいるみたいでな。今捜索中らしい」

 

零士「その話なら、さっきも客の一人が話していたな。

確か、巨大な肉切り包丁だったかな?だが、それがどうしたんですか?」

 

大河「…あれは十三年前だ。俺がまだ軍に居た頃、大量殺人鬼が世間を賑わせていてな。

たった一人で村一個潰すような、そんな化け物みたいな奴がいたんだ。

ある日、俺がそいつの捜索である村を訪れたんだが…」

 

 

 

 

 

十三年前

 

 

 

 

 

大河「こいつぁ、ひでぇ…」

 

俺の部隊が到着した頃には、辺り一面血の海と化していやがった。

家にも、大地にも、血が飛び散っていてよ。

さらに言や、そこにあるはずの、村人の死体が見当たらなかった。

いや、正確にはあったんだが、人の形をしちゃいなかった。

ああいうのを、肉塊って言うんだろうな。さすがに吐き気がしたぜ。

うちの隊員は何人か吐いていたな

 

隊員「うっぷ…そ、曹仁隊長。いかがなさいましょう」

 

大河「あんまり期待は出来ねぇが、辺りを調査しろ。

もしかしたら生き残りがいるかもしれねぇ」

 

隊員「は!」

 

我ながら、無駄な事してんじゃねぇかって思ったぜ。

だがな、しばらくして見つかったんだよ。生き残りがよ

 

少女「すー…すー…」

 

ちっせぇ女の子が、その子の両親らしき奴らに抱かれるように眠っていやがったんだ。

まぁ、その死体にゃあ手足なんざなかったけどな

 

大河「チッ…」

 

見てらんなかったぜ。俺ぁそれまで、数多の戦場を渡り歩いて、似たような光景を見てきた。

だがな、こいつは別だった。わかんねぇが、なにかこみ上げて来るものがあったんだ

 

隊員「隊長、この子…」

 

大河「わかっている。この子、俺が面倒見る」

 

それが、俺と悠里の出会いだった。俺と女房は子に恵まれなくてよ。

こいつはちょうどいいってんで、女房も預かる事に賛成してくれたんだ。

だがまぁ、保護した後も大変だったんだぜ?親がいないってわかったら、泣くは喚くはでよ。

散々騒いだ後は、一転して明るさを無くしちまったんだ。そんな日々が続いたある日…

 

 

 

大河「行ってくる。椎名、留守は任せたぞ」

 

椎名「はい。この子と一緒に、あなたの帰りを待ってます」

 

俺を含めた精鋭百人による、殺人鬼の討伐が決まったんだ。

たった一人に百人だぜ?馬鹿げてると思った。だがな、やらなきゃいけなかった

 

大河「行ってくるな、悠里」

 

悠里「あ、あの、はい。がんばって、ください…」

 

俺は悠里の頭を撫でてやった。幼いくせに、子どもらしくない。

笑わない、そのくせこっちの顔色ばかり伺ってよ。悠里にあるのは闇だけだった。

俺は許せなかった。この子から光を奪った奴を。必ず殺してやるって誓ったさ

 

殺人鬼は程なくして見つかったよ。

なんたって、どでけぇ肉切り包丁担いでんだからよ。ありゃ目立つぜ

 

殺人鬼「よぉ、軍の犬ども。たった一人にずいぶんな数じゃねぇか。

えぇ?ビビってんのか?」

 

初めて見た時の印象は、危険、だった。

こいつが生きてる限り、平和はこねぇとさえ思ったね。こいつは闇そのものだった。

 

 

 

 

 

現在

 

 

 

 

 

大河「結果、どうなったと思う?」

 

詠「は?大河さんが生きてるんだから、討伐に成功したんでしょ」

 

大河「あぁ。討伐には成功したさ。俺以外は全滅だったがな」

 

詠「な!」

 

月「そんな…」

 

大河「正直、今でも勝てたのが信じられねぇ。それくらい、あいつの強さは異常だった。

きっと俺を駆り立ててたのは、悠里の存在だったろうな。あの子の為に、勝てたんだ」

 

詠「そう…」

 

大河「その後、俺は悠里と女房との時間を増やす為に退役。

それで今の護衛業を始めたんだ。それから悠里は徐々に明るさを取り戻していったよ。

俺と女房の事をお父さん、お母さんって呼んでくれた時は泣いたっけな。

そんで四年前、あんたらに会って、あの子は完全に治ったと思ったよ。

今の悠里は、人生で一番楽しんでそうだからな」

 

月「あの、いつも明るい悠里さんに、そんな過去があったなんて…」

 

僕自身も、あの子にそんな過去があったなんて知らなかった。

あの子の笑顔の裏に、そんな秘密があるとは

 

零士「それで、その殺人鬼がどういう訳か生き返っているか。信じられない話だな」

 

だが、もしそれが本当なら、放っておくわけにはいかないな

 

零士「少し出かけてくる。恋ちゃん、月ちゃんと詠ちゃんを見ててくれるかい?」

 

恋「…ん」

 

詠「ちょ、あんた行く気?」

 

月「へぅ、危ないですよ~」

 

零士「悠里ちゃんと咲夜を探しに行くだけだよ。

ちゃんと帰ってくるから、いい子で留守番しててくれるかい」

 

大河「俺も探すぜ。あいつは俺の子だ。

それに、もしあの殺人鬼が生きてるんなら、もう一度殺してやる」

 

そして僕と大河さんは、外に飛び出した。外は雨が降っており、少し肌寒いかった

 

殺した人間が蘇るか…ずいぶんと、めちゃくちゃだな

 

 

 

 


 
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