No.636990

In the Rain

i-pod男さん

とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた!

チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。

2013-11-15 09:38:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:621   閲覧ユーザー数:603

「ホンッッットにもう!!」

 

沙耶が俺達の情事を目にしてから真っ赤な顔で二十分近くは冴子や静香と共にお小言を拝聴する破目になった。助手席の方に向かうと、フロントガラスにパラパラと雨粒が落ちて来るのが見える。そろそろ天気がヤバいな。

 

「片桐、この中には雨具とかは・・・・?」

 

「ああ。あるぜ。傘も二、三本は。人数分かどうかは分からないがな。だが、」

 

溜め息をついて片桐は続けた。

 

「これじゃ移動が難しくなってくる。雨の中じゃスピードを出し過ぎればスリップするし、徒歩じゃ時間が掛かり過ぎる上に銃がお釈迦になるかもしれない。」

 

確かに。雨は銃の内部に多大な、とまでは行かないが、ある程度影響を及ぼす。長時間晒されていたら尚更だ。特に砂や泥が入ったら確実にアウト、使い物にならなくなる。

 

「一本どうだ?美味いぞ?」

 

ケースから葉巻を取り出して一本差し出した。

 

「お、マジで?これコヒバ?」

 

「ああ。現地直送だ。」

 

先端に火を点けてやり、俺も一本銜えた。

 

「こいつぁ、上等だな。うん、今の内に味わっといた方が良いな。」

 

「まるでこれから死にに行く様な口振りだな。」

 

「そうじゃないのか?お前はどうか知らないが、俺は良く知りもしない銃を引っ下げた高校生のガキ共を乗せてアイツらの親探しを手伝ってる。お前の事は信用してるから同期のよしみって事で手を貸してるけど・・・・」

 

「分かってる。ヤバくなったら、好きにすれば良い。ただ、二つ頼みがある。」

 

「珍しいね、普通なら頼み事をするのは俺なのにさ。どう言う風の吹き回しだよ?」

 

「良いから聞け。」

 

俺は煙を吐き出すと、ゆっくりと喋った。

 

「一つは、もし万が一、俺が<奴ら>になったら俺を殺せ。あいつらは、躊躇う。二つ目は、もし俺が<奴ら>になるか、何らかの事情で行動を共にする事が出来なくなったら、チームの皆を新床第三小学校まで連れて行ってくれないか?」

 

「分かった。アンタみたいな人を殺すのは気が引けるし、想像したくないけど。でも生き延びたら、これデカい貸しだからな?」

 

「分かってる。何らかの形で借りは返すさ。それまでの間、背中位は守ってやるよ。」

 

「言うねえ。じゃ、頼む。」

 

「おう。」

 

車道に目を戻すと、片桐は<奴ら>を蹴散らしながらトラックを飛ばした。俺はその間生き残っている人間がいるかどうか流し目で探す。

 

「糞・・・・数が多過ぎる。」

 

「住宅街だからだろ?元々ここら辺で彷徨いてたと思うぞ。ここで一旦止めろ。」

 

トラックはゆっくりと停車し、俺は後ろに下がった。

 

「麗、ここら辺はお前の家からどれ位だ?」

 

「そんなに掛からないと思いますけど・・・・」

 

「よし。一旦降りるぞ。これ以上エンジンの音で<奴ら>を引きつけたら動けなくなる。麗の親はこの近辺にいる筈だ。」

 

「じゃあ、僕と麗が道案内します。ここら辺は知ってますから。」

 

「私も、お父さんとお母さんに会いたいし・・・・」

 

「それは構わないが、この付近一帯はお前らの知り合いや家族が住んでいる所だ。もう既に<奴ら>になったとは言え、お前らいざとなったら殺せるのか?」

 

「・・・・・多分、無理です。」

 

「だろうな。冴子、沙耶、一緒に来てくれ。残りは待機だ。人数は出来るだけ少ない方が動き易い。何より、ここで大事な『足』を根こそぎ奪われちゃそれこそ何をやってるのか分からない。」

 

俺は脱いでいたジャケットに腕を通し、フードを被った。外していたM327、シグのホルスター、ナイフを身につけると、ガードチェイサーからスコーピオンとサラマンダーのアタッチメントを取り出した。

 

「コータ、それ寄越しなさい。」

 

沙耶は顎をしゃくってMP5を指し示す。

 

「良いですけど、サイト死んでますよ?」

 

「良いわよ、別に。今まであたし一発も撃ってないから、むしゃくしゃしてんの。あんたにはアンタなりの戦い方があるんだろうけど、あたしも戦いたいの。コータみたいに。」

 

「コータ、渡してやれよ。」

 

コータは薄く笑うと、頷いてサイレンサー付きのMP5を沙耶に渡した。すると、沙耶はルガーを彼に差し出した。

 

「え?」

 

「預けとくわ。失くしたら殺すわよ?」

 

「んじゃ、行くか。ここ、頼むぞ?俺のショットガンはここに置いておく。ヤバくなったら遠慮無く使え。壊すなよ。」

 

「分かってるって。あ、そうそう。これ、渡しとく。」

 

ダッシュボードを開けると、中からハンドガンらしき物を引っ張りだした。グリップの底はマガジンを入れる場所が無く、斧の刃の様な物がついていた。更に言うと、銃身も握りがついており、トマホークみたいにも見える。

 

「特撮にでも出てきそうな代物を見つけたんだ。結構使えるぞ、今の所弾切れもしてない。セミ、フル両方行けるし、反動も無い。」

 

「助かる。ありがとうな。」

 

「これで貸し二つだぞ?」

 

言ってろ、バーカ。内心そう思いながら、分解したクロスボウを丁寧にリュックに入れると、孝、麗、沙耶、冴子、そして俺の合計五人で、雨が降りしきる外界に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

雨の中、<奴ら>を撃たずに様々な隠密行動で突破する事十数分、地面に何かを打ち付ける様な音が聞こえた。そして俺の耳に飛び込んで来たのは、気の強い女の声だった。誰かと口論の最中らしい。

 

「あの声は・・・・麗。」

 

「お母さんだ!!」

 

「おい、待て!」

 

俺が止めるのも聞かず、麗と孝は駆け出していた。俺や冴子、沙耶も慌てて後を追う。

 

「必要な物を取りに行かせておいて私を中に入れないつもり!?この宮本貴理子をなめんじゃねーぞ!?」

 

声がした方に向かって行くと、ライダーファッションに身を包み、バックパックを背負った女が十文字槍を手にしてバリケードに向かって怒鳴っていた。あれは白バイの制服か?

 

「・・・・相変わらず元気そうで良かった・・・・」

 

孝は苦笑いをしてそう零す。知り合いである故に彼女の性格を知っているのだろう。勝ち気なタイプらしい。

 

「うるさい!とっとと出て行け!じゃなきゃ、まじで撃つぞ!」

 

バリケードの隙間から銃身が伸びて彼女、宮本貴理子に向けられる。音からしてショットガンだな。

 

「ったく・・・・ろくでなし共が!」

 

「お母さん!!」

 

麗は母親が生きている姿を見て、溜まらず後ろから彼女に抱きついた。

 

「お母さん・・・!!」

 

「麗!?あら、孝君も?」

 

「どうも。無事で良かった。まあ、貴理子さんがそう簡単に死ぬ様な人には思えないんですけどね・・・・」

 

「あははは。まあね。にしても、随分と物々しいわね、どこから手に入れたのそんな物?」

 

俺達が手にしている銃器やら刀を目にして首を傾げた。

 

「色々事情があったんでね。東署の証拠品を幾つか拝借した。」

 

「あら、そう。」

 

特に怒る様子も無く納得してくれたのは僥倖だ。

 

「貴理子さん、一緒に逃げましょう。」

 

「あら、まるで駆け落ちして欲しい見たいな口振りね。」

 

おい、ボケるのも大概にしろ。

 

「でも、ちゃんと何をするか考えてないと、意味無いわよ。生き残るのも大事だけど、先の事を考えないと。明確な目的を定めた上で行動してるんでしょうね?」

 

「勿論。宮本のお父さんがご丁寧に自衛隊の救助が明後日新床第三小学校で行われると言う書き置きをホワイトボードに残していたわ。これからそこに向かうの。孝の家族もそこにいる筈だし。」

 

「あれを逃したらもう次は無い。出来るだけ早く着きたいんだ。」

 

貴理子はバリケードの向こう側にいる奴らにこの事を伝えたが、一向に出て来る気配が無い。まあ、先方が動きたくないってんなら無理強いする必要は無いからな。

 

「行くぞ。警告はした。コイツらまで助ける義理は無い。」

 

後方を確認すると、<奴ら>が二十体前後こちらに向かって来ている。距離は約六十メートル。あの家具で作ったバリケードはそうは持たないだろう。

 

「おいお前ら、歓談するのは結構だが後ろからかなりの数のお客さんが来てる。とっとと移動するぞ。」

 

右手に片桐がくれた銃を手にして引き金に指をかけた。銃身の周りにある三つのレーザーポインターが<奴ら>の頭を照らし、俺は引き金を絞った。片桐が言った通り反動はほぼゼロで、撃った<奴ら>の頭が吹き飛んだ。どうやら俺は熟強力な武器を手に入れる運に恵まれているらしい。掃射でバタバタと薙ぎ倒してそのまま進んで行く。これなら直ぐにどうにか出来そうだ。

 


 
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