No.630371

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

激突:華麗なる狂乱の円舞曲

2013-10-22 10:43:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1706   閲覧ユーザー数:985

「また面倒なのが来たか…」

 

二百式はモンスターの死骸を踏みつけながら呟く。

 

現在、目の前には時空管理局の魔導師部隊が並んで立っていた。部隊のリーダーである女性魔導師は朱音、竜神丸、二百式の三人にデバイスを向けている。

 

「あなた達が何者なのか、何故このような無人世界にいるのか、ここで何をしていたのか、洗いざらい話して貰います」

 

(これまた、随分と上から目線な魔導師達ですねぇ)

 

(今更何を言っている。管理局の魔導師など、所詮そういうものだろうに)

 

「あなた達に拒否権はありません。抵抗する場合、それ相応の処置を取らせて貰います」

 

「へぇ……あなた達如きが、私達に一体何をするつもりなのかしらねぇ?」

 

朱音はわざとらしく挑発し、女性魔導師は鋭い目でギロリと朱音を睨み付ける。

 

「…力ずくで、あなた達を拘束します」

 

女性魔導師が言い放つと同時に部下の魔導師達が一斉に三人を取り囲み、デバイスを向ける。

 

「あらあら、穏やかじゃないわね」

 

「そうは言いますが朱音さん、こうなると分かっててあんな挑発をしたのでしょう?」

 

「あ、バレちゃった?」

 

「…もう分かり切ってました」

 

「テヘッ☆」と舌を出す朱音に、竜神丸はやれやれと言いたげな感じで溜め息を吐く。

 

「それで、ここからどうするつもりで?」

 

「う~ん……それなりには腕も立つみたいだし、ここから抜け出すには少し時間がかかるかしらね」

 

「ここから逃げられると思いますか? この人数を相手に」

 

女性魔導師は自信に満ちた表情で告げるのに対し、竜神丸はタブレットを操作する。

 

「えぇっと、これだけの人数ならT-ALOS部隊は必要ありませんか……となるとT-103型部隊だけでも充分戦力にはなり得る訳であって…」

 

「貴様、何をコソコソ喋っている!!」

 

一人の男性魔導師が竜神丸に向かって怒鳴りつける。

 

「うるさいですねぇ……これだけの人数を相手取るのに、どの戦力が一番ちょうど良いか判断を下しているだけの話ですよ。あぁ、それとあなた方に一言」

 

竜神丸は女性魔導師を指差す。

 

「後ろ、危ないですよ?」

 

「無駄です、そんな見え透いた嘘が通じると…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ドゴォォォンッ!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

物音も立てずに現れたイワンによって、女性魔導師は背中から殴られ思い切り吹っ飛ばされる。突然の出現に驚く魔導師達を他所に、朱音と二百式もそれぞれ得物を構える。

 

「では、行きましょうか。朱音さん」

 

「踊りましょう♪ 華麗なる狂乱の円舞曲(ワルツ)を」

 

「戯言を!!」

 

一人の魔導師が魔力弾を放つが、二百式が瞬時にショットガンで魔力弾を打ち消し、その隙に朱音が素早く魔導師達に迫る。

 

「なっ!?」

 

「当てるなら正確に当てなさい」

 

「ごぶぁっ!?」

 

朱音の跳び膝蹴りを顔面に喰らい、倒れた魔導師は白目を向いて気絶する。

 

「撃てぇっ!!」

 

他の魔導師達もデバイスから複数の魔力弾を生成して発射するが、朱音に対してそれは無意味だった。自身に命中しそうな魔力弾だけを刀で斬り裂き、残りの魔力弾は全て回避してから一気に魔導師達に向かって接近していく。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「いくら何でも速過ぎる!!」

 

「あぁ、それは違うわ。私が速いんじゃなくて…」

 

 

 

 

 

 

-バシュゥゥゥゥゥッ!!-

 

 

 

 

 

 

「あなた達が遅過ぎるのよ」

 

「「「「「グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」」」

 

朱音が刀を鞘に納めると同時に、魔導師達の身体から血飛沫が舞う。斬られた魔導師達はその場に倒れ伏せる。

 

「あら大変」

 

朱音がすかさず回復魔法をかけ、魔導師達の傷を回復させる。

 

「…あ、あれ?」

 

「傷が…」

 

「な、何のマネだ!!」

 

何故か朱音が傷を回復してくれた事に、魔導師達は戸惑う。

 

「何のマネか、その答えは実に単純よ。答えは…」

 

 

 

 

 

 

-ズバァァァァァァンンッ!!-

 

 

 

 

 

 

「「「「「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」

 

「あなた達を虐める為よ♪」

 

朱音は楽しそうな声で、魔導師達を一閃する。魔導師達の身体から再び血飛沫が舞うが、朱音がすぐに回復魔法をかけて全回復させる。

 

「だってあなた達、いくら何でも弱過ぎるもの。だから今回は、こういう形で楽しませて貰うわ」

 

「や、やめてくれ…」

 

「あら、誰が逃げて良いなんて言ったかしら?」

 

「な…ギャァァァァァァァァッ!?」

 

逃げようとした魔導師が瞬時に斬り伏せられ、そしてまた回復魔法をかけられる。

 

「命までは奪わないであげるから、今回はそれで勘弁してね?」

 

朱音は魔導師達に対し、可愛らしい笑顔でウインクして見せる。魔導師達からは、その笑顔が返り血の所為でより恐ろしい笑顔に見えてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「朱音さん、相変わらずのドSだな…」

 

朱音の戦闘を見ていた二百式は、そのサディスティックな一面に冷や汗を掻いていた。もし自分があの魔導師達と同じ立場にいたらと思うと、堪ったものではないだろう。

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「!」

 

魔導師が振るって来た長剣型デバイスを二百式はしゃがんで回避し、すかさず太刀を構えて攻撃して来た魔導師と応戦する。

 

「挑むのは構わない……だが、俺を止めるにはまだまだ力が足りんな」

 

「調子に乗るなぁっ!!」

 

太刀とデバイスがぶつかり合い、激しい攻防が続く。しかし少しずつ二百式が押し始め、遂にはデバイスの方が弾かれる。

 

「ぐ、しまっ…!?」

 

「ハッ!!」

 

「がはぁ!?」

 

一閃され、魔導師が倒れる。二百式は太刀をしまい、別の武器を取り出す。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」

 

二百式は複数の機雷を連結した武器“チェーンマイン”を振り回し、一箇所に集まっている魔導師達を爆発に巻き込んでいく。

 

「く、くそ!! 怯むな!! 隙を突いて攻撃しろ!!」

 

「それは無理な話かと」

 

「ぐぁっ!?」

 

イワンが男性魔導師を殴り飛ばし、壁に叩き付ける。

 

「攻撃する隙なんて与えませんよ」

 

竜神丸が手を翳し、テレポート能力を発動。彼の周りに、緑のトレンチコートを纏ったタイラントが複数出現する。

 

「さぁ、踊り狂いなさい……管理局の哀れな飼い犬達よ…!!」

 

「ひっ…ぷぎゃあっ!?」

 

「ごふぅ!?」

 

「ひべぇっ!?」

 

竜神丸の言葉を皮切りに、タイラント達は魔導師達に向かって一斉に襲い掛かる。一人は大きく殴り飛ばされ、一人は思い切り踏み付けられ、一人は掴まれたまま地面に叩き伏せられたりと、一方的な展開になっていく。反撃しようとした魔導師は必死に魔力弾を放つが、どの魔力弾もタイラント達に命中する前に霧散して消滅する。

 

「う、嘘だ!? 魔法が効かねぇ!?」

 

「当たり前でしょう。何の為のAMF機能ですか」

 

「や、やめ…みぎゃっ!?」

 

イワンのチョップを喰らい、また一人魔導師が戦闘不能になる。

 

「ふむ、所詮はこの程度ですか。もう少し強いかと思っていましたが、期待外れですねぇ…」

 

「く、嘗めないで下さいっ!!」

 

女性魔導師はデバイスに魔力刃を生成し、竜神丸目掛けて振り下ろす。

 

しかし…

 

 

 

-パキィィィィィン-

 

 

 

「なっ!?」

 

当たる直前でイワンが竜神丸を庇った為、イワンの身体に当たった魔力刃が砕け散り霧散する。

 

「言っておきますが、私は図には乗ってません」

 

「ぐっ!?」

 

「これは余裕というんですよ」

 

女性魔導師の腹部にイワンが強力な右フックを炸裂させ、近くの岩石に思い切り叩き付けられる。

 

「せりゃあっ!!」

 

「な…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

更にそこへ二百式がチェーンマインを叩き付け、女性魔導師はとっさの回避が出来ずそのまま爆発に巻き込まれる。

 

「ぐ、ぅ…!!」

 

女性魔導師はダメージが溜まり、とうとう地面に倒れ伏す。

 

「さて、今度はどうしましょうか…」

 

「背中、がら空きだぁっ!!」

 

「!」

 

竜神丸の背後から、魔導師がデバイスを振り下ろして来た。

 

「喰らえぇっ!!」

 

「はい残念」

 

「え…ぐべぁっ!?」

 

しかし、竜神丸はヒョイと回避。魔導師の首元に左手でラリアットをかまし、一撃で倒す。

 

「他愛も無いですね…」

 

「竜神丸さん、二百式さん、こっちは終わったわよ~♪」

 

「おや朱音さん、ご苦労様です」

 

「な、何を言って…ッ!?」

 

女性魔導師は目を見開いた。いつの間にか、この場にいた部隊の魔導師は全滅していたのだ。

 

「そんな…!!」

 

「安心して頂戴。急所は外してるから、命までは奪ってないわ」

 

「くっ……あなた達、一体何者なんですか…!!」

 

「私達が何者か? うぅ~ん…………ねぇ竜神丸さん、そろそろ言っちゃっても良いのかしら?」

 

「それは私に聞かれましても……その辺はどうなんですか、二百式さん」

 

朱音と竜神丸に問われ、二百式は少し考える仕草をしてから口を開く。

 

「…まぁ、大丈夫でしょう。隠れて行動していても、いずれバレる物はバレますし。それにいざという時は竜神丸、お前が記憶を消去してやれば良いだけだろう?」

 

「つまり、問題は無いと」

 

「OK、分かったわ」

 

朱音は倒れている女性魔導師に改めて向き合う。

 

「あなた……“旅団”という単語を聞いたら、最初に何が思いつくかしら?」

 

「旅団、ですって…? いきなり何を…」

 

言いかけたところで、女性魔導師はハッと気付く。

 

「ま、まさか……OTAKU旅団…!?」

 

「ご名答~♪」

 

朱音は可愛らしい声で返事を返し、女性魔導師はどんどん顔が青ざめていく。

 

「さて…」

 

竜神丸は右手首をコキコキ鳴らしながら、女性魔導師に近付いていく。

 

「い、嫌……来ないで……死にたくない…!!」

 

最初の余裕は一体何処に消えたのか、女性魔導師は地べたを這い蹲ってでも逃げようとし、壁際に背中を預ける形で追い詰められる。

 

「殺さないで……お願い…!!」

 

「ここに来て命乞いですか? 情けない……あなた、覚悟というものが足りていませんねぇ」

 

「駄目よ竜神丸さん、無闇に殺しちゃ可哀想よ」

 

「えぇ、分かっています。ちょこっと覗き込んであげるだけですよ……彼女の“記憶”をね」

 

竜神丸は右手で女性魔導師の頭を掴む。女性魔導師は「ひっ!?」と怯えるが、そんなのは竜神丸の知った事ではない。

 

過去視(サイコメトリー)

 

竜神丸は目を閉じ、自身の能力“過去視(サイコメトリー)”を発動。女性魔導師の頭を掴んだまま、彼女の過去の記憶を読み取り始める。

 

「…そういえば、竜神丸に黙秘権は無意味だったな」

 

「それでも、彼の能力は旅団でも重宝されてるわ」

 

二百式と朱音が眺めている中、竜神丸は女性魔導師の記憶をどんどん読み取り続けるが……途中で目を開け、つまらなさそうに溜め息を吐く。

 

「…残念、ハズレですね」

 

「う、ぁ……ぁ…」

 

竜神丸は能力を解除し、パッと右手を離す。女性魔導師はとうとう逃げる気力も失せてしまい、虚ろな目から涙まで流し始めてしまった。

 

「記憶を読み取って見ましたが、特にこれと言った裏事情は知ってなさそうです。調べるだけ無駄な話でした」

 

「そう……収穫は無しって事ね」

 

「なら、さっさとアジトに戻りましょう。モンスターの退治も終わっている以上、ここに長居する理由はありません」

 

「それもそうですね……っと、忘れずに」

 

竜神丸は今度は左手で女性魔導師の頭を掴み、能力を発動させる。

 

「ぅ、ぁ…ああああああああああああああああああああああっ!!?」

 

能力が発動した途端、女性魔導師が突然泣き喚き始める。

 

「やめてぇ!? 消える!! 私が!! 私の記憶が!!! いや!!! いやああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

女性魔導師は必死に竜神丸の左手を離そうとするが、竜神丸は構わず彼女の記憶を消去していく。

 

そして…

 

 

 

 

 

 

消去(デリート)

 

 

 

 

 

 

-パリィィィィィン…-

 

 

 

 

 

 

「ぁ…」

 

何かが砕け散る音が鳴り響く。竜神丸が掴んでいた左手を離すと、女性魔導師はとうとうその場に倒れ、白目のまま口から泡を噴いて気絶してしまった。

 

「我々に出くわしたという記憶を全て消去しました。後は残りの連中の分も消去すれば、証拠隠滅はバッチリでしょう」

 

「…消去のやり方が妙に手荒じゃないか?」

 

「あそこまで抵抗されたら、こちらも手荒にやらざるを得ません」

 

「竜神丸さん……私が言うのも何だけど、あなたもあなたで結構えげつないわね」

 

「褒め言葉として受け取っておきましょう」

 

「「いや褒めてないから」」

 

二人の突っ込みもスルーし、竜神丸はその場にいた魔導師達全員の記憶を消去して回るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、楽園(エデン)トレーニングルーム…

 

 

 

 

 

 

「―――はい、了解しました」

 

awsは通信を切る。

 

「誰からだ?」

 

「朱音さん達からだ。先程、管理局の魔導師から襲撃を受けたらしい」

 

「「「「「!!」」」」」

 

awsのその言葉を聞いた途端、デルタ達の表情が変わる。

 

「管理局、とうとう気付きましたか…」

 

「今回は竜神丸が記憶消去して、証拠隠滅したらしい。だがこれからは、我々も慎重に動かなければならないようだ」

 

「記憶消去って……竜神丸の奴、相変わらず便利な能力持ってんな」

 

ロキが呆れている中、蒼崎がある事に気付く。

 

「そういえば、okakaはどうしたの? モンスター退治には出てない筈だけど…」

 

「あぁ、okakaなら団長に連れられてどっか行っちゃったよ」

 

「「「「「団長が?」」」」」

 

「うん、okakaも連れられる理由は分かってないみたいだけどね」

 

FalSigの言葉に、ロキ達は訳が分からず頭を捻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァルハイムとは別の、とある世界にて…

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長、こんな所に一体何が…?」

 

現在、OTAKU旅団の団長クライシスとokakaの二人はとある古代遺跡にやって来ていた。

 

okakaは何故こんな辺鄙な場所にやって来たのか問いかけるがクライシスは何も答えず、黙ったまま遺跡の奥へと進んでいく。

 

(あぁもう、こういう時の団長はイマイチ話しかけ辛いんだから…)

 

okakaがそう考えていた時、二人は遺跡の最深部にある大きな広間へと辿り着く。周りには火の点いている燭台、そして広間の中央に一つの石棺があるだけだった。

 

「団長、これは…」

 

「君を呼んだ理由がこれだ」

 

okakaが問いかける前に、ようやくクライシスが口を開く。

 

「君はカラレスとの戦いが終わった後、私に“アレ”を預けただろう?」

 

「? えぇ、あれは色々とリスクがでかいので…」

 

「有事に備えてね、君に返却しておこうと思っていた」

 

「!?」

 

驚くokakaを置いて、クライシスは石棺の蓋を開け、中からある物を取り出す。

 

「まさか…!!」

 

「持っておきたまえ。元々、君が“大ショッカー”から奪った所持品だろう?」

 

クライシスは取り出した物をokakaに手渡す。

 

クライシスから渡された物。それは強力なパワーを持つ代わりに、リスクが大き過ぎる代物だった。

 

(また、これを使うのか…)

 

okakaは無意識の内に、それを握る力が強くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ディケイドライバー・プロトタイプ”は再び、okakaの手元へと戻って来たのだった。

 


 
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