No.629510

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY12 VS3年前の敵

やぎすけさん

懐かしい(?)敵との戦闘です。

2013-10-19 17:20:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1283   閲覧ユーザー数:1255

STORYⅫ VS3年前の敵

 

 

 

 

デュオ視点

あれから少しの間、俺とキリトは木に寄りかかって座り込んでいた。

互いに何か言うことも無く、ただ木を挟んで背中合わせに座るだけ。

すると、もたれかかる木の向こう側でキリトが立ち上がる気配がした。

 

デュオ「行けるか?」

 

キリト「ああ。もう大丈夫だ」

 

デュオ「よし!」

 

軽く頷いて俺も立ち上がり、ズボンに付いた土を叩き落とす。

次に、地面に置いていた剣を背負い直して言った。

 

デュオ「じゃあ行こう」

 

キリト「おう!」

 

キリトは短く答えると、片頬に笑みを浮かべる。

それを確認して安心した俺は、キリトとともに再び歩き始めた。

数分歩くと、本来休憩するはずだった場所に出た。

そこは人工的に切り開いた場所らしく、地面は踏み固められていて歩き易い。

そして近くには、巨大な板状の建造物が鎮座していた。

黒曜石のような材質のそれは、全長が10m以上あり、地面から生えるように垂直に立っている。

 

キリト「なんだ、あれ?」

 

意味不明な建造物を見たキリトが呟いた。

それに対して、俺も口を開く。

 

デュオ「さあ、検討もつかない。まあ、何にしてもセンスを疑うデザインってことだけは間違いないな」

 

キリト「それは言えてる」

 

俺たちは、久しぶりに顔を見合わせて笑った。

その時・・・

 

?「グルルラアアアアッ!!」

 

突然、猛獣の唸り声のようなものが響き渡った。

獰猛な響きを持つ音は、俺たちの歩いてきた林にまで届き、木々を振動させる。

翼を休めていた鳥たちが一斉に飛び上がり、不安を駆り立てるような羽音がこだました。

 

キリト「なんだ!?」

 

デュオ「わからないが、良い予感はしないな」

 

反射的に武器に手を掛け、互いに背中を預ける。

次の瞬間、あの板状の建造物が電撃を放ち始めた。

いや、正確には板の中央部に電撃が集まり出したのだ。

それらは、直径2mを軽く超える球体へと変化しこちらへ向かって飛んでくる。

帯電する光のボールは、そのまま俺たちの目の前に着地し弾けた。

 

キリト「ぐっ・・・!?」

 

デュオ「ちぃ・・・!」

 

強烈なライトエフェクトに、俺たちは手で顔を隠す。

やがてライトエフェクトが収まり、目を開けた俺たちの前にいたのは予想外のモンスターだった。

 

キリト「こいつは・・・!?」

 

デュオ「なんで・・・!?」

 

目の前に立ち塞がる敵のその姿に、俺たちは揃って絶句する

青灰色の毛皮をまとった、2mを軽く超える逞しい体躯。

血に飢えた赤金色に爛々と輝く隻眼。

右手に骨を削って作った斧、左手には革を張り合わせたバックラーを携え、腰の後ろには差し渡し1,5mはあろうという野太刀を差している。

それは、かつて俺たちがいた鋼鉄の浮遊城の最下層でプレイヤーを待ち構えていた番人。

獣人の王、名を・・・

 

キリト&デュオ『【イルファング・ザ・コボルドロード】!!』

 

驚きのあまり、一斉に声を上げる。

それを打ち消すかのようにイルファングは吼えると、右手の骨斧を振りかざし、力任せに振り下ろしてきた。

 

デュオ「避けろ!!」

 

俺たちは左右に分かれて回避した直後、俺たちのいた場所には斧の刃が深々と食い込んでいる。

もし避けなければ、体の一部が断ち割られていたかもしれない。

背中に嫌な汗が滲むのを感じながら、俺はイルファングの裏側に回ってキリトと合流する。

 

キリト「なんでこいつが!?」

 

デュオ「とにかく倒すぞ!放っておいていい奴じゃない!」

 

その言葉を合図に、俺とキリトはそれぞれの剣を鞘から引き抜いて構えた。

すると、骨斧を振り上げて振り返ったイルファングが、こちらに向かって突進してくる。

対する俺たちも走り出すと、振り下ろされる斧を紙一重でかわし、その脇腹に斬り込んだ。

分厚い肉に食い込んだ剣は、そのまま肩甲骨付近を抜けてイルファングを斬り裂く。

 

キリト「お・・・おおおおおおッ!!」

 

デュオ「ぜあぁぁぁ・・・!!」

 

イルファング「ウグルゥォォォォォォ!!」

 

振り切った剣の刃から血が飛び散り、また斬り裂かれたイルファングからも鮮血が吹き出す。

苦痛の声を上げたイルファングは、斧を振り下ろした体勢のまま膝を付いた。

俺は振り向きざまに剣を振り上げ、大上段に構え、振り下ろす。

それに気付いたイルファングが斧を振り上げてきた。

骨の斧と鋼鉄の剣が衝突し、鍔迫り合いの状態になる。

 

デュオ「負けるかぁぁぁ・・・!!」

 

剣を握る両腕に全意識を回し、強引に振り抜く。

斧のものなのか、それとも自分のものなのかはわからない、みしみしという骨の軋む音が聞こえ、剣と斧の刃が離れた。

俺もイルファングも体勢を崩し、ぐらりとよろめく。

 

デュオ「キリト!!」

 

キリト「わかってる!!」

 

叫ぶとほぼ同時に、キリトがイルファングの懐に潜り込んで、がら空きの胴体を下段から斬る。

吹き出した血を浴びて刀身が赤く染まると、体勢を立て直したイルファングが再び斬りかかってくる。

だが、その狙いがしっかりと定まる前に、俺の放った袈裟斬りが斧の腹を捉えて体勢を保たせない。

3度目のクリティカルヒットが頭部に入り、片目が潰れた。

 

イルファング「グルルラアアアアッ!!」

 

痛みからか怒りからか、イルファングは滅茶苦茶に斧を振り回し始めた。

 

デュオ「キリト下がれ!!」

 

キリト「お、おう!!」

 

デュオ「このぉぉぉっ・・・!!」

 

俺は一旦キリトを下がらせ、殺到する斧の腹を的確に叩く。

その時、ピシッという音を立てて、乳白色の刃に亀裂が入った。

 

デュオ「っ・・・!?ここだぁぁぁ・・・!!」

 

振り切った剣を力任せにグイッと引き戻し、亀裂の入った斧の腹に渾身の突きを打ち込む。

切先はしっかりと斧に食い込み、脆くなったそれを半ばから叩き折った。

すると、イルファングは早くも背に手を回そうとしている。

武器の性能が良かったのか、それとも当たり所が良かったのか、HPはすでに3割を切っている。

しかし、ここで新しい武器を出されれば接近が難しくなる。

俺の思考を読んだように、後ろから鋭い声が飛んできた。

 

キリト「野太刀を使わせるな!!」

 

デュオ「わかってる!!」

 

すぐさま上がったまま剣を叩き付けてバランスを崩し、立て続けにキリトとスイッチ。

後ろから跳んできたキリトは、ヴォーパル・ストライクの要領で突きを放ち、次いで刺さった剣を斬り上げる。

 

キリト&デュオ『スイッチ!!』

 

その一言で再び前に出た俺は、ノックバックするイルファングに大上段に構えた大剣を叩き付けた。

頭の天辺にヒットした剣が、背骨をなぞるような軌道を描いて地面に直進していく。

 

デュオ「行っけぇぇぇ・・・!!」

 

絶叫とともに振り切った剣が、ついに獣人の王を一刀両断した。

鮮血が噴水のように溢れ、俺の装備や顔を真っ赤に染め上げる。

斧で断ち割られた薪の如く打ち上がったイルファングは、空中で体を光に包み、無数の破片となって爆散した。

すると、べったりと付着していた奴の血も塵となって消滅していく。

 

デュオ「終わったか」

 

俺はぶんっと音を立てて剣を横に振り切り、刀身に残るガラスに似た粒子を振り払ってから、背中の鞘にゆっくりと剣を収める。

チンという音が2つ鳴り、それが戦闘の終わりを告げた。


 
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