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真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第八話


 本当にお待たせしました…。

 前回、李儒達の正体を知ってしまった一刀。

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2013-10-12 17:22:40 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:8693   閲覧ユーザー数:6179

 

 一夜明けて、俺は李儒さん達の部屋へ呼ばれていた。

 

「秘密にしていた事は申し訳ありませんでした」

 

 李粛さんがそう言って俺に頭を下げる。

 

 昨夜、李儒さんと李粛さんの本当の名前が『劉弁・劉協』である事を聞き、

 

 俺は驚きの余り一晩まともに寝る事が出来なかった。

 

(ちなみに李粛さんより『明日の朝、改めてお話しします』と言われたので

 

 その時はそれ以上聞かなかったのだが)

 

「い、いえ…そちらにも事情があったであろう事は想像出来ますので」

 

 俺がそう言うと李粛さんは少しホッとした顔をする。

 

「でも…何故このような所に?普通、皇帝陛下の子供が洛陽以外の所、しか

 

 もまったく護衛も兵士も連れていない状況でいるなんて考えられない話だ

 

 と思うのですが…幾らお二人とも強いからといっても」

 

「現在の状況が『普通』ではないという事じゃな」

 

 俺の疑問に答えたのは王凌さんだった。この人も本当の名前はあの『王允』

 

 なんだよな…ますます訳分からん状況だ。

 

「普通ではない?」

 

「ああ、もはや漢王朝に昔日の勢いはなく、宮中には権力に妄執する愚か者

 

 どもが跋扈する有様となっている」

 

「それって…張譲とか何進とかいう人達の事ですか?」

 

 俺がそう質問すると、三人とも眼を丸くして驚いていた。

 

「北郷…お主、まさか全て知っているのか?」

 

 今まで仏頂面のままだった李儒さんが身を乗り出してそう聞いてくる。

 

 

 

「えっ…いや、別に全てを知っているというわけではないですけど」

 

「ならば何故すぐに張譲や何進の名前が出るのじゃ!?」

 

 ええっと…どう説明すればいいのかな?俺が未来から来たみたいな話は前

 

 にしたような気もするけど…。

 

 俺がそう思いながらあれこれ考えていると、李粛さんが突然、

 

「やはり…北郷殿は『天の御遣い』なのですね」

 

 そう呟きながら頷き始める。

 

「天の御遣いって何です?」

 

「夢…お主まさかあんなエセ占い師のたわ言を信じておるのか?」

 

 俺の疑問に李儒さんが答えるでもなくそうジト目で李粛さんを睨む。

 

「あ、あの~…」

 

「今のはな、近頃市井の者達の中で広まっている噂の事なのじゃ」

 

 ようやく王凌さんがそう答えてくれる。

 

「噂…ですか」

 

「ああ、何でも『天より飛来する一筋の流れ星。流星は天より御遣いを連れ

 

 て現れ、その御遣いが持ちたる誰よりも物を見通す力によって乱世を沈静

 

 す』とかいう物でな。管輅とかいう占い師が言ったらしい」

 

 占いねぇ…ていうかそこで何故俺?俺って流星に乗ってきたっけ?そもそ

 

 もどうやってこの世界に来たのかも分からないんだけど。

 

「北郷、そのようなたわ言を気にする必要はないぞ。誰が何と言おうがお主

 

 には関係の無い事じゃ。妾達の事情は妾達だけの事じゃしな」

 

「姉様…まだそのような事を仰るのですか!?」

 

「黙れ、夢。お主が何を思おうが北郷がどのような者であろうが、これ以上

 

 妾達の事情に北郷を巻き込む事は妾が許さぬ」

 

 

 

 李儒さんがそう言ったきり黙ってしまうと、李粛さんは怒りを露にした表

 

 情のままじっと李儒さんを睨みすえる。ううっ、空気が重い…ていうか怖

 

 い。どうすりゃいいんだ、これ?

 

「あ、あの…王凌さん?」

 

「すまぬ…お二人がああなったら儂には止める事は出来ん。騒ぎを部屋の外

 

 には出さぬようにする故、お主は一旦自分の部屋へ帰っていてくれ」

 

「えっ!?でも…俺に関係ある話じゃ…」

 

「いいから、今はこれ以上何も進まぬ」

 

 王凌さんにそう言われたので俺はそっと部屋を出たが…扉越しにも重い空

 

 気が伝わってくる。仕方ない、何とか出来そうなあの人に声をかけよう。

 

 ・・・・・・・

 

「…分かりました。私が何とかします。北郷さんはご自分のお部屋へ戻って

 

 いてください」

 

 俺は部屋を出たその足で董卓さんの執務室に向かい、李儒さん達の状況を

 

 話すと、董卓さんはすぐにそう応じてくれた。

 

「月、幾らあんたでもその状態の二人に割って入るのは危険よ。恋か霞を連

 

 れていかないと…」

 

「恋さんは葵様達の見送り、霞さんは領内の巡回、華雄さんは新兵の鍛錬に

 

 出てもらっています。今何とか出来るのは私だけよ」

 

 賈駆さんは慌てて止めようとするが、董卓さんは微笑みながらそう言うと

 

 傍らにあった少し小振りの二振りの剣を腰に差して部屋を出て行く。

 

「ああ…月の眼が完全に武官状態になってる…ここ最近、腕がなまっている

 

 ってぼやいていたし…誰かある!すぐに李儒様達の部屋から十町以内から

 

 全ての者を退出させて!これは命令よ!!」

 

 賈駆さんのその命令に兵士さん達が慌てふためきながら四方に散る。

 

 俺、もしかして相談する人を間違ったのだろうか…?

 

 

 

 その頃、李儒の部屋では…。

 

「姉様…いい加減にしてください。私達は個人の力では奴らに抗う事が出来

 

 ないから今此処に来ているのでしょう!?そして洛陽を出る時に『どのよ

 

 うな手段を使っても悲願の達成と母様の救出をする』と誓ったではないで

 

 すか!それなのに何故今更そんな事を言うのですか!?」

 

「確かにな…でもそれは北郷には関係の無い事じゃ。悲願の為の手段や人手

 

 はこの国に生まれこの国に生きる者達で賄えば良い事じゃと妾は言ってお

 

 るだけじゃが?そんなに洛陽の様子が知りたければ誰か他の者を行かせれ

 

 ば良いだけじゃろう!!」

 

 李儒と李粛が激しく言い争っていた。

 

「それだけでは限界があると言っているのです!!それに北郷殿とて協力的

 

 だったではないですか!」

 

「洛陽にいる者どもは韓遂などとは比べ物にならん位の悪党なのは、妾達が

 

 一番知っておろう!?そのような危険な所に何故北郷を行かせようとする

 

 のじゃ!『行き倒れを救ってやったから命を懸けて働け』とでも言うつも

 

 りなのか!?」

 

 二人の言い争いは収まる所を知らず、今にも殴り合いが始まりそうな位の

 

 険悪な雰囲気になっていた。

 

(まずいな…このままではお二人は喧嘩別れになりかねん。今お二人がバラ

 

 バラになってしまったら陛下の救出も漢の復興も水の泡になってしまう…

 

 しかし儂の力では抑える事も出来ん。誰か呼ぶべきか…?)

 

 部屋の入り口に立っている王凌は事態をどう打開するべきか必死に考えて

 

 いた。

 

 その時、扉の向こうから声がかかる。

 

「董卓です。中に入らせてもらっても良いですか?」

 

 

 

 その声を聞いた王凌は助けが来たとばかりに扉を開けて董卓を中にいれた

 

 のだが…。

 

「董卓殿?何故完全武装なのですか?」

 

 王凌の言葉の通り、董卓の格好は完全に戦装束であった。

 

「ふふ、だってこれからそうなるんでしょう?」

 

 対する董卓の言葉はそれを期待する風にも聞こえていた。

 

 そこでようやく李儒と李粛が董卓が来た事に気付く。

 

「何じゃ、月?何しに来たのじゃ!?」

 

「月、今は聞き分けの無い姉との重要な話し合いの最中なの。出来れば部屋

 

 から出ていてほしいのだけど?」

 

「ほう…聞き分けの無い姉とな?一つの考えに妄執している妹なんかよりは

 

 遥かにマシじゃと思っておるがの~?」

 

「…私の考えの何処が妄執だと仰られるので?」

 

「全てに決まっておろうが!」

 

「それを言うなら姉様の方が北郷殿に拘っておられますでしょうが!今は色

 

 恋などに現を抜かしている場合では無い事位分かっておられたと思ってい

 

 ましたけどね!!」

 

 李粛のその言葉を聞いた瞬間、李儒の方から何かがキレる音がその場の者

 

 達の耳に聞こえる。

 

「色恋とな…そうか、そうか。つまり夢は妾が北郷に懸想していてそれで冷

 

 静な判断が出来ていないと言うのじゃな…さすがに今の言葉は聞き捨てな

 

 らんぞ?…取り消せ!!」

 

 

 

 

 その言葉と共に李儒の体から闘気が溢れ出す。

 

 それにはさすがに李粛も少し怯んだが、

 

「そうやって実力行使に出れば私が折れると思ったら大間違いです!それに

 

 私は嘘は言ってませんしね」

 

 挑発するかの如くに言い返す。

 

「ほう…この期に及んで居直りか。上等じゃ!」

 

「それはこっちの台詞です!!」

 

 その言葉と同時に二人は剣を抜き放って構える。

 

「姫様方、さすがにそれは…!」

 

「「黙れ、じいは下がっておれ!!」」

 

 王凌が止めようとするが、二人から同時に一喝されて一瞬固まってしまう。

 

 その隙を衝くかの如く二人は剣を振るい出したのだが…。

 

「お二人とも、そこまでです」

 

 何時の間にか董卓が間に割って入り両手に構えた二振りの剣で二人の剣を

 

 受け止めていた。

 

「邪魔をするな、月!」

 

「そうです、これは私達の問題です!」

 

「お二人こそ落ち着いてください。此処でお二人の身に何かあったら喜ぶの

 

 は張譲位ですよ?喧嘩をするなとは言いません。するなら素手でしてくだ

 

 さい」

 

 二人は董卓に苛立ちの声を向けるが、董卓からそう言われると言葉に詰ま

 

 ってしまう。それでも剣を持つ手から力を抜く事は無く、そのままの状態

 

 が四半刻程続いていた。

 

 

 

「夢…何時までそうしてるのじゃ?このままでは月がまいってしまうじゃろ

 

 うが。剣を引かぬか」

 

「その言葉、姉様にそっくりそのままお返しします」

 

「ご心配なく。この程度で音を上げる程ヤワには出来ていませんから」

 

 董卓がそう言うと、李儒と李粛が同じようにムッとした顔になる。

 

「ほう…夢はともかく妾は手加減してやっているというのにそんな事も分か

 

 らんとはな」

 

「あらあら、そんな事を言ってる姉様の腕はさっきからプルプル震えてるで

 

 はないですか。私はまだまだ余裕ですけどね」

 

「そうですよね。お二人ともこんな程度で本気だったら、私今すぐ軽く瞬殺

 

 出来る位ですしね」

 

 三人とも笑顔でそんな事を言い合っているが、周りに立ちこめている空気

 

 は既に重いを遥かに通り越したレベルになっていた。

 

(まずい…まず過ぎる。せめて此処に武官の誰かがいてくれればお三方を止

 

 める事も出来るのだろうが…儂の力だけではどうする事も出来ん。此処に

 

 これ以上人を近付けさせないようにするのが精一杯だ)

 

 それを見ていた王凌は心の中で頭を抱えていたが、それ以上何もする事が

 

 出来ず、出来れば早く呂布か張遼が帰って来てくれる事を切に願うのみで

 

 あった。

 

 ・・・・・・・

 

 その空気は部屋から離れていた一刀も感じていた。

 

「どうしたの、お兄ちゃん?」

 

「璃々、すまないけど少し出かけてくる」

 

「うん、気を付けてね。李儒お姉ちゃん達によろしく」

 

 幾らここまで大きく気が放出されているとはいえ璃々にまで気付かれてる

 

 ような状況に一刀は少し頭を抱える。

 

「…俺に止めれるかどうかは分からないけど、関係無いとは言えないしな」

 

 一刀は刀を差すと李儒の部屋へ向かっていったのであった。

 

 

                                 続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 しばらく間隔が開いてしまい申し訳ありません。

 

 しかもとんでもなく中途半端な所で終わってしまいました…

 

 …内容もグダグダですがご容赦の程をお願い申します。

 

 次回はこの続きからです。次はちゃんと一刀の決意というか

 

 心情を書く…予定です。

 

 

 それでは次回第九話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 どうも最近またモチベが低い…次もかなり間隔が開く

 

     かもしれません。

 

 

 

 


 
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