No.627088

真・恋姫無双 ~新外史伝第115話~

今回は「小説家になろう」との同時予約投稿にしてみました。

同時投稿の理由はあまりないのですが、取りあえず1度やってみたかったもので…。

そして今回は「ここで終わるんかい!」と霞や真桜なみのツッコミを受けそうです。

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2013-10-11 20:00:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5753   閲覧ユーザー数:4728

一刀たちが宿泊していた屋敷が崩れて落ち、土煙が朦々と広がったが漸く収まると梁や天板などは崩れ落ち、

 

屋根を覆っていた瓦がそこら中に散乱している状態であった。

 

そして愛紗たちの目の前には瓦礫の山があるのみで、一刀は勿論、璃々、夏侯淵、桃香、雛里の姿は無かっ

 

た。

 

「ご主人様!桃香様!返事をして下さい!」

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、どこなのだ!」

 

愛紗と鈴々、それに負傷していない親衛隊の兵も徐々に集まり瓦礫を排除していく。

 

そしてまずは机の下に避難していた璃々が救助され、幸い負傷は無かったが璃々が必死の形相で愛紗と鈴々に頼み込む。

 

「ここにご主人様と夏侯淵さんが埋もれているの!早く助けて!!」

 

璃々が指示した場所に愛紗や鈴々たちが懸命に瓦礫を排除すると、意識が無い状態で一刀と夏侯淵が発見され

 

た。

 

「ご主人様!」

 

愛紗が一刀の顔を軽く叩くが目を覚ます様子が無く、更に強く揺さぶろうとしたが璃々が

 

「愛紗お姉ちゃん、これ以上揺らしちゃ駄目!先に血を止めないと!!」

 

良く見ると一刀の身体は頭部を始め、あちらこちらに出血の跡が見られた。だが夏侯淵については一刀が庇っ

 

たお蔭で外傷は殆ど無く、気を失っている状態であった。

 

「このままじゃ早く治療しないと…」

 

「治療なんてさせると思っているの?」

 

璃々の言葉を遮る様に別の方向からそれを否定する声。

 

「誰なの!」

 

「フフフ…」

 

「貴様は鐘進!」

 

声がする方向を向くとそこには鐘進こと鐘会と馬謖、それに兵を引き連れ愛紗たちを取り囲もうとしていた。

 

「な、なんで春風(馬謖)がここにいるのだ!?」

 

漢で最後まで一緒に戦った春風がいたことに鈴々は驚いていたが、春風は鈴々の驚きを余所にこう言い切っ

 

た。

 

「久しぶりね、鈴々。何でここにいるのかと質問…そこに倒れている北郷一刀を討つためよ」

 

「貴様、ご主人様を討つだと!」

 

春風の説明に逸早く反応して青竜偃月刀を構える愛紗。だが春風はそれに怯むことなく言葉を続ける。

 

「ええそうよ。この男は劉備様を殺した張本人。仇を取るのは家臣として当然の事、このような男に尻尾を振

 

って仕えている貴女たちと違うわ」

 

まだ桃香の生存を知らない春風や焔耶から見たら、桃園の誓いを忘れ一刀に仕えている愛紗たちを許すわけに

 

もいかなかった。

 

「桃香様は生きている!今、この中にいるのだ!」

 

愛紗が、今だ屋敷の下敷きになっている可能性がある桃香の生存を伝えようとするも

 

「あら、関雲長というものが言い逃れですか。馬謖殿、騙されてはいけませんよ、時間稼ぎして城外にいる兵

 

たちと連絡を取って、私たちを挟撃するつもりですわ。どうしても劉備殿を助けたいのであれば、そこに倒れ

 

ている北郷一刀と夏侯淵をこちらに引き渡せば、助けることも考えない訳ではないわよ」

 

「うっ…」

 

愛紗は、なぜ鐘進が夏侯覇と名乗っていた夏侯淵の正体を見破り、一刀と共に始末することを考えているのは

 

分かったが、その理由を考えている余裕は無かった。

 

(「だがこのままではご主人様と桃香様の二人の命が…」)

 

愛紗が悩んでいると鈴々が

 

「…愛紗、こうなれば鈴々たちもお姉ちゃんの後を追う覚悟をするのだ。このままだとお兄ちゃんが死んでし

 

まうのだ、だから鈴々たちが戦っている間にお兄ちゃんの治療と助けを呼びに行くのだ」

 

「それにお兄ちゃんが助かったら、お姉ちゃんも喜ぶだろうし、お姉ちゃんとの約束も果たせるのだ」

 

鈴々の言葉を聞いて、漸く愛紗も腹を括った。

 

「璃々、ご主人様の事を頼む。ここは私たちが喰い止める」

 

璃々も一刀の命を護るためには、誰がこの場に留まる必要があることは分かっていた。

 

「二人とも死んだら駄目だからね!すぐ助けを呼んでくるから!」

 

璃々は一刀と夏侯淵、それに護衛の兵を連れて下がろうとしたが、鐘会が

 

「そうはさせないわ」

 

兵を動かそうとしたが、

 

「邪魔をさせないのだ!天下無敵と謳われた燕人張飛の丈八蛇矛、雑兵の千や二千、地獄に送るには軽いの

 

だ。死にたくなかったら大人しくするのだ」

 

鈴々が以前同僚であった馬謖も見たことが無い殺気を出しされると、

 

「これが鈴々の本気…」

 

「チィ…これでは兵たちが竦んで動けぬ」

 

鐘会たちは鈴々らと睨みあっている間に璃々たちの後退を許してしまった。だが鐘会たちはまだ余裕があった。

 

見た目一刀の怪我は軽くなく、どうせしばらくはこの近くで治療をすることとなる。だったらその間にこの二

 

人を始末して、後でじっくり料理すれば良いと考えていた。

 

だがそんな鐘会たちの考えを見透かしたのか愛紗と鈴々の二人は

 

「貴様らの事だ。私たちを討ち取った後にご主人様を始末するつもりだろうが、そうはさせぬ」

 

「愛紗の言うとおりなのだ。鈴々がお前達全員を始末するのだ」

 

「おい鈴々、私にも半分くらい残しておけ」

 

「むー仕方ないのだ」

 

二人がそんな軽口を叩いているとそれを見ていた鐘会と馬謖が

 

「貴様ら、そんな無駄口を叩けるのは今のうちだ!者ども彼奴らを血祭りに上げろ!」

 

「幾ら二人が強いと言ってもこれだけの兵に勝てる訳がないわ!掛かりなさい!」

 

鐘会と馬謖の部隊の兵士が愛紗と鈴々に襲い掛かる。

 

襲い掛かってくる兵を見ながら愛紗は

 

「死ぬなよ、鈴々!」

 

「愛紗もなのだ!」

 

二人はそう言いながら、兵の中に突撃した。

一方、璃々たちは損壊した屋敷の敷地内にある小屋で一刀たちの治療に当っていたが、一刀にあっては血止め

 

ができたものの、まだ意識は戻っていなかった。

 

そして夏侯淵については、幸い傷は軽傷だったが頭を強打したためか、同じく意識は戻っていない状態であっ

 

た。

 

二人の治療を終えて、璃々は決断を迫られていた。

 

一刀を抱えて脱出するか、それとも援軍が来るまで耐え抜くかを。

 

だが今の状況ではどちらも難しい話であった。

 

周りが敵に囲まれ、手負いの二人を抱えては城外にいる味方に合流することは困難であり、さりとて城外の味

 

方が来るまでこの場で留まるかと言えば、愛紗たちが突破されれば無理な話であった。

 

そして璃々は、今いる護衛の兵を残して自分は愛紗の元に戻り、『天の御遣い』の一人として敵の目をこちら

 

に向け、一刀を助けるための援軍が来るまで何としても一刀を守り抜くことを決断したのであった。

 

「ご主人様…ごめん。お母さんと幸せになってね」

 

璃々は一刀と別れの挨拶をしていた。この状況では自分が一刀や紫苑の元に無事に帰ることは難しい状況は誰

 

の目から見ても明らかであった。

 

そして璃々が覚悟を決めて小屋を出ようとしたところ、

 

「うぅぅ…ここは?」

 

夏侯淵が漸く意識を取り戻したが、意識が覚醒すると同時に、頭の痛みに顔をしかめていたが、頭を左右に軽く振って少しでも痛みを和らげようとする。

 

それに気付いた璃々が

 

「夏侯淵さん。大丈夫!?」

 

夏侯淵は璃々の問いに答えずに周りを見渡す。自分の横に何故か北郷一刀が横たわっており、眼前には北郷

 

璃々がいることに疑問に思い、璃々に尋ねた。

 

「……一体、ここは何処で私は何をしていたのだ」

 

と。

 

「夏侯淵さん…もしかして記憶が戻ったの?」

 

「記憶が戻った?」

 

すると璃々が今までの事を説明すると夏侯淵は途切れ途切れとなっている自分の記憶を頭の中で繋ぎあわせよ

 

うとする。璃々の説明を終えると漸く夏侯淵の中で一本の記憶が繋がった。

 

「そうだったのか、私のために北郷殿が…」

 

咄嗟の事とはいえ、自分の代わりに一刀が負傷したことに夏侯淵は落胆していた。

 

「それで今、外の状況は?」

 

「今、あっ!愛紗お姉ちゃんと鈴々ちゃんが鐘進と馬謖の兵を押さえているの、だから夏侯淵さんはここに居

 

て!」

 

「待ってくれ」

 

璃々が慌てて小屋を出ようとするが夏侯淵がこれを止める。

 

「どうして止めるの!」

 

「少し私の話を聞いて欲しい。今、鐘進と名乗っている女、あれの本当の名は鐘会、晋の将だ」

 

「えっ…それ本当?」

 

「ああ間違いない。実は救助される前、私は晋の軍勢と戦い、その戦いの時に鐘会の目を射たのが私だ」

 

「じゃ、なぜその女がご主人様を狙うの!」

 

鐘会の目を射たのが夏侯淵なのに、なぜ一刀の命が狙われるのか璃々にはその理由が分からなかった。

 

「それは私には分からないが、ただはっきり言えることはあの女は元々晋の草(スパイ)で呉と魏を裏切り、

 

そして北郷殿を暗殺しようとしたことだ」

 

夏侯淵の説明で、璃々は司馬懿の命令で一刀の暗殺を命じたのだと判断した。

 

「晋はご主人様を亡き者にするつもりだったんだね、絶対に許せない!」

 

「ああ。私だけでなく北郷殿を殺そうとした輩にそれなりの報いを受けて貰わないとな。ということで私も連

 

れて行って貰おう」

 

微笑を浮かべながら夏侯淵は協力を申し出る。

 

この状況での夏侯淵の助力は大変有難い物であったので、璃々はこれを承諾した。

 

「璃々殿」

 

「何?」

 

そして愛紗たちの援護に向おうとすると夏侯淵が再度引き止める。

 

「璃々殿の私の真名である『秋蘭』を受け取って貰おうと思ってな」

 

「いいの?」

 

「これからお互い命を預ける者同士、それに命を助けて貰った者に真名を預けないほど私は度量が狭くつもり

 

だ」

 

「うん、ありがとう。じゃ私の事も殿と付けないで璃々と呼び捨てしていいから」

 

「分かった。行くぞ璃々」

 

二人は一刀の護衛を兵に任せ、愛紗たちの援護に向った。

一方、城外では親衛隊と城兵と睨みあいが続いていた。

 

城外に残されていた愛香(関平)たちは、城内の異音を聞き、城内への入城を申し入れたが、城兵は

 

「今、火災が発生しており、兵が入ると混乱する」

 

という名目で親衛隊の入城を拒否。

 

だが住人が避難のために城外で出てこないことに不審を抱き、再度愛香は入城を申し入れたがこれも先と同じ

 

理由で入城を拒否された。

 

このままでは一刀や義姉の愛紗が殺されてしまうという焦りと万が一火災が事実で、城を攻撃した場合、荊州

 

残党との内部抗争が避けられない事態になってしまうというのもあり、部隊指揮の経験が浅い愛香は決断を下

 

さないでいた。

 

そして親衛隊は攻城兵器を持参していないため、このまま攻撃した場合、大きな損害も覚悟しなければならな

 

かった。

 

そんな中愛香は、一刀や愛紗を救うため兵を動かすことを決意。もしこれが間違いであれば、死を覚悟した上

 

で。

 

そんな愛香を見て同僚の周倉は

 

「もし失敗した時は、俺も一緒に責任を取るからさ。自分の決断を信じな」

 

「周倉…」

 

これを切欠に二人は良い仲となっていくのは、これは別の話である。

 

そんな中、兵士の一人が現れ、正体不明の数騎がこちらに近付いていると知らせがあった。

 

そして代表格の人物が現れ

 

「ここの将に会わせてくれない?」

 

愛香に面談を求めた。

 

 

 

 

 

 

丁度、その頃城内では

 

「何なんだ、こいつ等…」

 

「………」

 

声の一つは鐘会の声で、もう一人の馬謖は驚きと恐怖のあまり無言となっていた。というのは鐘会と馬謖の兵

 

を愛紗たちに襲わせたが、戦人となっている二人を止めることができなかった。

 

「せぇぇぇぇぇぇい~~~~~~!」

 

「ぎゃあああああっ!!」

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃぁーーーーーーーっ!」

 

「ひぃいいいいい!」

 

愛紗と鈴々が得物を一振りする度、一気に5人前後の兵が倒され、既に二人の周りには既に100人以上が死

 

体と化していた。そして態勢を立て直した親衛隊が二人の横を通り抜けられない様に固めている状態であっ

 

た。

 

そんな中、城壁から焔耶が応援に駆け付けたが、既に一刀を討ち取って事が終っていると思っていたが、思わ

 

ぬ抵抗にあっているのを見て

 

「え~~い!貴様ら何をしている!私が関羽を殺る!!お前らは張飛を押さえろ!!」

 

「桃香様を捨て、蜀に降った貴様に私が鉄槌を下してやる!」

 

焔耶が愛紗に向け、親の仇の様に言い放つ。

 

「待て、魏延!桃香様は生きている。この中に生き埋めになっているかもしれないのだ!」

 

愛紗は焔耶を説得しようとするが、桃香の仇に燃えている焔耶は敵である愛紗の言葉など聞き入れるはずもな

 

 

「嘘を言うな!私は洛陽で桃香様たちの髪を晒されているのを見ているのだ!貴様の言うことなど信用でき

 

ん!!」

 

「チィ!この分からず屋が!」

 

「貴様を倒せば、桃香様も喜ぶだろう!」

 

愛紗が説得を諦めて、覚悟を決め愛刀である青竜偃月刀を構える。そして焔耶が鈍砕骨を振り上げ突撃する。

 

「はああぁぁーっっ!!」

 

「たあああああああっ!」

 

お互いの武器が衝突する直前に思わぬところから

 

「二人とも止めて―――――!!」

 

その声は二人とも聞き覚えのある声で、二人は打ち合う寸前で止めると愛紗は

 

「無事だったのですね…桃香様」

 

喜びと安堵の表情を浮かべていたのに対し、焔耶は

 

「う、嘘だろう……本当に生きていたのですか…」

 

焔耶は驚きのあまり、その場で鈍砕骨を落したのであった。

 

 

 


 
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