No.615197

伊織「さあ、麻雀を打つわよ!」P「おうっ!」  第2話前編

shuyaさん

伊織は、律子と雪歩に頼み込んでこの場をセッティングしたようです。

注:『一』は一マン、『1』は一ソウ、『(1)』は一ピンです

2013-09-02 02:37:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:633   閲覧ユーザー数:628

注1:このお話は、前作の『春香「マージャンですよっ!マージャンっっ!」 P「え?」』の続きです

注2:とはいえ、設定的に続いているだけなので、このお話からでも読めないことはないと思います

 

 

 

雪歩「伊織ちゃん……誰にも言わないでって、私言ったよね?」

 

伊織「いいじゃない。律子は隠れ麻雀マニア。プロデューサーなんて、ほらあんなに喜んじゃって」

 

律子「喜び、っていうかねえ。あれはさすがに浮かれ過ぎじゃない?」

 

P「またこうして打てるなんてなあ……いやー、みんなが打てるなんて全く知らなかったぞ!」

 

伊織「そりゃそうよ。イメージ悪いんだから触れ回ったりはしないもの」

 

P「当然、話す機会も訪れないってことか。俺から話題にするってことも考えにくいからなあ」

 

律子「私が伊織が打てるって知ったのも、竜宮があってこそでしたから」

 

伊織「企画で煮詰まった律子がボソッと言ったのよね。”もうこの四人で麻雀でも打ちゃいいじゃない”って」

 

律子「ちょっと!それ口止めしたわよね?!なんで言っちゃってるのよ!!」

 

P「律子。いくら煮詰まっていたとしても、担当アイドルのイメージ下げるような企画を口に出しちゃダメだろ」

 

律子「いや、あれは。こう、疲れ果てていた時の、ただの独り言で…………いえ。確かに、私のミスでした」

 

伊織「でもお蔭様で、麻雀を語り合える仲間が増えて、こうして打っていられる。律子には感謝してるのよ?」

 

律子「じゃあその恩を仇で返すってのはどういう了見なのよ!」

 

P「ははは。まあ昔の話だし、わかっているならそれでいいよ」

 

律子「いえ。自分を戒めるためにも、今日の麻雀が終わったらもう一度しっかりと反省するつもりです」

 

P「律子らしいな……あ。ってことは、伊織は二人が打てると知っていたことになるのか」

 

伊織「まあね。でも律子は他に打てる人がいないと決め付けていて、雪歩には硬く口止めされていたってわけ」

 

P「なるほどな。しかし惜しい。もう一人いれば卓を囲めたのに」

 

伊織「なに言ってんのよ。だからこの場があるんじゃない」

 

P「ん?どういうことだ?」

 

伊織「そのくらい自分で考えなさいっ」

 

律子「プロデューサー。伊織は、プロデューサーという”信頼できるもう一人”が見つかって喜んでいるんですよ」

 

伊織「ちょっと律子!あんた人の話を勝手に捻じ曲げないでよねっ!!」

 

律子「あら?私は捻じ曲げたつもりはなかったんだけど……勘違いだったのかしら」

 

伊織「ぜんっぜん違うわよっ!」

 

律子「そう?じゃあ誤解ってことかあ。ゴメンね、伊織」

 

伊織「わかればいいのよ。そんなことより麻雀を」

 

律子「んじゃ、私が誤解しちゃった言葉の正しい意味。ちゃんと教えてくれるかな?」

 

伊織「う。そ、そんなのどうだっていいじゃない。さっさと始め」

 

P「なんだ。ちょっと喜んじゃったじゃないか。ぬか喜びさせるなんて、律子も人が悪いぞ」

 

律子「ごめんなさいプロデューサー。そんなつもりじゃなかったのですが……」

 

P「ははっ。いやいや、気にするなよ。俺が自意識過剰だっただけだ」

 

律子「そんなに残念そうな顔をして、説得力がなさすぎですよ。本当に、そういうつもりじゃなかったんですが」

 

伊織「うー……」

 

律子「伊織。言いたいことがあるなら、はっきり言っておきなさい」

 

伊織「……」

 

P「悪かったな、伊織。勘違いして」

 

伊織「いいわよ。その……勘違いじゃ、ないから」

 

P「えっ?」

 

伊織「ありがと。気の許せる仲間たちだけで打てるなんて、思ってもみなかった。感謝、してるわ」

 

P「そ、そうか。それは俺としても、嬉しいな」

 

律子「なんですか、そのぎこちない喋り方」

 

 

伊織「雪歩も、ごめんね。ちょっと浮かれてた。本当は先に了解を取るべきだったわ」

 

雪歩「……」

 

伊織「雪歩?」

 

雪歩「……あの、プロデューサー。先に言っておきたいんですけど、いいですか?」

 

P「ん?なんだ、雪歩」

 

雪歩「わ、私の家は、そういう商売とかしていませんから!そこだけはちゃんとわかっていてくださいぃっ!」

 

P「ええっと。ちょっとよくわからないけど、まあとりあえず落ち着け、雪歩」

 

雪歩「あぅ!は、はい。ごめんなさい」

 

伊織「あー、やっぱり先に話を通しておくんだったわ」

 

雪歩「あうぅ……」

 

P「家のことで、なにかあったのか?」

 

雪歩「……昔、とっても小さな頃に”麻雀って楽しいね”って話をしたんです」

 

律子『そんな頃から打ってたのね。けっこうな雀歴じゃない』

 

雪歩「そうしたら男の子たちが”萩原に指詰められるぞー!”って。”組員が来るぞー!”って」

 

律子「うわ、それかなり酷いわね」

 

伊織「私も似たようなことはあったわよ。”水瀬ん家の黒服に埋められるぞー”とかなんとか」

 

律子「伊織は平気だったの?」

 

伊織「言ってきたやつをヘコませて、砂場に埋めに行ったから。むしろあっちがトラウマじゃない?」

 

律子「ちょっ、それ大丈夫だったの?学校が騒ぐでしょうに」

 

伊織「すごい勢いで泣き始めたから、途中で勘弁してあげたわよ」

 

雪歩「伊織ちゃん。さすがにそれはひどいよぅ」

 

伊織「やられっぱなしは性に合わないわ。雪歩もやり返せばよかったのに」

 

雪歩「あ、でも。私がそれで泣いちゃって、気が付いたらみんなが謝りにきてくれてたから」

 

P「あーそうなっちゃったのか」

 

伊織「どうしたの?えらい微妙な顔になってるわよ」

 

P「それな。たぶん雪歩を泣かせたことによる、男同士の争いが起こってるぞ」

 

雪歩「はい?」

 

律子「ひょっとして、小学生にありがちなアレですか」

 

P「雪歩が気になるからちょっかい出して、うっかりやりすぎた。で、同じく気になっている奴らから粛正されるという構図だ」

 

雪歩「ええっ?!」

 

律子「そうですねえ。女の子も”雪歩ちゃんに謝りなさいよっ!”と責め倒した、なーんて流れでしょうか」

 

P「雪歩はかわいいからなあ。そういうのがちょっとだけ激しかったんだろうな」

 

雪歩「そんな、私なんてぜんぜん……」

 

律子「女の子らしいエピソードねえ。それに比べて伊織のは」

 

伊織「ああもう!そんな話はいいからさっさとやるわよ!雪歩も、この面子ならちゃんと打てるでしょう?」

 

雪歩「えっと。うーん、みんなってそんなに強いんですか?」

 

律子「おおっ、雪歩から自信の発言が出るなんて。これは相当期待できそう」

 

雪歩「えっ?!わ、私そんなつもりじゃあ」

 

P「あははっ。春香が麻雀やりたいって言ってきたときはどうしようかと思ったけど、この調子なら上手くいきそうだな」

 

律子「765プロ内でやるなら、麻雀人口を増やした方が盛り上がりますからね」

 

P「麻雀はレベルの近い人とやった方が面白いもんな。みんながやる気なら、良い麻雀環境を作っていきたいもんだ」

 

伊織「あ、そうそう。あんた、今回はちゃんとトップ目指して打つんでしょうね?律子から聞いたわよ」

 

雪歩「あれ?プロデューサーさんもトップを目指していない人なんですか?」

 

P「いや、違うぞ。前のは春香が初めてだったからだ。少しでも春香の麻雀が楽しくなるように打っていたんだよ」

 

伊織「過保護ねえ。麻雀ってのは初心者が負けまくるものでしょうに」

 

P「ああ。だから”楽しそうだからやってみたい”って始めた人は、だいたい”楽しくない”って言ってやめてしまうんだよ」

 

伊織「なにそれ。初回で経験者に勝てないからやめるって、どう考えてもおかしいわよ」

 

P「勝ち負けよりも、あがれるかあがれないかってところだな。あがれない麻雀は苦しいだろ?そういうことさ」

 

伊織「普通に考えたら、最初は苦労するってことくらいわかるでしょうに」

 

P「お試しで始める時は、考えなしでやるもんさ。だから、まずは楽しさを教えてあげようってのが俺のやり方なんだ」

 

律子「そういえば、私の周りはどんどんやめていったわねえ。残ったのはいとこくらいだったかも」

 

伊織「ああ。あの半強制的にサシで麻雀を打たされていたっていう例の子ね」

 

律子「人聞きの悪いことを言わないで。私は強制なんてしてないわ。お願いをしただけよ」

 

伊織「それが強制だって言ってんのよ。あんたの地味で面倒な研究にも付き合わされたって噂は聞いてるのよ?」

 

P「まあまあ二人とも。じゃあ今日は本気でトップを目指すから、それでいいだろう?」

 

伊織「それでいいのよ。でも、そう簡単にこの伊織ちゃんからトップを奪えるとは思わないことね」

 

雪歩「ふふ。じゃあ、私も今日くらいはトップを目指しちゃおうかな」

 

伊織「あら珍しい。雪歩からそんな発言が出るなんてね」

 

雪歩「私もこのままじゃいけないとは思っているから」

 

伊織「それはいいことよ。その気持ち、大事にしなさい」

 

律子「ねえ、なんか話がおかしくない?こう当たり前のことが当たり前になっていないというか」

 

P「あはは。律子は、うん。そうだな。もうちょっといろんな人と打ったほうがいいのかもしれないな」

 

律子「それ、どういう意味でしょうか」

 

P「人が麻雀に求めるものは何か、ってことだよ」

 

律子『そんなの、勝利に決まってるじゃない。みんな勝つために打ってるんじゃないの?』

 

 

 


 
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