No.612656

ALO~聖魔の剣~ 第27剣 漆黒介入

本郷 刃さん

第27剣です。
キリトさんが戦闘に介入します。

どうぞ・・・。

2013-08-26 10:00:47 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11110   閲覧ユーザー数:10113

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第27剣 漆黒介入

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナSide

 

駆け抜けたユウキが振るう黒曜石の剣はノームの男の戦斧(バトルアックス)へと吸い込まれ、弾く。

弾かれた隙を突いて連撃を繰り出す彼女に対し、なんとか体勢を立て直そうとする男。

有名ギルドでパーティーリーダーを務めるだけはあって、

重量武器であっても速い攻撃を繰り出すがユウキの前には通用していない。

細剣(レイピア)に近い長剣でありながら、戦斧を相手にその素早さで重量攻撃を弾く。

弾き防御(パリィング)》、彼女はそれをなんなくこなしているのだから、やはり技術は凄まじいものだ。

そして、体勢を崩した男にユウキはソードスキル《バーチカル・スクエア》を放ち、ダメージを与えると共に吹き飛ばした。

 

「ぐぁ……きったねぇ、不意打ちしやがって…!」

 

倒れてから立ち上がった男を見て、彼の仲間達も武器を構えて陣形を取る。

 

「あのさぁ…汚いっていうけど、ボス部屋の前で壁行為(ブロック)しているアンタらはどうなわけ?

 大体、武器を取れって言われて武器を取ったんだから、その時点で戦いは始まってるんだよ。

 これは決闘(デュエル)じゃないんだ」

「くっ…!」

 

彼らの背後に1人で立っているクーハ君の最もな言葉に呻くリーダーの男。

わたしもユウキも、ジュンもテッチも、タルケンもノリも、シウネーも…それぞれの武器を構えて大型ギルドを睨みつける。

あとずさる彼らに追い打ちを掛けるように、彼らの背後から強烈な殺気が巻き起こる。

 

「おいおい、逃げるなよ? 彼女らの覚悟と真剣さは証明されたんだ。アンタらもそれに応えるのが礼儀ってもんだろ?」

 

クーハ君の威圧が篭った発言を聞き、相手に動揺の空気が広がる……しかし、そこでノームの男が笑みを浮かべた。

わたし達の後ろから無数の靴音が聞こえてきた。

まさかと思い視線を後ろに向けると、30人近い妖精の集団が駆けてくる。

やられた!既に連絡を受けているのか抜剣しているし、

この大人数ではいくら強者揃いのスリーピング・ナイツとクーハ君でも、太刀打ちが難しい。

 

―――ごめんね、アスナ。ボクの短気に巻き込んじゃって……でも、ボクは後悔してない!

―――大丈夫だよ…。わたしだって、彼らのやってることは許せないから、だから…。

 

わたしの手を取ったユウキの気持ちが伝わってきた。

キリトくんとのように完成された伝わり方じゃないけど、それでも真っ直ぐな彼女の心が伝わってくる。

右手に長剣を持つユウキ、左手に『ディアーズロッド』を持つわたし、2人で手を繋ぐ。

他の5人も装備を掲げて円陣の陣形で迎撃態勢を取り、相手も武器を掲げる。

その時わたしは気付いた……クーハ君が、余裕な笑みを浮かべていることに…。

 

「はっ、往生際が悪「あ、あれは…!?」、なん、だ……よ…!?」

 

相手集団のケットシーである鉤爪(クロー)使いの男が叫んだ時、ノリが回廊の一点を指差しながら言った。

その先を見た男は絶句し、そしてつられて見たわたしも絶句すると同時に、歓喜に心を躍らせた。

約20mは先の壁を駆け抜けながらこちらに向かってくる影、

その速度は流星の如く軽量級妖精共通スキル《壁走り(ウォールラン)》を駆使している。

通常ならば10m程度が限界なそのスキルを既に30m……いや、(・・・)のことだ、

きっと士気を高める為に50mは駆け抜けているのだろう。

その影は、増援部隊をあっという間に追い抜いて飛び上がり、わたしとユウキの前に着地。

『アビスディザイア』を片手に、堂々としたその様と威圧の篭った気配と視線、圧倒的な存在感を以ってして全ての動きを止めた。

彼は、いつもわたしを助けてくれる……わたしの大好きな…、

 

「悪いがここは通行止めだ」

 

キリトくん!

 

 

呆然と絶句が入り混じる空気。彼の放つ威圧感と圧倒的な存在感により、誰も口を動かすことが出来ないでいた。

クーハ君はキリトくんが来るのを知っていたんだ、だからあれ程の余裕を浮かべていられたのね…。

ようやく言葉を放ったのは、大型ギルド同盟のリーダーと思われるサラマンダーの男。

 

「【黒ずくめ(ブラッキー)】先生、さすがのアンタでもこの人数を相手に出来るわけないだろう?」

「そうだな……試したことはないが、SAOと違って殺しても問題無いから、本気でやれば出来るだろうな」

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

 

聞いた男とその仲間達は絶句、ユウキ達もだ。

当然である、彼にとって本気で殺すつもりで行くのなら50人では足りないとわたしは思う。

そもそも、現実の彼は殺しの技術に特化しているのだから…。

勿論、そんなことを知るはずもない彼らには虚言にしか聞こえないかもしれないけど。

 

「はっ、そうかよ。そこまで言うんなら…メイジ隊、焼いてやりな!」

 

男の指示を受け、メイジ隊が高速詠唱を始めた。わたしは回復魔法を使いたくなったけど、止めた。

笑みを浮かべ、その瞳で「俺を信じろ」と語る彼を信じないはずがないから。

キリトくんに向けて7発の単焦点追尾(シングルホーミング)型の高レベル攻撃魔法が襲い掛かる……が、

彼はその攻撃魔法に向けて7連撃ソードスキル《デッドリー・シンズ》を使用し、全ての攻撃魔法を斬り裂いてみせた。

 

「うっそぉ…」

 

信じられないという風に呟くユウキ。

彼が行ったのはほとんどがライトエフェクト集合体でしかない魔法を、

当たり判定のあるスペルの中心一点に属性ダメージを持つソードスキルぶつけることで無力化する技術、

キリトくんが独自に編み出したシステム外スキルの《魔法破壊(スペルブラスト)》だ。

なおこの技術、『神霆流』の男の子達は全員使用出来ます、恐ろしいです。

ちなみに、わたしの成功率は2割ほど…GGOの経験が生きています。

 

「なんだよ、それは…」

「魔法を、斬ったのか…?」

「ぐ、偶然に決まってるわ…!」

 

などの声が上がり、動揺がさらに広がる。

 

「あはははっ! 実戦で《魔法破壊》をするとは思わなかったよ、キリトさん。それじゃ、オレも援護するとしますかねっと…」

 

クーハ君が笑ってからそう言うと、右手に持っていただけの短刀を左手にも持っている。

彼もまたキリトくんと同じ《二刀流》を本来のスタイルとしている者だ、違いは武器が短剣(ダガー)系というだけである。

『宵闇』と『常闇』、クーハ君愛用の2本の短刀だ。

けれど相手の対応も早い、前衛は武器を抜き、遊撃は弓矢や長柄を構え、後衛のメイジ達は詠唱を始める。

キリトくんは手早く武器をしまい、2本の剣を出現させた。

1つは彼の伝説級武器(レジェンダリーウェポン)である『聖剣エクスキャリバー』。

そしてもう1つはわたしの知らない黒鋼に輝く大き目の長剣、輝きのディティールからして伝説級武器であることは容易にわかる。

黄金と黒鋼、2つの伝説級武器を前にした相手は完全に怯んでいる、さらに追撃を掛ける出来事が起きた。

 

「オラァッ! オレもいるぜぇ!」

「援護に来たよ!」

 

この声は…クラインさん、ケイタ君! 2人は増援に来た30人を挟むようにしているのだ。

ボス部屋の扉の前にクーハ君、中央にキリトくん、回廊入口側にクラインさんとケイタ君という布陣である。

最後にわたしは、彼の本気を括目することになる。

 

「おおおぉぉぉぉぉっ!」

「「「「「なっ…!?」」」」」

「「「「「うっ…!?」」」」」

「「「「「ひっ…!?」」」」」

 

『覇王』の覇気を解放、《二刀流》の解禁、2つの伝説級武器の装備、全力全開みたいだ。

その影響で大型ギルドの面々は怯えきっている。

 

「ア、アスナ……キリト、どうしちゃったの…?」

「まるで、人が、変わったように…」

 

ユウキとシウネーが僅かに怯えながら呟く、見れば他の4人も似た表情を浮かべている。

 

「アレがキリトくんの本質、キリトくんそのもの、そしてわたしのキリトくん…」

 

わたしが呑まれるはずはない、全て受け入れているのだから。

さらに彼の肩の上で小さな影がこちらに手を振っているのに気付いた、ユイちゃんだ。

愛らしい笑顔、その姿に心が温かくなる。

 

「あっちはキリトくん達に任せて大丈夫。わたし達はボス部屋に行こう」

「…うん、分かったよ!」

 

わたしとユウキ、スリーピング・ナイツはくさび形のフォーメーションを組む。

背後に居る彼とは、1度別行動…。

 

―――アスナ、しっかりと決めて来い……ここは、俺達が殲滅する

―――頑張るね……キリトくんも、ご武運を…

 

《接続》でお互いの戦いを祈り、わたし達は突撃を開始した。

 

 

ユウキを先頭にした陣形、彼女は持ち前の超絶な回避能力で無数の斬撃を回避し、カウンターによる攻撃を叩き込む。

ジュンは両手剣(ツーハンドソード)を、テッチは重戦鎚(ヘビーメイス)を使用して相手の隊列を崩す。

生まれた隙を突くようにタルケンは長槍(ロングスピア)を、ノリは長棍(クォータースタッフ)で的確に攻撃する。

わたしとシウネーでヒールを掛けて回復、3倍もの戦力を相手に獅子奮迅といえる。

何故なら、相手のメイジ部隊をクーハ君が攻撃しているからだ。

そのメイジを守ろうとする部隊を足止めし、なおかつ隙があれば倒している。

その鮮やかな手並みは暗殺者(アサシン)そのものだと思う。

そしてわたしはヒールをシウネーに任せて愛剣『レインスティア』を手に取り、

何人かの敵に《水流縛鎖(アクアバインド)》を掛けて動きを止め、

ソードスキル《フラッシング・ペネトレイター》を使用した。

彗星の如き突進技で、数人の敵を薙ぎ払って、パーティーリーダー格であるノームの男までも飛ばす。

いまので陣形の後方に辿り着いたわたしはメイジ部隊の目前に立ち、一気に斬り捨てた。

回復手段が無くなった相手方は総崩れとなる。

一気に突き進む仲間達、そんな中で少し離れたユウキへと攻撃が集中していた。

 

「コイツーーー!」

「うっ、く…!」

 

せめてもの反抗なのか、1人でも道連れにしようとしているらしい。

幾つもの凶刃が迫る彼女……そこに、一陣の影が通っていった。

 

―――キィィィンッ!

 

甲高い刃の音、それが鳴り終わった後にユウキの周りにいたプレイヤー達5人は一斉に消滅した。

彼女を庇うように傍に着くのはスプリガンのアサシン、クーハ君だ。

 

「大丈夫か、ユウキ?」

「ぁ…ありがとう///」

「なら行くぞ、ゴールはすぐそこだ」

「うん!」

 

クーハ君とユウキ、2人は最短コースを駆け抜けた。立ちはだかる敵を薙いで裂き、すぐにわたし達のところに到着した。

 

「んじゃ、オレは後始末つけるから、改めて頑張れよ!」

「「「「「「「ありがとう!」」」」」」」

 

彼に見送られながらわたし達はお礼を言って、ボス部屋の中に入るとすぐに石のボタンを押して、扉を閉めた。

キリトくん、みんな、本当にありがとう…!

 

 

扉が閉められたので、わたしは即座にみんなに回復するように促し、みんなでポーションを飲んだりした。

序盤の攻撃パターンは単純なので、落ち着いて行動するように言う。

 

「ねぇ、アスナ…。クーハも、キリトも、それに他の2人も……みんな、ボク達を行かせる為に…」

「うん、そうだね…」

 

ユウキも他のみんなも、囮にするようになってしまった4人に気を遣っているんだ。

当然といえば、当然なのかもしれないけどね。

 

「あの4人、ううん…ユイちゃんも居るから5人だね、彼らなら大丈夫だよ。

 特にキリトくんと直接戦って、クーハ君の動きを目の前で見たユウキなら、分かるんじゃないかな?」

「で、でも、助けられてばっかりで…」

「ユウキ…」

 

彼女らしくもなく、なんだかネガティヴ思考になっていくユウキ。

 

「友達を助けるのに、理由なんていらないんだよ」

「っ…とも、だち…」

「そう。だから、わたし達がボスを倒して、キリトくん達にも勝利をプレゼントしてあげよ♪」

「っ、うん! よぉ~し、もう一勝負だね!」

 

会話を終えるとボスの出現が始まった。わたしはレイピアからワンドに持ち替え、みんなもすぐに臨戦態勢を取る。

そして、ボスとの勝負が始まる!

 

アスナSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

キリトさんがクラインとケイタを引き連れて乱入しました、3つのギルドのリーダー達です。

 

久しぶりに全力気味のキリトさん、果たして敵は生き残れるのか!・・・無理ですねw

 

次回、キリトさん無双&ボス戦終了です、展開が早いですが。

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 


 
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