No.611164

県令一刀と猫耳軍師

黒天さん

初投稿、一刀強化系の恋姫無双SSです。
メインに据えるのはツン軍師こと桂花(荀彧)さん。
注意点とかあるのであとがきから読むほうがいいかもしれません。
何かと至らない点が多いかと思いますが、あたたかい目で見てもらえれば幸いです。

2013-08-22 05:19:23 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:20061   閲覧ユーザー数:14021

 

俺は一面に広がる荒野で倒れていた。それというのもだ。

 

博物館で変な鏡を覗きこんだらいきなりそれが光りだして、吸い込まれて気づいたらここにいた。という突拍子もない流れで。

 

「……」

 

起き上がって座り、努めて冷静に周囲を見渡そうとしてみる。一介の学生だ、たしなむ程度に飲んだりはするが、深酒をしたわけではない。

 

というか山の形が明らかに日本をしていない、中国か?

 

そして周囲を見渡した際に、変な3人組の姿を見つける。黄色い頭巾をかぶった3人組

 

背の低い男と、中位のヒゲの男。デブ。

 

漫画やらドラマに出てきそうないかにも下っ端の小悪党臭の漂う3人組。その格好もほぼ漫画の中のモノってところか。

 

「おい兄ちゃん、いい服着てんな」

 

「とりあえず兄ちゃん身ぐるみ置いていけや」

 

そしてこの台詞である。さっと男たちに視線を這わせる。エモノは剣、か。よく見れば衣服には血のあと。

 

「身ぐるみを?」

 

ゆっくりと立ち上がるときに、さり気なく、砂と小石を手に握りこみながら立ち上がる。そいつらの様子を見るに、おそらくそれに気づいていない。

 

木刀は視界の端にある、が……。それだけだ、マジモンの剣を相手にするには不足、使うという選択肢を頭から排除する。

 

そして一番いい武器を持っていると思しき中央に立つ髭面の男に俺は狙いを定めた。

 

「仕方ないな……」

 

服にてをかけようとするような動きを見せ、狙いを定め、目を標的にして砂の礫を投げつける。こいつらはコッチが徒手なのをいいことに油断している。

 

「なっ……!」

 

剣を取るのが遅れた。それだけでいい、右手で剣の柄をひっつかむと、体を回すようにしてさやから抜き、勢いのままにその隣の小男に斬撃を見舞う。

 

小男への斬撃に手応えを感じると、その生死を確認しないまま続け様に、勢いを殺さないように髭面の頸をすくい上げる一撃。目潰しを食らって回避もかなわずその頸から鮮血がほとばしる。

 

デブへ視線を向ければ、2人が続け様に大怪我を負ったのを見てか、慌てふためいて逃げ始める。俺はソレを追うことはしなかった。

 

頭から返り血をかぶり、血みどろになりながら一息つく。一言で言えば放心、平和な日本から来たのだ、人を殺した経験なんかあるはずがない。

 

俺にあるのは……。爺ちゃんから仕込まれた暗器の扱いだけ。

 

なぜ殺したかといえば、殺さなければ死ぬと思ったから。としか言いようがない。

 

足元に転がる2つの現実感のない死体を見下ろし、ただ放心する。

パチパチと、手を叩く音が聞こえ、正気に引き戻された。

 

「お見事です」

 

長い黒髪を結った少女、持っている大きなエモノに緊張が走る。俺が手にもつエモノは先ほど奪い取った剣だが、コンナモノで太刀打ちできるとはおもえない。

 

『ガラン』

 

足元に剣を投げ捨てて、降参、というように両手をあげる。博物館によったその脚だ、手持ちに暗器などあるわけがない、くわえてあのリーチの武器だ、勝ち目はないと踏んだ。

 

「降参だ」

 

「へっ? や、やめてください、あなたに敵対する意志はございません。私は、姓は関、名は羽。字は雲長。あなた様をお迎えにあがるため、幽州より参りました」

 

「……関羽雲長」

 

頭をフル回転させる。目の前の少女は関羽と名乗った。そして目の前の死体は黄色い頭巾。パッと頭に浮かぶのは三国志以外に無い。確か関羽というのは髭面のおっさんだったはずだが。チート臭い能力値の。

 

「ちょっと失礼」

 

くるりと少女に背を向けて思い切り頬をつねる。うん、痛い。

 

「しかし、素手で賊3人と渡り合うとは、恐れいりました。あの……、あなた様のお名前をお聞かせ願えますか?」

 

「俺は北郷一刀。しかしその関羽雲長がなぜここに?」

 

「ええ、天の御遣いであるあなたをお守りするのが、我が使命……。しかしその必要はなかったようですが……」

 

「天の御使?」

 

てんのみつかい。その言葉を脳内で変換してみる。天の御遣い、こうか……?

 

「先日、この戦乱を治めるために天より遣わされた方がおちてくると、占い師が言っていたのです」

 

占い師、ね。確かにこの時代の占い師ってのは結構強い力を持ってたはずだけど。

 

「ここに?」

 

「そうです。それ以外にも陽光を反射して煌めきを放つ服を着る等、あなたが天の御使であることを雄弁に物語っている。……そうでありましょう?」

 

俺は頭をかかえた。状況を整理するにも随分と時間がかかる。

 

推論の域を出ないが、おそらくタイムスリップでもしたのではないか。そして、俺はどうにも劉備役になりそうだ。

考えるうちに元気のいい赤いショートヘアの小さな子が現れ、ソレが張飛であることを知った俺は目が飛び出るほど驚いたのは言うまでもない。

なるべく表にでないようにでないようにはしていたが、どれだけ隠せたかはアヤシイものだ。

かくて、俺は関羽と張飛の2人と、行動を共にすることとなった。

 

張飛のほうはといえば先に駆け出し、村へ向かうとのこと。

 

「天の御遣いっていわれても困るんだけどな。どちらかと言えば卑怯者だし」

 

大きくため息をつきながら、愛紗からもらった布で返り血を拭いながら歩いている。

 

「卑怯者……ですか?」

 

「俺は一介の学生で、天の御遣いなんかじゃ無いとおもう。戦えるといっても、扱えるのは暗器の類なんだ。正々堂々と闘う柄じゃない。暗殺向き、ってところになる。本職はコレじゃないんだ」

 

一応拾った木刀をぷらぷらと揺らしてみせながら。

 

「そう……ですか。しかし、それは関係がありませんよ」

 

俺はもうひとつため息をつく。そして何となく思う所はあった。

 

劉備という役割を演じる。RPGゲームのようだ。と。ゲームの中の世界に行きたいなんて、一度ぐらいは考えたことがある。実際そうなるとどうかというのは別として、やってみよう、なんていう気がしてきていた。どうせ考えても埒が明かないのだ。だったら楽しんだほうが得だ。幸いにも関羽も張飛もむさ苦しいオッサンでも、腹の立つようなイケメンでもなく女の子である。

 

「よし、やるよ。俺はとりあえず『天の御遣い』を演じる。そうすれば大義名分があるから兵数もある程度あつまるだろうしね。俺が本当に天の御遣いにふさわしいかどうか、動いてからの世間の目次第。ってことになると思うんだ」

 

そこまで言って一つ息を付き言葉を続ける。

 

「例えば……。わかるかわからないけど『英雄』だって本人が英雄を名乗ったわけじゃない、その人の行いに対して世間の人間が認め、決める事だから。『天の御遣い』にしても同じことだとおもうんだよね。きっかけとして名乗る事はあるかもしれないけど最初は俺というただの人。それが本当に天の御遣いになるかどうかは俺次第。

だから俺はただの人として後は、威張る気はさらさら無いし、関羽や張飛とは対等でいこう、とおもう」

 

気持ちを切り替えればやる気になってきて頭も回るようになってくる。

 

ゲームと違うだろうとわかるのは、クエストをいつまでも待ってくれるハズもなく、早く向かわないと人がそれだけ死ぬことになるということ。

 

 

「いえ、対等とはまいりません。私はあなた様こそ自分の主人にふさわしい方だと認めました。そしてそれは鈴々、張飛も同じでしょう。ですから今後我らのことは真名で呼び、家臣として扱ってください。真名は愛紗、これからは愛紗とお呼びください。私はあなた様をご主人様と、そうおよび致します。」

 

これもまたややこしい? 事でこの世界には真名というものが存在するらしく、後で聞くと自らが認めた相手しかその名をよんではならない、とのこと。

 

呼べば比喩でもなんでもなく首が飛ぶ事になるそうだ。ともかく関羽は俺の家臣って所を譲る気は無いらしく。俺が折れる事になった。

 

 

村に到着すればそれはヒドイもの、あちこちから火の手があがり相当に荒らされているのが見て取れる。

 

鈴々によれば、動ける人を酒家に集めているとのこと……。そこにいって、改めて俺の考えは甘かったとしる。ゲームなんかではない、現実だ。

煤の匂い、血の匂い、包帯を巻いた負傷者達。思わず目を背けたくなったが、一度役割を演じると決めた以上、意地で目をそらさなかった。

うまく言葉はでなかったが、愛紗達がうまく扇動してくれたお陰で、その負傷者達の目にやる気が戻り、担がれた俺が拙いながら鼓舞して出陣の流れとなる。

 

「愛紗、小刀でいい、できるだけ小回りのきく武器をいくつか用意できないか? それと、黒系のなるべく目立たない服を一着用意してもらいたい」

 

「自衛のためですか? 後方にてゆるりとご覧くだされば問題無いかと存じますが」

 

愛紗の言葉を途中で制止、言葉を続ける。

 

「正面切っての戦いはムリだよ。ただ、1人でも、2人でも、死人を減らす事はできるとおもうし、そうする努力はしたい。一応でも戦えるからね」

 

「……」

 

 愛紗は俺の目を覗きこむ。その目を真っ直ぐに見返すこと数瞬……。

 

「わかりました、村の者にお望みのものがあるか問うてみましょう」

 

 それが用意されれば身につけ、愛紗たちに向けて頷く。

 

「では村の衆よ! これより出陣する!」

 

 

 

1里ほんの数キロの近くだ。それを行く間にも愛紗は何度も村人を鼓舞し、二人一組で敵にあたるように、等、訓練をしていない村人にもわかるような簡単な指示を与えていく。

 

そして鈴々の敵発見の報をもって戦闘の火蓋は切って落とされた。

 

村人たちは愛紗に言われるとおり二人一組を徹底して行い、敵をひとりずつ確実に仕留めていく。愛紗と鈴々はさすがは一騎当千の将といったところか敵を次々になぎ倒していく様が見て取れる。

 

 

俺はといえば……。

 

「ぐえっ……」

 

乱戦で村人に止めの一撃を繰りだそうとした黄巾の背後に忍び寄り、喉を小刀で掻き切る。

 

暗器をつかっての戦いは不意をついての一撃必殺……。次の一撃での必殺を確信した瞬間の気の緩みを突く。

 

気配を消し、軍勢に紛れ、スキを見つけては一人ひとりと確実に屠っていく。何人殺しただろうか。

 

当然一撃の派手さは無い、ひたすら目立たない事を徹底する。

 

小刀をふるえばそのたびに命が一つ消えていくのを手に感じ取れた。

 

肉を裂く感触はあまりにも生々しい。

 

その断末魔は耳慣れない。

 

血の匂いがあまりに濃い。

 

それだというのに、戦場で闘う高揚感のせいか、不快感は一切なかった。

 

 

 

「ご主人様。もう勝負は決しましょう、ご主人様は後方へお下がりください」

 

愛紗のその声を聞くまで、俺は必死に敵を殺し続けていた。既に敵の前線が崩れかけていることにも気づかなかった。

 

戦場から声があがる。それは黄巾の一団が逃走を始めたとの報。愛紗は追撃を宣言し、村人たちは黄巾党を追いかけ、殲滅していく……。

 

 

戦場から村に戻り、両手を見ればそれは真っ赤に染まり、服の袖も血の赤で染まっている。そして緊張がとけたからだろうか。

 

「ぐ、あ……」

 

猛烈な嘔吐感に襲われ、俺はその場に嘔吐した。腹の中の物をすべて吐き出しても吐き足りず、胃酸すら吐いた。

 

現実感が無いものの、人を殺したという事実は俺の心を随分傷めつけたらしい。高揚感がなくなり、麻薬がきれたかのように一気にそれは襲いかかってきた。

 

「あの時あんたに助けられなかったら俺は死んでたよ、ありがとう」

 

そう声をかけてくれる者がいることがせめてもの救いか。

 

 

そしてすったもんだあった後……。俺は県令になることとなった。

 

 

 

愛紗の助けがあったとはいえ政務は1から、これには随分苦労させられた。結構な日数が経ってからようやく暇が出来た。

 

で、俺はといえば部屋で武器の手入れをしている。この時代で手に入る暗器を幾つか仕入れたが、イマイチ手になじまない。当分は小刀を使っていく事になりそうだ。

 

投擲用に重心調整した小刀も手に入れる事ができた。あとは自分に合うように調整するだけ。

 

「あとは……」

 

砥石を借りてきて、小銭の縁を削り、鋭利に尖らせていく。

 

「ご主人様、いらっしゃいますか?」

 

開いてるよ、それだけ言うと愛紗が部屋にはいってくる。

 

「……一体何をしてらっしゃるので?」

 

小銭を研ぐ俺を見て愛紗が怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「武器をね。羅漢銭ってやつだよ」

 

研いだばかりの小銭を投げれば、それはスカンと小気味良い音を立てて柱に刺さる。実を言うとこの銭投げが一番得意だ。何故かっていうと……まぁ、有名な時代劇にでてくるアノ人が原因なんだが。

 

おかげで一番練習していたのが銭投げだ。威力でいえば投げナイフ等には及ばないが、隠しやすくてかさばらないのが一番の利点だろう。殺せはしなくても痛打ぐらいは与えられるし。

 

「愛紗みたいな人には虚仮威しにもならないだろうけど。そもそも手の内を知る相手なんかと闘うものじゃないし」

 

もちろん戦い方は習っているが、大したことはできない。サシなら一般兵には負けないだろう、ぐらいのことだ。

 

「確かに相手の不意をつくのが第一、とおっしゃってましたね。私もご主人様に何度か背後を取られて驚かされましたが」

 

そのたびに刺客と間違われ、殺されかけたのは言うまでもないが……。鍛錬、と称して目をつぶってもらっている。

 

「で、何か用があったんじゃないのか?」

 

次の小銭を研ぎながら、愛紗へと水を向ける。

 

「ええ、次の書簡をおもちしたのですが……。武器の手入れとなるとまだ時間がかかりそうですね。ご自分の武器は自分で手入れされたいでしょうし」

 

「残念ながらね……。あと、いくらか仕事が落ち着いてきたことだし、警邏に出ようかとおもうんだけど、どうおもう?」

 

本音は、そろそろデスクワークに飽きてきたから気分転換がしたい、という部分は大きいが、口が裂けてもそんなことは言わない。

 

「ふむ、そうですね。賛成です」

 

 

 2人で警邏に出ることとなり、町の周囲を歩いていく。俺はといえば小刀を数本と羅漢銭を隠し持ち、愛紗はいつもの青龍偃月刀を携えて。

 

 愛紗と喋りながら歩いている。中身は事務的なものから、身の上話と他愛ない内容のものまでおもいつくままに。気分転換も兼ねているからそれぐらいは許してほしかった。

 

 しかしどうにも胸騒ぎがする。何かおこりそうな……。

 

「そういえば、城の外に森なんかあったんだな」

 

 結局歩いていた間は賊を見つけたりといったことは何もおこらず、警邏の帰りがけにふとそんなことを思い、森に立ち寄ってみたくなった。

 

「愛紗、ちょっと森に寄ってくから先に帰っててくれないか?」

 

「護衛もつけずにそのような事は……」

 

「街の近くだし大丈夫大丈夫、すぐ戻ってくるよ」

 

 愛紗は結局ついてきたが森にはいってしばらく、ふっと諦めたような表情を浮かべる。

 

「巻く気ですね?」

 

「あ、バレた?」

 

「私の背後を取ってしまわれるお方です。森で本気で巻かれたらとてもではありませんが追いかけられませんよ。私は帰りますが夜までにお帰りください、さもないと兵を動員してお探しすることになりますので」

 

 了解、と手で合図をしながら俺は森の奥へ、愛紗は踵を返して町の方へと帰っていく。

 

 

 それから気まぐれに歩くことしばらく……。久しぶりになんだか1人になって癒やされた気がしていた。やはり城で休息するのと森で休息するのとはわけが違う。

 

「ああ、マイナスイオンで癒される……」

 

「きゃあああぁぁぁ!!」

 

 ……胸騒ぎの元はこれか。人が折角いい気分でぶらついていたというのに、絹を引き裂く女の悲鳴が耳に飛び込んでくる。それをきいてすぐに俺はそちらへかけ出した。

 

 声に近づくと速度を落とし、気配を消すそこにいたのは、以前見たようないかにも下っ端小悪党風のごろつきが3人、相手は特徴的な服の女の子。なんというか、猫耳のついたフードにフリルのいっぱいついた可愛い服を着ている。顔も整っていて可愛い。

 

「イヤ! どっかいきなさいよ変態! クズ! デブ!! 不細工!!!」

 

 見た目の割りに中々に威勢のいい女の子だが、その右足には出血、隙を作って逃げるつもりで下手に挑発して怒らせたのか、逃げようとして刺されたのか……。しばしの間様子を見ながら距離を詰める。女の子に余計なことを口走って気取られてはかなわない……。なるべく女の子の視界の外、そしてこの3人の背後から。

 

位置取りをしながら頭で状況を分析する。いくらごろつき相手とはいえ、リーチで負けるし真正面からやって無傷で倒すのは難しい、気絶させるのは不確実。だからより安全にいくために殺す事を選択し、覚悟を決める。

 

人質に取られては困るから全員殺す、殺す順は大きい方から。完全に油断するまで、もう少し……。

 

 いよいよ男たちが女の子に襲いかかろうかというとき、俺は動いた。戦力的に脅威となりうる大男の首に小刀を突き刺し、まずは絶命させる。つづいて咄嗟の対処ができないうちに2本目の小刀でその隣の髭面の男の喉を掻き切る、そしてそのまま小男に小刀を投げた。狙いは当然首。人間、咄嗟の出来事に反応できない空白の時間というのがある、現代の軍人は訓練でそれをできる限り短縮しようとするらしいが、ただの賊ならどうなるか。一般人より多少は短いかもしれないが結果はこれである。

 

「え、え……?」

 

 大丈夫だろうかと女の子に目を向けると視線が合った。放心状態、といった所だろうか。掻き切られた喉から吹き出す大量の鮮血をその女の子も浴びて体は真っ赤に染まっている。そしてその子はふっと、糸が切れたように気を失った。

 

「あちゃあ……」

 

 小刀を引き抜き、頭を抱える。背後から首を狙っての一撃のため自分への返り血は少なかったが、正面に立っていた女の子にはモロだ。そりゃあ常人なら気絶してもおかしくないかもしれない。

 

 それよりも先に脚の傷だ。と、思い直して傷を改める、傷は深いがおそらく骨も神経も外れているとおもう。布でしばって止血し、女の子を抱きかかえ町へと戻る。

 

──荀彧視点──

 

森のなかを走る……走る……。

 

袁紹に見切りをつけて飛び出し、歩き始めて何日目か、今日は宿で泊まれるとおもったのにどうしてこんなことに。

 

背後から追いかけてくる男3人はまだ諦めない。どこまでついてくるのだろう。

 

「こないでよ! 変態!」

 

悪態をつきながら走る、もともとそれほど体力のあるほうでもない、徐々に距離が詰まってきているのがわかる。

 

脚に鋭い痛みが走る。

 

「これでもう逃げられないだろ」

 

「きゃあああぁぁぁ!!」

 

最後の望みとばかりに思い切り悲鳴をあげる、もう走れない、後ろから刺された。ムリだ、こんな所誰も来るはずない……。もう少しで町だっていうのになんてこと。

 

もうどうしようもない、木を背にうずくまる。絶望が心をうめていく。

 

「イヤ! どっかいきなさいよ変態! クズ! デブ!! 不細工!!!」

 

自分を奮いたたせるように叫ぶ。叫び続けていればもしかしたら……そんな期待もあった。男どもは下卑た笑いを見せながら私にゆっくりゆっくり近づいてくる。吐き気がする。

 

そしていよいよその手が私にかかろうという時、大きい男の首から刃が生えた。続けて髭面の男の首から血が吹き出し、こちらにむかって倒れかかってくる。続け様に小刀が、小男の首に突き刺さったのを見た。

 

生暖かいものが私の体に降りかかり、視界を赤く染めていく……。

 

男たちが倒れた後には黒い服を来た男が1人……。私を見下ろしている。顔に返り血を浴び、私を冷酷に見下ろすその目は常人には見えなかった。

 

信念を持ち武を振るう者でも、その日の糧を求めて村を襲う盗賊でもない。あれは狂人の……人殺しの目……。きっと次は私が殺される。

 

状況がそう見せたのかもしれない、でも私はその視線に背筋が、心が凍りつくような気がした。

 

考えても罵倒の言葉すらでてこない。あの男たちのように体や金品が目当てならまだスキをついて逃げようがある。でもコイツはだめ、逃げられない。殺される。なによ、この県は治安がマシなんて大嘘じゃない……。

 

目が合った時間は数分にすら思えたけど数秒だったかもしれない。

 

(もう……だめ……)

 

私は意識を手放した。旅の疲れや、先ほどからの全力疾走での疲労、足の傷、極度の精神的緊張。そのあたりが重なったせいだろう。ふっつりと、私の意識は闇に落ちた。

 

──北郷一刀視点──

 

 自分の服を使って女の子についた返り血をごまかし、人目を忍んで城にどうにかたどり着くと愛紗を呼ぶ。

 

「……どこから浚ってらしたんですか?」

 

 すっごいジト目が痛いが、すぐに気づいたんだろう。濃厚な血の匂いに。表情が変わる。

 

「賊に襲われていたところを助けたんだ、手当をしてあげてくれないか?」

 

「ご主人様は容赦がないですね、賊は血祭ですか?」

 

 そういいながら、服を脱がせ、傷を改めるつもりだろう。なにせ返り血で全身真っ赤で傷があるかどうか分からないのだ。

 

 俺はといえば返事もせずに料理場に向かい煮沸した湯と布をとりにいった。流石に女の子の裸を見るのは気まずすぎる。。

 

「幸いですね、大事な所はハズしていますし傷の割に出血も少ないようです。少し時間はかかるでしょうがちゃんと療養すれば元通り動かせるようにはなるでしょう。とはいっても素人の所見ですからね、医者には見せたほうが良いと思いますが……」

 

 ズボンは脱がされていて、愛紗が湯を使って太ももの傷を洗い、包帯を巻いていく。その横で俺は事のあらましを説明する。

 

「んん……」

 

「気がついたか?」

 

「ここは……」

 

 女の子は視線を愛紗にむけ、それから俺の方をむく。そしてすっごいいやそうな顔をした、今にも叫びだしそうな勢いだったが叫び声は出ず、顔が青ざめていく。

 

「あなたが私を助けたの……?」

 

 叫び声はでず、それだけが口からこぼれた。どうして? そんな疑問が顔に浮かんでいる。

 

「そうだ、ご主人様に感謝するといい。警邏の途中で森を通った時に悲鳴が聞こえ、助けに向かってくださったそうだ」

 

「どうして助けたの? いたっ……」

 

「理由とかは無いよ、そうしなきゃいけない気がしただけで」

 

「ていうか見ないでよ変態! いたたたた……」

 

 体を起こして自分の下半身をかばおうとし、体に力を入れた結果、傷がいたんだのだろう、涙目になって横たわる。

 

「しばらくは安静が必要だぞ、骨等の大事な部分ははずれているようだが、深い。しかし命の恩人になんという」

 

 愛紗がそういって険しい顔つきをするが、まぁまぁと制止する。

 

「愛紗、替えの服を用意してあげてくれる? 俺はこの子を空き部屋につれてくから」

 

「はい」

 

「あ、ちょっと……!」

 

女の子が愛紗に何か言おうとするが愛紗はさっと立ち上がると立ち去っていく。俺は女の子の傷がなるべく傷まないように、肩を貸す形で歩いていく。

 

「ちょっと、やめなさい! 離して! このけだも……」

 

言葉が尻すぼみに小さくなっていく。また傷が傷んだのだろうか。

 

「はなしたらまた痛くて泣くはめになるとおもうけど?」

 

 そういいながら女の子を歩かせる、自分の足で歩くのは相当つらいようで、渋々ながらついてくる。

 

 どうにか空き部屋までつれていけば、ベッドに寝かせ、その横に自分が座る。

 

「とりあえず名前くらい教えてくれないかな? 俺は北郷一刀。さっき君の手当をしてくれたのは関羽」

 

「荀彧よ」

 

 名前を聞いて考えを巡らせる。確か、記憶が正しければ曹操の所の軍師のはず……。その前はたしか袁紹だったか? なら袁紹から曹操へ乗り換える時期か……。

 

「何よ、私の名前が不満なわけ?」

 

「知ってる人の名前に似てたから驚いただけだよ」

 

もし何かの気まぐれでウチの軍にはいってくれれば。そう思わなかったとしたら嘘だ。愛紗がいるとはいえ、軍師が足りない。孔明が出てくるのはもっともっと後だ。

 

「もうすぐ愛紗が変えの服を持って来るはずだから、おとなしくしてるように。俺は食事の手配をしてくるよ」

 

考えを読まれないように、との思いもあり、背を向けて外へ出る。ちょうど入れ違いで愛紗がやってくるところだった。

 

あとがき

 

はじめまして、黒天ともうします。

 

気の赴くままに書きなぐったSSをふと投稿してみる気になり、投稿してみました。

 

ええ、桂花さんが好きです。久しぶりに恋姫無双をプレイしたらなぜかそれまでノーチェックだった桂花さんにハマりました。

 

自分で桂花さんルート書きたいと思うほどに。

 

ここで一つ……。残念ながら無印しかプレイしたことがないので、無印に出てくる武将しかでません。

 

好きで登場させたい武将も居るんですが、後の作品に出てきていたらキャラが全く違うことになってしまうし、真名が他の武将とかぶったりするのもアレですし。

 

あと、桂花さん以外の人については結構薄い書き方になるかと。なるべく本編で無かった桂花と他の武将の絡みも書いていきたいとことは思ってますが。

 

流れとしては、袁紹に辞表叩きつける→曹操のとこに行く途中に一刀の領土を通る→何か襲われる→保護される。という感じ。

 

ツン0:デレ10を目標に書いていこうとおもってます。

 

 

 

後いくつか謝罪というかお断りを……。

 

二次創作系のSSはコレが初です。自分の書いた小説のキャラがどうしてもにじみだしてきてしまう部分があり、原作とキャラクターの乖離が発生する場合があります。

 

一番動かすことになる一刀を改変し性能を強化したのはこれが1つの原因です。イメージとしては忍者な感じ。もう一つの理由は「この子を守ってあげたい」という欲望。他にも理由はあるのですがそれはまた次の機会にでも。

 

強すぎるとアレなので、真正面からの戦闘は苦手な暗器使いにした、というのが忍者な理由。

 

強化した結果こんな感じです。 知識:原作一刀よりやや高い程度 気配を消す:かなり高度 気配を探す:かなり高度 ガチンコでの戦闘力:一般兵より上かな? 精鋭兵には負けそう 暗器技術:高い 

 

逃げも隠れもいたします。

 

次に、三国志については全然詳しく無いです。調べながら書いてますが絶対間違いがでてきます。恋姫無双をやる以前に知ってた(印象に残ってた)武将は両手の指で足りるほど。

 

三国志について一刀が言ってる事が間違ってたら『一刀の持ってる知識が間違ってた』とおもって勘弁してやってください。

 

無印の物語をもとに独断と偏見でもって物語を作っていくつもりです。後の恋姫作品で出てきた設定等については当然一切反映されません。

 

 

それと見てくださった方に質問を……。途中でやってるとおり、基本は一刀視点で、桂花の視点からもちらほら見せていこうかとおもってるのですが

 

例えば、愛紗が手当しているのを横から眺めてる場面も桂花的には一刀の予想と全然違う事を考えてたりするのも書きたかったなと。

 

こういう同じ場所の別視点での描写ってどうおもいますか? 需要があるなら多めに書いていこうと思います。くどいようならなるべく少なくてすむように努力してみます。

 

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