No.608548

魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第二十八話「買い物?」

2013-08-14 10:28:52 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4092   閲覧ユーザー数:3114

 

 

 

【システムチェック……OK】

 

【システム、オールグリーン】

 

【メモリーを選択】

 

【ファイルナンバー121……W1-19】

 

【解凍中……完了】

 

【メモリーを再生……開始】

 

 

 

「……大丈夫か?」

 

「ああ、感謝する」

 

「この辺は無法地帯だ。女性が一人で出歩くのは襲って下さいと行っているようなものだぞ」

 

「ああ、すまない。実は落とし物を捜していてな。中々見つからなくてあちこち捜している間に気づいたら此処に居たのだ」

 

「……そうか。だが、ここは危険だ。落とし物は諦めてさっさと帰れ」

 

「待ってくれ。せめて助けてくれた君の名前を教えてくれないか?」

 

「……煉だ」

 

「レン、か。分かった覚えておこう。私はウィンディだ。今度会った時には是非お礼をさせてくれ」

 

「……別に礼はいらない」

 

 

 

「……お前か。前に言ったはずだぞ。ここは危険だと」

 

「知っているさ。だが、どうしても見つけたくてな」

 

「……どうなっても俺は知らんぞ」

 

「…………まだ探しているのか?」

 

「ああ。なかなか見つからなくてな」

 

「……もしかして落とし物ってのはこの髪飾りか?」

 

「っ! そうだ! それだよ!」

 

「ああ、見つかってよかった。本当に良かった」

 

「レンが探してくれたのか?」

 

「……昨日、偶然拾っただけだ」

 

「ありがとう。本当にありがとう! これは私の妹が誕生日プレゼントで貰った物なんだ」

 

「……そうか。落とし物は見つかったんだ。もう二度とここには来るな」

 

「待ってくれ! せめて何かお礼をさせてくれ」

 

「……はぁ。前にも言ったが、礼なんていらない」

 

「それでは私の気が済まない! そもそも、二度も世話になっておきながら恩を返さないのは私の矜持が許さん!」

 

「兎に角こっへ来い!」

 

「っ! お、おい! 離せ!」

 

「いいから来い!」

 

 

「何が欲しいんだ? 何でも言ってみろ」

 

「だから俺はいらないと」

 

「む、あのネックレスなんてどうだ? 中々似合うと思うぞ?」

 

「いや、だから……」

 

「ふむ、あの服なんてどうだ? 君にピッタリと思うぞ?」

 

「だから……」

 

「次はあそこに行ってみよう!」

 

「人の話を聞け!!」

 

「今日はありがとう。楽しかったよ」

 

「……そもそも、俺へのお礼が目的じゃ無かったのかお前?」

 

「ふふ、小さな事は気にしないのが男という物だぞ」

 

「……はぁ。まあいい。それじゃ、俺は帰る」

 

「まあ待て。お前にコレを渡さなきゃ私が何の為に歩き回ったか分からないだろう?」

 

「これは……ネックレスか?」

 

「ああ。この荒廃した世界だ。少しぐらいオシャレというものをしないと、心まで荒廃するぞ?」

 

「余計なお世話だ。それに…………とっくに俺は歪んでいるよ」

 

「ん、何か言ったか?」

 

「いや、なんでもない。折角くれた物だ。有り難く貰っておく」

 

「ああ、そうしてくれ。それじゃ、また機会があれば会おう」

 

「……ああ」

 

 

「やあ、レン。またあったな」

 

「またあったな、じゃないだろう。ここで待ち伏せしていたくせに」

 

「ふふ、そうだな。しかし、こんな良い女が待ち伏せしていたのだ。少しぐらい喜んでもいいのではないか?」

 

「美人なのは認めるが自分で言うセリフじゃ無いぞそれ」

 

「細かい事は気にするな。それよりも折角だから少し付き合ってくれないか?」

 

「どうせ断っても引きずって行くだろうが」

 

「よく分かっているじゃないか」

 

「……はぁ」

 

「ははは、それじゃあ行こうか。今日は……」

 

 

「実はな…………私はリンクスなんだ」

 

「最初っから知ってたよ」

 

「……え?」

 

「お前が時々不良に絡まれてボコボコにした時、身のこなし方を見れば明らかに一般人じゃないのは分かったよ」

 

「じゃ、じゃあ何故私なんかと一緒に? そ、その……怖くはないのか?」

 

「何故? リンクスだろうが人間には変わりないだろう?」

 

「……そっか。やはりお前は変わっているよレン」

 

「失礼な奴だな」

 

「ふふふ、褒め言葉だよ。……何だか肩の荷が下りた気がしたよ」

 

「そいつは良かった。で、最近ORCAとかいう組織の攻勢が激しいが大丈夫なのか? 勿論お前も戦っているんだろ?」

 

「……正直言えばこちらが劣勢だ。謎のネクストにこちらの主戦力の半数をやられてしまった」

 

「……謎のネクスト?」

 

「ああ。漆黒のネクストだ。私が直接見たわけではないが、そいつに出会ったリンクスはほぼ全員死亡している。例外を除いてな」

 

「……」

 

「唯一生き残ったのはリリウム・ウォルコットとメイ・グリーンフィールドの二人。どういう訳か2人共戦闘不能に追い込まれたら殺さずに去って行ったらしい」

 

「……そっか」

 

「ああ、そういえばこんな話をしてもお前には分からなかったな。すまない、つい話し込んでしまった」

 

「いや、別に気にしていない」

 

「そうか。それじゃ、今日は何処へ行こうか?」

 

「お前の好きにすればいいさ。大体お前は……」

 

 

 

「……アイツが例のネクストか。くっ……オッツダルヴァめ。よもやこんな隠し球を用意していたとは……。貴様! 自身がやっている事の意味を理解しているのか!?」

 

「…………」

 

「……だんまりか。それにしてもあの機体、見れば見るほど異様だな。特にあの背中にある大型ブースター。今までのどのネクストにも似つかない」

 

「うあっ!? くぅ……まだだ! まだやれるはずだ! そうだろう? レイテルパラッシュ!」

 

「はぁ……はぁ……ここまで、か。……まったく……よくも平気で何億もの罪無き人達を地上に墜とそうとするものだ……」

 

「…………」

 

「……ふっ、相変わらずだんまりか。まあいい……殺すならさっさと殺せ」

 

「…………」

 

「どうした? 早くしろ」

 

「……まったく、俺は少し甘くなったようだ」

 

「……え? ………その声……まさか……!?」

 

「僅かな時間を過ごしただけなのに、こうも情に流されるなんてな……傭兵失格だな。しかもこれで三回目だ」

 

「な、何故お前がORCAに!?」

 

「簡単な事だ。俺は欲求を満たすためにORCAに入った。ただそれだけだ。ま、テルミドールの思想にも少し惹かれたのも事実だが」

 

「自分の欲求を満たすため……だと?」

 

「そうだ。俺の欲求は『命を賭けた戦闘』だ。事実、ここに来てかなり満たされた」

 

「……そんなことで……そんなお前の身勝手な理由の為に何億もの人を汚染された地上に引きずり落とすのか!?」

 

「言った筈だ。多少なりともテルミドールの思想に惹かれた、と。だから俺は今この場にいる」

 

「……騙していたのか? ずっと騙していたのか!?」

 

「…………」

 

「……じゃあ、あの時の事は嘘だったのか? あの時、互いに笑い会って楽しく過ごしてきた日々は……全て嘘だとでもいうのか!?」

 

「…………」

 

「答えろ! レン!!」

 

「これ以上の会話は必要無い。俺には役目がある。テルミドールの悲願を叶える役目がな」

 

「ま、待て! 止めろ!」

 

「お前は殺さない。せめてもの情けだ。じゃあな」

 

「レーーーーン!!!!」

 

 

 

 

 

【……再生終了】

 

【これより待機モードに移行します】

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何故だ?」

 

 空港の火災から二年後。ミッドチルダ中央区で俺は一人呟いた。

 

「何故こうなった?」

 

 その中央区のとあるデパートの中に俺は居る。

 

 納得がいかない。非常に納得がいかないのだ!

 

「意味が分からん!」

 

 どうして俺は敵地のど真ん中で……買い物をしているんだ!?

 

 

 

 

 その理由は二時間前に遡る。

 

 

 

 

「む? ……シャンプーが切れている……だと?」

 

 昼前にセレン・ヘイズが浴室の掃除をしているとシャンプーが切れている事に気がついた。

 

「……これは非常事態だな」

 

 そして深刻な表情で考えるセレン。本来ならそこまでシャンプーに固執するセレンではなかった。しかし、セレンが元居た世界ではシャンプーはあるが、あまり良くないものだった。

 荒廃した大地が広がり、資源も少ないあの世界では消耗品なんて必要最低限の効力に留めた量産品で手一杯だったのだ。勿論、香りなんてもっての他。ただ、無い訳では無い。しかしながらソレを使用しているのは企業の重役やクレイドルに住む者達ぐらいだ。地球に残り、且つ傭兵であるセレンにはとてもでは無いが贅沢に近い物だ

 

「さてどうしたものか…………む? そうか!」

 

 深く思案するセレン。そして良い案が思いついたのか、セレンは掌をポンッと叩く。その案とは……

 

「無いなら調達すればいい!」

 

 実に簡潔且つ当たり前な案だった。しかし、さすがはセレンと言うべきなのか、

 

「レンに買いに行かせよう!」

 

 自分で買いに行くという考えは出てこなかったらしい。いや、前の世界でも似たような事をしていた。そのたびにセレンは煉をパシっていたのだ。

 

 そして思い立ったら吉日というが如く、セレンは即座にレンを捕獲しに行った。

 

 

 

 

 

 

「システムチェックは終わったか?」

 

【はい。LSC(ライフ・サポート・システム)を含めオールグリーンです】

 

 俺は朝起きると簡単なシステムチェックを行っている。コレは毎日欠かさずに行っている。いくら超高性能AIであるルシフェルがいると言っても万が一のことがある。だから念を入れてやるのだ。

 

 ま、殆ど意味が無いんだけどな。

 

 因みに、今の俺の容姿は黒髪黒目ではなく、茶髪碧目の外人みたいになっている。理由は簡単。外に行ってもバレないように変装しているからだ。

 

「そうか。……さて、今日は特にやることもないからな。シミュレーションでも……ん?」

 

 だが俺が訓練でもしようかと思った時、誰かが部屋にやって来たようだ。ルシフェルが警告した訳じゃ無い。ただ気配がした。

 

 そしてその人物とは

 

「レン、シャンプーを買ってこい!」

 

 俺が信頼している人物、セレン・ヘイズだった。

 

 ……………ってかちょっと待て! 今コイツは何と言った?

 

「……は?」

 

 会って早々シャンプーを買えだ? 意味が分からん。

 

「は? じゃないだろう。シャンプーが切れたので買ってこいと言ったのだ!」

 

「いや、それは聞こえている。だが、何故俺が行かなきゃならんのだ?」

 

「え?」

 

 セレンが「何を当たり前なことを」的な顔をしている。

 

 ……俺はお前の小間使いか!

 

「兎に角、私にとっては死活問題なのだ!」

 

 何が兎に角だ! だから何で俺が行かなきゃならん!?

 

「 ……ええい! ぐだぐだ言わずにさっさと行ってこい!」

 

「え? ちょっ、ええ!?」

 

 セレンが財布とメモ紙、それに見覚えのある球状の物体を俺に押しつけた。

 

 その見覚えのある物とは……以前俺が使ったことのある簡易転送装置だった。

 

「何でだぁあああああ!?」

 

 さらにセレンが素早くスイッチを入れて俺は為す術も無く転送したのであった。

 

 そして転送した場所がミッド中央区の裏路地だ。転送に使った使い捨装置は粉々に砕け散る。

 

 そう言えばこの装置ってあらかじめ座標を設定しておかないとダメだったよな? しかも実際に転送する場所に行って直接座標を取り入れる形式だった筈。

 ……セレンはいつの間にこんな場所で座標を取ったのだ?

 

 …………まあいい。それよりも重大な問題が発生している。

 

「……帰りはどうするんだよ」

 

 セレンは変なとこで抜けているせいか、帰りの装置を渡してくれなかった。だが、買い物に行かないともれなく二者面談(肉体的面談)が発生する。それは流石に避けたい。

 

「……はぁ。仕方ないな」

 

 という訳で俺はデパートへ向かったのだ。

 

 

 

 そして話は冒頭に戻る。 

 

  

 

「だいたい、いくら変装しているからって指名手配中の俺を買い物に出すか普通?」

 

 普通は無い。だが、セレンは平然とそういうことをする。

 

 前でも似たような事があった。あの時は確か……食料が切れかけていたから買いに行ってこいと言われたっけな。

 

 ……閑話休題。そんなことよりも今は買い物が最優先だ。もし何も買わずに戻ったら……言葉には出来ない様な出来事が俺を待っている。それだけは絶対に避けたい。

 

「……ここがデパートか」

 

 というわけでデパートに着いた。

 

「え~っと……買う物はシャンプーにリンス、石けん、部屋用の芳香剤か。……くくっ、それにしてもセレンも変わったな」

 

 以前の彼女ならこんな物を買おうとしなかった。いや、多少は買っていたが全部は買い揃えようとしなかった。何故か。

 それは俺達が住んでいた環境が原因だ。俺達の居た世界はそんな物に気を取られている暇はなかった。

 

 血と硝煙と汚染された空気に包まれた世界。

 

 常に死と隣り合わせの世界。

 

 そんな世界でシャンプーなんて物を買う心の暇なんて無い。だが、この平和な世界に来て彼女は変わった。

 

 いや、実質的に平和では無いのだが、死の世界に比べるとここは平和で楽園だ。

 

 まあ、そんな世界も俺の手で戦場となるのだがな。

 

「ありがとうございました。またお越し下さいませ」

 

 俺は買い物が終わったので店から出る。あとはこんな危険地帯からさっさと脱出するだけだ。しかし、折角久方ぶりに街に来たのだ。少しくらい危険を冒しても息抜きしてみたいという欲求が出る。

 

「……取りあえず喫茶店でも行くか」

 

 もう昼時だ。少し腹が減ったので俺は飯を食いに行くことにした……正面から見覚えのある少女達がやって来た。

 

「それでね、なのはったらその時……」

 

「へぇ~、そんな事したんかぁ」

 

「もう、フェイトちゃんってば酷いよぉ」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

 そう、8年前の冬に決別した彼女達が来たのだ。俺は一瞬驚いて足を止めるが直ぐに歩みを進めた。問題は無い。今の俺は変装しているんだ。気づくことはない。

 そして目的の喫茶店は直ぐ目の前だ。ここに入ってやり過ごせば接触することもないだろう。

 

 俺は彼女達とすれ違う前に喫茶店の中に入る。そして端のテーブル席に座り一息吐いた。さて、折角なので何かを取ろう。

 

 メニューを広げて俺は選んで店員を呼ぼうとすると……

 

「いらっしゃいませ」

 

 どうやら客が来たようで店員がそっちに行ってしまい。声をかけ損ねた。まあ、ほんの僅かだけ待てば良い。そう思って店員が案内し終えるのを待つと

 

「三名様ですね。あちらのテーブル席へどうぞ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「ねぇねぇ、何にしよっか?」

 

「う~ん、私はパスタかなぁ?」

 

 ………なん……だと!?

 

 非常に聞き覚えのある声が聞こえた。しかも真後ろの席で。

 

 今振り返ったら後で後悔しそうだが、十中八九後でも先でも後悔するので俺は気づかれないように恐る恐る振り返った。

 

「ならウチはオムライスやな」

 

「じゃあ、私はハンバーグで」

 

 そこには三人の少女達が居た。つい十数秒前に見たばっかりの。

 

 ………最悪だ。

 

 しかしここで何も頼まずに帰るのは帰って怪しい。ということなのでオレは普通に注文し、食事をする。だが、落ち着いて食べられない。

 さっさと食べて個々から出ようと思った時、後ろで談笑している高町達から気になる会話が聞こえた。

 

「それで、さ。……フェイトちゃんのお母さんは大丈夫なの? お見舞いに行くんでしょ?」

 

「……うん。でも、あまり良くないみたいなの。お医者さんは持って後一年も無いだろうって。ミッドにはお母さんの病気を治す医療技術はないから……」

 

「そんな……。折角仲直り出来たのにあんまりや」

 

「ううん。これは前々から分かっていたことだし、お母さんも私も覚悟してたから」

 

 フェイトの母親……プレシアのことか? まだ生きていたのか。

 

「それじゃあ私達もお見舞いに言っていいかな?」

 

「あ、ウチも行きたい」

 

「うん、いいよ。じゃあ皆でお見舞いの品を買おうか?」

 

「よっしゃ、そうと決まったらデパートに行くで!」

 

「うん!」

 

 そう行って店から出て行く三人。その時俺は先ほどの会話を聞いて少し気になっていた。

 

 そして俺は店から出るとある場所へ足を運んだ。

 

 

 

 

 


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