No.580599

恋姫・鬼・無双 第一幕 Ep5

白雷さん

とりあえず、前回でたんぽぽに対していけないことを考えてしまった人は、滝にうたれてこようか

2013-05-27 01:13:41 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7330   閲覧ユーザー数:5419

~張遼視点~

 

「なんや・・・これは」

 

伝令からの報告で、賊が街をおそっていると聞いたのはつい先ほどのことだった。最近、この近くではよく同じ賊が出る。生き残ったものの証言から、どの賊も同じ特徴があることに気がついた。つまり、ひとつ賊が複数の街を襲っていると考えていいと詠がいっていたのだ。しかし、問題はいつもこちらが駆けつけるとその賊はこちらが駆けつける時期をまるで知っていたかのようにその形跡を消しているということだった。

 

しかし、今回は違っていた。最初は、街に近づくときに、騒がしい音が聞こえないために、再び逃したかと思ってた。しかし・・・

 

「なんなんや、これは」

 

街に入るとうちは、見たこともないその光景に驚く。今まで、民の死体を何度も見た。それは、どれも悲惨なものであった。しかし、今うちが目にしているものは賊たちの死体だ。首が綺麗にもっていかれ、急所を一撃でしとめられている。普通の、いやこのうちでも、この数を相手にできることではない。うちは、うち以上の腕の武人といったら恋くらいしかしらん。とすると、これは、恋が・・いや、それは、ない。恋の戦い方はこんなようなものではない。それに恋はいま月のところにいる。出撃はしていない。それに、これは・・・言葉に表せない憎しみを抱き、切り捨てているようであった。

 

「だれがやったんや・・・」

 

うちは、ただその死体を目の前にそんな一言しかでてこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~一刀視点~

 

あれから、馬を走らせた俺たちは蒲公英のいったとおり2日で董卓がおさめるという天水へと来ていた。道中、俺の後ろにのっかる桜華を蒲公英がちらちらとみていたのは、まあ追求しないようにしておいた。

 

「おお、すごいなここは。」

 

馬をおり、城下町を歩いていくと、そこにはにぎやかな街が広がっていた。夕方であるのに、これほどの賑わいを見せている街はない。それゆえに、董卓の悪政という俺の知識は間違っていると確信する。

 

「うん!すごいの!ひとがいっぱい!」

「蒲公英はなれるなよ。迷子になったらだめだぞーー」

「馬鹿!たんぽぽ子供じゃないもん!そんなこといわれなくても大丈夫!」

 

そう頬を膨らましながらいう蒲公英はこちらに手をそっと出してくる。

 

「?、お金がほしいのか?」

「もう!知っているくせに!なんでそんなお兄様は意地悪なの!」

「はは、ごめんごめん。ほら、これでよし」

 

そういって、俺は蒲公英の手を握る。そうすると、蒲公英の機嫌はいくらか直ったようだ。ふんふん、と鼻歌を歌っている。それに、この賑わいだ。どこか、落ち着くところがあるのであろう。

 

「・・・・、あの、これは何でしょうか、桜華さん」

 

そんなやり取りを蒲公英としていると、隣にいた桜華がちょこんと前にでてこちらに、手を出してくる。顔は少し赤い。えーー、桜華って、こういうキャラだったっけ・・。

 

「えーっと、桜華。お金なら少しなら出せるぞ。」

 

俺は、ためしに蒲公英にいったことと同じ事をいってみた。

 

「もう!しっているでしょうに!なんで一刀様は意地が悪いんですか!」

「いや、お前は蒲公英の真似してんじゃねーよ。」

 

そういいながら、俺は彼女のでこにでこぴんをくらわす。

 

「いたいですよ。一刀様ーー。」

「そして、かわいいこぶんのもやめろ。そんな年じゃないだろお前、ってか何歳だよ」

「一刀様、女にはきいてはいけないことというのがありまして」

「はぁ、そこまで年とってたのね」

「一刀様と同じくらいですよ、もう。ねぇねぇ、蒲公英ちゃん、一刀様って意地が悪いですよね?」

 

俺がそんな風にからかうと桜華はにやっと笑いながら蒲公英にそう話しかける。ここにくる道中、二人は話が合い、真名をかわすまでの仲になっていた。同じような経験をした二人だ。何か共通したところが心の中にあるのであろう、俺はそう思う。

 

「桜華さん!いましったの?もう、きをつけなきゃだめだよ!お兄様はいつもそうなんだから!」

 

そういい、ほっぺをふくらまし、片手ををおーとあげながらいう蒲公英。

 

「忠告、ありがとうございます。気をつけますね」

 

はぁ、こいつらまじで仲がいいな。まあ、仲がいいのにこしたことはないけど。俺はため息をつきながらもそんなふたりをほほえましく思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、そこのお方。」

 

そんな風に俺たちが話していると、占い師のような格好をした女性にそう声をかけられる。

 

「?お兄様、知り合い?」

 

蒲公英がその女性をみながら俺のほうに振り返る。でも、俺はこの女性を知らない。

 

「俺はしらないけど、桜華は?」

「いいえ、私もしりませんが・・」

「そうか、それで、俺たちになんのようでしょう?」

「おとめしてしまい、すみません。私は人物鑑定をさせてもらっている許子将と申します。」

「許子将・・・」

「?お兄様、やっぱ、知ってた?」

「いや、」

 

許子将といえば確か、演義において曹操を、治世の能臣、乱世の姦雄と評した人物ではないか。

 

「あなた、名を許子将っていったかしら?」

 

女性の名を聞き、何か思い当たったのかそう桜華が許子将に尋ねる。

 

「ええ。」

「なんだ、桜華。しっていたのか?」

「あ、いえ。名を噂程度には。確か、この地に天の御使いが降り立ち、乱世をおさめるであろう、という予言をしたものだ。」

「天の、御使い?」

 

なんだ、それは。天からの使者?そんなものがいるのか、この世界に。

 

「そうなのか?許子将」

「いえ、その予言をしたのは管輅というものです。私も、その予言は知っていたので広めてはいますけれども。」

「その予言とは、何なんだ?」

「いえ、私にはただこの世界は天の御使いによって平和に導かれるであろうという予言しかでてこなかったので。その先はわかりません。」

「いや、それならばそれで大丈夫だ。それで、俺たちに何の用かな?」

「いえ、通りすがる貴方を見たときに貴方の影から運命が見えましたもので。よろしければ、少し聞いていってはいきませんか?」

「俺、のことか?」

「ええ。」

 

運命か・・まあ、俺はそれを信じるつもりはさらさらないけど、あの曹操を評した言葉は確かに一理あった。で、あるならば聞く価値はあるのかもしれない。

 

「そうなのか。では、お願いしてもいいか?」

「はい。」

 

そういいながら、彼女は俺の手をとり、目を閉じる。しばらくして、やっぱりという言葉と共にその目は開かれた。

 

「貴方は、世界を歪ます鬼になるでしょう。」

「なっ!あなた、私の主を愚弄しているのですかっ!」

 

 

 

許子将がそういった途端、桜華が許子将に向けて殺気を出し、そういう。そんな桜華とは反対に、俺は彼女の言葉を冷静に捉えていた。世界を歪ます鬼か・・・。なるほどな・・・。そういうことか。だけど・・・面白い、面白いじゃないか。

 

「ふっ、ははははは」

 

俺は許子将のそんな予言に笑う。

 

「一刀、様?」

「お兄様?」

 

俺がおかしくなったと思ったのか、首をかしげながらこちらをみる桜華と、蒲公英。

 

「俺はおかしくはないから、安心しろ蒲公英、桜華」

「でもっ、お兄様。悪く言われたのになんで笑っているの?」

「馬鹿だな、別に悪く言われたわけではないだろ。それに、予言なんて覆してやると思って笑っただけだ。」

「だっ、だよねー。もう、お兄様はいつも変なんだから、ちょっと心配しちゃったじゃん」

「お前、変とはなんだ。あ、そうだ蒲公英、この先にどこか休めるところがないか見てきてくれないか?すこし腹ごしらえをしよう。」

「えー、なんで蒲公英がー。」

「蒲公英ならできると思ったんだが、無理だというのであれば桜華にお願いするか」

「待って!できるもん!馬鹿にしないでよ!一番いいところ見つけるんだから!」

 

そういった蒲公英ははやくも、走っていってしまった。そんな蒲公英をみながら、桜華は俺に尋ねる。

 

「それで、一刀様。蒲公英ちゃんをはらって、どうなさるおつもりで?」

「それは、桜華も知っているだろう?」

「・・・・、はい。」

 

俺がそう真面目な表情で桜華に答えを返すと、彼女も真面目にそう返す。

 

「それで、許子将。先ほどの予言なんだが、それは言葉通りにとらえてもいいのか?」

「すみません。私にはその言葉が頭に入ってきただけですので、それから先は・・」

「なるほど。ならいい。それと、ここにまだいるということは、まだ聞けることがあると思ってもいいんだな?」

「はい、ご察知の通りです。もうひとつは予言というより、忠告みたいなものになってしまいそうなのですが・・・」

「かまわない。」

「では。 大局に逆らうな。逆らえば身の破滅、そう私には聞こえてきました。」

 

大局に逆らうな、逆らえば、身の破滅か。・・・・ふーん、なるほどね。まあ、そうではないかと思ってはいたけど、こうも言葉にしていわれてしまっては、確信に変わってしまうというものだ。

 

「そうか、ありがとう。許子将」

 

そういって俺は笑いながら、その手を伸ばす。そんな俺をみながら彼女は首をかしげていた。

 

「?、なんかおかしいか?」

「・・え、いえ。私の予言を聞いた人は怒るか、何もいわずに立ち去るかのどちらかでしたので・・・・」

「それは、予言を変えられないものがすることだ。」

「それでは、貴方は予言を変えられると?」

 

許子将は自分の予言が嘘であるといわれたと思ったのかその言葉にすこしとげが感じられた。

 

「いや、気をわるくしたのならば、謝るよ。俺は君の予言は当たるであろうと思う。けれど、その言葉のとりかたというものは、人によって違うものであろう?」

「ふふっ、そうなのかもしれませんね。」

 

俺がそう説明すると、彼女は俺の差し出した手を握り、そう笑いながら俺に言葉を返した。

 

「じゃあ、私は行きますね。」

「そうか、どこへいくんだ?」

「さて、どこでしょう。とりあえずは、身が赴くままに旅をしようかと。」

「そうか、であるならば、俺も君に予言をひとつ。」

「あなたも、預言者なのですか?」

「いや、俺はそんなたいしたものじゃない。これは、そうだな。勘というものにしておこう。」

「勘、ですか。」

「ああ。君は近いうちに、曹操というものに出会うことになるであろう。」

「陳留を治めているあの、曹操殿ですか?」

「ああ、そうだ。曹操にあったら、伝えてほしいことがある。」

「はい、もし会うこととなったなら、伝えましょう。」

「もし、曹操が覇道を歩むとならば、俺はお前の前に立ちはだかるものだと、そう伝えてくれ」

「それは、どういう?」

「曹操であるならばきっとわかるはずだ。」

「そうですか。それで、貴方の名前を教えてもらっても?」

「ああ、俺の名前は・・・いや、いづれ、きっと会うことになるからそのとき直接いうよ。それが、仲間であるか、敵としてであるかはわからないけどね。」

「そういうことなら、わかりました。 それでは、私はこれで・・」

「ああ、ありがとうな。許子将」

「ええ。」

 

そういうと、許子将は数少ない荷をまとめ、俺たちの前からその姿をけした。

 

 

 

 

 

~桜華視点~

 

 

「それで、一刀様。先ほどのことなのですが、」

 

許子将がいなくなったのをみて私はそう一刀様にたずねた。蒲公英ちゃんはまだ、帰ってきてはいない。

 

「先ほどのことって?大局がなんちゃらということか・・?」

「それも、ありますが・・。まず聞きたいのは世界を歪ます鬼となるだろうというふざけた予言を一刀様が笑い飛ばしたことです。そのとき、貴方は予言など覆すものだといっていましたが、そうじゃないのでしょう?」

「さすが、桜華だな。」

「それに、そのさすがという言葉、私は貴方にあってからそう時間はたっていません。なのに、その言いよう。まるで、あなたは私を前から知っていたかのように・・・。貴方は何者なのですか?」

 

私は、彼にあってからずっと気になっていたことを口にする。

 

「やはり、すごいよ。お前は。」

「ごまかさないでください。いいましたよね、私の命はもう貴方のものだと。私に秘密はなしですよ。」

「いや、秘密にしようとおもっていたことじゃない。桜華にはいうつもりだったよ。すべてを。ただ、時期がなかった。蒲公英に教えるわけにはいかなかったんだ。」

「そう、ですか。なんで、そこまで蒲公英ちゃんを?彼女だって、数日前にあったばかりでしょう?年が問題なのですか?で、あるならば彼女は怒りますよ?」

「いや、そこじゃないよ。蒲公英はな、初めてあった俺に、絶望の中で生きる光を見せてくれたんだ。このどうしようもない世界で生きていく強い光を見せてくれた。俺に、覚悟をくれた。俺を兄として慕ってくれている。蒲公英は俺にとって、この世界でのたった一人の家族なんだ。だから、俺は彼女を守るためであるならば、なんでもしてやる、そう思っているんだ」

「そう、ですか。だから、貴方はその心の中にある闇を彼女に打ち明けないのですか・・。それが、貴方の夢、ですか・・・。この腐った世界を、彼女が望む世界へと変えることが。」

「そうだ、それが俺の夢だ。なあ、桜華。大切なものを守るためには、何が必要なのだと思う?」

「大切なものを守る・・・。それは、覚悟ではないでしょうか?」

「確かに、それは大切だ。しかし、違う。それじゃ足りない。それだけじゃだめんなんだ。大切なものを守るためには、鬼になることも必要なんだ。その心をどんなに闇にそめても。」

 

私は、彼から出る覇気、いや殺気でもない。なにかもっと、恐ろしいものに体が震える。

 

「まあ、これは俺のじいちゃんの教えでもあるんだけどね。」

 

そういって、私が震えていることに気がついたのか彼はその手を頭にのせる。

 

「それに、さっきの桜華の質問だけど。俺は、君をしっていたよ。君に会う前から。」

「それって、どういう?」

「俺は、この世界の人間じゃないんだ。この世界の2000年後の世界。そう、未来からきた人間なんだ」

「未来・・・ですか」

 

私は、すこしどこか飛んだ話にそんな情けない声をだす。しかし、それがもし本当であるならば、私の疑問はすべて納得につながる。

 

「そう、ですか・・・」

「?、意外に理解が早いな。」

「理解はできません・・・。なんのことか、さっぱりですから。けれど、納得はできます。」

「納得・・か。」

「はい。それで、貴方が未来から来たということは、歴史を知っているということですね」

「ああ、まあ俺の知る歴史とは少し違うみたいだがあっているところもあるようだ」

「なるほど。そして、貴方が私の名を知っていたということは・・・」

「ああ、そうだな。確かに俺の知る知識の中で君は有名だよ。俺の知る知識では司馬懿は曹操に仕え、裏切り王座を狙う狡猾な奴だった。いや、裏切ってはいない。もともと、司馬懿はそれが目的で曹操のもとにいたんだ。」

「狡猾、ですか。なるほど。私にはあっているかも、知れませんね。」

 

私は、そんな言葉に下を向く。わかってはいたが、自分は結局はそのような暗い道を歩いていくのかと思うと、なにか心が痛い。どうしようもない状況下に置かれていたとはいえ、自分がしてしまったことを私は思い出していた。

 

「俺が、知っている歴史の中では、だ。いっただろ、桜華、俺はこの世界を変えてやるって。だから、俺はお前をそんな奴にはしない。いや、違うな。もう君はそうならないことを決めたんだから。」

「一刀様・・・」

 

だから、そういいながら私に笑いかけてくれた一刀様がとてもまぶしくて輝いて見えた。この人と共にいるのであれば、どこまでも、飛んでいけるような気がした。こんな世界でも、本当に変えられるような気がした。だからこそ、思わずにはいられない・・もしかしたら、そうこの人が・・・と。

 

「一刀様、貴方は天の御使いなのですか?」

 

私は、彼の瞳をちゃんと見つめて、そう聞く。

 

「違うよ。俺は、天の御使いなんかではない。」

 

一刀様も私の目を見つめてそう真面目に答える。

 

「しかし、貴方は未来から来て、この世界を変えようとしている。それが、どんな目的であれ、結果的にはあなたは民が強くあれる世界を、皆が笑顔であれる世界を望んでいる。」

「でも、俺は違う。」

「一刀様・・」

「なあ、桜華、俺が今までこの手で何人の命を奪ってきたかわかるか?」

 

そう私に聞く彼は自分の手を見ながらそう寂しそうに聞いてくる。決して、消えることのない血。それはわかっている。蒲公英ちゃんを助けるために、そして、私のときも、彼は賊を何人も殺してきた。

 

「俺には、ためらいがないんだよ。俺の中にある闇は消えることはないんだ。」

「しかし、正義を貫くのであればそれに対するものは裁かれて当然」

「では、桜華。正義ってなんなんだ。」

「それは・・・」

「正義っていうのは、結局はわがままなんだ。勝手に自分の夢を正義にしている、そんなわがままなんだ。天の御使い、ほんとうにそんな奴がいるんだとしたら、そいつはきっと心の中で、人を殺す先にある平和という矛盾といつも戦っているんだと思う。闇に飲まれないそんな存在なんだと思う。そして、結果的にはみんなをやさしく包み込んでしまう、そんな存在だ。」

「しかし、それは戦をするにあたってただの甘い考えではないのではないですか!」

「だから、こそだよ。だからこそそれは過酷な道のりだ。俺は、すでに自分の中にある闇を認め、受け入れてしまった。そんな存在にはなれない。いや、もしかしたら俺はその人物と正反対なのかもしれない。いうなれば、そうだな。光と闇だ。」

「一刀様・・・」

「しかし、そんな奴は存在するわけがない。もしこの世界に存在するのであれば偽者だ。だから、俺は許せない。今まで、賊の横行を許しておいて何が天の使いだよ。ふざけるな。どれだけの笑顔が奪われてきたと思っている。どれだけの悲しみがこの地に流れたと思っている。今頃現れて、世界を平和にしますよだ?ふざけるな。」

 

そう言う、彼のこぶしは震えておいた。確かに・・。彼の言いたいことはわかる。彼は見てきたんだ。悲惨という言葉では表せない光景を。そして、彼のほかには手を差し伸べるものすらいなかった。その光景を見てきた彼にとって、天の御使いというものはただの偽りにすぎない。だから一刀様はきっと、己の道を止めることはないだろう・・・。

 

「一刀様、もし天の御使いを名乗るものが、貴方の道を邪魔するというのであれば、あなたは、どうなさるおつもりですか」

「決まっている。天の御使いがもし俺の前に立ちはだかるというのであれば、排除するだけだ。」

 

やはり、あなたはそうお答えになるのですね。

 

「天を、殺すのですか?正義を倒すのですか?」

「いったはずだ、正義とは個人のわがままに過ぎない。それに、この世界に天の御使いが現れたからといってみんな従うのか?従うのであれば、たとえ偽者でもあっぱれなことだ。けれどそれは違う。いつも通りに皆は、己が理想を貫くために戦いをやめることはないであろう。俺はもう剣をこの手に取ってしまった。いまさら、道を振りえることなどできない。」

 

私は、そう堂々となんもためらいもなくいう彼をさすがだ、と思う。たとえ、彼が天の御使いではないとしても、そんなのは関係ない。一刀様は私にとっての光だ。

 

「なんだ?桜華。怖気づいたか?足が震えているぞ」

「いえ、これは武者ぶるいですよ。私は正しき主に仕えてよかったなと、そう思いまして。」

「馬鹿、だな。お前を拾ったのは俺だぞ。契約を裏切ることは許さん」

 

そう笑いながら言う一刀様をみて、私は本当に彼に出会うことができよかったと思う。そして、心の中で改めて、この方にすべてをささげようと誓った。

 

彼は、こんな世界を自分の手で変えようと立ち上がった。だからこそ、許子将が最後にいった言葉が頭から離れない・・・。大局に逆らうな、逆らえば身の破滅・・・。

 

「一刀様、許子将がいう、あとひとつの予言とは、やっぱり・・・。」

「おっ、蒲公英が戻ってきたみたいだ。おーい、蒲公英!!」

 

彼は、私の言葉など届かなかったように表情をかえ、蒲公英ちゃんに手を振っている。

一刀様・・・。貴方は、世界を変えることが、あなたにどんな運命を与えるかも知ったうえで、貴方はっ・・・私は、そう思うとあふれ出す思いをとめられない。

 

「?、どうした桜華?」

 

私は、いつのまにか一刀様を抱きしめていた。

 

「一刀様、私は一生、貴方についてきます。だからっ!」

 

だから、一人で闇を背負うことなどしないで・・・

 

「ばーか。そんな事、知ってるよ。」

 

私が続けようとしたことを彼はそういって止める。それは、彼の覚悟に反すること。つまり、契約をした私がそんなことをしてはいけない。

 

 

 

 

 

「あーーー!もう!何やってるの!お兄様!」

 

私が抱きついたのを見たのか、そう叫びながら蒲公英ちゃんが遠くから走ってくる。

 

「たんぽぽに探させにいっているあいだにこんなことして!あーー!これが目的だったの!」

「いや、蒲公英。違うよ。」

「嘘だ!たんぽぽにかくれて、い、いけないことしてたんでしょ!」

「おい・・。いけないことって、なんだよ。」

「女の子にいわせちゃだめなの!めっ、だよ!」

「おい、調子にのってかわいい子ぶるのはやめなさい。」

「ちょっ、桜華さん。どうしたの?ないてるよ・・・。お兄様!」

「いやいや、俺じゃねーよ。」

「大丈夫?桜華さん。お兄様になんかへんなことでもされたの?」

「いえ、蒲公英ちゃん。ただ、私は貴方がうらやましくって。いい、お兄さんを持ててよかったですね。」

「えっ!あっ、あの・・・うん。あっ、でも桜華さんももう家族だよ!だから、その・・・」

「ありがとう。蒲公英ちゃん・・。」

 

そう、あわてながらいう蒲公英ちゃんと、私の目の前にたつ彼の背中の大きさに、私はなぜだか、忘れかけていた温かさを感じていた。

 

 

 

 

 

~愛里視点~

 

 

「それで、貴方、天の御使いという噂を知っているかしら?」

 

私は、華琳ちゃんと一緒にお城に戻るとそのまま王座の間に連れて行かれた。そうして、みんなを前に、あの荒野で聞かれた質問をもう一度された。あの時は、あとでまた聞くわといわれたのだが、こうも早くとは思っていなかった。そもそも、なんのことだかさっぱりだったからだ。

 

「ううん。知らないよ。この世界にそんな人がいるの?」

 

少なくとも、私が知る三国史にはそんな人物は出てこない。

 

「管輅という占い師の占いによると、天の御使いは、この世が乱世となる時天より使わされし者、流星に乗りてこの地に降り乱世を平和に導くらしいのよね。」

「華琳様、それは噂であって・・・」

「あら、春蘭、私は噂の中にも真実はあると思うのだけれど。それを見極めるのは人次第。それで、愛里。貴方は天の御使いなのかしら?」

「えっ、えーー?私?」

「ほかにだれがいるのよ」

「違うよ。私はそんな大したものじゃないよ。」

「私たちが、あの荒野に出向いた理由は賊のほかに、もうひとつあったの。それはその噂どおりに流星をみたからなのよ。昼間から流星など見えるはずがないのだけれど。実際この目で見てしまったのだから確かめるしかないじゃない。そうしたら、貴方がいたというわけよ。」

 

確かに・・。流星とまでは覚えていないが、この世界に来る前にまぶしい光に包まれたのを覚えている。でも、天の御使いって・・・。私はそんな大げさなものにはなれない。異世界からきたことは確かだ。けれど、そこは天でもなければ、私は普通の人間だ。

 

「まあ、己のことは知らないことが多いという。それに、大切なのは貴方が本当の天の御使いであることではないのよ。」

 

なるほど・・・。もともと華琳ちゃんはそういうのを信じるタイプじゃないし。でも、噂程度には使える。曹操のもとに、天の御使いが舞い降りたと。

 

「どう?これから、わたしとともに、道を歩いていかないかしら?」

 

華琳ちゃんは、この世界を統一しようとしているであろう。私がしる曹操は非道であったけれど、この世界の曹操は違う。いや、お兄ちゃんがいっていた曹操に近いのかもしれない。で、あるならばこの世界をさまようより、私は彼女の夢に手を貸したい。

 

「華琳ちゃん、華琳ちゃんの夢って何?」

 

だから、私はそう聞く。自分の覚悟を確かなものにするために。

 

「夢、ねえ。ちょっと、きなさい。」

 

そう華琳ちゃんはいいながら、私の手をひっぱり城壁へと歩いていった。

 

「見なさい、愛里。」

 

華琳ちゃんがいう先には街が広がっていた。さすが華琳ちゃんの街だけはある。明るい街だ。人で賑わいをみせている。

 

「何が、見える?」

 

私が見渡していると華琳ちゃんがそう聞いてくる。

 

「街が見えるよ。」

「そうね。それから?」

「そこにすむ人たち。みんな笑っている。」

「ええ。そこには、何がある?」

「そこに・・・?」

「ええ、たとえば貴方が街を歩いているとする、そこにあるものは何?あなたが守りたいものは何?」

「それは・・・、子供たち。笑いながらはしゃぐ子供たち。」

「ええ、正解よ。私たちが守らなければならないもの。それはあの子たちが笑える未来よ。」

「華琳ちゃん・・。」

 

そんなふうにいう彼女は堂々としていた。

 

「でもね、この世の中はこの街だけではない。もっと、広いのよ。そしてそこは賊が横行し政治は腐っているかもしれない。私は、それを無視することはできない。」

「今は、だよね。」

 

そんな質問に華琳ちゃんは私のいいたいことに気がついたのかこちらを見る。

 

「そうね。この世の中には私のように思い、立ち上がるものも多いでしょう。そして、いずれはそのもの同士が戦うこととなる」

「そんなのつらいよ。だって、みんないい人かもしれない。」

「しかし、だからといってみなの夢、理想が等しいものではない」

「そうなったら、話し合いで解決はできないのかな」

「それは、甘えよ。愛里。話し合いでつかめる平和があるならばだれもがそうしてるわ。けれど、そうしていないのはだれもが自分の理想を貫こうとしているから。だから現実をみないことはただの甘えにしかすぎない。」

 

けれど、私は知識としてしっている。劉備は民の笑顔を求め立ち上がり、孫策は己が国を守るためその剣を天に掲げたことを。だからこそ、華琳ちゃんと共に歩くということはいずれはその人たちとも戦うことになるのだ。

 

「私はね、愛里。笑顔で相手に近づき、殴ったりはしない。殴って、殴って、殴って、そうしたあとで、皆を包み込む、それが私の覇道よ。」

 

そうだ・・・この時代、戦をやめて!といってもやむことはない。戦というものはどの時代でもあるのだから。私が戦とは無縁の世界にいただけなのだ。そんな不合理な世界を見つめてこなかっただけなんだ。でも、華琳ちゃんは知っている。この世界を平和に導くにはどうしたらよいのかを。そして、彼女は厳しい現実から目をそらさずにしっかりとその目でみている。一人でその苦しみも、悲しみも背負おうとしている。だから、私は・・・・

 

 

「華琳ちゃん、愛里は華琳ちゃんと一緒にいくよ。」

「あら?いいのかしら?それは、天の御使いとしてきてもらうことになるわよ?」

「うん、わかってる。愛里だって、何もしないでただ文句だけをいう人間にはなりたくない。だから、もう現実から逃げない。だから、私は決めたよ、華琳ちゃんと覇道を歩くって。」

 

そうだ。もう、私は逃げたくない。決めたじゃないか。いつか、私はおにいちゃんの隣に立てるような女になるって。昔から思ってきたことじゃないか・・・。それが私がこの世界にむけて剣を掲げる覚悟。この世界を平和に導き、いつかはきっとおにいちゃんの隣にたつんだ。

 

そして、もしこの世界であったときは、私だって、お兄ちゃんみたいに強くなったといってやるんだ。もし、この世界にいなかったとしても、私は堂々と生きていく。お兄ちゃんに再び、堂々と会えるように。

 

 

私は、強くなって堂々と彼の隣に立つ自分を想像する。

 

 

 

そうしたら、きっとお兄ちゃんも私のこと、ほめてくれるよね・・・・。そん確かな思いを胸に。

 

 

そうして、その日を境に、陳留の曹操のもとに天の御使いがまいおりたという噂は広がっていった。

 

 

 

 

 

恋姫・鬼・無双 第一幕"すべての始まり”  終

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

~愛里視点~

 

「ねえねえ、あきちゃん。なんか、今日はるちゃんが華琳ちゃんからのおしおきだぁ~とかいいながらよだれたらしていたけど、どういうこと?」

「え・・・姉者、ずるいなぁ。」

「ずるい?」

「あ、いやいや。なんでもない。まあ、そのだな、愛里ももしかしたらそのことを知ることになるかもしれないぞ」

「へー、んでも愛里はそういう趣味ないから。全力で断る」

「なっ!愛里、知っていたのか!」

「まあ、ね。そう言う雰囲気はあったし。それに、あきちゃんは違うかなーと思ったんだけど、そうだったんだね・・・」

「ま、まあ、そのなんだな。人を試すのは良くないことだ。それにしても、全力で断るとは。愛里、好きな男子でもおるのか?」

「うん!」

「ほぉ~。こんな愛里のようなかわいい子にすかれてその男は幸せ者だな。それで、だれなんだ?」

「お兄ちゃん!」

「えーっと、愛里?そっちの好きではないのだが・・・」

「愛里はお兄ちゃんのこと大好きだよ!心配しているなら大丈夫だよ。お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんではないから。愛里がそうよんでいるだけなの」

「そういうものなのか・・・。」

「そうなの。でもね~お兄ちゃんはかっこいいからもてもてなの。本人は自覚してないけどね~」

「そこまで、愛里がいうのであれば一度、会ってみたいな」

「うん!きっと会えるよ。 あ、でもお兄ちゃんのこと、好きになっちゃだめだよ?あきちゃんとはけんかしたくないもん」

「ははっ、愛里と男の取り合いか・・いや、それも面白いやもしれんな」

「あきちゃーん!!!」

 

 

~そのころ天水では~

 

 

 

「へっくしょい!」

「あらあら、一刀様。風邪ですか?」

「いや、そんなことはないけど・・。」

「風邪を引いたときは人肌で温めるという言葉を聞いたことがありますが」

「ああ、それは俺も聞いたことある。その後、なぜか女性の肌はつやつやになっているとか」

「へえ、一刀様。物知りですね。」

「でも、俺の辞書は女性はまるで朽ち果てたかのようにぼろぼろになっているらしいぞ。」

「あ・・・・、えーっと。やっぱり風邪には薬ですね!」

「蒲公英はたまっているものをすべて出したらいいと思うよ」

「・・・・」

「いや、桜華さん?俺をにらむな。蒲公英は純粋に気持ちが悪いなら吐いてしまえばいいといいたかったんだと思うぞ。だよな、蒲公英?」

「うーん・・・どうだろうね、お兄様!」

「え・・!?」

 

 

 

 

 

あとがき

 

愛里もちゃんと今回は登場。

愛里と華琳のフラグは全力で阻止。

 

 

桜華はなんだかんだで一刀に思いをよせている。

 

そして何より小悪魔たんぽぽちゃん。

 

んでも、かわいいから許す。

 

 

 

次回から第二幕"黄巾党と諸侯”がはじまります。お楽しみに

 

 

ではでは、

 

またーー!


 
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