No.575560

恋姫のなにか 33

くらげさん

秋蘭を愛でたくなった。それだけっす。

2013-05-12 15:13:55 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9509   閲覧ユーザー数:5818

久々にちゃんと秋蘭を書いた気がします。無論「なにか」の秋蘭ですががが。

休日が嫌いな人間は果たしているのだろうか。多分いないとは思う。

だが何故休日が好きなのかは人によって様々で、内容によっては人に話せば失笑されるような理由もあるだろう。

 

「ふんふんふ~ん♪」

 

普段のクール、もしくは冷徹なアイスマスクを何処へ置き忘れたのかというぐらいの満面の笑みで、秋蘭は一刀の洗濯物を干していた。

天気は快晴。昼前に取り込めば良い具合の気持ちよさになっている筈だ。

ワンルームな一刀の部屋、ベランダはあるが数歩歩けば行き止まりになる程度の広さだ。

多くはない洗濯物を干し終えると、一刀はまだ布団の上ですぴーと寝息を立てていた。

 

「んー………恒例の新妻ちぇ~っく」

 

一刀の瞼を開けて瞳を見、顔を近づけて呼吸を聞き、半開きの口に欲情してついつい唇を貪ってしまう。

 

(むふ、むふふ………いかん、このままでは日が暮れてしまう)

 

眠りの深い一刀は秋蘭に身体をまさぐられ舐め回されても起きる事は無く、秋蘭もついモゾモゾしてしまったので、朝ご飯の前にシャワーを浴びる事にした。

 

「うーむ………どうも自重できんな。まぁ問題はないのだが」

 

強いて言えば二人で朝風呂で石鹸とヌルヌルする液体を使って夫婦のスキンシップを図りたいのだが、私は出来る女!と自らを戒める事を忘れない。

白いスク水も内緒で買ったので近日中にお披露目といきたい所なのだが、互いに仕事をしている二人は中々時間の都合がつかない。というのが取って付けた理由。

本当は夜になると秋蘭が暴走して風呂所じゃなくなるので、未だに一刀宅のお風呂場は綺麗なままだ。だから何だと言われればそれまでなのだが。

 

「そろそろ一刀も起きるか」

 

キュッとシャワーを止めると身体を拭き、んー。と悩んで裸エプロンで攻める事にした。昨日はスーツ+タイトスカートだったし、釣り合いは取れているだろうと思う。無論秋蘭の頭の中で。

 

 

秋蘭の見立てでは一刀の疲れはそれほどでもないので、朝食は和食にする事にした。

 

「おや、もう起きたのか?」

「服着ろよ。せめて下着とか」

「失敗だったなぁ」

「話聞いてくれる?」

 

秋蘭が素肌の上にピンク色でフリフリが沢山ついた、料理をする時に身につけているのを見た事がないハートを形どったエプロンを身につけているのを一刀は眠そうな顔で見ていた。

贅沢者というなかれ。昨日、いやホンの数時間前までお楽しみだったのだ。賢者モードが継続していても何ら不思議はない。爆発しろ。

 

「一刀ー」

「なに。何でもいいよ」

「冷蔵庫の中身を見る為にお尻突き出すから覗き込んでくれ」

「朝ご飯は可愛いくて美人な嫁さんの手料理がいいです」

「こなかったらスッポンとニラ炒めにするが良いな?」

「よーし俺奥さん襲っちゃうぞー」

「きゃー♪」

 

長年の経験上、秋蘭が宣言した事は本当に実現しているので一刀としても襲わざるをえない。今日のデートの為に。

一日中家でイチャイチャベタベタらぶらぶと過ごすのに何ら異論はないが、一緒に外に遊びに行きたいのも本音なのだ。

例え半ば、いや十割の確率で秋蘭の手の上で転がされていると確信していても、一刀は戦う。具体的には平和な朝ご飯の為に。

 

 

「今日も朝からいただかれてしまった(/ω\*)」

「いただいてしまった。そしていただきます」

「おあがんなさい」

 

本日の朝食は守られた。良く戦った、俺。と一刀は自分で自分を褒めつつご飯とオカズを口に運ぶ。

 

「んまいか?」

「んまい」

「そうか、なら私もいただこうか」

 

秋蘭は味噌汁をずずーっと啜る。別に猫舌でもないので音を立てずに飲むのは可能なのだが、昔姉がこうやって飲んでいて一刀が可愛い。と零して以来続けていた。

 

「今日何処行く?」

「基本一刀の意思を優先するが、聞いてくれるのならラブホテル」

「折角爽やかな朝なんだから爽やかにいこうよ」

「一刀以外に楽しみが無いもんでな。 お前の物を買いに行くというのであればそれでもいいが」

「んー……つっても、特に欲しい物無いしなぁ。 映画行く?」

「一時停止してくれるなら行ってもいいぞ?」

「俺さ、時々春蘭と結婚したんじゃないかって思う時があるよ。まさに今とか」

「だって、映画見てる一刀の横顔とか萌えるんだ」

 

クールビューティーなお姉さんが唇を尖らせて拗ねる破壊力はヤバいと思うんだ!

 

「絶対に途中でつまみ出される事になるが、それでもいいか?」

「確認とってくれてありがとう。映画はやめよう」

 

どうしてこうなった。昔はもっと常識人だったのに。

秋蘭がこうなってしまったのは何時からなのだろうか。少なくとも籍を入れた時には手遅れだった様に思う。

顔なじみのご両親に挨拶に行った時だったか、それとも自分が一人暮らしをしていた時に世話しにきてくれた時に押し倒しちゃった時だったか、それともまだ実家にいた時に思春期の少年特有の悩みを【相談】した時だったか。

 

「そんな顔するな。 食料品で幾つか買いたい物があるから、そのついでにウインドウショッピングと洒落こもうじゃないか」

「何作ってくれんの?」

「希望があるなら優先するぞ?」

「アレ久々に食いたい。あのー、あれ。 なんだっけ、俺がこっち来た時に作ってくれたヤツ」

「了解だ」

 

これだけアバウトな説明で答えを導き出せる物なんだろうか。と一刀は思うが、秋蘭だしなぁ。とも思う。

グダグダ話しつつも朝食を綺麗に食べ終え、一刀がさて。と食器を流しに持って行こうとすると颯爽と秋蘭にかっ攫われる。

流しに食器を置くと踵を返してベランダに繋がる大窓をガラガラッと開けて、また踵を返して洗い物に向かう。

ちなみに此処まで裸エプロンを貫いているのだが、その情熱は尽きる事はあるのだろうか。いや、ないよね。うん。

 

「おっと、水飛沫がー(棒」チラッ

「タバコすお………」

「きゃー、エプロンが濡れてすけすけにぃー」(チラッチラッ

「ヤニうめぇ」

「きゃー!」

「わかったよ!襲えばいいんだろ?!」

 

やけくそで一刀はカーテンを閉めると秋蘭に向かって足音を立てて歩いていく。

わ、私には愛する主人がぁーと抵抗?する秋蘭は満足げだったが、裸エプロンにそのセリフはミスマッチだと思うんだがどうでしょう?

 

 

「絶好のお出かけ日和だなぁ!」

「あんだけやっといて秋蘭元気だな……」

「なんだ、私に服着せてる時は楽しそうだったのに」

「お願いだからさ、部屋以外でギリギリトークするのやめてくれない?亭主が前科持ちとかイヤだろ?」

「等身大秋蘭人形。一刀がいると起動します」

「わーお、俺乱獲の危機だよ」

 

なんて言いながら腕組んで歩いてる夫婦がいたら爆発しろ。

いい感じに時間を潰してそろそろ出かけよう。と一刀が言い出したのだが、秋蘭は一刀が服着せなきゃ一歩も出ない!と主張した。

俺の嫁さんは何処で頭のネジふっ飛んだんだろう。と一刀は世の無情に嘆きながら、背中に秋蘭の乳を押し付けられながら羞恥プレイをこなした。

例え嫁さんの物でも、タンスを開けて下着探しをするのは筆舌に尽くしがたい羞恥心が巻き起こると思う。そんな事ないという男がいたら捕まれ。

顔を真っ赤にしながら下着を手に取る度に耳元で「それを着た時の一刀は激しかった」とか「その時は朝まで寝かせてくれなかったな?まだ夫婦じゃなかったのにこの鬼畜♪」とあまーい吐息混じりに囁かれるのだ。

もうお出かけは止めて押し倒してやろうかと一刀は思ったが、多分このお姉さんはどっちに転んでも損しないのだ。

まだ慌てる様な時間じゃない。と一刀は何度も誘惑を断ち切り、ようやく外に出られたのだが秋蘭的には家でも外でもヤる事は一つ、旦那の誘惑である。

 

「一刀」

「なに? どっか行きたい所でも思い出した?」

「人生は一度しか無い訳だ」

「エロい事なら却下な。 今日は普通に秋蘭とデートしたいの。彼氏彼女でキャッキャウフフなの」

「ぐぬぬ」

 

完全に秋蘭の尻に敷かれた後に手の平に乗せられて可愛がられている一刀だが、発言権が皆無という事はない。

怒る一歩手前で見事に引いて、フラストレーションが溜まってくるとヤケに従順になってちっぽけな自尊心を満たしてくれる。

なんだかんだでお似合いっちゃお似合いの二人なのだ。

 

「ま、それならそれで楽しむか。 夕方辺りまでブラつくとして、夕飯ぐらいは私のを食べて欲しい所なんだが?」

「そりゃ勿論。 昼飯ハンバーガーとかでいいよな?」

「ホントジャンクフード好きだな? 食べたいなら言ってくれれば作るぞ?」

「ジャンクフードまで秋蘭が作ったら外で飯食えなくなるだろ。 それにアレってチープさが売りなんじゃね?」

「どうしよう一刀、嬉しすぎて発情してきた」

「ばいつぁ・だすと」

 

ニッコニコな秋蘭に左腕を抱きしめられながら、電車に乗ってかなり大き目なショッピングモールへとやってきた二人。

休日なのでかなり人は多いが、どうしても行きたい場所があるわけでもないので最上階から順番に降りてくる事にした。

 

「エスカレーターで良いよな?」

「構わんよ」

「んじゃしゅっぱーつ」

 

一刀達以外にもカップルや夫婦は沢山いるが、平均よりも頭一つ分背の高い秋蘭はそれだけで人目を引く。

一刀的には「なんでコイツが隣?」的な視線には慣れっこなので今更傷つく事もないが、秋蘭的には大変不満なのである。

 

「なんで密着度合いが上がってるの?」

「ぶっちゃけると恥ずかしいので何となくと言っておこう」

「ふーん」

「しかし、私達は結婚してからの方が良くデートしてるな」

「そうだっけ? 結構してたと思うけど」

「偶然会って、というのはあったかもしれんが、あらかじめ打ち合わせをしてはかなり少なかったと思うぞ? お前休日はバイトだったしな」

 

そだっけ?と視線を天井に這わせながら思い返している一刀をどうにかして物陰に引きずり込めないかと考える秋蘭。

実際秋蘭が本気で誘惑すれば一刀程度簡単に篭絡出来るのだが、それをやると一刀の機嫌は最悪になる。

自分と一刀、どっちを優先するかといえば無論一刀である秋蘭は、これでも、これでもかなり我慢しているのだ。(ドヤァ

 

「最上階まで来たのはいいけど、紳士服売り場か」

「一刀、スーツ買うかスーツ」

「なんで?いらねーんだけど」

「普段から多種多様にコスプレしてやってるんだから一刀もスーツに眼鏡かけて私を襲うべきだ」

「テメーの服買うより秋蘭に金掛けた方が俺は張り切ると思うよ」

「三階の下着売り場に行こう!」

「待てや」

「一割だけ冗談だ。 買う買わないは別にして、見て回るか」

「あ、ごめんトイレ行ってくるわ。 此処で待ってて」

「迷子になるなよー」

 

行き当たりばったりな人間は適当に歩く故迷子になりやすいと思うの。

周りの人に気をつけながら、顎を上げて看板を頼りにお手洗いまで歩く一刀を見守る秋蘭。

一昔前ならケータイでムービーを撮りつつこっそり後を付けていただろうが、心の余裕が産まれた秋蘭は懐からデジカメで写真を撮る程度に留めておいた。

さて、何分で帰ってくるやら。と柱に背中を預けて売り場を何となく眺めていると、手を軽く上げて自分に近づいてくる男がいた。

随分センスの良いカジュアルな衣服に身を包み、シュッとした眼鏡を掛けた爽やかな青年。

まぁ十中八九は良い男。と表現するようなイケメンだった。

 

「秋蘭さん、偶然だね」

(えーっと……あぁ、違う部署のヤツだったか)「偶然だな」

「待ち合わせでもしてるのかな?」

「そうだ」

「そうなんだ、女の子? だったらお茶でもどうかな?奢るよ」

「旦那だ。さっさと失せろ」

「あ、あぁ。そういえば結婚してたね、忘れてた。幼馴染の男の子だっけ?」

「随分と都合の良い記憶力だな。 これ以上何か?」

「良ければ旦那さんに挨拶させて貰えないかな? いつも御世話になってる事だし」

「はっきり言っておく。 不倫したいなら他を当たれ」

「いや、そんなつもりじゃ……あ、旦那さんじゃない?」

 

アホか。と秋蘭は心中で毒づく。一刀の接近に自分が気が付かない訳がない。

案の定同僚の男が言った相手は別人で、一刀は同僚の男の背後、歩いて行った先とは逆方向から現れた。

 

「呼び出しせずにすんだな?」

「いじめんなよ、実際迷ったけど」

「すまんすまん。 じゃあな」

 

返事を聞かずに秋蘭はその場を動いて、一刀の腕を組んで歩き出す。

一刀は秋蘭が声を掛けたのであろう男をチラッと見ると、見下し半分、ヤッカミ半分といった目付きで睨まれていた。

 

「友達? なんか俺睨まれてるけど」

「不倫願望のあるバカ男だ。 どうも私を狙っているらしい」

「それは不倫とかじゃなくて単純に秋蘭に惚れてるんじゃね?」

「だからバカだと言ったろ?」

「ま、気を付けておくれ」

「もし億分の一以下の確率で私が浮気したらどうする?答えによっては奥さんの機嫌がとても良くなる」

 

打てば響く。といった具合で会話のキャッチボールを行っていな二人だったが、秋蘭の言葉に一刀はピタリ。と足を止める。

不味い。と珍しく一刀に対してのアプローチを読み違えた秋蘭は焦ると、口を開くべきか、待つべきかと真剣に悩むが、口を開く寸前で一刀がんー。と唸った。

 

「んー………泣くんじゃねぇかなぁ。まぁ、有り得ない話じゃないし、ちゃんと考えとくわ」

 

よし、襲おう。一刀の腕を強く引いてズンズンと歩き出す秋蘭を見てヤヴァイ。と必死に秋蘭に話しかける一刀だったが時すでに時間切れ。

秋蘭は人のこない階段まで一刀を引き連れていくと、

 

「私は浮気しないしお前より好きな男はいないし今後も確実に現れない。愛している。私にとって“男”も“雄”も“旦那”も“主人”も全部全部お前だけだ。愛している。

お前以外の子供を孕むつもりなど一切ないし、もし何か非道な手段で私を手篭めにする男がいたらソイツの親族郎党纏めて地獄に叩き落した後で自殺する。愛している

よって一刀は私がもし浮気したらなど考える必要はないし不安に思う必要も全くない。愛している

それでも不安に思うならケータイも解約するし仕事も辞める。愛している。というか私は籍を入れる以前から家庭に入ってくんずほぐれつでイチャイチャいていたいと要望を出していたな?

あぁ勘違いしないでくれ、それを一刀が反対した事について不満に思う事は一切ない。愛している。現役OLの奥さんと致したいという一刀の欲求は十二分に理解している。愛している」

 

というようなセリフを延々と瞬きせずにつぶやきながら一刀にまたがって旦那に【自分がどれだけアナタを愛しているか解ってもらう運動】を行う秋蘭。

こらアカン。と一刀は只管周囲と人気に気を使い、秋蘭を抱き締めて安心させる事に腐心した。

 

 

結局一刀と秋蘭の健全なデートは一時間かそこらで終了し、未だに発狂して帰ってこない秋蘭を何とか宥めながら休憩専門のホテルにつれていく事になった。

 

「俺絶対死因は腹上死だと思う」

「正直スマン………」

 

ぜぇぜぇと肩で息をする一刀を、流石に情けなくなった秋蘭は見る事は出来ずに俯せになって枕に顔をうずめて謝る。

 

「まぁ秋蘭の事だから知ってると思うけど、結構身分の差みたいなのは感じてるからソコは付かないで貰えると有難い」

「んー……私としては気にしていないし、鬱憤を私にぶつけて貰いたい所なんだが、それも一刀は嫌だろうしなぁ」

「何が悲しくて嫁さんに当たらなけりゃならんの」

「思春の方に天秤が傾くのも悔しいから了解した」

 

秋蘭は俯せのまま顔だけを一刀に向けると、一刀は何となく恥ずかしくなって顔を逸らす。

良く(秋蘭は違うが)彼氏でも着替えを見られるのは恥ずかしい。というのを聞くが、コレもその範疇に入るんだろうか。と思いながら、つい一刀は地雷を踏みに行ってしまった。

 

「……未だに理由が解らないんだけど、なんで思春とも結婚してんの、俺」

「おいおい、重婚は犯罪だろ。法的には一刀の妻は私だぞ」

「そうじゃ無かったら凹むけどさ、思春とも婚姻届書いた覚えがあるんだけど。てか浮気してて平気なの?」

「ん? 最初っからそういう取り決めだったしな。 ちなみに私と思春は了解済みだから厳密には浮気じゃないな」

「いや俺秋蘭と結婚したんだろ?」

「まぁ一刀が腑に落ちないのも解るし、私を愛してくれているのは死ぬほど嬉しいが、家同士の話だから正直私じゃどうにも出来ない」

「家同士って何時からよ」

「漠然とした取り決めは一刀と霞さんが引き取られてからだな。 人数の関係でお前だけ部屋無かっただろ?」

「あぁ、懐かしいな」

「それで随分と揉めてな。 ウチの両親も思春の御両親も後継は欲しいと思っていたから、こっちで引き取らせて貰えないか。と打診したらしい。

あぁ自分達で作れば?というのは言うなよ。色々あるんだから。

それでもお義父様もお義母様も一刀を手放すつもりは無かったから、色々便宜を図る代わりに―――という話だったな」

 

一刀は初めて知る事実。おそらく、今聞かなければ一生闇の中だった事。

 

(俺だけ蚊帳の外かよ。バカ正直に告げられていても正直対応に困っただろうけどさ)

「なんか、俺オモチャみてーだな」

 

けどまだまだケツの青いガキだから、ついそんな思ってもいない事を言ってしまって、寝転んでいた秋蘭の髪の毛が逆立つ様な感覚に襲われる。

 

「―――」

「ちょっと待って秋蘭俺が悪かった!!」

「二度と、言うな」

「言わない!もう絶対言わないし拗ねない!!つーか秋蘭にそんな事思ってないから!!」

「絶対に言うな」

 

もう一刀は声も出せずにコクコクと首を縦に必死で振っていた。

 

「待って秋蘭俺もう限界!!」

「私は絶好調だ。腸が煮えくり返っているからな」

「解った!せめて家で、な?! ちょっとでいいからインターバル取って!お願い!」

「明日は休む。明後日も明々後日もその次も次も次も次もだ。 お前に愛を分からせてやる」

「………せめて、攻守は順次交代して」

「アイシテル」

 

二日だけで許して貰えました。とは一刀談。

二日目ぐらいで冷静になってしまった。洗濯物べりーしっと。とは秋蘭談。

おまけ。

暴君モードの一刀くん、桂花ばーじょん。

 

 

なにやってんだろアタシ。と思わずにはいられないが、それでもやはり繰り返してしまう。

シャカシャカとシェイカーを振って、作るお酒はカルーアミルク。

口当たりが良く飲みやすいが、アルコール度数は高く酔い易いという危険なカクテル。

それにコーヒー牛乳をちょっと足し、牛乳瓶に入れ直して一刀がお風呂から上がってくるのを待つ。

 

(多分薄々……感づいてる訳ないか。一刀だし)

「おさきー」

「ドライヤー使いなさいって言ってるでしょ。風邪引くわよ」

「めんどい」

「はぁ……こっちきなさい、やってあげるから」

「大丈夫だってこんぐらい」

「そう言って見事に風邪引いた時、誰が看病してあげたっけ?」

 

熱めの湯が好きな一刀は風呂上がりは熱いのか、上は裸のままで下だけ身に付けて出てくるのが常だった。

唇を尖らせてドライヤーを取りに行く一刀を尻目に、桂花はコーヒー牛乳・改をテーブルの上に置いて一刀を待つ。

 

「お、飲んでいい?」

「いいわよー」

 

背中を向けて座り、コーヒー牛乳を片手にテレビを見る一刀。

桂花はなるべく平静を装ってドライヤーとタオルを使い、乱雑に手早く髪を乾かしていく。

 

「飲まないの?」

「立った状態で腰に手ぇ当てて一気だろ」

「はいはい。もうちょっと待ってなさい」

 

本当はまだ乾いていないのだが、桂花はよし。と声を出して一刀に会津を送る。

それを受けた一刀は立ち上がると、少し氷混じりなコーヒー牛乳を一気に飲んだ。

 

 

「んー……んー……」

「な、なによ。アタシもお風呂入るんだから」

「……ちょい待ち」

 

腕を引っぱられて、一刀の胸に飛び込む形になった桂花。

どうせ覚えていないのだが、心の赴くままに抱き締める事が出来ない。

 

「んー……ちっちゃい」

「悪かったわね!」

「まぁいいやーやーらかいし」

「ちょっと、ダメだって、お風呂入るんだから……」

 

聞く耳持っていないのは承知で、何も覚えてないのも承知の上で、桂花は形だけの抵抗を行う。

突き飛ばそうとしている両手はその実一刀の肩に添えられているだけ。

本気で嫌なら頬を打つなり、両腕で胸を庇うなりすればいい筈なのに、身を捩らせるだけに留まっている。

 

「桂花は乳よりお尻だなー」

「ホント天罰くだるかんね……」

「ケツもちっちゃっこいけどなー」

「だったら触るな!」

 

抱き抱えられ、服を脱がされる度に身を捩らせるのだが、酔っ払った一刀は抵抗なく服を脱がせられる事に不信を抱かない。

 

(ホント、何やってんだろアタシ)

「けーふぁー」

「なによ。 もう、いいわよ。お風呂入れば一緒だし」

「お前俺のなー」

「……だったら、ちゃんと覚えてなさいよそれ」

 

それを覚えていてくれれば、こんな回りくどい誘い方なんてしなくてもいいのに。

至極真っ当に一刀に対して苛立ちを募らせる桂花だが、幸せそうに自分に伸し掛る一刀の顔を見る度に。

 

「はいはい、アタシは一刀の。 アタシは覚えてるから、アンタは好きにしてなさい」

「そうするー」

 

まぁいっか。何時もそう折れてしまうのだ。

あとがき

 

ヤンデレがコンセプトだったのにヤンデレがなくなってきてたので。

秋蘭はなんでも出来るんで書いてて楽しいですが、他のメンツが絡むと途端に書き辛くなる稀有な性格だと思い知りました。

クールなヤンデレを目指したんですが、どっちつかずになった気がしてならない。オチも二番煎じかなぁとも思ったんですが、キリが良かったんで。

 

あと前回のコメントを踏まえまして、暴君モードの一刀くんと相対する思春を書こうと思ったんですが、ちょいとひねって桂花さんに登場してもらいました。

読み返すとちょっぴりビター。ホントに桂花の萌えはムズカシネ。

桂花・秋蘭・愛紗・雪蓮辺りは率先して酔わせると思います。何となくですが。

お礼返信

 

 

ちゃあ様   思春の可愛さは三国一ぃ!!

 

月光鳥~ティマイ~様  風邪引くぞ。期待に添えられる内容でしたら何よりでっす!ちなみに成分分析はお断りしますので悪しからず。

 

ノワール様  一刀が酒乱なのはかなり前から温めていたシチュエーションでした。

 

happy envrem様  それが華琳様クオリチー。 今回は桂花でお送りしました。

 

ヴィヴィオ様  結構暴君モードの受けが良くてビックリです。一刀爆ぜろ。

 

ちきゅさん様  現代医学の敗北、か………

 

MiTi様    ちなみに思春るーとの一刀は秋蘭でオトナになっている脳内設定です。

 

ミドリガメ様  華琳様は意識して排除しないと登場回数がえげつない事になるから仕方ないね。

 

shirou様    この後夜中に一刀が起きて起きて奪われます(ぁ

 

悠なるかな様   愛紗逃げて!!

 

観珪様    ハハハ、カンガエスギダヨォ

 

ロンギヌス様  思い通りになんてならない!!(キリィィ!!


 
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