No.552413

真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第一回 第一章:下邳城攻防戦・混乱と反乱

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです。

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2013-03-08 00:00:49 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:11127   閲覧ユーザー数:9223

―――いったい何が・・・どういう状況だ・・・

 

北郷にとっては訳の分からない状況だった。

 

 

 

 

 

それは突然の出来事であった。

 

 

 

 

 

北郷「さてと、終業式も終わったし、今日は部活も休みだし、さっさと帰るか」

 

彼の名前は北郷一刀。聖フランチェスカ学園に通う高校2年生である。

 

今日で終業式も終わり明日から冬休み。

 

普段放課後は剣道部の活動のために道場へと赴くのであるが、今日はクリスマスということもあり、

 

部長の粋な計らいで部活は休みである。

 

北郷は、まったく、キリスト教徒でもないオレにどうしろと、などとぶつぶつ言いつつ、

 

でもクリスマスケーキは食べるという矛盾に眼をつむり、

 

空いた時間を利用して、ここ何年かはまっている歴史シュミレーションゲームに興じた。

 

そして晩御飯とケーキを食べたのち、ベッドに転がるとそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

 

ここまでは普通の日常と何ら変わりがなかった。

 

 

 

 

 

しかし次に目を覚ましてみると、目に映ったのは見慣れた天井ではなく、瞳を濡らした見慣れぬ少女の顔であった。

 

 

 

 

 

 

【徐州、下邳城】

 

 

 

時は少し遡り、ちょうど夏候惇が高順を強襲し始めた頃。

 

呂布軍本隊は下邳城に立て籠もり、曹操軍の攻撃に耐えていた。

 

 

 

呂兵1「伝令!張遼隊、敵の補給路から高順隊救援に向かいました!」

 

陳宮「なんとか間に合えばいいのですが・・・。ご苦労なのです。引き続き泗水の動向を探るです。

 

くれぐれも抜け道が敵に悟られることのないよう、細心の注意を払うです」

 

呂兵1「はっ」

 

 

 

斥候の報告を聞いた陳宮は、腕を組み眉根を寄せて、なんとも落ち着かないという感じにそこらを行ったり来たりしている。

 

 

 

陳宮(泗水が狙われるのはあらかじめ予測できていたのですが、まさか夏候惇に狙われるとは・・・。

 

今水攻めされるのは非常にまずいのです)

 

 

 

陳宮は、自身の思い描き得る最悪のシナリオが完成しつつあることに焦りを感じながらぶつぶつと呟いている。

 

 

 

呂布「・・・ねね」

 

 

 

城の最奥に座っている呂布はそんな陳宮の様子を心配そうに見ながらその真名をつぶやく。

 

 

 

陳宮「心配には及びませんぞ恋殿。ななも霞もそう簡単にはやられませんです。

 

それに間もなく袁術軍の援軍が到着するはずなのです。もうしばらくの辛抱なのです」

 

呂布「・・・・・・」

 

 

 

呂布からは何の反応もない。普段から寡黙な呂布ではあるが、ここ何年かは様子が変である。

 

本来なら城の防衛に赴いているはずの呂布が何もせずここにいるのもそのためである。

 

 

 

陳宮(恋殿はあの戦い以来全く覇気を感じないのです。ですが恋殿はこのような場所で死んではいけないお方なのです。

 

月殿の意志を継ぎ、この乱世を終わらせるのは恋殿の力あってこそ。ここはねねがしっかりお支えしなければ・・・)

 

 

 

陳宮は自身を落ち着かせるために一度大きく深呼吸した後、近くにいた兵士に現在の状況を確認した。

 

 

 

陳宮「敵の攻城の進行具合はどうですか?」

 

呂兵2「はっ、現在夏侯淵隊・典韋隊による城攻めを受けておりますが、現状攻めあぐねている模様。

 

敵兵にも相当疲れの色がうかがえます」

 

陳宮「戦いが始まってはや3か月、それでも城を落とせず曹操軍にも焦りが見えるです。

 

そしてやはり霞の奇襲で補給路を断ったのが効いているようですな。ちなみに劉備軍に動きはあるですか?」

 

呂兵2「いえ、小沛城に入城して以来、まったく動きを見せません」

 

 

 

今回の戦いは曹操軍と劉備軍の連合との闘いなのだが、戦が始まって数か月、現状劉備軍とはまだ一度もぶつかっていない。

 

 

 

陳宮「やはり援軍を警戒してのことでしょうか。あまり出すぎると挟まれてしまいますからな。ですがやはり不気味ですな・・・」

 

 

 

陳宮はぶつぶつつぶやきながらも、別の可能性を考えていた。

 

 

 

陳宮(ですが劉備の性格を考えると単純に戦いを避けてるとも考えらるです・・・。

 

そもそもこの戦いは、恋殿と劉備を仲違いさせるために曹操軍の、荀彧の策略にはめられて起きたものですし、

 

劉備自身にとっても、本意の戦いではないのかもしれないです)

 

 

 

曹操軍の軍師、荀彧は、客将として劉備軍にいた呂布を引きはがすため、呂布軍に偽の情報を流していた。その内容は

 

 

 

『曹操軍に動きあり。すみやかに武器兵糧の準備をし、曹操軍との決戦に備えよ。なお誰にも情報が洩れぬよう、

 

我が軍も含めて情報漏えいには細心の注意を払え   劉玄徳』

 

 

 

というものであり、それを鵜呑みにした呂布軍は戦支度を開始。

 

数週間の後、次に荀彧は劉備軍に接触、呂布軍の戦支度は劉備の寝首をかくため、とそそのかしたのであった。

 

秘密裡に行われていた呂布軍の戦支度に関して、何の情報も入っていなかった劉備軍は、

 

その結果曹操軍と連合を組み、呂布軍のいる下邳城に攻めてきているのである。

 

こうなってしまえば呂布軍の言うことは全て言い訳にしか聞こえず、結果このように戦を避けることはできなかった。

 

そう考えると、陳宮は軍師としてすでに負けているのである。

 

 

 

陳宮「・・・悔しいですが王佐の才を冠するだけはありますな」

 

 

 

と無意識に口から思っていることを洩らすと、頭を振ってネガティブな考えを頭の隅に追いやり、陳宮は今の戦いに集中する。

 

 

 

陳宮「とにかく敵の補給路を断っている今、あとは援軍が到着すれば・・・」

 

 

 

敵の補給路を断っている以上、あとは援軍さえ来ればこちらの勝ちである。あとは時間との闘い。

 

そう覚悟しようとしたその時、陳宮の想像していた最悪のシナリオが動き出す。

 

 

 

 

 

 

呂兵1「伝令!・・・沂水、泗水両水門突破されました!」

 

 

 

息を切らせながら告げられたその事実は、あまりにも受け入れがたい現実。

 

 

 

呂布「・・・!」

 

陳宮「なっ・・・!?沂水はともかく泗水までもですか!?張遼は間に合わなかったのですか!?高順はやられたのですか!?」

 

 

 

陳宮は驚きながらも、正しい情報を把握するために矢継ぎ早に質問を浴びせる。

 

 

 

呂兵1「高順将軍は夏候惇と交戦、抑えられているうちに別働隊の許緒隊が到着、水門を突破・破壊された模様です。

 

張遼将軍はその後到着、重傷を負った高順将軍を救ったのち、現在も夏候惇と交戦中です」

 

 

 

呂布「・・・破壊」

 

陳宮「あの巨大な鉄の門を破壊したというのですか!くっ・・・もう少し早く救援に回していたら・・・」

 

 

 

陳宮にとって水門が突破されることは想定できていたが、破壊されるというのは想定外であった。

 

破壊されるはずもないものが破壊された時の精神的影響とはいかほどのものだろうか。

 

少なくとも兵たちの士気が下がっているのは間違いない。

 

 

 

陳宮「(過ぎたことを悔いるのは戦いが終わってからです・・・)少なくとも二人ともまだ生きているということですな。

 

しかしまずいです、これ以上兵の士気が下がっては・・・」

 

 

 

しかし最悪のシナリオは留まるところを知らない。下邳城が徐々に水に沈みゆく中、別の斥候が息を切らして走ってきた。

 

その動揺ぶりは尋常ではない。そして告げられた内容もまた受け入れがたい残酷な現実。

 

 

 

 

 

 

呂兵3「伝令!袁術軍が撤退を始めた模様!」

 

陳宮「なんですと!?敵の攪乱ではないのですか!?」

 

呂兵3「袁術軍の様子を見に行ったところ、先鋒隊と思われる張勲隊を発見。しかし張勲隊は撤退の準備をしており、

 

何事かと尋ねるとこれを・・・」

 

 

 

そう告げられて渡されたものは書簡であった。そこにはこれが公式の書簡なのかと疑いたくなるような幼稚な文章で

 

次のように殴り書きされていた。

 

 

 

 

 

『そのようにみずびたしになってはもうかてんじゃろ。まけいくさにかしてやるへいなどないのじゃ。

 

りょふならわらわのちからをかりんでもなんとかしてみせよ   えんじゅつ』

 

 

 

 

 

陳宮は書簡を思い切り床にたたきつけた。

 

 

 

陳宮「袁術の奴、我が軍が水攻めを受けると見るや逃げ出すとは・・・!」

 

 

 

この事実は呂布軍にとって致命的ともいえる出来事であった。援軍の見込みのない籠城などまず勝つことは不可能。

 

こちらの兵糧が尽きればそれで終わりである。

 

 

 

呂兵3「いかがいたしますか?」

 

陳宮「このことは口外禁止なのです。敵軍には勿論、自軍にもなのです。これ以上兵を動揺させては内部崩壊してしま―――」

 

 

 

陳宮が言い終わる前に最悪のシナリオがさらに加速し、終焉へと誘う。

 

 

 

 

 

 

呂兵4「伝令!魏続、宋憲、侯成が裏切りまし―――ぐあああ!」

 

 

 

兵士が自軍の反乱を告げるや否や背後から切り捨てられた。

 

 

 

侯成「ちょっと黙ってるッスよ。これじゃあ奇襲の意味―――ぐはっ」

 

 

 

兵士が斬られる瞬間動き出していた呂布によって侯成は切り伏せられた。

 

 

 

魏続「動くな!!」

 

 

 

呂布は続けざまに魏続を切り伏せようとしたが、先に宋憲が陳宮を羽交い絞めにし、

 

首元に剣を突きつけていたため、動くことができなかった。魏続は戟を呂布に付きつけている。

 

 

 

陳宮「おまえたち・・・!どうして・・・!」

 

 

 

恐れていたことが現実になってしまった。しかも魏続、宋憲、侯成といえば、

 

呂布配下の猛将として知られる八健将に数えられる3人である。

 

陳宮はこの受け入れがたい現実に驚愕するしかなかった。

 

 

 

魏続「ハァ・・・軍師殿、我々は幻滅したのですよ。呂布殿の不甲斐なさに」

 

 

 

魏続は右手で呂布に戟を突きつけたまま、左腕を横に広げ、大げさにため息をついた。

 

 

 

呂布「・・・・・・」

 

陳宮「なんですと!」

 

宋憲「はっ!俺たちは、最強にして、最恐にして、最凶の、比類なき天下無双の飛将軍、呂奉先だからこそ従ったんだ。

 

だがどうだ!董卓が討たれちまって以来、完全に腑抜けちまったじゃねーか!」

 

 

 

宋憲は元より大きな声をさらに響かせて高圧的に言い放った。

 

 

 

呂布「・・・・・・・・・」

 

陳宮「貴様らに恋殿の何が分かるのですか!」

 

魏続「分からないからこそ見限ったのです。水攻めをされ、袁術には逃げられ、もう我々に勝ち目はありません。

 

おそらく我々の命はないでしょう」

 

宋憲「だからせめて呂布の首を曹操への手土産に足掻こうってわけよ!」

 

 

 

やはり隠そうとしても噂は広がるもので、袁術撤退の噂は、城内でもある程度広まっていた。

 

下手をすれば敵軍に知られる可能性も十分に考えられた。

 

もしバレたらその瞬間敗北が決定したと言い切っても過言ではない。

 

 

 

魏続「ですが、裏切ったとはいえ、元は幹部であった仲間の侯成を躊躇なく切り捨てるところを見ると、

 

これは反乱を考え直さなければいけませんかねぇ」

 

呂布「・・・・・・・・・」

 

呂布は特に何も答えなかったが、長年呂布と共に過ごしてきたここにいる者たちには、明らかに呂布が動揺していることが窺えた。

 

 

 

陳宮「貴様らには武将の誇りというものがないのですか!」

 

魏続「それこそあなたに何が分かるというのですか、軍師殿」

 

 

 

魏続は不気味に、不敵にニヤッと嗤った。普段は穏やかに見える顔も、愛想のいい細い目も、

 

この状況ではただただ他人を見下す道具にすぎなかった。

 

陳宮は先ほど自分が言い放った言葉をそっくり返され、返す言葉が見つからなかった。

 

 

 

陳宮「くっ・・・」

 

 

 

とにかく宋憲の拘束から逃れなければどうしようもない。陳宮は何とか逃れようともがくが、

 

力の差はまさに大の大人が子供の相手をするがごとく歴然であり、どうしようもなかった。

 

 

 

宋憲「はっ!暴れるんじゃねぇ陳宮!間違って切っちまうぞ!」

 

 

 

宋憲がさらに力強く締め付ける。陳宮の首からはすでに一筋の赤い液体が滴っている。

 

 

 

魏続「さあ呂布殿、軍師殿がさらに傷付けられる前に大人しく捕まってくれませんか?抵抗しなければ軍師殿に手は出しません」

 

 

 

魏続は大仰な身振り手振りで呂布の投降を促す。

 

 

 

陳宮「だめですぞ恋殿!ここはねねのことは気にせず、こいつらを切り捨てて抜け道から脱出するです!」

 

宋憲「うるせぇ!黙ってろ!」

 

陳宮「あぅ・・・」

 

 

 

宋憲はさらにいっそう締め付け、陳宮からは苦しみの声が漏れる。

 

 

 

魏続「安心して下さい。私は約束を守る男です。さあ早く」

 

 

 

魏続がさあ、と決断を迫ると、呂布が俯いたままつぶやいた。

 

 

 

呂布「ねね・・・」

 

陳宮「恋殿・・・?」

 

 

 

陳宮は嫌な予感しかしなかった。先の戦で仲間を失って以来、呂布は仲間を失うのを極端に恐れていた。

 

そのような時に自分が人質となってしまった以上、考え得る呂布がとる行動といえば・・・

 

 

 

呂布「・・・恋はもう、月や詠の時みたいに、大切な人を、失いたくない」

 

 

 

呂布は自慢の得物、方天画戟を床に落とした。

 

 

 

陳宮「恋殿ぉ・・・」

 

 

 

またしても陳宮の最悪のシナリオが一歩前進した。陳宮は無力な己を悔やみ、

 

こみ上げてきたそれを我慢しきれずその瞳から流した。

 

 

 

魏続「賢明な判断ですね」

 

 

 

魏続は抵抗することを放棄した呂布を鎖で拘束した。ここまできてしまえば、おそらく最悪のシナリオの締めが次にやってくる、

 

そう陳宮は確信していた。

 

 

 

 

 

―――つまり・・・

 

 

 

 

 

魏続「では宋憲、軍師殿にもう用はありません。軍師殿は首だけでいいので始末してください」

 

宋憲「了解!」

 

陳宮「!!!」

 

呂布「・・・話が違う・・・!ねねには手を出さないと・・・!」

 

 

 

呂布はその身を縛る戒めから脱出しようとするが、さすがに鉄製の鎖を引きちぎることはできなかった。

 

魏続は忘れていたと言わんばかりに、呂布に轡をかませつつ、穏やかな口調で冷徹に言い放った。

 

 

 

魏続「ええ、もちろん私は手を出しませんよ。しかし宋憲がそのような約束をしたかどうかは知りませんが」

 

呂布「―――!!!」

 

 

 

呂布は何かを言っていたが、轡をかませられている以上、何を言っているか伝わらない。

 

 

 

陳宮「この外道が!」

 

 

 

陳宮はより一層暴れたが、やはりどうすることもできなかった。

 

 

 

宋憲「はっ!だから暴れんなって!力で俺に勝てるとでも思ってんのか!?呂布が無力化した今、

 

お前をどうすることもできるんだぜ!どうせまだ女の悦びを味わったこともないんだろ!?

 

せっかくだから死ぬ前に体験しとくか!?あ゛あ゛!?」

 

陳宮「ひっ・・・」

 

 

 

あまりにも大きな声を耳元で聞きながら、陳宮は怯えるしかなかった。

 

宋憲は陳宮が思い描いていた最悪のシナリオの斜め上をいく展開を提示してきたからだ。

 

宋憲に首から滴る血液を舐められ、陳宮は弱々しい声を漏らし、悔しさと共に恐怖の涙がこぼれる。

 

 

 

呂布「――――――!!!」

 

魏続「宋憲、早くしてくださいね。曹操に降るなら早いに越したことはありませんから、ね!」

 

 

 

魏続は戟の柄の部分で暴れる呂布の首を後ろから思い切り強打し、呂布を昏睡させた。

 

 

 

宋憲「ホントはゆっくり楽しみたいところだが、まあ手早く済ませてやるぜ!」

 

魏続「まったく、あなたも好きですね」

 

 

 

魏続は宋憲の無駄な行動を特に咎めることはなく、やはり目隠しがあった方が見栄えがいいですかねぇ、

 

などと呟きながら呂布に目隠しを施していく。陳宮はその様子をただ涙でぼやけた瞳で見ることしかできなかった。

 

 

 

陳宮(兵の反乱の気配にも気づけないとは軍師失格なのです・・・まして主一人お守りできないとは・・・)

 

宋憲「おいおいそんなに泣くなよ、俺はこう見えて結構やり手だぜ!」

 

 

 

無駄に大きな声でそう言い放つと、宋憲は陳宮を押し倒した。

 

 

 

陳宮(口惜しいです・・・!)

 

 

 

宋憲は陳宮に掴み掛り、上着をはぎ取る。

 

陳宮は尻餅をつきながら後ずさりをして宋憲から逃れようとするが、壁にぶつかってしまう。

 

 

 

陳宮「誰か・・・誰か・・・」

 

 

 

陳宮はうわごとのように誰かに助けを請う。宋憲がへへへ、と下品に笑いながらじりじりと迫ってくる。

 

しかし追い詰められたその刹那、陳宮の脳裏には走馬灯のように過去のあるひと時が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<てんのみつかい?何ですかその胡散臭い奴は?>

 

 

 

<『遥か天界より遣わされたる者、白く輝く衣に身を包み、東より出ずる流星に乗りて、この乱世を沈めんがために舞い降りん』

 

これは最近管路という占い師が出した予言に出てくる言葉なのだけど、

 

この “天の御遣い” がこの乱世を救ってくれる救世主になってくれるんだって>

 

 

 

<ホント、月ってば変なことばっかり覚えるんだから。そんなのインチキに決まってるじゃない>

 

 

 

<そうですぞ月殿、そのようなことは黄巾賊の被害を受けた者たちが生み出した希望的妄言に過ぎないです>

 

 

 

<まあまあ、ゆえちゃんは夢見がちな可愛い乙女ですから~>

 

 

 

<うー、三人ともひどい・・・。でもね詠ちゃん、ねねちゃん、りっちゃん、私は素敵なことだと思うの。

 

乱世を救う救世主。そんな人がいたら、みんなが平和な世界で暮らしていけるのにね・・・>

 

 

 

<もう、そんなのに頼らなくてもボクが月に天下と獲らせてみせるわよ。そしたら平和になるでしょ?>

 

 

 

<恋殿がいる限り我らに負けはあり得ないのです!>

 

 

 

<・・・(コクッ)>

 

 

 

<ウチも力になります~>

 

 

 

<みんな頼もしいね。でもやっぱり私は一度でいいから天の御遣い様に会ってみたいな・・・>

 

 

 

 

 

 

走馬灯から覚めた陳宮は、再び恐怖の塊が迫ってくるのを目の当たりにする。

 

追い詰められた陳宮が最後にすがったのは、過去に仲間が話していたあの噂・・・

 

 

 

陳宮(天界に坐します神よ、今ここに乱世の救世主、天の御遣いを降臨させ、どうか我らをお救い下さいです・・・!)

 

 

 

そして陳宮が祈っている最中、宋憲の手が陳宮に触れようとしたその瞬間・・・

 

 

 

 

 

ドゴゴーーーン!!!!!

 

 

 

 

 

すさまじい轟音と共に、光の塊が天井を突き破って墜落した。

 

 

 

 

 

【第一回 第一章:下邳城攻防戦・混乱と反乱 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

無事第一回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

一応今回の話は、ちょうど前回の話の前半部分(流星墜落まで)と同時進行しているとご理解いただければと思います。

 

つまりはとてもだらだら進行しているということです。すいません、、、

 

そして話の所々で見られる月や詠の死についてですが、これは現在のところ特にフラグはありません。

 

文字通りです。

 

というのも、本作品は、天の御遣いが登場する以前の出来事は、ほぼ史実通り進んでいる、

 

という方針で考えているからです(もちろん月は恋に殺されたわけではありません。

 

また詠については、史実では死んでいませんが、賈駆ではなく詠ならば、月と共に死を選ぶと考えたためです)

 

この辺りの話については、また余裕があれば投稿したいものです。りっちゃんも気になりますしね。

 

 

 

それではかなりのスローペースですが、次回も気楽にお読みいただけたらありがたいです。

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

 

 

次こそ本編に主人公が登場、、、汗

 


 
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