No.546460

【獣機特警K-9】DESTINATION【交流】

古淵工機さん

暴走列車の、そしてクオンの恋の行き先は果たして…!

■出演
クオン:http://www.tinami.com/view/372605
ジャック:http://www.tinami.com/view/544844

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2013-02-20 00:21:31 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:783   閲覧ユーザー数:749

…3月17日、22時03分。

突如何者かにジャックされたアーバンコミューターUC2177列車は、ブレーキの制御システムを破壊され暴走…。

終着駅のバンブーヒル駅へと迫りつつあった…。

そしてその列車の中には、大勢の金融マン、商社マンたちに混じって二人の学生…九段下久遠とジャック・ココノエが乗車していたのだった。

「くそっ!何とか止める方法はないのかよ!」

「…だめだ、車内の非常停止ボタンも作動しない。このままじゃボクたち…!」

一方その頃。

列車の上空にぴったりと寄り添うように、青と白に彩られたヘリコプターが飛んでいた。

K-9隊の誇るスーパーヘリ・ナインチョッパーである。

今回ナインチョッパーには、隊長のエルザ・アインリヒトのほか、イシス・トライスターおよびシス・セザンヌが同乗していた。

「…UC2177列車を確認しました」

「よし…シス。列車の分析をしてみてくれ」

「…承知」

シスはすぐに、列車の透視を試みる。電気系統、駆動系統、あらゆる情報がシスのバイザーに映し出されていく…。

 

「…解析完了。4両編成のうち前2両のブレーキシステムはダウンしているが、後ろ2両は無事…」

「そうか。だが見た感じでは最後尾の運転台も破壊されているようだが?」

「……後ろ2両を切り離せば良い…そうすれば非常ブレーキが作用する筈」

…再び、UC2177列車。

『というわけだ。すぐに乗客全員を後ろの2両に退避させるんだ』

「後ろの2両に?隊長、何かわかったの?」

『シスに分析してもらったのだが、いま君らの乗っている列車は、編成が途中で切れると非常ブレーキがかかる仕組みのようだ。つまり…』

「つまり…?」

『後ろの2両に乗客を退避させた後、編成の中央で切り離せばいい。前の2両は完全にブレーキ系統がダウンしているが、後ろの2両は大丈夫だ。編成を中央で切り離せば、少なくとも後ろ2両は緊急停止する』

「…わかった!やってみるよ!」

と、クオンは通信を終えると、混乱している乗客に向けて声を張り上げた…。

 

「みなさん!後ろの車両に避難してください!」

「後ろの車両に逃げろだって?」

「ど、どういうことだ!?」

とたんにざわめきだす乗客たち。

「…クオン、いったいどうしたんだ?急に」

心配そうにクオンを見つめるジャック。

「列車の止め方がわかったんだ。そのためにはまず、この車両を含めた前2両分の乗客を後ろに避難させなくちゃいけない。悪いけど、手伝ってくれるかい?」

「…わかった。こんな事態だもんな」

と、ジャックとクオンはお互いを見つめて頷くと、再び乗客のほうに向き直る。

「皆さん落ち着いて…今からこの列車を停車させます」

「停車させるったって、ブレーキが壊れてるのにとめられるわけが…」

「…ええ。でも後ろ2両のブレーキは生きてるんです。とにかく生き残りたければ、ボクの言うとおりにしてください!」

「あ、あぁ…」

すぐに乗客の移動が始まった。

1両当たり60人はいようかという乗客を、後ろ側の車両に一気に押し込めるのは一見簡単そうに見えて大変である。

 

「慌てないで!2列になって順番に通ってください!」

必死に乗客を誘導するクオンとジャック。乗客たちははやる気持ちを抑えて、次々に後ろの車両へと避難していく。

 

「…クオン、お前ってなんか…スゴいな」

「ダテに警官やってるわけじゃないしね。市民の安全を守るのが仕事だし」

そしてすべての乗客の避難が完了し、クオンは車両連結部付近のボタンを操作していく…。

クオンが操作していたのは、強制的に列車の編成を切り離す非常解放装置のボタンだ。

「…よし、これであと10秒立てば列車は切り離され、後ろ2両は止まる。さぁ、ボクらも後ろ側に乗り移らなきゃ」

と、二人が後ろ側の車両に移動しようとしたそのとき、列車は大きく右にカーブし、バランスを崩した二人は転倒してしまった!

「いててて…何でいきなり揺れたの…?」

「あ、そういやバンブーヒル駅の直前には急カーブがあるんだった…」

「早く言ってよもう…とにかくすぐに乗り移らないと…」

と、立ち上がった直後、貫通扉が自動的に閉鎖され、ロックがかけられた。

そして次の瞬間、強制的に後ろ側の車両が切り離されていったのである…。

「……って、うわぁぁぁぁ!!マジで早く言ってよもう!!閉じ込められちゃったじゃないか!!」

「ご、ごめん…」

…そう。クオンたちがよろめいて倒れている間に、タイマーのカウントがゼロになったため、貫通路が締め切られ後ろ2両が切り離される格好になったのだ。

つまり、暴走を続ける前の2両に、クオンとジャックは閉じ込められてしまったのである!!

 

…ナインチョッパー機内。

「よし、後ろ2両が減速をはじめた。クオン…上手くやってくれたようだな」

「……後ろ2両、クオンの反応なし」

「なに!?」

 

…切り離された前2両の車内。

すっかり誰もいなくなった密室にクオンとジャックは二人きり。

「ど、どうしたんだよクオン…クオン?」

「…はぁ…」

クオンはすっかりため息をついていた。

「な、なぁ。俺が悪かったからさ。だから元気出してくれよ…」

「…ねぇ、ジャック…」

「ん?」

しばらくの間をおいて、クオンは語りだした。

「…ボクね、みんなの笑顔を守りたくて警察に入ったんだ。それからは事件があるたび出動でさ。恋愛とは無縁かなって思ってたんだ…でもさ」

「?」

「…君と一緒にコンビニ強盗倒したとき…ボクは不思議な気持ちがしたんだよ。なんだかわからないけど、動力炉(リアクター)も電子頭脳も熱くなっちゃってさ。まるで壊れちゃうんじゃないかってくらい不思議な気持ちだった」

いつしか、クオンの頬は赤く染まり始めていた…。

 

「…最初はそれがなんだかわからなかったんだけど、それから君のことを思うたびにボクは確信したんだ…。こんなボクにだって恋のチャンスはあるんだって、さ…」

「ふーん…恋愛ねえ。よくわかんないや」

「…確かに空手バカの君にはわかりっこないんだと思う。もしかりたらボクの勝手な思い込みかもしれないけど…これだけは言えるんだ。ボクは君に恋してしまった…」

「クオン?何言ってるんだよさっきから?」

「…やっとボクにも恋のチャンスが訪れたって、思ってたのに…はぁ。こんな所で死んじゃうのか…」

と、深いため息をついたクオンだったが、またしばらく間をおいてジャックの方に向き直ると静かに、しかし強い調子で言った。

 

「…ジャック。もしかすると最後になっちゃうかもしれないけど…ボクの素直な気持ち、ここで言うね」

「あ、あぁ…」

「ボクは、君のことが―――」

 

その次の瞬間だった。

前の2両はバンブーヒル駅手前のポイントを通過したところでカーブを曲がりきれず脱線。

築堤を滑り降り、そのまま近くの廃屋に激突した。

列車は横転し、窓ガラスが次々に割れ、車体は大きくひしゃげていった。

 

「クオン!?応答しろ、クオン!クオン!!」

…22時37分。クオンたちを救出すべくナインチョッパーは列車の残骸付近に着陸した。

「隊長…クオンは大丈夫なんでしょうか…?」

「そう信じたいが…この状況ではなんとも…とにかく探してみるしかない」

「……クオンの反応を確認。すぐ近くに生命反応1」

「…よし、すぐに救出するぞ」

 

…同じ頃、前2両の残骸の中では…

「…ん…ここは…天国?じゃなさそうだな…」

「…ジャック…だ、大丈夫…?」

「クオン?クオンなのか!?」

ジャックが目を開けると、そこにはクオンがいた。

衝突の衝撃で人工表皮はあちこち破け、その切れ目からは内部メカが覗いていた。

一方のジャックはというと、とっさにクオンが覆いかぶさったおかげか、怪我ひとつしていなかった…。

「…よかった、君が無事で」

「クオンこそ大丈夫なのかよ?ボロボロじゃないか!」

「ボクはロボットだから大丈夫。ちょっと痛いけど…この程度だったら少し修理すれば問題ないよ」

と、痛みをこらえながらも笑うクオンだったが、しばらくするとジャックの肩に手を置き、こう告げた。

 

「…こんな時でなんだけどさ…ボクは君のことが好きだ。好きで好きで大好きで…とにかく一言じゃ言い表せないくらい…ボクはジャック・ココノエが好きなんだ!」

そんな告白を受けたジャックは、戸惑いながらも答える。

「…あぁ、でも…俺なんかでいいのか?」

「え、なんで?」

「ちょっと前に映画で見たんだけどさ…極限状態の中で結ばれた二人は長続きしないんだってよ」

「そんなのわかんないじゃん。とにかく今言えるのは、ボクは君が好きだってこと。それだけで十分だよ」

 

…しばらくして、エルザ、イシス、シスの三人は反応が一番強い場所へと接近した。

「…ここだ、このあたりから反応が出ている…」

「よし。すぐに救出するぞ」

「了解!」

…エルザたちが残骸を払いのけ、救出を開始しようとしたそのときだった…。

…そこには、肩を寄せ合い唇を重ねるクオンとジャックの姿があった…。

クオンの恋は、曲りなりではあったものの、なんとか実ったようである。

「…なるほど。もうひとつの生命反応は彼氏さんだったかw」

「げっ!?た、たたたた隊長!?」

「クオン…なんだかんだ言ってあなたもお年頃だったんですね…」

「……めでたい」

「い、いや、これはその…そう、なの…かなぁ?あは、あはははは…」

時刻は22時45分。満天の星空でさえも、彼女の恋を祝福しているかのようであった。


 
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