No.545358

【獣機特警K-9】争いの種を摘め!【交流】

古淵工機さん

スパイアクション長編、の後編。
さぁ、今回はあの男も登場です!!

■出演
ヘレナ:http://www.tinami.com/view/527343

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2013-02-17 11:12:01 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:679   閲覧ユーザー数:658

ドルフィン・ベイ市内、倉庫街の一角。

ブリング社とゴクセイカイの間で取り交わされていた密約…。

その内容は、現在も小規模な抗争が続くポレモス製に新たな戦争の火種をばら撒く恐るべきものであった。

 

…裏取引を阻止するべく、ヘレナはいったん通気口から離れた位置に移動すると、すぐさま暗号通信を行う。

通信の相手はラミナ警察署である。声を出しての通信では相手に感づかれるため、暗号データでのやり取りを行っているのだ。

 

(…これで奴らの企みは…!?)

通信を終えたヘレナだったが、背後からただならぬ殺気を感じ取ると、とっさに身をかわした。

その背後から飛んできたのは、なんと無数の手裏剣。

ヘレナが後ろを振り返ると、そこには漆黒のロボットが立っていた。

(あれはゴクセイカイの…!タダで帰してくれるワケがない、か…!)

そう、ヘレナを襲撃したのはゴクセイカイの暗殺用ロボット、無影である。

裏取引が何者かによって嗅ぎ付けられる可能性を想定したのか、トラジが彼を忍び込ませていたのだった。

(やっかいだな…ここでド派手にやればこちらの位置をかぎつけられる危険性がある。…なら!)

 

と、ヘレナはまるで物音も立てずに通気ダクトを進んでいく。

すかさず追いかける無影。静かに、しかしそれでいて激しい逃走劇が始まった。

 

「…?」

ふいに、無影は立ち止まり辺りを見回す。彼の視界から突然ヘレナの姿が消えたのだ。

まだどこかにいるはずと、無影が他の場所へ移動しようとしたまさにその時である。

 

「!!!」

ダクトの上に伸びるベンチレーターに隠れていたヘレナの腕から放たれたワイヤーが、無影の背後を捕らえた!

気づいたときには遅く、ワイヤー先端に取りつけられたアンカーがその背中に突き刺さっていた。

無影はとっさに身をかわし、ワイヤーを振りほどこうとしたが、次の瞬間強烈な電流が彼の身体を直撃する!!

 

「…」

無影はこの電撃によりシステムが麻痺し、二、三歩よろめくと、その場に倒れこんだ。

それを見ていたヘレナが軽い身のこなしでもとの位置まで降りてくる。そして…

「…しばらく寝てろ、馬鹿忍者」

と、倒れている無影に言い放ったのであった。

その頃、倉庫内。

(…おかしい、無影からの反応が途絶えた…?)

と、腕時計形のモニタ端末を覗き込むトラジ。

「どうかしましたか、トラジさん」

「なに、ちょっとネズミが紛れ込んだみたいですな…ただ少々厄介な、ね…」

「なんですと!?するとまさか…」

「我々の取引を何者かに聞かれていた可能性が高い…もっとも、そのネズミが外に出る前に片付ければいいだけの話ですがね」

と、トラジがいいながら指を鳴らすと、武装した大量のロボット達が出てきた。

「…というわけだ。この倉庫に紛れ込んだ厄介な大ネズミを仕留めて来てもらおう。いいな」

と、ロボットたちに号令を飛ばすトラジ…だが、次の瞬間である!!

 

突然、どこからともなく飛んでくる無数のトランプが、武装ロボットに次々と突き刺さる!

なすすべもなく倒れていくロボットたち。トラジと、ブリング社の重役がその方向に目をやると…。

シルクハットに夜会服、そして黒いマントを羽織った男が一人…!

「き、貴様…まさか!?」

「か…怪盗ノワール!!」

「失礼ながら、話はすべて聞かせていただきました…まったく、この取引が成立すればどれだけの命が葬られることになるのやら。じつに嘆かわしい」

 

そう。突如、裏取引の現場に現れたのは怪盗ノワールであった。

この倉庫に勤務するブリング社の従業員に成りすまし、まんまと潜伏していたのである。

彼もまた、この裏取引を暴くために忍び込んでいたというわけである。

その頃、通気ダクト内。

「くっ、敵さんこっちに気づいたみたいだな。捕まる前になんとか逃げ出さないと…」

ヘレナは足を速め、急いで倉庫の外に通じる場所へと向かう。

『この倉庫に紛れ込んだ厄介な大ネズミを仕留めて来てもらおう。いいな』

彼女の耳にも、トラジのこの言葉が聞こえていたのだ。

センサー感度を上げているので、こういったことまで聞こえてきてしまうのである。

情報は手に入れた。長居は無用、後はひたすらに逃げるのみだった。

 

しかし、彼女を追ってくるはずの秘密部隊は出てこなかった。

「おかしい…このあたりで追っ手が来るはずだけど…?」

と、彼女の耳がさらにこんな会話を聞き取っていた。

『き、貴様…まさか!?』

『か…怪盗ノワール!!』

 

「ははーん、ノワールもこの事件をかぎつけてきてたワケか、どうりで追っ手が来ないはずだ」

と、ヘレナは微笑むと、そのまま海に面した壁の格子を開け、そのまま暗い水面に向かい飛び込む。

「…ありがとう、ノワール。ちょうどいいときに現れてくれて」

…かくして、ヘレナは半ばノワールに助けられる形ではあったが、ミッションを完了することが出来たのである。

一方、その頃の倉庫内。

 

「ネズミが紛れていた、とあなた方は仰いましたね。ですがそれにばかり気をとられて肝心なことを見落としていた」

「ぐ…!」

「…一番身近なところにもう一匹のネズミが潜んでいたことにね」

トラジもこのときばかりはさすがに焦りを隠せないようだった。

 

ブリング社の重役が叫ぶ。

「何をしている!この男も捕らえろ!例のネズミもろとも外へ出すな!!」

しかしノワールは余裕の笑みを浮かべながらこう答える。

「フフ、残念ながらもう手遅れではないですか?」

「なんだと!?」

と、言い争っているところで、正面の扉が破られ、取引現場を強烈な光が照らす!

「バカな…警察だと!?」

ふと光の方向を見ると、そこにはK-9隊の輸送車であるナインキャリアー。

そしてそこから次々に出てくるK-9隊員たち…。その様子を見るや、ノワールはさらに続ける。

「ほら。だから申し上げたはずです。手遅れだとね…」

「なぜだ、なぜ警察がここに!!」

慌てるブリング社重役の言葉に対し、K-9隊の隊長であるエルザが答える。

 

「ゴクセイカイとブリング社の間で違法取引が行われている、と暗号文で通信が入ったのだ。それで駆けつけてみれば案の定だったというわけか」

「バカな…どうしてここが…」

たまらず冷や汗をかく重役に、ノワールがさらに続ける。

「あなた方が追っていた大ネズミとやらが、逃げる直前に情報をリークしたんでしょう。おおかた…NC-7か、そうでもなければFIAのエージェントか。いや、暗号文ということはおそらく後者でしょうね」

そういってノワールはマントの中からナイフを取り出すと、彼のすぐ後ろにあった自走式レーザー砲めがけて投げつける。

 

「なぁぁぁぁ!?わ、わが社の商品がぁ!!」

「制御システムの基盤を破壊しておきました。それからこの図面と契約書も…私が処分してしまいましょう」

と、ノワールが指を鳴らすと、持っていた書類の束が跡形もなく燃え尽きた。

「あ、あ…」

「…これで裏取引は成立しなくなった。肝心の兵器ももう動かない。さて、後はお任せしますよ警察の皆さん。アデュー!」

そういってノワールは大きく舞い上がり、夜空の彼方に身を溶かし消えていった。

 

「う、ぐ…ど、どうしますトラジさん…トラジ…さん!?」

重役が振り返ったときには、トラジの姿も消えていた。

この混乱を目の当たりにしたトラジは、自らの身を案じて早々に退散していたのだった。

まったくもって逃げ足の速い男である。

 

「さぁ、おとなしくお縄についてもらおうか」

と、重役に詰め寄っていくエルザ。そしてついに…重役の手に手錠がはめられ御用となった。

かくて、多くの命を脅かす危険な裏取引は消滅したのであった。

…翌日。ラミナ市内某所のドイツカフェ。

「…ごめんごめん、待った?」

「遅いぞ、ヘレナ姉さん」

そこにはいつものように何気ない会話を交わすエルザとヘレナの姉妹がいた。

「しかし…あの暗号通信をよこしたのがまさか姉さんだったとは」

「まあ、悪の芽は早いうちに摘めってね」

「まあ、なんだ。…トラジは取り逃したが、こうして裏取引を潰すことが出来たんだ。感謝してるよ」

「そりゃどうも。ところで…」

「?」

 

首をかしげるエルザに、ヘレナはさらに続ける。

「…お願い!今夜でいいからエルザの裸撮らせて!」

「な!?ど、どういうことだ!?」

頬を赤らめ驚くエルザ。

「ネッ友で同人誌描いてる人がいるんだけど、その資料に裸の写真が欲しいっていうんだよ。だからお願い!ね?」

「やっ、やめろっ!私の裸を何に使うつもりだ!!絶対やらないからな!!」

「ねぇ頼むよー、ねぇったらぁ」

「やめろ!離せ!!その手は何だ!!」

 

…と、いつものような姉妹のやりとりが町中に響き渡る。

しかしこうした平和があるのも、その陰でそれを支えている者たちがいるからに他ならない。

K-9隊が、警察がそうであるように、FIAもまた、彼らのやり方で平和を守っているのだ…。


 
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